開発許可(かいはつきょか)は、建物を建てるために土地をけずったり盛ったり、区切り方を変えたりする「開発行為」に、前もって許可を求める制度です(都市計画法29条)。許可するのは都道府県知事です(政令指定都市・中核市という大きな市では市長)。許可がいるかどうかは、場所と広さで決まります。市街化区域は1,000平方メートル以上で必要、市街化調整区域は広さに関係なく必要です。ほかに、農林漁業用の建物や駅舎・図書館などの例外があります。
この記事では、宅建試験の法令上の制限で出る「許可がいるかどうか」の判断を中心に扱います。許可の基準の細かい中身(33条・34条の各号)は、必要なところだけ触れます。条文は令和8年4月1日時点のものです。
身近な例で考えると
登場人物は2人です。住宅会社の社長=こうへいさん(土地を造成して分譲住宅を建てたい)、農家=みのるさん(畑の近くに建物を建てたい)です。まず、よく出てくる区域の名前を確認します。
- 市街化区域:すでに街になっている所や、これから街にしていく所。
- 市街化調整区域:街が広がるのをおさえる所。原則として建物を増やさない。
- 非線引き(ひせんびき)区域:都市計画区域なのに、上の2つに分けていない所(条文では「区域区分が定められていない都市計画区域」)。
- 準都市計画区域:都市計画区域の外で、放っておくと困る所に指定される区域。
こうへいさんの計画を順に見ます。
- 市街化区域にある800平方メートルの土地を造成し、4区画の住宅地にする。1,000平方メートル未満なので、原則として許可はいりません。
- 市街化区域にある2,000平方メートルの土地を造成する。1,000平方メートル以上なので、許可が必要です。
- 市街化調整区域にある200平方メートルの土地に、分譲住宅1棟のための造成をする。調整区域には広さの例外がないので、許可が必要です。
みのるさんの計画も見ます。
- 市街化調整区域で、農機具をしまう倉庫のための造成をする。農業用の建物の例外に当たるので、許可はいりません。
- 同じく市街化調整区域で、自分が住む家(農業を営む人の住まい)のための造成をする。これも例外で、許可はいりません。
- 市街化区域で、1,500平方メートルの土地に農業用の倉庫を建てるための造成をする。市街化区域には農林漁業用の例外がないので、許可が必要です。
たとえるなら、開発許可は「工事を始める前に、町の計画と合っているかを役所にチェックしてもらう入場券」です。ただし本物のルールでは、チェックされるのは建物そのものではなく、建物のための土地の造成です。建物そのもののチェックは、建築基準法の建築確認という別の手続きです。
条文ではこう決まっている
開発行為とは(4条12項)
「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更」です。かみくだくと、次の2つがそろったときです。
- 目的:建物を建てるため、または「特定工作物」をつくるため。
- 行為:土地の区画(区切り方)や形質(形や土の性質)を変える。造成・盛り土・道路をつくって区画を分けることなど。
特定工作物(4条11項)には2種類あります。
- 第一種特定工作物:コンクリートプラント(生コンクリートを作る工場の設備)など、まわりの環境を悪くするおそれがあるもの。施行令1条1項は、アスファルトプラント、クラッシャープラント(石を砕く設備)、危険物をためたり処理したりする工作物を挙げています。
- 第二種特定工作物:ゴルフコースなど大規模なもの。施行令1条2項は、野球場・庭球場・陸上競技場・遊園地・動物園などの運動・レジャー施設と墓園で、1ヘクタール以上のものを挙げています。ゴルフコースは法律に名前が出ているので、広さに関係なく第二種特定工作物です。
許可がいる場所と広さ(29条1項・2項、施行令19条・22条の2)
- 市街化区域:1,000平方メートル以上で許可が必要。
- ただし三大都市圏の一部(首都圏の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏の都市整備区域)の市街化区域では500平方メートル以上。
- 市街化区域では、都道府県などが条例(じょうれい=自治体が作るきまり)で300平方メートルまで下げられる。
- 市街化調整区域:広さに関係なく許可が必要。
- 非線引き区域・準都市計画区域:3,000平方メートル以上で許可が必要。条例で300平方メートルまで下げられる。
- 都市計画区域と準都市計画区域の外:1ヘクタール(10,000平方メートル)以上で許可が必要。
広さに関係のない主な例外(29条1項2号〜11号)
- 農林漁業用の建物と、その仕事をする人の住まい(2号):市街化調整区域・非線引き区域・準都市計画区域で使える。市街化区域では使えない。施行令20条は、畜舎・温室・サイロ・農機具収納施設などと、建築面積90平方メートル以内の建物を挙げています。
- 公益上必要な建物(3号。みんなのために必要な建物):条文は「駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所」などを挙げています。具体的な一覧は施行令21条にあります。
- 都市計画事業・土地区画整理事業・市街地再開発事業などの施行として行うもの(4号〜8号)。
- 非常災害のため必要な応急措置(10号。大きな災害のときに急いで行う工事)。
- 通常の管理行為・軽易な行為(11号。ふだんの手入れや、ごく小さな工事):施行令22条は、仮設の建物、車庫や物置などの附属建物(ふぞくたてもの=おまけの建物)、10平方メートル以内の増築などを挙げています。市街化調整区域に住む人が、まわりの住民向けの日用品の店を自分で営むための小さな開発(延べ面積50平方メートル以内、開発区域100平方メートル以内など)も入ります。
都市計画区域と準都市計画区域の外では、農林漁業用の建物と、上の3号・4号・9号〜11号の開発行為が例外です(29条2項)。
許可の後のルール
- 申請の前に、関係する公共施設の管理者と協議し、同意を得る(32条)。
- 工事が終わったら知事に届け出て、検査を受ける。合格すると検査済証(けんさずみしょう=検査に通った証明書)が渡され、工事が終わったことが公告(こうこく=広く知らせること)される(36条)。
- 公告があるまでは、開発区域の中で建物を建ててはならない。工事用の仮設建築物や、知事が支障がないと認めたときなどは例外(37条)。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる:準都市計画区域で、4,000平方メートルの土地をホームセンターの店舗用に造成する。3,000平方メートル以上なので許可が必要です。
- 当てはまらない(建物を建てない):市街化区域で、2,000平方メートルの土地を平らにして、青空駐車場にする。建物を建てる目的ではなく、特定工作物でもないので、開発行為に当たりません。許可はいりません。
- 当てはまらない(1ヘクタール未満の野球場):市街化区域で、8,000平方メートルの野球場をつくる。野球場が第二種特定工作物になるのは1ヘクタール以上なので、開発行為に当たりません。
- ひっかけやすい(ゴルフコース):ゴルフコースは広さに関係なく第二種特定工作物です。そのため、その造成は開発行為になります。許可がいるかどうかは、場所ごとの面積の基準で判断します。
- ひっかけやすい(学校・病院):駅舎・図書館・公民館は、公益上必要な建物の例外に入ります。しかし学校・病院・社会福祉施設は、施行令21条の一覧に入っていません(国や自治体が建てる施設の号でも、わざわざ除くと書かれています)。市街化調整区域で病院のための造成をするなら、許可が必要です。
- ひっかけやすい(三大都市圏):市街化区域の基準は1,000平方メートルが原則ですが、三大都市圏の一部の区域では500平方メートルです。「市街化区域ならどこでも1,000平方メートル未満は不要」とは言えません。
似ているルールとの違い
区域ごとに、広さの基準と農林漁業の例外をまとめます。
| 区域 | 許可がいる広さ | 農林漁業の例外 |
|---|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡以上(一部500㎡) | なし |
| 市街化調整区域 | 広さに関係なく | あり |
| 非線引き・準都市計画区域 | 3,000㎡以上 | あり |
| 両区域の外 | 1ha以上 | あり |
開発許可と、建築基準法の建築確認もまぎらわしいところです。
| 手続き | 何を見るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 開発許可 | 建物のための土地の造成 | 都市計画法29条 |
| 建築確認 | 建物そのものの計画 | 建築基準法 |
開発許可がいらない場合でも、建物を建てるときには建築確認が別にいることがあります。
試験ではここをまちがえやすい
宅建試験の法令上の制限では、「次の開発行為のうち許可が必要なものはどれか」という形で、区域・広さ・目的を組み合わせて問われやすい論点です。
- 「以上」と「未満」:市街化区域は1,000平方メートル「未満」なら不要、1,000平方メートル「以上」なら必要です。ちょうど1,000平方メートルは許可が必要です。
- 農林漁業用の例外の場所:市街化区域では使えません。市街化区域で農業用倉庫のために1,000平方メートル以上を造成するなら、許可が必要です。
- 調整区域に広さの例外はない:小さな造成でも、例外(農林漁業用・公益上必要な建物など)に当たらなければ許可が必要です。
- 公益上必要な建物の中身:駅舎・図書館・公民館・変電所は例外、学校・病院・社会福祉施設は例外ではありません。
- 開発行為かどうか:駐車場・資材置き場は建物を建てないので開発行為ではありません。野球場や遊園地は1ヘクタール以上で特定工作物、ゴルフコースは広さに関係なく特定工作物です。
- 公告前の建築制限:許可を受けても、工事完了の公告までは建物を建てられないのが原則です。
市街化区域の中でどんな建物を建てられるかは用途地域の記事、建物の大きさの決まりは建ぺい率と容積率の記事で続けて学べます。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題):市街化調整区域で、200平方メートルの土地に、農業を営む人が自分で住む家を建てるための開発行為をするときは、開発許可が必要である。
答え:✕。市街化調整区域では、農林漁業を営む人の住まいの建築を目的とする開発行為は、許可がいりません(29条1項2号)。
問2(このサイトのオリジナル問題):都市計画区域にも準都市計画区域にも入っていない場所がある。そこで8,000平方メートルの土地を住宅地にするための開発行為をするときは、開発許可が必要である。
答え:✕。区域の外で許可がいるのは1ヘクタール(10,000平方メートル)以上です(29条2項、施行令22条の2)。8,000平方メートルなら不要です。
問3(このサイトのオリジナル問題):市街化区域で、1,200平方メートルの土地を造成して月極の青空駐車場にする行為は、開発許可が必要である。
答え:✕。建物を建てる目的でも特定工作物をつくる目的でもないので、開発行為に当たりません(4条12項)。広さに関係なく許可はいりません。
まとめ
- 開発行為=建物や特定工作物のための土地の区画形質の変更。駐車場づくりは当たらない。
- 許可がいる広さ:市街化区域1,000㎡以上(一部500㎡)、調整区域は広さに関係なく、非線引き・準都市計画区域3,000㎡以上、両区域の外1ha以上。
- 農林漁業用の建物と、その仕事をする人の住まいは、市街化区域以外で例外。
- 駅舎・図書館・公民館・変電所は例外、学校・病院・社会福祉施設は例外ではない。
- 工事完了の公告までは、開発区域で建物を建てられないのが原則。
法令上の制限は、農地を宅地にするときの許可と組み合わせて出ることもあります。続けて農地法の記事を読むと、「どの法律の許可がいるか」を見分ける練習になります。法令上の制限の全体の位置づけは宅建試験の科目と出題範囲にまとめています。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容をe-Gov法令検索で確かめました。
- e-Gov法令検索「都市計画法」(4条11項・12項、29条1項・2項、32条、34条、36条、37条)
- e-Gov法令検索「都市計画法施行令」(1条、19条、20条、21条、22条、22条の2)
- 不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」(法令の基準日)
働く人の法律試験ノート