専任媒介契約(ほかの業者に重ねて頼めない約束)を結んだ宅建業者は、物件の情報を指定流通機構(していりゅうつうきこう)に登録しなければなりません。指定流通機構は、国土交通大臣が指定した、不動産会社どうしで物件の情報を見せ合う仕組みを持つ機関です。「レインズ」はこの仕組みの呼び名です。
押さえることは3つです。①登録の期限は、専任が契約の日から7日、専属専任が5日で、業者の休業日は数えない。②登録したら、機構が出す「登録を証する書面」を依頼者に渡す。③売買・交換の契約が成立したら、機構に通知する。一般媒介には登録の義務がありません。この記事では、登録の期限・登録する事項・成約の通知を扱います。媒介契約の書面や報告の頻度は媒介契約の記事で扱っています。
身近な例で考えると:一戸建てを売るたけしさんの場合
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| たけしさん | 売りたい人(依頼者) | 実家の一戸建てを売りたい |
| みなと不動産 | 宅建業者(休業日は毎週水曜) | たけしさんから買い手探しを頼まれる |
| 指定流通機構 | 国土交通大臣が指定した機関 | 物件の情報を業者どうしに見せる |
| ゆいさん | 買いたい人 | 別の不動産会社を通して物件を知る |
たけしさんは、金曜日に、みなと不動産と専属専任媒介契約を結びました。専属専任は、ほかの業者に頼めないうえに、自分で見つけた相手とも契約できない形です。その後の流れは次のとおりです。
- 契約の日(金曜)の翌日から数えて5日以内に、みなと不動産は家の情報を指定流通機構に登録する。休業日の水曜は数えないので、期限は翌週の木曜になる。
- 登録すると、指定流通機構が「登録を証する書面」を発行する。みなと不動産は、それを遅滞なく(ぐずぐずせずに)たけしさんに渡す。
- ほかの不動産会社も機構の情報を見られるので、その会社のお客さんのゆいさんにも、家の情報が届く。
- たけしさんとゆいさんの売買契約が成立した。みなと不動産は、遅滞なく、登録番号・取引価格・契約が成立した年月日を指定流通機構に通知する。
専任にすると、たけしさんはほかの業者に頼めません。そこで法律は、頼まれた業者に「早く情報を広める」義務を負わせました。登録の書面を渡すのは、本当に登録したかを依頼者が確かめられるようにするためです。成約の通知は、機構の情報を新しく保つためのものです。
条文ではこう決まっている(宅建業法34条の2第5項〜7項)
登録のルールは、宅建業法34条の2の5項から7項と、施行規則15条の10から15条の13に分かれています。かみくだくと次のとおりです。
- だれが(5項):専任媒介契約を結んだ宅建業者。専属専任は専任の一種なので、同じく登録します。
- いつまでに(規則15条の10):専任媒介契約の締結の日から7日、専属専任媒介契約なら5日。期間の計算に休業日は入れません。
- 何を(5項・規則15条の11):物件の所在、規模、形質(土地や建物の形や性質)、売買すべき価額。加えて、都市計画法などの法令にもとづく制限で主要なもの、取引の申込みの受付に関する状況、交換なら評価額、専属専任ならその旨。
- どこへ(規則15条の12):物件の所在地を含む地域を対象に、登録の業務を現に行っている指定流通機構。
- 登録したら(6項・50条の6):機構が発行する登録を証する書面を、遅滞なく依頼者に引き渡します。依頼者の承諾があれば、書面の代わりに電磁的方法(メールなど)で提供できます(12項)。
- 契約が成立したら(7項・規則15条の13):遅滞なく、指定流通機構に通知します。通知する事項は、登録番号、取引価格、売買または交換の契約が成立した年月日の3つです。
- 反する特約(10項):「登録しなくてよい」「書面は渡さない」といった、5項・6項に反する特約は無効です。依頼者が同意しても同じです。
5項の原文の前半は「国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を」登録する、という形です。登録する事項に、売主の氏名や住所は入っていません。
媒介契約の種類ごとに、何をするのか
一般・専任・専属専任で比べます。いちばん下の行は、媒介契約のときに渡す書面(34条の2第1項)の記載事項です。
| 項目 | 一般 | 専任 | 専属専任 |
|---|---|---|---|
| 登録の義務 | なし | あり | あり |
| 登録の期限 | ― | 7日以内 | 5日以内 |
| 専属専任である旨の登録 | ― | ― | 登録する |
| 証明書面の引渡し | 義務なし | 遅滞なく | 遅滞なく |
| 成約の通知 | 7項の義務なし(※) | 遅滞なく | 遅滞なく |
| 書面に「登録に関する事項」 | 書く | 書く | 書く |
一般媒介の物件も、業者が任意で登録することはできます。指定流通機構の業務は、条文で「専任媒介契約その他の宅地建物取引業に係る契約の目的物」の登録とされているからです(50条の3第1項1号)。一方、6項(書面の引渡し)は「前項の規定による登録をした」業者、7項(成約の通知)は「第五項の規定による登録に係る」物件についての定めで、条文の上では5項の登録、つまり専任媒介の登録が前提です。
※ただし、成約の通知は一般媒介でも省けると考えないでください。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(34条の2関係)は、専任・専属専任で登録した物件の通知を7項の義務とし、一般媒介で登録した物件についても、契約が成立したときは「当該指定流通機構の定める規程等に従い」成約情報を通知すること、としています。根拠が7項ではなく機構の規程だ、という違いです。
一方、媒介契約の書面の記載事項の「指定流通機構への登録に関する事項」(1項6号)は、一般媒介を含むすべての媒介契約で書きます。一般媒介なら「登録するかどうか」を書面で明らかにする、ということです。
期限はどう数えるか:休業日を除いて数える
期限の計算は2つの決まりの組み合わせです。期間の初日は数えない(民法140条)。業者の休業日は数えない(規則15条の10第2項)。たけしさんの例(金曜に契約、休業日は水曜)で数えると次のとおりです。
| 日 | 数え方 | 専属専任(5日) | 専任(7日) |
|---|---|---|---|
| 金(契約日) | 数えない | ― | ― |
| 土・日・月・火 | 1日目〜4日目 | ― | ― |
| 水(休業日) | 数えない | ― | ― |
| 木 | 5日目 | この日まで | ― |
| 次の金・土 | 6日目・7日目 | 期限切れ | 土曜まで |
休業日を数えないのは、登録の期限だけです。業務の処理状況の報告(専任は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上)には、休業日を除く定めはありません。数え方の決まりを、報告の頻度に広げないようにします。
当てはまる例・当てはまらない例
当てはまる例(登録がいる)
- 依頼者が宅建業者で、専任媒介を結んだ。→ 業者どうしの取引で外れる規定は、78条2項で33条の2と37条の2〜43条に限られています。34条の2は入っていないので、登録の義務はそのままです。
- 売却の「代理」を専任で頼まれた。→ 34条の3により、売買・交換の代理の契約にも34条の2が準用されます。代理と媒介の違いは代理と媒介の記事で比べています。
- 交換の専任媒介。→ 交換も対象です。交換の専任媒介では、物件の評価額も登録します(規則15条の11第3号)。
当てはまらない例(登録の義務がない)
- アパートの貸し借りの媒介。→ 34条の2は「売買又は交換の媒介」の契約が対象です。貸借の媒介に登録の義務はありません。
- 一般媒介。→ 登録の義務は専任媒介だけです。任意で登録した場合、6項・7項は条文の上では5項の登録についての定めなので当てはまりませんが、成約の通知は、国土交通省の考え方により機構の規程に従ってします。
ひっかけやすい例
- 「売主が知られたくないと言うので、登録しない特約にした」。→ 5項に反する特約は無効です(10項)。
- 「成約したので、依頼者に登録番号と成約価格を知らせた」。→ 7項の通知の行き先は指定流通機構です。依頼者に知らせても、機構への通知をしたことにはなりません。
- 「登録を証する書面は、業者が自分で作って渡す」。→ 書面を発行するのは指定流通機構です(50条の6)。業者はそれを依頼者に引き渡します。
似ているルールとの違い:だれから、だれへ
媒介契約のあとには、似た「渡す・知らせる」がいくつか続きます。行き先で分けると混ざりにくくなります。
| 何を | だれから | だれへ | いつ |
|---|---|---|---|
| 物件の登録 | 業者 | 指定流通機構 | 7日・5日以内 |
| 登録を証する書面 | 機構→業者 | 依頼者 | 遅滞なく |
| 成約の通知 | 業者 | 指定流通機構 | 遅滞なく |
| 申込みがあった報告 | 業者 | 依頼者 | 遅滞なく |
| 業務の処理状況の報告 | 業者 | 依頼者 | 2週・1週に1回以上 |
機構へ向かうのは「登録」と「成約の通知」の2つで、依頼者へ向かうのは「書面」と「報告」です。書面と報告の電子化(依頼者の承諾が要ること)は、電磁的方法の記事でまとめています。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが不動産適正取引推進機構の公開問題(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、媒介契約を主な論点とする問題は42問、直近10回では12問でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。指定流通機構への登録だけの数は数えていません。取り違えやすいのは次の形です。
- 日数の入れ替え:専任7日と専属専任5日。しばりが強い専属専任のほうが短い、と結びつけます。
- 休業日の広げすぎ:休業日を除くのは登録の期限だけ。報告の頻度には除く定めがありません。
- 登録事項の創作:売主の氏名・住所は登録事項にありません。反対に、法令上の制限で主要なものと、取引の申込みの受付に関する状況は登録事項です。
- 通知の行き先:成約の通知は指定流通機構へ。依頼者に渡すのは登録を証する書面です。
- 通知の中身:登録番号・取引価格・成約の年月日の3つ。買主の氏名は入っていません。
- 一般媒介の扱い:登録の義務はないが、媒介契約の書面には「登録に関する事項」を書く。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが、宅建業者でないBと、Bの土地について専任媒介契約を結んだ。Aが指定流通機構に登録する事項に、Bの氏名は含まれないが、その土地の法令上の制限で主要なものは含まれる。
答え:○ 分かれ目は、登録事項に何が入るかです。34条の2第5項は所在・規模・形質・売買すべき価額を挙げ、施行規則15条の11が、法令にもとづく制限で主要なもの、取引の申込みの受付に関する状況などを加えています。売主の氏名・住所はどこにもありません。媒介契約の書面(1項)や37条書面には当事者が出てくるため、登録にも氏名がいると考えると✕にしてしまいます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aは、Bとの専任媒介契約にもとづき、Bの建物を指定流通機構に登録した。その建物の売買契約が成立したときは、Aは、遅滞なく、登録番号・取引価格・契約成立の年月日をBに通知しなければならない。
答え:✕ 分かれ目は、通知の行き先です。34条の2第7項は、登録した物件の売買・交換の契約が成立したときは、遅滞なく「当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない」としています。通知する3つの事項(施行規則15条の13)は正しいですが、正しくは、通知の相手はBではなく指定流通機構です。依頼者Bに引き渡すのは、登録を証する書面(6項)のほうです。
問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが、宅建業者でないBと、Bの中古住宅の売却について一般媒介契約を結んだ。Aは、この住宅を指定流通機構に登録する義務はないが、Bに交付する媒介契約の書面には、指定流通機構への登録に関する事項を記載しなければならない。
答え:○ 分かれ目は、登録の義務と書面の記載事項の違いです。登録の義務(34条の2第5項)は専任媒介だけにかかります。一方、媒介契約の書面の記載事項(1項6号「指定流通機構への登録に関する事項」)は、一般媒介を含むすべての媒介契約に共通です。「一般媒介は登録と関係ない」と覚えていると✕にしやすい肢です。一般媒介にないのは、登録の義務と、業務の処理状況の定期的な報告(9項)の義務です。申込みがあったときの報告(8項)は、一般媒介にもあります。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「宅建業法」で続けて解けます。
まとめ
- 登録の義務は専任・専属専任だけ。期限は契約の日から7日・5日で、初日と休業日は数えない。
- 登録事項は所在・規模・形質・価額と、法令上の制限で主要なもの・申込みの受付の状況など。売主の氏名は入らない。
- 登録を証する書面は機構が発行し、業者が遅滞なく依頼者に渡す。
- 成約したら、遅滞なく機構へ通知(登録番号・取引価格・成約の年月日)。
- 一般媒介に登録の義務はないが、媒介契約の書面には登録に関する事項を書く。
次に読むなら、媒介契約の記事がおすすめです。有効期間3か月・報告の頻度・特約の無効を同じ表で確かめると、登録の日数と混ざりにくくなります。契約の前に買主へ説明する事項に進むなら、重要事項説明の記事へどうぞ。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の版を指定して確かめました。
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第1項・第5項〜第10項・第12項、第34条の3、第50条の3、第50条の6、第78条第2項)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の9、第15条の10、第15条の11、第15条の12、第15条の13)
- e-Gov法令検索「民法」(第140条)
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日以降の版。第34条の2関係「9 指定流通機構への登録等について」(2)成約情報の通知について)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の根拠となる法令は、試験を行う年度の4月1日現在施行のもの)
働く人の法律試験ノート