宅建試験の科目と出題範囲:法令で決まった7つの事項と50問の中身・勉強の順番

宅建試験(宅地建物取引士資格試験)は、50問の4択式です。答えはマークシートに塗ります。何が出るかは、国が決めたルール(宅地建物取引業法施行規則8条)で「7つの事項」として決められています。

7つの事項は、ふつうの言葉でまとめると次の5つのかたまりになります。

  • 土地や建物の権利のルール(民法など)
  • 土地の使い方の制限(都市計画法など)
  • 税金と土地の値段
  • 宅建業法(不動産の仕事のルール)
  • 土地・建物の性質と、需要・供給(登録講習を終えた人は免除)

注意したいのは、分野ごとの問題数です。「権利関係は何問」といった数は、公式には発表されていません。この記事では、公式に決まっていることだけを使って、7つの事項で何を学ぶか、どの順番で勉強するかを説明します。

宅建試験はどんな形の試験か

まず、試験の形をつかみます。試験を実施する一般財団法人 不動産適正取引推進機構(以下「機構」)の案内では、次のとおりです。

  • 問題は50問。4つの選択肢から1つを選ぶ形(四肢択一式)です。
  • 時間は午後1時から午後3時までの2時間です。登録講習を終えた人は45問で、午後1時10分から午後3時まで(1時間50分)です。
  • 試験は筆記試験で行うと、施行規則9条が決めています。記述式(文章を書く問題)はありません。
  • 試験は毎年1回、10月の第3日曜日です。令和8年度は10月18日(日)です。

もう一つ大事なのが、どの時点の法律から出るかです。機構は「出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです。」としています。施行(しこう)とは、法律が実際に効き始めることです。つまり、令和8年度の試験なら令和8年4月1日の時点で効いている法律が基準です。それより後に効き始める改正は、その年の試験には出ません。

日程の細かい流れは宅建試験の日程の記事に、合格点の決まり方は合格点と合格率の記事にまとめています。

出題範囲はどこで決まっているか

宅建試験そのものは、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)16条で決まっています。1項で都道府県知事が試験を行うこと、2項で「試験は、宅地建物取引業に関して、必要な知識について行う。」と定めています。宅地建物取引業(宅建業)とは、土地や建物の売り買い・交換や、売り買い・交換・貸し借りの仲立ち(代理や媒介)を、仕事としてくり返し行うことです(宅建業法2条2号)。

そして、具体的に何を出すかは、施行規則(国土交通省が決めた細かいルール)の8条にあります。書き出しは「前条の基準によつて試験すべき事項は、おおむね次のとおりである。」です。そのあとに、一号から七号まで7つの事項が並びます。

号条文の言葉(要点)ふつうの言葉で
一土地・建物の形質、地積、地目、構造など土地と建物の性質(免除あり)
二権利及び権利の変動に関する法令権利のルール(民法など)
三法令上の制限土地の使い方の制限
四税に関する法令不動産の税金
五需給に関する法令及び実務需要と供給(免除あり)
六価格の評定土地の値段の決め方
七宅地建物取引業法及び関係法令不動産の仕事のルール

ここで読み落としやすいのが「おおむね」という言葉です。「だいたい次のとおり」という意味です。ですから、8条は出題する法律の名前を一つずつ並べた一覧ではありません。たとえば二号に「民法」という名前は出てきません。どの法律がどの号に入るかは、号の言葉から考えることになります。

なお、この記事では分かりやすさのために、二号を「権利関係」、三号を「法令上の制限」、四号と六号を「税・価格」と呼びます。これは呼び名であって、法律上の科目名ではありません。

分野ごとに何問出るのか

結論から言うと、分野ごとの問題数の公式な内訳はありません。機構の試験概要も、よくある質問も、7つの事項を挙げるだけです。何号から何問出すかは示していません。

公式に分かるのは、次の一点だけです。登録講習を終えた人は、一号と五号が免除されて45問になります。機構の過去問ページでは、登録講習修了者の問題は問1〜問45と注記されています。令和7年度の問題冊子でも、修了者は問46〜問50の解答が免除されています。このことから、一号と五号にあたる5問は、問46〜問50に置かれていると読み取れます。

本や受験サイトで「この分野は何問」という数を見かけることがあります。それは過去の問題を数えた集計で、公式に決まった配分ではありません。年によって変わることもありえます。このサイトでは、そうした数を公式の配分のようには書きません。分野ごとの勉強法の記事で問題数にふれるときは、令和3年度(10月)の問題で当サイトが確かめた並び(権利関係が問1〜問14、法令上の制限が問15〜問22、税・価格が問23〜問25、宅建業法が問26〜問45)として書き、公式の内訳ではなく年度で変わりうる数だと添えます。分野の重さを考えるときは、問題数より「範囲の広さ」と「条文の具体さ」を目安にします(あとの「勉強の順番」で説明します)。

また、合格に必要な点も毎年変わります。令和7年度は50問中33点、令和6年度は50問中37点でした(機構の試験実施概況)。「何点取れば安心」という固定の線はありません。くわしくは合格点と合格率の記事を見てください。

権利関係(二号)では何を学ぶか

二号は「土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。」です。権利の変動とは、土地を売って持ち主が変わる、お金を借りて土地に抵当権が付く、といった権利の動きのことです。

この中心になるのが民法です。民法は、売り買い・貸し借り・相続など、くらしの約束ごとの基本ルールです。たとえば、マンションを買う約束をしたあと、「だまされていた」と気づいたらどうなるか。こうした場面のルールを学びます。

民法の論点は行政書士試験とも共通です。このサイトでは、両方の試験に使える解説記事を用意しています。宅建で特に土地・建物の場面とつながりが深いものを挙げます。

民法のほかにも、土地や建物を借りる人を守る借地借家法などが、二号の「権利に関する法令」に入ると考えられます。借地借家法は、民法の賃貸借のルールを、借りる人に有利に修正した法律です。借地借家法の記事で、民法との違いを説明しています。

二号は範囲がとても広いのが特徴です。民法だけでも、条文の番号は第千五十条まであります。全部を同じ深さでやろうとせず、土地・建物の売り買いと貸し借りに関係する場面から固めるのが進めやすいやり方です。

法令上の制限(三号)では何を学ぶか

三号は「土地及び建物についての法令上の制限に関すること。」です。自分の土地でも、好きな建物を好きなだけ建てられるわけではありません。町づくりや安全のために、法律が使い方を制限しています。その制限を学ぶ分野です。

どんな法律が入るかの手がかりは、宅建業法35条にあります。35条は、不動産会社がお客さんに契約前に説明すること(重要事項説明)を決めた条文です。その1項2号に「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限」とあります。宅建士が仕事で説明する制限が、試験の三号とつながっているわけです。

このサイトでは、次の記事でこの分野を扱っています。

  • 開発許可:土地を造成するときに許可がいるのはどんなときか(都市計画法)
  • 用途地域:住宅街に工場を建てられないのはなぜか(都市計画法・建築基準法)
  • 建ぺい率と容積率:土地に対してどれだけの大きさの建物を建てられるか(建築基準法)
  • 農地法:田んぼや畑を売ったり、家を建てたりするときの許可

三号は、面積や割合などの数字が多く出てくる分野です。数字だけを丸暗記すると、似た数字どうしで混ざります。「何のための制限か」を先に押さえ、その目的と数字をセットで覚えると、取り違えにくくなります。

税・価格(四号・六号)と、免除される2つの事項(一号・五号)では何を学ぶか

四号:不動産の税金

四号は「宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。」です。土地や建物は、買うとき・持っているときに税金がかかります。たとえば地方税法73条の2は「不動産取得税は、不動産の取得に対し、当該不動産所在の道府県において、当該不動産の取得者に課する。」と定めています。家を買った人に、その家がある都道府県がかける税金です。不動産の税金の記事で、不動産取得税と固定資産税の違いを説明しています。

六号:土地の値段の決め方

六号は「宅地及び建物の価格の評定に関すること。」です。評定(ひょうてい)とは、値打ちを判断して決めることです。たとえば地価公示法は、決められた地点(標準地)の「正常な価格」を公表するしくみを決めています。目的は、ふつうの土地の取引の値段に目安を与えることだと1条にあります。土地の値段をどうやって見積もるか、という考え方を学ぶ分野です。

一号・五号:土地と建物の性質、需要と供給

一号は「土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。」です。言葉を置き換えると、形質=形や性質、地積=土地の面積です。地目=土地の使いみちの種類(宅地・田・畑など)、構造=建物の組み立て(木造・鉄筋コンクリートなど)です。どんな土地が家を建てるのに向いているか、建物の材料ごとの特徴は何か、といった中身になります。

五号は「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。」です。需給とは、住宅を求める人(需要)と、つくって売る側(供給)の関係のことです。

この2つが、登録講習を終えた人の免除の対象です(施行規則10条の14)。ふつうに受ける人は、一号・五号も問46〜問50として解きます。免除の条件や期間は5問免除の記事で説明しています。

宅建業法(七号)では何を学ぶか

七号は「宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。」です。試験の名前のもとになっている、不動産の仕事のルールそのものです。宅建業法16条2項が「宅地建物取引業に関して、必要な知識」を試すとしているとおり、試験の中心にある分野だと言えます。

宅建業法は、お客さんが損をしないように、不動産会社に守らせるルールの集まりです。誰が仕事をしてよいか、契約の前後に何を説明し何を渡すか、手数料はいくらまでか、といったことを決めています。このサイトでは、次の順に記事を並べています。

  1. 仕事を始めるための決まり:宅建業の免許、宅建士の登録と宅建士証、営業保証金と保証協会
  2. お客さんから仕事を頼まれるとき:媒介契約
  3. 契約の前と後に説明し、渡すもの:重要事項説明(35条)、37条書面
  4. 不動産会社が自分で売るときだけのルール:クーリング・オフ、8種制限
  5. お金の決まり:報酬の上限

宅建業法は一つの法律にまとまっていて、決まりが具体的です。「何日以内」「誰が」「書面で」といった条文の言葉が、そのまま問われやすい作りです。条文と結びつけて覚えると、点に結びつきやすい分野です。

どの順番で勉強すればよいか

勉強の順番に公式の正解はありません。ここでは、範囲の広さと条文の具体さから考えた、このサイトのおすすめの順番を示します。

  1. 宅建業法(七号):一つの法律で、決まりが具体的です。最初に試験の中心を固めます。8種制限など民法の知識が前提になる単元は、そのつど契約不適合責任などの民法の記事で補います。
  2. 権利関係(二号):いちばん範囲が広い分野です。売り買い・貸し借り・相続など、土地と建物の場面から進めます。
  3. 法令上の制限(三号):目的と数字をセットで覚えます。重要事項説明(35条)で説明する中身だと意識すると、宅建業法とつながります。
  4. 税・価格(四号・六号)と、免除のない人は一号・五号:範囲を区切って、最後にまとめて仕上げます。

行政書士試験で民法を勉強したことがある人は、二号の民法が復習になります。その場合は宅建業法に時間を多めに回し、借地借家法など、宅建で特に関係の深い土地・建物のルールを足していくと進めやすくなります。

次に読むなら、宅建を独学で受けるための記事がおすすめです。この記事で見た7つの事項を、どの教材で、いつまでに回すかを決められます。すでに勉強を始めている人は、試験の中心である宅建業法の入り口として宅建業の免許の記事から読むと、七号の全体像がつかめます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)