宅建を独学で受けるには:教材の選び方・勉強の順番・令和9年度に向けた半年の計画例

宅建試験は、日本国内に住んでいれば、年齢や学歴に関係なく誰でも受けられます。講座を受けることも条件ではありません。合否は試験の点数で決まり、どこで勉強したかは問われません(宅建業で働く人だけが使える5問免除は、別の制度です)。

独学で自分で決めることは3つです。①教材は、基本書・過去問集・公式の過去問・条文・模試を役割ごとにそろえる。②順番は、宅建業法から始めて、権利関係(民法など)、法令上の制限、税・価格へ広げる。③計画は、試験日(毎年10月の第3日曜日)から逆算して時期を区切る。この記事では、令和9年度の試験に向けた半年の計画の例まで具体的に示します。

なお、「何時間勉強すれば受かる」「何か月で受かる」という公式の目安はありません。このサイトでも、根拠のない時間や期間は書きません。かわりに、「どこまでできたら次へ進むか」という区切りで計画を立てます。

独学で受けられるか:公式に決まっていること・決まっていないこと

宅建試験は、一般財団法人 不動産適正取引推進機構(以下「機構」)が実施しています。機構の試験概要には、「日本国内に居住する方であれば、年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験できます。」とあります。受験の条件は、国内に住んでいることだけです。

公式に決まっていて、計画づくりに使える事実は次のとおりです。

  • 試験は年1回、10月の第3日曜日。50問の4択式で、時間は2時間です。
  • 出題の根拠になる法律は、試験の年度の4月1日の時点で施行(実際に効き始めること)されているものです。
  • 出題範囲は、宅建業法施行規則8条の7つの事項です。分野ごとの問題数の公式な内訳はありません。
  • 合格に必要な点は毎年変わります。令和7年度は50問中33点、令和6年度は50問中37点でした。

一方で、勉強のしかたについて機構は何も示していません。よくある質問にも、勉強法や教材の質問はありません。勉強時間や教材は、自分で決めるしかない、という前提から始めます。7つの事項の中身は宅建試験の科目と出題範囲の記事に、合格点は合格点と合格率の記事にまとめています。

教材は何をそろえるか:種類と選ぶ基準

独学の教材は、役割のちがうものを組み合わせます。ここでは、どの出版社の本を選ぶときにも確かめたい点を示します。具体的な書名・価格と、それぞれがどんな人に合うか・合わないかは、宅建試験の教材の選び方にまとめています。

種類役割選ぶ基準
基本書全体の地図受ける年度の版か、条番号があるか、読み通せる量か
過去問集出方を知る分野別か年度別か、解説に根拠があるか
公式の過去問本番の形を知る機構のサイトで無料
条文答えの根拠e-Gov法令検索で無料
模試・予想問題本番の練習50問・2時間の形か、解説があるか

基本書(テキスト)

試験の範囲全体を通して読める本です。確かめる点は3つあります。

  1. 受ける年度の版か:試験は、その年度の4月1日に施行されている法律から出ます。令和9年度の試験なら、令和9年4月1日の時点の法律です。前の年の版を使うと、その後の改正が入っていないことがあります。
  2. 本文に条番号が書いてあるか:あとで条文を引いて確かめるときに必要です。
  3. 自分が最後まで読める量と書き方か:書店などで数ページ読んで、説明が頭に入るものを選びます。1冊にまとまったものと、分野ごとに分かれたものがあります。どちらでもかまいません。

過去問集

過去問集には、分野ごとに並べたもの(分野別)と、年ごとに並べたもの(年度別)があります。基本書と並行して使うのは分野別です。読んだところの問題を、すぐに解けるからです。年度別は、試験の1〜2か月前から、時間を計って解く練習に使います。

選ぶときは、解説に根拠の条文が書いてあるかを見ます。また、法改正で答えが変わった問題に注記があるかも確かめます。機構自身も、過去問について「法改正により、現在の法律と一致しない場合があります。」と注意しています。

公式の過去問・条文・模試

機構のサイトでは、昭和63年度から令和7年度までの問題と正解番号表(PDF)が無料で公開されています。載っているのは問題と正解の番号で、解説はありません。本番の問題用紙の形や、2時間の分量を知るのに使います。

条文は、e-Gov法令検索(国の法令データベース)で無料で読めます。特に宅建業法は、一つの法律に仕事のルールがまとまっています。基本書で読んだところの条文を、その場で開く習慣をつけると、数字や「誰が・いつまでに」を取り違えにくくなります。

模試や予想問題は、本番と同じ50問・2時間の形で、解説が付いているものを選びます。使い方は、あとの計画の例で説明します。

勉強はどの順番で進めるか

勉強の順番に公式の正解はありません。ここでは、範囲の広さと決まりの具体さから考えた、このサイトのおすすめを示します。

  1. 宅建業法(施行規則8条七号):試験の名前のもとになっている、不動産の仕事のルールです。一つの法律で、決まりが具体的なので、最初に固めます。入り口は宅建業の免許の記事です。
  2. 権利関係(二号):民法を中心とする、いちばん広い分野です。土地や建物の売り買い・貸し借り・相続の場面から進めます。民法の記事は行政書士試験と共通です(次の見出しでくわしく説明します)。民法のあとに借地借家法を足します。
  3. 法令上の制限(三号):用途地域、建ぺい率と容積率、開発許可、農地法など。数字が多い分野なので、「何のための制限か」と数字をセットで覚えます。
  4. 税・価格(四号・六号):不動産の税金など、範囲を区切って仕上げます。登録講習を終えていない人は、一号・五号(問46〜問50)もここで扱います。

宅建業法を先にする理由は、もう一つあります。宅建業法の中には、民法の知識が前提になる単元があります。たとえば8種制限の一つに、宅建業法40条があります。不動産会社が自分で売主になるとき、民法の契約不適合責任より買う人に不利な特約(契約での特別な取り決め)を、原則としてしてはならないという決まりです。民法のルールを知らないと、何が「不利」なのか分かりません。宅建業法を読んでいて民法の言葉が出てきたら、そのつど民法の記事で補います。こうすると、民法を「宅建で使う場面」から覚えられます。

分野ごとの解説記事の一覧は、科目と出題範囲の記事に分野別に並べています。なお、登録講習の修了者は5問が免除されます。対象は宅建業で働いている人だけです。くわしくは5問免除の記事を見てください。

行政書士の民法を勉強した人(する人)はどう進めるか

民法は、行政書士試験と宅建試験の両方に出ます。このサイトの民法の論点記事は、両方の試験に使えるように書いています。行政書士の勉強をしたことがある人や、両方を受けたい人は、ここを生かせます。

共通の民法を、土地・建物の場面から先に

宅建の権利関係は、土地と建物についての権利のルールです(施行規則8条二号)。ですから、民法の中でも土地・建物の場面に関係する論点を先にします。このサイトでの順番の例は次のとおりです。

  1. 契約の入り口:意思表示、代理、制限行為能力者
  2. 土地の持ち主の争い:二重譲渡と登記、時効、共有
  3. お金を借りる・約束が守られない:抵当権、保証、債務不履行と解除、契約不適合責任、不法行為
  4. 貸す・受け継ぐ:賃貸借→借地借家法、相続

試験ごとの違いを意識する

  • 答え方:宅建は50問すべて4択です。行政書士試験の法令等には、40字程度で書く記述式があります。宅建では「正しいものを選べる」ことが目標で、言葉を書けるところまでは求められません。
  • 宅建で足す法律:借地借家法など、宅建の権利関係では、土地・建物のために民法に足して学ぶ法律があります。民法の賃貸借を終えたら、続けて読むと違いが分かりやすくなります。
  • 基準日はどちらも4月1日:両方の試験とも、その年度の4月1日に施行されている法律から出ます。同じ年に受けるなら、民法の改正の扱いはそろいます。
  • 試験日が近い:宅建は10月の第3日曜日、行政書士試験は11月の第2日曜日です。例年どおりなら、令和9年(2027年)は宅建が10月17日、行政書士試験が11月14日にあたります。正式な日付は、それぞれの公告・試験案内で確かめてください。

行政書士の民法の進め方は民法の勉強法の記事に、行政書士試験の独学全体は行政書士試験の独学の記事にまとめています。

過去問はどう使うか

過去問は、2つの時期で使い方を変えます。

  1. 基本書と並行する時期(分野別):1つの単元を読んだら、その単元の問題を解きます。正解か不正解かより、「なぜその選択肢が正しい(まちがい)か」を根拠の条文で言えるかを確かめます。言えなかった問題には印をつけ、基本書の該当ページに戻ります。
  2. 仕上げの時期(年度別):機構の公式PDFなどで、1年分の50問を2時間で解きます。時間の使い方と、分野をまたいだ切りかえに慣れるためです。

注意点が2つあります。1つ目は、古い年度の問題です。法改正で、当時の正解が今の法律では正解にならないことがあります。古い問題を使うときは、解説に改正の注記がある過去問集と合わせます。2つ目は、答えの番号を覚えてしまうことです。同じ問題を何度も解くと、番号だけを覚えがちです。選択肢の一つ一つについて、どこがまちがいかを言えるかで確かめます。

このサイトでは、過去問の問題文を載せていません。機構は、サイトの内容を無断で転載・改変することを禁じているためです。過去問は、機構の公式ページで見てください。論点記事の「○✕でたしかめよう」は、このサイトのオリジナル問題です。何年分・何周やるか、古い年度で答えが変わる法改正、過去問だけで受かるかは、宅建の過去問の使い方でくわしく説明しています。

令和9年度に向けた半年の計画の例

ここでは、令和9年度(2027年度)の試験に向けて、4月から始める半年の計画の例を示します。時期はすべて例です。半年で受かるという意味ではありません。自分の使える時間に合わせて、時期を前後にずらしてください。

前提として、令和9年度の試験日は、例年どおりなら10月の第3日曜日(2027年10月17日)です。正式な日付は、原則として6月の第1金曜日に、官報(国が出す公式の広報紙)と機構のサイトで公告(おおやけに発表)されます。申込は、令和8年度はインターネットが7月1日〜31日、郵送が7月1日〜15日でした。4月から始めるのには、もう一つ理由があります。4月1日を過ぎると、その年度の試験の前提になる法律がそろうからです。

時期(例)やること次へ進む目安
4月基本書と過去問集をそろえ、宅建業法を始める宅建業法の分野別過去問を一周
5月宅建業法の印をつけた問題を解き直す。権利関係を始める宅建業法の問題で根拠を言える
6月〜7月権利関係(民法→借地借家法)。7月に申込権利関係の分野別過去問を一周
8月法令上の制限、税・価格(必要なら一号・五号)全範囲を一周し終える
9月年度別過去問を2時間で解く。模試を受けるまちがいを分野ごとに記録
10月(試験まで)記録した弱点と、宅建業法・法令上の制限の数字を見直す新しい教材に手を広げない

この計画のポイントは、時間ではなく「次へ進む目安」で区切っていることです。たとえば5月の終わりに宅建業法の根拠が言えないなら、権利関係に入る前に1〜2週間足します。そのぶん、8月の税・価格を短く区切ります。範囲の広い権利関係を6月と7月の2か月にしているのは、民法の論点が多いからです。行政書士の民法を勉強済みの人は、ここを短くして宅建業法と法令上の制限に回せます。

試験直前の受験票は、令和8年度では10月2日に発送されました。令和9年度も、届いたら会場と時刻を確かめておきます。日程の流れは宅建試験の日程の記事を見てください。

計画どおりに進まないときはどうするか

独学では、計画がずれるのはふつうのことです。ずれたときは、次の順で考えます。

  1. どこで止まっているかを分ける:基本書が読めないのか、過去問が解けないのかで対策が違います。読めないなら、このサイトの論点記事など、やさしい説明で入り口を作ります。解けないなら、まちがえた選択肢の根拠を条文で確かめます。
  2. 広げるより、深める:遅れを取り戻そうとして教材を増やすと、どれも途中になりがちです。今の基本書と過去問集をくり返すほうを優先します。
  3. 深追いする場所を決める:権利関係は範囲が広く、細かい論点まで追うときりがありません。土地・建物の売り買い・貸し借り・相続に関係する論点を先にし、そこから外れる細かい論点は後回しにします。
  4. 数字は条文とセットで:宅建業法や法令上の制限の数字は、語呂合わせだけで覚えると混ざります。「誰が・何を・いつまでに」という条文の要件と一緒に覚えます。

合格しただけでは、宅建士として仕事はできません。都道府県知事の登録を受け、宅建士証の交付を受ける必要があります(宅建業法18条1項・22条の2)。登録には、実務経験2年か、それに代わる登録実務講習の修了などが必要です。合格後の流れは宅建士の登録と宅建士証の記事で説明しています。

次に読むなら、宅建試験の科目と出題範囲の記事がおすすめです。この記事の計画で回す7つの事項が、それぞれ何を学ぶ分野かを先につかめます。すぐに勉強を始めたい人は、最初の単元として宅建業の免許の記事から読んでみてください。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)