宅建業の免許をわかりやすく:免許がいる人・いらない人と知事・大臣の違い

宅地や建物を自分で「売買・交換」する。または、ほかの人の「売買・交換・貸借」の代理や媒介(ばいかい=あいだに入って契約をまとめること)をする。これを仕事としてくり返し行うなら、宅建業の免許がいります(宅地建物取引業法2条2号・3条1項・12条1項)。自分のアパートを自分で貸すだけなら、免許はいりません。国や地方公共団体にも、この法律は適用されません(78条1項)。

免許をくれるのは、事務所が1つの都道府県だけにあるなら都道府県知事、2つ以上の都道府県にあるなら国土交通大臣です。有効期間は5年です(3条2項)。この記事では、免許がいるかどうかの分かれ目と、免許を取ったあとの更新・免許換え・届出までを扱います。条文は e-Gov 法令検索の現行の条文(2026年4月1日施行の改正を反映したもの)で確かめています。

身近な例で考えると

名古屋市で町の不動産屋さんを開く、ゆうとさんの話です。登場人物は次のとおりです。

人物立場したこと
ゆうとさん不動産屋さんを開く人売買や賃貸の仲介をする
しげるさんアパートの大家さん自分のアパートを自分で貸す
ある市地方公共団体使わなくなった市の土地を売る
  1. ゆうとさんは、名古屋市に事務所を1つ借り、愛知県知事に免許を申請した。事務所が愛知県内だけなので、知事の免許になる。
  2. 免許が下りたあと、営業保証金を供託して届け出てから、店を開けた。
  3. しげるさんから「アパートの入居者を探してほしい」と頼まれ、ゆうとさんが貸借の媒介をした。これは宅建業にあたる。一方、しげるさんが自分で入居者と契約するだけなら、宅建業にはあたらない。
  4. 3年後、岐阜市にも支店を出すことにした。事務所が2つの県にまたがるので、国土交通大臣の免許を取り直す(免許換え)。
  5. 大臣の免許の有効期間が切れる前に、更新の申請をする。

たとえると、免許は「不動産の取引をお客さん相手に仕事として行うための営業許可証」です。ただし、本物のルールでは、だれが相手でも「自分で貸す」ことは宅建業に入りません。また、営業許可証のように一度取れば終わりではなく、5年ごとに更新が必要です。

なお、2番目に出てくる営業保証金の仕組みは営業保証金と保証協会をわかりやすくで説明しています。

条文ではこう決まっている

宅建業とは何か(2条)

  • 宅地:建物の敷地に使う土地。ほかに、用途地域の中の土地は、道路・公園など政令で定める公共の施設に使うものを除いて宅地になる(2条1号)。
  • 宅建業:宅地か建物(建物の一部をふくむ)について、①売買か交換をすること、②売買・交換・貸借の代理か媒介をすること、を業として行うもの(2条2号)。
  • まとめると、「自分で売る・買う・交換する」は入るが、「自分で貸す・借りる」は入らない。貸借が入るのは、代理と媒介のときだけ。
  • 「業として」の意味は条文に書かれていない。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、世の中の常識で「事業の遂行とみることができる程度」かどうかで判断するとしている。判断の材料は、取引の相手(広く一般の人か)、取引の目的、物件を手に入れたいきさつ、取引のしかた、くり返し続けて行うか(反復継続性)など。これらを合わせて考える。

だれの免許か・何年か(3条)

  • 2つ以上の都道府県に事務所を置くなら国土交通大臣、1つの都道府県だけなら、その都道府県知事の免許を受ける(3条1項)。
  • 事務所とは、本店・支店のほか、継続して仕事ができる施設があり、契約を結ぶ権限のある使用人を置いている場所(3条1項、施行令1条の2)。
  • 有効期間は5年(3条2項)。続けるなら更新を受ける(3条3項)。
  • 更新の申請は、有効期間が切れる日の90日前から30日前までの間に出す(施行規則3条)。
  • 期限内に申請したのに、期間が切れるまでに結論が出ないときは、結論が出るまで今までの免許が効力を持つ(3条4項)。この場合に更新されたときは、新しい有効期間は前の期間が切れた日の翌日から数える(3条5項)。

免許をもらえない人(5条)

5条1項は、免許を出してはいけない人を並べています。主なものは次のとおりです。

  • 破産手続開始の決定を受けて、まだ復権(ふっけん=元の立場に戻ること)を得ていない人。
  • 不正な手段で免許を取ったなどの理由で免許を取り消され、取消しから5年たっていない人。
  • 拘禁刑(こうきんけい)以上の刑を受け、刑の執行が終わるなどしてから5年たっていない人。
  • 宅建業法違反や、傷害・暴行などの一定の罪で罰金刑を受け、5年たっていない人。
  • 暴力団員か、暴力団員でなくなって5年たっていない人。免許の申請前5年以内に、宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした人。
  • 役員や政令で定める使用人の中に上のような人がいる法人。事務所に、31条の3で決められた宅建士を置く要件を満たしていない人。

免許換え・届出・禁止(7条・9条・11条〜13条)

  • 免許換え:次の3つのときは、新しい免許を受ける。①大臣免許の業者の事務所が1つの県だけになった。②知事免許の業者が事務所を別の県に移した。③知事免許の業者が2つ以上の県に事務所を持つことになった。新しい免許を受けると、前の免許は効力を失う(7条1項)。手続き中に前の免許の期間が切れても、結論が出るまでは前の免許が効力を持つ(7条2項・3条4項)。
  • 変更の届出:商号、役員などの氏名、事務所の名称と所在地、事務所ごとの専任の宅建士の氏名が変わったら、30日以内に免許をくれた大臣か知事に届け出る(9条・4条1項1号〜5号)。
  • 廃業等の届出:期限はどれも30日以内(11条1項)。届け出る人は下の表のとおり。
  • 免許を受けていない人は、宅建業を営んではならない。宅建業を営むと表示したり、営む目的で広告したりすることもできない(12条)。
  • 宅建業者は、自分の名義で他人に宅建業を営ませてはならない(名義貸しの禁止。13条1項)。無免許営業や名義貸しで営業させることは、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方(79条)。
できごと届け出る人30日の数え始め
個人の業者が死亡相続人死亡を知った日
法人が合併で消滅消滅した法人の代表役員だった人その日
破産手続開始の決定破産管財人その日
合併・破産以外で法人が解散清算人その日
宅建業をやめた個人本人か法人の代表役員その日

免許が切れたり、届出で効力を失ったり、取り消されたりしても、すでに結んだ契約の取引を終わらせる範囲では、元の業者やその相続人などは宅建業者とみなされます(76条)。

免許がいらない人(77条・78条)

  • 国と地方公共団体には、宅建業法の規定が適用されない(78条1項)。
  • 信託会社には、免許の規定(3条〜7条など)が適用されない。かわりに、宅建業を始める前に国土交通大臣に届け出て、大臣免許の業者とみなされる(77条)。免許がいらないだけで、宅建業法のほかのルールは守る。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 免許がいる例:ゆうとさんが、名古屋市でマンションの売買の媒介と、アパートの貸借の媒介をくり返し行う。どちらも2条2号の宅建業にあたるので、免許がいります(事務所が愛知県だけなら愛知県知事)。
  2. 免許がいらない例:しげるさんが、自分のアパートの部屋を、自分で多くの入居者に貸している。「自分で貸す」は2条2号に入っていないので、どれだけくり返しても宅建業ではありません。
  3. ひっかけやすい例:しげるさんが、ほかの人から借りたマンションを、さらに入居者に貸す(転貸〈てんたい〉=また貸し)。これも「自分で貸す」なので宅建業にあたりません。ただし、しげるさんがその入居者探しをゆうとさんに頼めば、ゆうとさんの媒介は宅建業です。
  4. 免許がいらない例:ある市が、市の土地を何区画にも分けて売る。国と地方公共団体には宅建業法が適用されないので(78条1項)、市に免許はいりません。
  5. ひっかけやすい例:ある市から頼まれて、ゆうとさんがその土地の売買を媒介する。市は免許がいらなくても、媒介をくり返し行うゆうとさんは宅建業者として免許がいります。「相手が市だから不要」ではありません。
  6. ひっかけやすい例:ゆうとさんが、愛知県知事の免許のまま、岐阜市に支店を出そうとしている。知事免許の業者が2つの県に事務所を持つことになるので、大臣の免許への免許換えが必要です(7条1項3号)。事務所が増えたことの変更の届出(9条)ですませることはできません。

似ているルールとの違い

知事免許と大臣免許は、くれる人が違うだけで、できることの範囲は同じです。知事免許でも、ほかの県の物件を扱えます。違いは「事務所がどこにあるか」だけです。

項目知事免許大臣免許
事務所の場所1つの都道府県だけ2つ以上の都道府県
有効期間5年5年
更新の申請満了の90日前〜30日前満了の90日前〜30日前
物件の場所の制限条文上の制限なし条文上の制限なし

もう一つ、宅建業者の「免許」と、宅建士の「登録」はまったく別のものです。免許は会社や個人が宅建業を営むためのもの、登録は試験に合格した人が宅建士になるためのものです。有効期間も、業者の免許は5年、宅建士証も5年ですが、登録そのものに有効期間を定めた条文は見当たりません。宅建士の側は宅建士の登録と宅建士証をわかりやすくで説明しています。

試験ではここをまちがえやすい

免許は宅建試験の宅建業法で問われやすいテーマです。次の型に注意します。

  • 「自ら貸借」の扱い:自分で貸す・また貸しする人に免許がいるかのように書く形。貸借が宅建業になるのは代理・媒介のときだけです(2条2号)。
  • 相手方による判断のすりかえ:「相手が国や市だから業者も免許不要」とする形。免除されるのは国・地方公共団体自身です(78条1項)。
  • 免許権者の取りちがえ:物件の場所や営業の範囲で決まるかのように書く形。決め手は事務所の場所です(3条1項)。
  • 期間の数字:有効期間5年、更新は満了の90日前から30日前まで、変更の届出と廃業等の届出は30日以内。廃業等の届出は、死亡だけが「知った日から」です。
  • 届け出る人:合併で消えた法人は「消えた側の代表役員だった人」、破産は「破産管財人」、それ以外の解散は「清算人」。入れかえた選択肢に注意します。
  • 無免許の範囲:実際に取引をしなくても、宅建業を営む旨の表示や広告をするだけで12条2項違反になります。

宅建試験は、試験を行う年度の4月1日現在で施行されている法令から出題されます(不動産適正取引推進機構の試験概要)。宅建業法の分野が試験全体でどんな位置にあるかは宅建試験の科目と出題範囲で確かめてください。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
自分が持っているマンション10部屋を、自分で多くの人にくり返し貸す人は、宅建業の免許を受けなければならない。

答え:✕
宅建業に入る「貸借」は、代理と媒介のときだけです(2条2号)。自分で貸すことは、何部屋をくり返し貸しても宅建業にあたらず、免許はいりません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
愛知県だけに事務所を持つ知事免許の業者は、岐阜県にある土地の売買を媒介することができない。

答え:✕
免許をくれる人は事務所の場所で決まります(3条1項)。扱える物件の場所を知事免許の都道府県に限る条文はないので、岐阜県の土地の媒介もできます。岐阜県に事務所を置くなら、大臣免許への免許換えが必要です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
個人で宅建業を営んでいた人が亡くなったときは、その相続人が、亡くなったことを知った日から30日以内に届け出なければならない。

答え:○
11条1項1号のとおりです。死亡の場合だけ、30日を「その事実を知った日」から数えます。ほかの廃業等の届出は「その日」から30日以内です。

まとめ

  • 宅建業=宅地・建物の売買・交換を自分で行うこと、または売買・交換・貸借の代理・媒介を、業として行うこと。自分で貸すのは入らない。
  • 事務所が1つの都道府県だけなら知事、2つ以上なら国土交通大臣の免許。有効期間は5年。
  • 更新の申請は満了の90日前から30日前まで。変更の届出・廃業等の届出は30日以内。
  • 国・地方公共団体は宅建業法の適用外。信託会社は届出で大臣免許の業者とみなされる。
  • 無免許の営業・表示・広告と名義貸しは禁止。

このサイトで次に読むなら、免許を取ったあと店を開ける前に必要なお金の仕組みを扱う営業保証金と保証協会をわかりやすくがおすすめです。免許と営業保証金はセットで問われやすいので、続けて読むと流れがつかめます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)