営業保証金と保証協会をわかりやすく:お客さんを守るお金の仕組み

宅建業者は、取引でお客さんに損をさせたときの備えとして、店を開く前に「営業保証金」を供託所(きょうたくじょ=国がお金を預かる窓口)に預けます。額は、本店(主たる事務所)が1,000万円、支店などほかの事務所が1つごとに500万円です(宅地建物取引業法25条、施行令2条の4)。かわりに「保証協会」に入る方法もあります。この場合は、本店60万円・ほかの事務所1つごとに30万円の「弁済業務保証金分担金(べんさいぎょうむほしょうきんぶんたんきん)」を協会に納めます。そうすれば、営業保証金を預けなくてよくなります(64条の9・64条の13、施行令7条)。

どちらの仕組みでも、お客さんは損をした分を、預けられたお金から払ってもらえます。これを還付(かんぷ)といいます。この記事では、預ける額と場所、還付を受けられる人、減ったお金の補てん、預けたお金の取戻しを、期限の数字とあわせて扱います。条文は e-Gov 法令検索の現行の条文(2026年4月1日施行の改正を反映したもの)で確かめています。

身近な例で考えると

名古屋市に本店、岐阜市に支店を持つ不動産屋さん、ゆうとさんの話です。登場人物は次のとおりです。

人物立場したこと
ゆうとさん宅建業者(本店+支店1つ)お金を預けて店を開く
さくらさんお客さん(一般の人)ゆうとさんから家を買う契約をした
保証協会宅建業者だけが入る団体分担金を集めて供託する

ゆうとさんには2つの道があります。

  1. 営業保証金の道:本店1,000万円+支店500万円=1,500万円を、本店のもよりの供託所に預ける。愛知県知事か国土交通大臣(免許をくれた人)に届け出てから、店を開ける。
  2. 保証協会の道:保証協会に入る日までに、本店60万円+支店30万円=90万円の分担金を協会に納める。協会は、受け取ってから1週間以内に同じ額を供託所に預ける。ゆうとさんは営業保証金を預けなくてよい。

さくらさんは、ゆうとさんに払った手付金を返してもらえず、損をしました。さくらさんは、営業保証金の道なら供託所から、保証協会の道なら協会の認証を受けたうえで供託所から、損をした分を払ってもらえます。上限はどちらも1,500万円です。そのあと、ゆうとさんは減った分を2週間以内に補わなければなりません。

たとえると、営業保証金は「1人で大きな敷金を積む」方法、保証協会は「仲間で少しずつ出し合って、いざというときに立て替えてもらう」方法です。ただし、本物のルールでは、保証協会が払った分はあとでゆうとさん本人が全額を協会に納めます(還付充当金)。仲間が肩代わりして終わり、ではありません。

条文ではこう決まっている

営業保証金を預ける(25条・26条)

  • 預ける場所は、主たる事務所のもよりの供託所(25条1項)。支店の分もここに預ける。
  • 額は、主たる事務所1,000万円、ほかの事務所1つごとに500万円の合計(25条2項、施行令2条の4)。
  • お金のかわりに、国債・地方債などの有価証券でもよい(25条3項、施行規則15条の2)。評価は、国債は額面のまま、地方債と政府が保証した債券は額面の90%、それ以外の債券は額面の80%(施行規則15条1項)。
  • 預けたら、供託書の写しをつけて免許をくれた大臣か知事に届け出る(25条4項)。届け出たあとでなければ、事業を始めてはならない(25条5項)。
  • 免許から3か月以内に届出がないと、大臣か知事は届け出るよう催告(さいこく=うながすこと)しなければならない。催告が届いてから1か月以内に届出がなければ、免許を取り消すことができる(25条6項・7項)。
  • 事業を始めたあとに事務所を増やしたら、その事務所の分を預ける(26条1項)。届け出るまで、増やした事務所で事業は始められない(26条2項で25条5項を準用)。

還付・補てん・保管替え・取戻し(27条〜30条)

  • 還付を受けられるのは、宅建業者と宅建業に関して取引をした人(宅建業者を除く)で、その取引から生じた債権を持つ人(27条1項)。
  • 還付で営業保証金が足りなくなったら、業者は免許権者から通知書を受け取った日から2週間以内に、足りない分を預ける(28条1項、宅地建物取引業者営業保証金規則5条)。預けてから2週間以内に届け出る(28条2項)。
  • 本店を移して、もよりの供託所が変わったとき:お金だけで預けているなら、移転先の供託所への保管替えを頼む。有価証券をふくむなら(全部が有価証券の場合も)、移転先のもよりの供託所に新しく預け直す(29条1項)。どちらも遅滞なく。
  • 免許の期間が切れた、廃業した、免許を取り消されたなどのときは、預けた営業保証金を取り戻せる。一部の事務所をやめて多すぎる分も取り戻せる(30条1項)。
  • 取り戻すには、還付を受けられる人に「6か月を下らない一定期間内に申し出るように」と公告し、その間に申出がないことが条件。ただし、取り戻せる理由ができてから10年たったときと、本店の移転で新しい供託所に預け直したときの移転前の供託所の分は、公告がいらない(30条2項)。

保証協会(64条の2〜64条の15)

  • 保証協会は、宅建業者だけを社員(会員)とする一般社団法人で、国土交通大臣が指定する(64条の2)。1つの協会の社員は、ほかの協会の社員になれない(64条の4第1項)。
  • 入る業者は、入ろうとする日までに分担金を協会に納める。額は主たる事務所60万円、ほかの事務所1つごとに30万円(64条の9第1項、施行令7条)。事務所を増やしたら、その日から2週間以内に納める。納めないと社員の地位を失う(64条の9第2項・3項)。
  • 協会は、分担金を受け取った日から1週間以内に、同じ額の弁済業務保証金を、法務大臣と国土交通大臣が定める供託所に預ける(64条の7第1項・2項)。協会が預けるときは有価証券でもよい(64条の7第3項で25条3項を準用)。一方、社員が納める分担金について、有価証券でよいとする定めはない。
  • 社員は、営業保証金を預けなくてよい(64条の13)。
  • 還付を受けられるのは、社員と宅建業に関して取引をした人(社員になる前に取引をした人もふくみ、宅建業者を除く)。上限は、その社員が社員でなかったら預けるはずの営業保証金の額。還付を受けるには、協会の認証を受ける(64条の8第1項・2項)。
  • 還付があったら、協会は通知書を受け取った日から2週間以内に、同じ額を供託所に預ける(64条の8第3項、宅地建物取引業保証協会弁済業務保証金規則1条)。
  • 協会は、還付の原因になった社員に還付充当金を納めるよう通知する。社員は通知を受けた日から2週間以内に納める。納めないと社員の地位を失う(64条の10)。
  • 社員の地位を失った業者は、その日から1週間以内に営業保証金を預けなければならない(64条の15)。
  • 社員が地位を失ったときは、協会は、その社員が納めた分担金と同じ額の弁済業務保証金を取り戻す。そして、還付を受けられる人に「6か月を下らない一定期間内に認証の申出をするように」と公告する。元社員に分担金を返すのは、その期間が過ぎたあと(64条の11)。一部の事務所をやめて多すぎる分を取り戻すときは、この公告は求められていない。

また、宅建業者は、契約が成立するまでの間に、お客さん(宅建業者を除く)に対し、営業保証金を預けた供託所とその所在地、または保証協会の名称・所在地などを説明します(35条の2)。重要事項の説明とならんで問われる点です。重要事項の説明そのものは重要事項説明(35条)をわかりやすくで扱っています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 還付を受けられる例:さくらさん(一般の人)が、ゆうとさんから家を買う契約で払った手付金を返してもらえない。宅建業に関する取引から生じた債権なので、還付を受けられます(27条1項・64条の8第1項)。
  2. 還付を受けられない例:ゆうとさんの店の内装工事をした工務店が、工事代金を払ってもらえない。店の工事は宅建業に関する取引ではないので、営業保証金からは払ってもらえません。
  3. 還付を受けられない例:ゆうとさんから土地を買った別の宅建業者が、損をした。還付を受けられる人から宅建業者は除かれています(27条1項・64条の8第1項のかっこ書き)。
  4. ひっかけやすい例:ゆうとさんが保証協会に入る前に、さくらさんと取引していた。社員になる前に取引をした人も還付を受けられるので、さくらさんは弁済業務保証金から払ってもらえます(64条の8第1項)。
  5. ひっかけやすい例:ゆうとさんが、岐阜支店の分500万円を、岐阜支店のもよりの供託所に預けた。営業保証金は全部、主たる事務所のもよりの供託所に預けるので(25条1項・26条2項)、この預け方は条文に合いません。
  6. 当てはまらない例:営業保証金を預けたが、届け出る前に店を開けた。事業を始められるのは届け出たあとです(25条5項)。預けただけでは足りません。

似ているルールとの違い

営業保証金と保証協会を並べます。試験で入れかえられやすいのは、額・期限・公告の有無です。

項目営業保証金保証協会
業者が出す額本店1,000万円・ほか1か所500万円本店60万円・ほか1か所30万円
出す先本店のもよりの供託所保証協会(協会が供託)
有価証券使える分担金には定めなし(協会の供託は使える)
事務所を増やしたら供託して届け出てから開業2週間以内に分担金
還付の上限預けた営業保証金の額営業保証金を預けたとした場合の額
還付のあと業者は通知から2週間以内に不足額を供託通知から2週間以内に還付充当金

期限の数字は次のように整理できます。この記事に出てくる「1週間」は2つ(協会が供託する期限と、協会の社員でなくなった業者が営業保証金を預ける期限)で、残りの多くは「2週間」です。

  • 3か月・1か月:免許から3か月で催告、催告から1か月で免許取消しができる(25条6項・7項)。
  • 2週間:不足額の供託と、その届出(28条)。新しい事務所の分担金(64条の9第2項)。還付充当金(64条の10)。協会の補てんの供託(64条の8第3項)。
  • 1週間:協会が分担金を受け取ってから供託するまで(64条の7)。社員の地位を失ってから営業保証金を預けるまで(64条の15)。
  • 6か月・10年:取戻しの公告は6か月を下らない期間(30条2項・64条の11)。営業保証金は、取り戻せる理由ができてから10年たてば公告はいらない(30条2項)。

試験ではここをまちがえやすい

営業保証金と保証協会は、宅建試験の宅建業法で数字が問われやすいテーマです。次の型に注意します。

  • 供託する場所:支店の分を支店のもよりの供託所に預けるとする形。全部、主たる事務所のもよりの供託所です。
  • 開業のタイミング:「供託すれば開業できる」とする形。供託して、届け出てから開業です(25条5項)。
  • 還付を受けられる人:宅建業者や、宅建業と関係ない取引(内装工事・広告代金など)の相手を入れる形。保証協会では「社員になる前の取引の相手」もふくまれる点が逆向きのひっかけになります。
  • 還付の上限:保証協会の還付の上限を「納めた分担金の額」とする形。正しくは、営業保証金を預けていたとしたらその額です(64条の8第1項)。
  • 1週間と2週間の入れかえ:協会の供託(1週間)と新しい事務所の分担金(2週間)、地位を失ったあとの営業保証金(1週間)と還付充当金(2週間)を入れかえる形。
  • 保管替えの条件:保管替えができるのはお金だけで預けているとき。有価証券をふくむときは新しく預け直します(29条1項)。

営業保証金は、免許を取ったあと店を開けるまでの流れの一部です。免許そのものは宅建業の免許をわかりやすくで説明しています。なお、宅建試験は試験を行う年度の4月1日現在で施行されている法令から出題されます(不動産適正取引推進機構の試験概要)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
本店のほかに支店を2つ持つ宅建業者が営業保証金を預けるときは、合計2,000万円を、本店のもよりの供託所に供託する。

答え:○
本店1,000万円+支店500万円×2=2,000万円です(施行令2条の4)。支店の分もふくめて、主たる事務所のもよりの供託所に預けます(25条1項)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
保証協会の社員と取引をして損をした人が受けられる還付の上限は、その社員が保証協会に納めた弁済業務保証金分担金の額である。

答え:✕
上限は、その社員が社員でなかったとしたら預けるはずの営業保証金の額です(64条の8第1項)。本店だけの業者なら、納めた分担金は60万円でも、上限は1,000万円になります。

問3(このサイトのオリジナル問題)
保証協会の社員でなくなった宅建業者は、社員の地位を失った日から2週間以内に営業保証金を供託すれば、宅建業を続けることができる。

答え:✕
期限は2週間ではなく、地位を失った日から1週間以内です(64条の15)。

まとめ

  • 営業保証金は本店1,000万円・ほかの事務所1つごとに500万円。全部を本店のもよりの供託所に預け、届け出てから開業する。
  • 保証協会に入るなら分担金は本店60万円・ほか1つごとに30万円。入る日までに納め、協会は1週間以内に供託する。
  • 還付を受けられるのは、宅建業に関する取引の相手(宅建業者を除く)。保証協会では社員になる前の取引の相手もふくむ。上限は営業保証金の額。
  • 還付のあとは、不足額の供託も還付充当金も通知から2週間以内。協会をやめたら1週間以内に営業保証金。
  • 取戻しには6か月以上の公告がいる(10年たったときなどは不要)。

このサイトで次に読むなら、営業保証金で守られるお客さんが、契約の前にどんな説明を受けるかを扱う重要事項説明(35条)をわかりやすくがおすすめです。35条の2の供託所等の説明とあわせて、契約前の説明のルールがつながります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)