借地借家法をわかりやすく:借地と借家で守られること・定期借地と定期借家

借地借家法(しゃくちしゃっかほう)は、家を建てるために土地を借りる「借地」と、家や部屋を借りる「借家」で、借りる人を民法より手厚く守る法律です。借地は最低30年続きます。借家は、貸す人に「正当の事由(せいとうのじゆう=追い出してもしかたがないと言える理由)」がなければ終わらせられません。

もう一つの柱が「対抗力(たいこうりょく)」です。借地なら「自分の名前で登記した建物」、借家なら「引渡し(かぎを受け取って住み始めること)」があれば、持ち主が変わっても「ここを借りています」と言い張れます。

この記事では、宅建試験の権利関係で出やすい「期間・更新・対抗力・買取請求・定期の契約」を扱います。家賃の増額・減額の請求や、借地上の建物を売るときの裁判所の許可などは扱いません。条文は令和8年4月1日時点のものです。民法の賃貸借の基本(敷金・転貸・修繕)は賃貸借の記事にまとめています。

身近な例で考えると

登場人物を紹介します。

人物立場したこと
けんじさん土地を借りる人借りた土地に家を建てた
まつおさん地主けんじさんに土地を貸した
たなかさん土地を買った人まつおさんから土地を買った
あおいさん部屋を借りる人ふじたさんのマンションの一室に住む
ふじたさん大家あおいさんに部屋を貸した

借地の場面です。

  1. けんじさんは、まつおさんの土地を「家を建てるため」に借りました。期間は決めませんでした。
  2. けんじさんは家を建て、家を「けんじさん名義」で登記しました。土地を借りる権利(借地権)の登記はしていません。
  3. まつおさんが、土地をたなかさんに売りました。
  4. たなかさんは「土地はもう私のもの。出ていって」と言います。

けんじさんは出ていく必要はありません。自分の名前で登記した家があるからです。これで、借地権(しゃくちけん=家を建てるために土地を借りる権利)を、たなかさんに対抗(たいこう=「この土地を借りている」と言い張ること)できます。また、期間を決めなかったので、借地権は30年続きます。

借家の場面です。

  1. あおいさんは、ふじたさんの部屋を2年契約で借り、かぎを受け取って住み始めました。
  2. 期間が終わる8か月前、ふじたさんが「子どもが住むので、更新しません」と通知しました。
  3. 借家では、更新を断るのに「正当の事由」が必要です。ふじたさんの事情だけでは決まりません。あおいさんの事情や、立ち退き料(引っこしのためのお金)を払うという申し出なども合わせて判断されます。

正当の事由がないと、契約は同じ条件で更新されたことになります。たとえるなら、借家の契約は「自動で延長される定期券」のようなものです。ただし本物のルールでは、更新された後は期間の定めがない契約になります。そこが定期券とは違います。

条文ではこう決まっている

借地のルール(借地借家法 第2章)

  • 借地権とは(2条1号):条文では「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」。地上権(ちじょうけん)も賃借権(ちんしゃくけん)も、人の土地を使う権利です。ポイントは「建物を持つため」かどうか。駐車場や資材置き場として借りるのは、借地権ではありません。
  • 存続期間(3条):30年。契約でもっと長く決めたときは、その期間。
  • 短い期間の約束(9条):借地権者(借りる人)に不利な特約(とくやく=契約で付けた特別な約束)は無効です。だから「10年」と決めても30年になります。
  • 更新後の期間(4条):最初の更新は20年、2回目からは10年。契約でもっと長くしてもよい。
  • 自動で続くとき(5条):期間が終わるとき、土地の上に建物があれば、借りる人が「更新して」と言うか、そのまま使い続けると、同じ条件で更新したことになる。地主がすぐに(条文では「遅滞なく」)反対すれば別。
  • 地主が反対できる条件(6条):地主の反対には正当の事由がいる。地主と借りる人のどちらが土地を必要としているか、立ち退き料の申し出などを合わせて判断する。
  • 対抗力(10条1項):借地権そのものの登記がなくても、借りる人が「自分の名前で登記した建物」を土地の上に持っていれば、第三者(契約の外の人。土地を買った人など)に対抗できる。
  • 建物が火事などでなくなったとき(10条2項):建物の情報・なくなった日・建て直すことを、土地の見やすい場所に立て札などで示せば、対抗力は続く。ただし続くのは、なくなった日から2年まで。2年を過ぎたら、それまでに建て直して登記していることが必要。
  • 建物買取請求(13条):期間が終わって更新がないとき、借りる人は地主に「この建物を時価(じか=そのときの値段)で買い取って」と請求できる。

借家のルール(借地借家法 第3章)

  • 更新(26条1項):期間を決めた借家では、期間が終わる1年前から6か月前までに「更新しません」と知らせる。知らせないと、同じ条件で更新したことになる(法定更新=法律で自動的に更新されること)。ただし、更新後は「期間の定めがない」契約になる。
  • 知らせた後も住み続けたとき(26条2項):期間が終わった後も借りる人が住み続け、貸す人がすぐに反対しなければ、やはり更新になる。
  • 解約の申入れ(27条):貸す人から「やめたい」と申し入れたときは、申入れの日から6か月たつと終わる。
  • 正当の事由(28条):貸す人からの「更新しません」の通知や解約の申入れには、正当の事由がいる。
  • 1年未満の期間(29条1項):期間を1年未満と決めた借家は、「期間の定めがない」借家として扱う。
  • 対抗力(31条):登記がなくても、建物の引渡しを受けていれば、その後に建物を買った人などに「借りています」と言える。
  • 造作買取請求(33条):貸す人の同意を得て取り付けた畳・建具(たてぐ=ふすまや戸)などの造作(ぞうさく)は、契約が終わるときに時価で買い取ってもらうよう請求できる。
  • 定期建物賃貸借(38条1項):公正証書(こうせいしょうしょ=公証人という専門家が作る公的な文書)などの書面で契約するときに限り、「更新しない」と決められる。

借地にも借家にも、借りる人に不利な特約を無効にする条文があります(借地は9条・16条、借家は30条・37条)。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる:けんじさんが土地を「10年」の約束で借りて家を建てた場合、10年の部分は借地権者に不利なので無効になり、期間は30年になります。
  • 当てはまらない(建物が目的でない):月極駐車場として土地を借りた場合は、建物の所有が目的ではないので借地借家法は使えません。民法の賃貸借のルールになり、期間の上限は50年です(民法604条)。
  • 当てはまらない(一時使用):工事の間だけ仮設の事務所を置くために土地を借りる場合です。このように一時的に使うだけだとはっきりしている借地には、存続期間・更新・建物買取請求などの条文が使われません(25条)。借家でも、一時的に使うだけだとはっきりしていれば、借家のルール(第3章)全体が使われません(40条)。
  • ひっかけやすい(建物の登記がない):10条の対抗力は「借地権者が登記されている建物」を持っていることが条件です。家を建てても登記をしていなければ、借地権の登記もない限り、土地を買った人に対抗できません。
  • ひっかけやすい(借りる人からの解約):期間の定めがない借家を、借りる人のほうからやめるときは、民法617条により申入れから3か月で終わります。6か月と正当の事由が必要なのは、貸す人から申し入れるときだけです。
  • ひっかけやすい(造作買取請求をなくす特約):借りる人に不利な特約を無効にする37条は、33条(造作買取請求)を挙げていません。そのため「造作の買取りは請求しない」という特約は有効です。これに対して、借地の建物買取請求(13条)をなくす特約は、16条で無効です。

似ているルールとの違い

まず、借地と借家の比べです。

項目借地借家
期間最低30年(定めなしも30年)上限なし。1年未満は定めなし扱い
終わらせる条件地主の異議に正当の事由貸す人の通知・解約に正当の事由
対抗の方法自分名義で登記した建物建物の引渡し
終わるとき建物買取請求造作買取請求(特約でなくせる)

次に、更新がない「定期」の契約です。

種類期間主な条件
一般定期借地権(22条)50年以上書面か電子データ(公正証書でなくてよい)
事業用定期借地権等(23条)10年以上50年未満事業用の建物だけ(住まいは不可)。公正証書
建物譲渡特約付借地権(24条)30年以上30年以上たったら建物を地主に売る約束
定期建物賃貸借(38条)1年未満も可書面か電子データ+前もって書面で説明

契約の形のちがいも出ます。事業用定期借地権等は、公正証書でなければなりません(23条3項)。一般定期借地権は、条文が「公正証書による等書面」なので、公正証書でなくても書面ならかまいません。建物譲渡特約付借地権には、書面でしなければならないという定めがありません。

定期建物賃貸借(定期借家)には、次の決まりもあります。

  • 契約の前に、「更新がなく、期間が終わったら終わる」と書いた書面を渡して説明する(38条3項)。
  • この説明をしなかったら、「更新しない」という約束は無効になる(38条5項)。ふつうの借家と同じ扱いです。
  • 期間が1年以上なら、貸す人は期間が終わる1年前から6か月前までに「もうすぐ終わります」と知らせる。知らせないと、終わったことを借りる人に言えない(38条6項)。
  • 床面積200平方メートル未満の住まいなら、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情があるとき、借りる人から解約を申し入れて1か月で終わらせられる(38条7項)。

試験ではここをまちがえやすい

宅建試験の権利関係では、民法と借地借家法を比べる形で問われやすい論点です。行政書士試験の民法でも賃貸借は出ますが、借地借家法そのものは宅建で中心になります。

  • 数字の入れかえ:借地は30年・20年・10年、一般定期借地権は50年以上、事業用は10年以上50年未満、建物譲渡特約付は30年以上。借家の通知は「1年前から6か月前まで」、貸す人の解約申入れは6か月、定期借家の中途解約は1か月。
  • 対抗力の方法の入れかえ:借地は「建物の登記」、借家は「引渡し」。借地を「土地の引渡しで対抗できる」とする文は誤りです。
  • 更新後の期間:借家が法定更新されると「期間の定めがない」契約になります。前と同じ2年になるわけではありません。
  • 公正証書の要否:公正証書が必須なのは事業用定期借地権等だけです。定期建物賃貸借は書面であればよく、公正証書に限りません。
  • 定期借家の1年未満:ふつうの借家では、1年未満の期間は「期間の定めがない」扱いになります。定期建物賃貸借では29条1項が使われないので、6か月などの短い期間も決められます。
  • 買取請求の特約:造作買取請求をなくす特約は有効、建物買取請求をなくす特約は無効。

借地の上の家を担保にお金を借りる話は抵当権の記事にあります。登記がないと「自分のもの」と言い張れない一般のルールは177条の記事です。あわせて読むと、借地借家法の対抗力がどれだけ特別かが見えてきます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題):けんじさんは、家を建てる目的で、まつおさんから土地を期間20年の約束で借りた。この借地権の存続期間は20年である。

答え:✕。借地権の存続期間は30年です(3条)。30年より短い期間の約束は、借地権者に不利なので無効になります(9条)。

問2(このサイトのオリジナル問題):あおいさんがふじたさんから部屋を借りてかぎを受け取り、住み始めた。その後ふじたさんが建物を売った場合、賃借権の登記がなければ、あおいさんは買った人に賃貸借を主張できない。

答え:✕。建物の賃貸借は、登記がなくても、建物の引渡しがあれば、その後に建物を買った人に効力を主張できます(31条)。

問3(このサイトのオリジナル問題):コンビニの店舗を建てるために、期間15年で事業用定期借地権を設定する契約は、公正証書でしなければならない。

答え:○。コンビニの店舗は、事業だけに使う建物(住まいではない)です。期間15年なので、10年以上30年未満の事業用定期借地権に当たります(23条2項)。この契約は、公正証書でしなければなりません(23条3項)。

まとめ

  • 借地は最低30年。更新後は20年、その後は10年。更新を断るには正当の事由が必要。
  • 借家は、貸す人からの更新拒絶・解約に正当の事由が必要。解約申入れから6か月で終わる。1年未満の期間は期間の定めなし。
  • 対抗の方法は、借地が「自分名義で登記した建物」、借家が「引渡し」。
  • 公正証書が必須なのは事業用定期借地権等だけ。定期借家は書面と事前の書面での説明。
  • 建物買取請求をなくす特約は無効、造作買取請求をなくす特約は有効。

権利関係の全体の中で借地借家法をどの順番で勉強するかは宅建試験の科目と出題範囲で、宅建業者が借主に説明する事項との関係は重要事項説明の記事で確かめられます。民法の賃貸借があやふやなら、先に賃貸借の記事を読むと、どこが特別ルールなのかがはっきりします。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容をe-Gov法令検索で確かめました。