不動産取得税(ふどうさんしゅとくぜい)は、土地や建物を手に入れたときに1回だけ、都道府県に納める税金です。固定資産税(こていしさんぜい)は、土地や建物を持っている間、毎年、市町村に納める税金です。どちらも地方税法で決まっていて、住宅や住宅の土地には税を軽くする特例があります。
この記事では、この2つの税の仕組みと、宅建試験で問われやすい数字(税率・免税点・特例)を扱います。登録免許税・印紙税・所得税(売ったときの税や住宅ローンの控除)・都市計画税は扱いません。数字は、令和8年度の宅建試験の基準となる令和8年4月1日時点の地方税法と施行令で確かめました。
身近な例で考えると
登場人物は3人です。新築の一戸建てを買う会社員のけんたさん、親から土地を相続するみゆきさん、けんたさんに中古の家を売ることになるたかしさんです。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| けんたさん | 会社員 | 新築の家と土地を買う |
| みゆきさん | 相続人 | 親の土地を相続する |
| たかしさん | 家の持ち主 | 年の途中で家を売る |
けんたさんが家を買ったとき(不動産取得税)
けんたさんは、新築の家と、その土地を買いました。すると、家と土地のある都道府県から、不動産取得税がかかります。税金の計算のもとになる金額(課税標準=かぜいひょうじゅん)は、買った値段ではなく、不動産の「価格」です。総務省の説明では、固定資産課税台帳に登録された評価額がこれにあたります。
新築の住宅なので、価格から1,200万円を差し引けます。たとえば家の価格が1,500万円なら、差し引いた残りは300万円です。住宅の税率は、特例で3%(令和9年3月31日までの取得)です。300万円×3%=9万円が、家の分の税額になります(このサイトで作った計算例。土地の分は別に計算します)。
みゆきさんが土地を相続したとき
みゆきさんは、亡くなった親の土地を相続しました。相続で手に入れた不動産には、不動産取得税はかかりません。ただし、土地を持ち続けるので、固定資産税はかかります。
たかしさんが年の途中で家を売ったとき(固定資産税)
- 1月1日:家の持ち主として登記されているのは、たかしさん。
- 3月:たかしさんが、けんたさんに家を売る。
- その年度の固定資産税:市町村が課税するのは、1月1日の持ち主であるたかしさん。
固定資産税は、毎年1月1日の時点で「だれが持ち主か」を見て、その年度の分をまとめて課税します。たとえるなら、クラスの名簿を1月1日に一度だけ作り、その名簿の人に1年分の係を割り当てるイメージです。ただし本物のルールでは、売る人と買う人が契約で「持っていた日数で分け合う」と決めることはあります。それは2人の間の取り決めで、市町村が課税する相手は変わりません。
条文ではこう決まっている
不動産取得税(地方税法73条の2〜)
- だれが・だれに:不動産のある都道府県が、不動産を取得した人に課す(73条の2第1項)。
- かからないもの:相続による取得(73条の7第1号)。遺言で財産をまとめて渡す「包括遺贈(ほうかついぞう)」と、相続人への遺贈(いぞう=遺言であげること)も含みます。会社の合併などによる取得もかかりません(同条2号)。
- 課税標準:「不動産を取得した時における不動産の価格」(73条の13第1項)。
- 宅地の特例:宅地評価土地(宅地と、宅地に準じて評価される土地)を令和9年3月31日までに取得したときは、課税標準を価格の2分の1にする(附則11条の5)。
- 税率:標準税率は4%(73条の15)。住宅と土地は、令和9年3月31日までの取得なら3%(附則11条の2)。店などの住宅でない建物は4%のまま。
- 免税点(めんぜいてん=この金額に届かなければ課税しない):課税標準が次の額に届かないときは、課税できない(73条の15の2第1項)。土地は16万円。家を建てた(建築)ときは1戸66万円。売買などそのほかの方法で建物を取得したときは1戸34万円。
- 新築住宅の控除:一定の新築住宅は、価格から1,200万円を控除する(73条の14第1項)。対象の床面積は、令和8年4月1日時点の施行令で40㎡以上240㎡以下(地方税法施行令37条の16)。
- 中古住宅の控除:個人が自分で住む、耐震基準に合った既存住宅を取得したとき。控除額は、その住宅が新築されたときの規定で決まっていた額(73条の14第3項)。
- 住宅の土地の減額:住宅のための土地で、条文の期間の要件を満たすときの特例です(73条の24第1項)。「150万円」と「1㎡あたりの額×住宅の床面積の2倍(200㎡が上限)」の多いほうに税率をかけます。その額を税額から減らします。
住宅の控除は、都道府県の条例で決めた方法で申告することが前提です(73条の14第4項)。
令和8年4月から変わった数字に注意:令和8年度の改正(令和8年法律第2号など)で、次の数字が変わりました。古い教材の数字と違うので気をつけてください。
- 不動産取得税の免税点:令和8年3月31日までの版では、土地10万円・建築23万円・そのほか12万円でした(e-Gov の改正前の条文と愛知県の案内で確認)。
- 新築住宅の1,200万円控除の床面積:改正前の施行令は50㎡以上(貸家の共同住宅などは40㎡以上)240㎡以下でした。令和8年4月1日の版では、どちらも40㎡以上240㎡以下です。
なお、固定資産税の新築住宅の減額は、令和8年4月1日の版で「令和13年3月31日までに新築された住宅」が対象です(附則15条の6)。期限は改正で延びることがあるので、年度ごとに確かめてください。
固定資産税(地方税法342条〜)
- だれが:固定資産のある市町村が課す(342条1項)。対象は土地・家屋・償却資産(しょうきゃくしさん=会社やお店が仕事に使う機械や設備など)。
- だれに:固定資産の所有者。土地・家屋では、登記簿などに所有者として登記・登録されている人(343条1項・2項)。ただし、質権や、100年より長い期間の地上権がついた土地は、質権者・地上権者に課す(343条1項かっこ書き)。
- いつの時点で:賦課期日(ふかきじつ=だれに課税するかを決める日)は、その年度が始まる年の1月1日(359条)。
- 税率:標準税率は1.4%(350条1項)。標準税率は「ふつうはこの率」という目安で、実際の率は市町村が条例で決めます。
- 免税点:同じ人がその市町村に持つものの課税標準の合計が、次の額に届かないときは課税できない(351条)。土地30万円、家屋20万円、償却資産150万円。
- 住宅用地の特例:住宅の敷地は課税標準を価格の3分の1に。そのうち200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は6分の1に(349条の3の2)。
- 新築住宅の減額:令和13年3月31日までに新築された住宅は、新たに課税される年度から3年度分、税額を2分の1に減らす。火事に強い3階建て以上のマンションなど(中高層耐火建築物)は5年度分(附則15条の6第1項・2項)。減らす対象は床面積120㎡分まで(地方税法施行令附則12条4項)。
- 納める時期:4月・7月・12月・2月の中で、市町村の条例で決める。特別な事情があれば別の納期もできる(362条1項)。
総務省の説明では、固定資産税の免税点は令和9年度分から家屋30万円・償却資産180万円に変わります。令和8年4月1日時点ではまだ施行されていないので、令和8年度の試験の前提は上の20万円・150万円です。
当てはまる例・当てはまらない例
当てはまる例
- 親から土地をもらった(贈与):みゆきさんが、親が生きているうちに土地をもらう。相続ではなく贈与なので、不動産取得税の非課税(73条の7)にはあたりません。課税されます。
- 新築のアパートを建てた:けんたさんが、人に貸すためのアパートを新築する。新築住宅の1,200万円控除は、条文上「自分で住むこと」を条件にしていません。床面積などの要件を満たせば使えます。
- 家と庭の土地300㎡:一戸建ての敷地が300㎡なら、200㎡までの部分は固定資産税の課税標準が6分の1、残りの100㎡は3分の1です。
当てはまらない例
- 相続した土地:みゆきさんの相続には、不動産取得税はかかりません(73条の7第1号)。
- 会社が中古住宅を買った:中古住宅の控除は「個人が自分で住む」場合だけです。会社が社宅にするために買っても、この控除は使えません。
- 店舗の建物を買った:住宅でない建物には、税率3%の特例はありません。不動産取得税は4%で計算します。
ひっかけやすい例
- 3月に買ったのに、その年度の固定資産税?:たかしさんから3月に家を買ったけんたさんは、その年度の固定資産税の納税義務者ではありません。1月1日の持ち主のたかしさんです。けんたさんに課税されるのは、次の1月1日を迎えてからの年度です。
- 1,200万円は税額から引く?:1,200万円を引くのは、税率をかける前の「価格」からです。一方、住宅の土地の減額は、計算した「税額」から減らします。どこから引くかが違います。
- 2分の1が2つ:不動産取得税の宅地の特例は「課税標準を2分の1」。固定資産税の新築住宅の減額は「税額を2分の1」。同じ2分の1でも、かける場所が違います。
不動産取得税と固定資産税はどこが違うか
| 比べる点 | 不動産取得税 | 固定資産税 |
|---|---|---|
| 課す役所 | 都道府県 | 市町村 |
| かかるとき | 取得したとき1回 | 持っている間毎年 |
| 納める人 | 取得した人 | 1月1日の所有者 |
| 標準税率 | 4%(住宅・土地は特例3%) | 1.4% |
| 免税点(土地) | 16万円 | 30万円 |
| 免税点(建物) | 建築66万円・そのほか34万円 | 20万円 |
| 宅地・住宅用地 | 課税標準を2分の1 | 3分の1(200㎡以下は6分の1) |
| 新築住宅 | 価格から1,200万円控除 | 税額を2分の1(3年度・5年度) |
相続で家を受け継いだときの不動産取得税は非課税ですが、相続そのもののルール(だれがどれだけ受け継ぐか)は民法の話です。くわしくは相続の記事で扱っています。
宅建試験ではここをまちがえやすい
宅建試験の出題範囲には「宅地及び建物についての税に関する法令」が入っています(宅建業法施行規則8条4号)。行政書士試験の中心となる範囲ではありません。宅建では、次のような入れ替えの形で問われやすいといえます。
- 課す役所の入れ替え:不動産取得税は都道府県、固定資産税は市町村。
- 非課税の範囲を広げる:相続・法人の合併は非課税。贈与・売買・交換は課税。
- 古い免税点:不動産取得税の免税点は、令和8年4月1日以後の取得から土地16万円・建築66万円・そのほか34万円。
- 中古住宅の控除を法人にも広げる:中古は「個人が自分で住む」場合だけ。新築にはこの条件がありません。
- 年の途中の売買:固定資産税は1月1日の所有者に1年度分。
- 分数の入れ替え:住宅用地は3分の1、200㎡以下の部分は6分の1。新築住宅の減額は税額の2分の1。
- 例外の納税義務者:質権や100年より長い地上権がついた土地は、所有者ではなく質権者・地上権者に課税。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題) 親が亡くなり、子が親の土地を相続した。この土地の取得には、不動産取得税は課されない。
答え:○ 相続による不動産の取得は、都道府県が不動産取得税を課すことができないものに入っています(地方税法73条の7第1号)。
問2(このサイトのオリジナル問題) 1月1日に家の所有者として登記されていたたかしさんが、3月にけんたさんへ家を売った。この年度の固定資産税を納める義務があるのは、けんたさんである。
答え:✕ 賦課期日は1月1日です(359条)。その日に所有者として登記されていたたかしさんが、その年度の納税義務者(税金を納める義務がある人)です(343条)。
問3(このサイトのオリジナル問題) 不動産取得税の新築住宅の1,200万円控除は、個人が自分で住むための住宅を新築した場合に限られる。
答え:✕ 新築住宅の控除(73条の14第1項)には、「個人」「自分で住む」という条件はありません。この条件があるのは中古住宅の控除(同条3項)です。
まとめ
- 不動産取得税=都道府県・取得したとき1回・標準税率4%(住宅と土地は令和9年3月31日まで3%)。相続は非課税。
- 不動産取得税の免税点は、令和8年4月1日以後の取得から土地16万円・建築66万円・そのほか34万円。
- 新築住宅は価格から1,200万円控除。中古住宅の控除は個人が自分で住む場合だけ。
- 固定資産税=市町村・毎年・1月1日の所有者・標準税率1.4%・免税点は土地30万円、家屋20万円。
- 住宅用地は課税標準3分の1(200㎡以下は6分の1)。新築住宅は税額2分の1を3年度分(中高層耐火は5年度分)、120㎡分まで。
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