宅建士の登録と宅建士証をわかりやすく:合格から仕事をするまで

宅建試験に受かっただけでは、宅建士ではありません。まず①試験を行った都道府県の知事の「登録」を受けます。次に②「宅建士証(宅地建物取引士証)」の交付を受けて、はじめて宅建士になります(宅地建物取引業法2条4号・18条1項・22条の2第1項)。登録には、実務経験2年以上か、登録実務講習の修了などが必要です。宅建士証の有効期間は5年で、合格から1年を過ぎて交付を受けるときは法定講習を受けます。

この記事では、合格から登録・宅建士証の交付までの流れと、登録したあとの「登録の移転」「変更の登録」「宅建士証の更新・返納」を扱います。条文は e-Gov 法令検索の現行の条文(2026年4月1日施行の改正を反映したもの)で確かめています。

身近な例で考えると

愛知県で宅建試験に合格した、みさきさんの話です。登場人物は次のとおりです。

人物立場したこと
みさきさん宅建試験の合格者登録して宅建士になる
ゆうとさん不動産屋さん(宅建業者)の社長みさきさんを雇う
お客のたけしさんマンションの買い手重要事項の説明を受ける
  1. みさきさんは愛知県で受けた宅建試験に合格した。この時点では「合格者」で、宅建士ではない。
  2. 不動産の仕事をした経験は2年に足りなかったので、登録実務講習を受けて修了した。
  3. 愛知県知事に登録を申請し、宅地建物取引士資格登録簿にのった。
  4. 合格から1年たたないうちに、愛知県知事に宅建士証の交付を申請した。1年以内なので法定講習はいらない。宅建士証を受け取り、宅建士になった。
  5. ゆうとさんの不動産屋さんで働き、たけしさんにマンションの重要事項を説明した。説明のときは宅建士証を見せる。
  6. その後、ゆうとさんの岐阜支店に移ることになり、登録を岐阜県知事に移した(登録の移転)。
  7. 5年がたつ前に、法定講習を受けて宅建士証を更新した。

たとえると、登録は「名簿にのること」、宅建士証は「仕事のときに見せる身分証」です。名簿にのっていても、身分証が切れていれば仕事はできません。ただし、本物のルールでは、宅建士証は名簿にのった人しか受け取れず、登録が消されると宅建士証も返さなければなりません。2つは別々のようで、つながっています。

条文ではこう決まっている

登録の要件(18条)

  • 登録を受けられるのは、試験に合格した人で、次のどちらかにあたる人(18条1項)。①宅地・建物の取引について、国土交通省令で定める期間以上の実務経験がある。②国土交通大臣が、それと同じかそれ以上の能力があると認めた。登録先は、その試験を行った都道府県知事。
  • 実務経験の期間は2年(施行規則13条の15)。
  • 同じかそれ以上の能力があるとされるのは、国土交通大臣の登録を受けた実務講習(登録実務講習)の修了者、国・地方公共団体などで宅地・建物の取得や処分の仕事に通算2年以上ついた人など(施行規則13条の16)。
  • 登録できない人(欠格)は、18条1項1号〜12号に並んでいる。主なものは次のとおり。宅建業の営業について成年者と同じ行為能力を持たない未成年者。破産して復権を得ていない人。拘禁刑以上の刑の執行が終わるなどしてから5年たっていない人。一定の罪で罰金刑を受けて5年たっていない人。暴力団員等。不正な手段で登録を受けたなどの理由で登録を消されて5年たっていない人。心身の故障で宅建士の事務を適正に行えない人。
  • 登録簿には、氏名・生年月日・住所のほか、本籍と性別、合格の年月日と合格証書番号、宅建業者のもとで働いているならその業者の商号と免許証番号などがのる(18条2項、施行規則14条の2の2)。

登録のあとの手続き(19条の2〜22条)

  • 登録の移転:登録している県以外の県にある宅建業者の事務所で働く、または働こうとするときは、その事務所のある県の知事に登録を移す申請が「できる」。申請は今の登録先の知事を経由する。事務禁止の処分を受けて、その期間が終わっていないときはできない(19条の2)。
  • 変更の登録:登録している事項が変わったら、遅滞なく変更の登録を申請しなければならない(20条)。
  • 死亡等の届出:本人が死亡したら相続人が、死亡を知った日から30日以内。本人が欠格の一部(18条1項1号〜8号)にあたることになったら本人が、その日から30日以内。心身の故障で事務を適正に行えなくなったら、本人か法定代理人か同居の親族が30日以内(21条)。
  • 知事は、本人の申請、21条の届出、死亡の事実が分かったとき、合格が取り消されたときに、登録を消す(22条)。

宅建士証(22条の2〜22条の4)

  • 登録を受けた人は、登録している知事に宅建士証の交付を申請できる(22条の2第1項)。宅建士とは、宅建士証の交付を受けた人のこと(2条4号)。
  • 交付を受けるには、知事が指定する講習(法定講習)で、申請前6か月以内に行われるものを受ける。ただし、試験に合格した日から1年以内に交付を受ける人と、登録の移転にともなって交付を受ける人はいらない(22条の2第2項)。
  • 有効期間は5年(22条の2第3項)。申請により更新でき、更新のときも法定講習を受ける(22条の3)。
  • 登録を移転すると、今の宅建士証は効力を失う。移転先で交付される新しい宅建士証の有効期間は、前の宅建士証の残りの期間(22条の2第4項・5項)。
  • 登録が消されたとき、宅建士証が効力を失ったときは、速やかに交付を受けた知事に返す(返納。22条の2第6項)。事務禁止の処分を受けたときは、速やかに知事に預ける(提出。同7項)。禁止の期間が終わって請求すれば、すぐに返してもらえる(同8項)。
  • 取引の関係者から請求されたら、宅建士証を見せる(22条の4)。重要事項の説明をするときは、請求がなくても相手に見せる(35条4項)。
  • 氏名か住所が変わったら、変更の登録とあわせて宅建士証の書換え交付を申請する。住所だけの変更なら、今の宅建士証の裏面に新しい住所を書いてもらう方法でもよい(施行規則14条の13)。

宅建士の仕事と置く人数(31条の3・35条・37条・68条)

  • 宅建士だけができる仕事は、重要事項の説明(35条1項)、重要事項説明書への記名(35条5項)、37条書面(契約の内容を書いた書面)への記名(37条3項)。
  • 宅建業者は、事務所ごとに、仕事をする人の5分の1以上の割合で「成年者である専任の宅建士」を置く(31条の3第1項、施行規則15条の5の3)。足りなくなったら2週間以内に補う(31条の3第3項)。
  • 宅建士がほかの人に名前を貸すなどしたときは、知事から指示や、1年以内の期間を決めた事務禁止の処分を受けることがある(68条)。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 登録できる例:みさきさんが、不動産の仕事の経験は1年しかないが、登録実務講習を修了した。国土交通大臣が実務経験2年と同等以上と認める人にあたるので、登録できます(18条1項、施行規則13条の16)。
  2. ひっかけやすい例:みさきさんは愛知県で受験して合格したが、住んでいるのは岐阜県。登録を受けるのは「試験を行った都道府県知事」なので、愛知県知事です(18条1項)。住所地の知事ではありません。
  3. 登録の移転ができない例:みさきさんが岐阜県に引っ越したが、勤め先は今までどおり愛知県の事務所。登録の移転は、ほかの県の事務所で「働く・働こうとする」ときのものなので(19条の2)、できません。住所が変わったので、変更の登録をします(20条)。
  4. ひっかけやすい例:岐阜支店に移ったみさきさん。登録の移転は「申請することができる」と書かれていて、義務ではありません(19条の2)。移さずに愛知県知事の登録のまま岐阜で働くことも、条文上は認められています。
  5. 当てはまらない例:宅建士証の有効期間が切れたのに、そのまま重要事項を説明した。宅建士とは宅建士証の交付を受けた人で(2条4号)、効力を失った宅建士証は返納するものです(22条の2第6項)。登録が残っていても、宅建士としての説明はできません。
  6. ひっかけやすい例:17歳の合格者が、宅建業の営業について親(法定代理人)から許可を受けている。欠格になるのは、宅建業の営業について成年者と同じ行為能力を持たない未成年者です(18条1項1号)。営業の許可で成年者と同じ行為能力を持つ未成年者は、この欠格にあたらず、ほかの要件を満たせば登録できます。ただし、事務所に置く専任の宅建士は「成年者」でなければならないので、そのままでは専任の宅建士の数には入りません(31条の3第1項)。

似ているルールとの違い

登録と宅建士証は、受ける相手も期限も違います。

項目登録宅建士証
だれに申請試験を行った知事登録している知事
要件合格+実務2年か講習など登録+法定講習(合格1年以内などは不要)
有効期間条文に定めなし5年(移転後は残りの期間)
なくなるとき消除(22条など)期間切れ・移転などで効力を失う

「何かが変わったとき」の手続きも3つあり、まぎらわしいところです。

手続きどんなとき義務か・期限
変更の登録氏名・住所・勤め先などが変わった義務・遅滞なく(20条)
登録の移転ほかの県の事務所で働く・働こうとする任意(19条の2)
宅建士証の書換え氏名か住所が変わった変更の登録とあわせて申請

名前が似ている「登録講習」と「登録実務講習」も別物です。登録講習は、宅建業で働く人が受ける講習で、修了すると試験の5問が免除されます(宅建試験の5問免除で説明)。登録実務講習は、合格したあと実務経験が2年に足りない人が、登録のために受ける講習です。

試験ではここをまちがえやすい

宅建士の登録と宅建士証は、宅建試験の宅建業法で問われやすいテーマです。次の型に注意します。

  • 登録先の知事:「住所地の知事」「勤務先の知事」とすりかえる形。登録は試験を行った知事です(18条1項)。
  • 登録の移転の要件:住所の移転だけで移転できるとする形と、移転が義務だとする形。移転は勤務先が理由で、しかも任意です(19条の2)。
  • 移転後の宅建士証の有効期間:「新たに5年」とする形。正しくは前の宅建士証の残りの期間です(22条の2第5項)。移転にともなう交付には法定講習もいりません(同2項)。
  • 法定講習の要否:合格から1年以内なら不要、1年を過ぎたら交付申請前6か月以内の講習が必要。更新のときも必要です。
  • 返納と提出の取りちがえ:登録の消除・宅建士証の失効は「返納」、事務禁止の処分は「提出」(禁止期間が終われば返してもらえる)。
  • 提示のタイミング:ふだんは関係者から請求されたら見せる(22条の4)。重要事項の説明では、請求がなくても見せる(35条4項)。

重要事項の説明で宅建士が何をするかは重要事項説明(35条)をわかりやすくで、記名する37条書面は37条書面をわかりやすくで説明しています。なお、宅建試験は試験を行う年度の4月1日現在で施行されている法令から出題されます(不動産適正取引推進機構の試験概要)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建試験に合格した人は、合格したその日から、宅建士として重要事項の説明をすることができる。

答え:✕
宅建士とは、宅建士証の交付を受けた人です(2条4号)。合格したあと、試験を行った知事の登録を受け(18条1項)、宅建士証の交付を受けて(22条の2第1項)、はじめて説明ができます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
愛知県知事の登録を受けている宅建士が岐阜県に引っ越した場合、勤め先が愛知県の事務所のままであっても、岐阜県知事に登録の移転を申請することができる。

答え:✕
登録の移転ができるのは、登録している県以外の県にある宅建業者の事務所で働く、または働こうとするときです(19条の2)。住所が変わっただけでは移転できません。住所の変更は、変更の登録で届けます(20条)。

問3(このサイトのオリジナル問題)
登録の移転にともなって新しい宅建士証の交付を受けるときは、法定講習を受ける必要はなく、新しい宅建士証の有効期間は、前の宅建士証の残りの期間となる。

答え:○
22条の2第2項ただし書は、移転にともなう交付を法定講習の対象から外しています。有効期間は、前の宅建士証の有効期間が終わるまでの期間です(22条の2第5項)。

まとめ

  • 合格→試験を行った知事の登録(実務2年か登録実務講習など)→宅建士証の交付で、はじめて宅建士。
  • 宅建士証の有効期間は5年。交付・更新には法定講習(合格1年以内と移転にともなう交付は不要)。
  • 登録の移転は、ほかの県の事務所で働くときにできる任意の手続き。新しい宅建士証は前の残りの期間。
  • 登録事項が変わったら遅滞なく変更の登録。氏名・住所なら宅建士証の書換えもあわせて申請。
  • 消除・失効なら返納、事務禁止なら提出。

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参考にした公式の情報(2026年10月確認)