建ぺい率と容積率をわかりやすく:計算のしかたと角地・防火地域の緩和

建ぺい率(けんぺいりつ)は「敷地の広さに対して、建物を真上から見た面積(建築面積)がどれだけか」の上限です(建築基準法53条)。容積率(ようせきりつ)は「敷地の広さに対して、各階の床面積の合計(延べ面積)がどれだけか」の上限です(52条)。上限の数字は、用途地域ごとに都市計画で決まります。

宅建試験の計算で大事なのは2点です。容積率は、前の道路の幅が12メートル未満なら「道路の幅×4/10(住居系)または×6/10(それ以外)」と比べて小さいほう。建ぺい率は、角地や防火地域で1/10ずつ増える。

この記事では、計算に必要な条文と、検算つきの例題を扱います。高さの制限(斜線制限など)は扱いません。条文は令和8年4月1日時点のものです。

身近な例で考えると

登場人物は2人です。家を建てたい人=なつみさん、設計を頼まれた建築士=だいすけさんです。

なつみさんが買った土地の条件は次のとおりです。

  • 敷地の広さ:200平方メートル
  • 用途地域:第一種住居地域
  • 都市計画で決められた建ぺい率:6/10(60%)、容積率:30/10(300%)
  • 前面道路の幅:5メートル

だいすけさんの計算を順に見ます。

  1. 建築面積の上限:200平方メートル×6/10=120平方メートル。真上から見て120平方メートルまでの建物にできます。
  2. 容積率の上限:前面道路が12メートル未満なので、道路の幅で計算した数字と比べます。第一種住居地域は住居系なので、5メートル×4/10=20/10(200%)。都市計画の30/10より小さいので、20/10が使われます。
  3. 延べ面積の上限:200平方メートル×20/10=400平方メートル。たとえば1階120平方メートル・2階120平方メートル・3階120平方メートルで計360平方メートルなら、建ぺい率も容積率も守れています。

建ぺい率は「庭やすき間をどれだけ残すか」、容積率は「どれだけ高く積み上げられるか」の決まり、とたとえられます。ただし本物のルールでは、容積率は高さそのものではなく床面積の合計で決まります。高さは別の制限で決まります。

条文ではこう決まっている

建ぺい率(53条)

  • 1項:建ぺい率は、用途地域ごとに決められた数値のうち、都市計画で定めたものを超えてはならない。
  • 2項:敷地が建ぺい率の違う地域にまたがるときは、それぞれの地域の数値に、その地域にある部分の割合をかけて合計する。
  • 3項:次のどちらかに当てはまれば1/10を加え、両方なら2/10を加える。
  • 3項の①(火事に強い建物):防火地域(建ぺい率8/10の地域を除く)にある耐火建築物等。または、準防火地域にある耐火建築物等・準耐火建築物等。防火地域・準防火地域は、火事が広がらないように特に注意する地域です。耐火建築物等は火事にとても強い建物、準耐火建築物等はそれに次ぐ建物です。
  • 3項の②(角地):街区(がいく=道路に囲まれた一区画)の角にある敷地や、これに近い敷地で、特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=建築の許可などをする自治体)が指定したもの。
  • 6項:次の建物には建ぺい率の制限を使わない。①建ぺい率8/10の地域で、防火地域にある耐火建築物等。②巡査派出所・公衆便所など。③公園・広場・道路・川などの中にある建物で、特定行政庁が許可したもの。

容積率(52条)

  • 1項:容積率は、用途地域ごとに決められた数値のうち、都市計画で定めたものを超えてはならない。
  • 2項:前面道路(敷地が面している道路。2本以上あるときは最も広いもの)の幅が12メートル未満なら、「道路の幅のメートル数×次の数値」以下にもしなければならない。
  • 2項の数値:低層住居専用地域・田園住居地域・中高層住居専用地域・第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域(住居系)は4/10。それ以外は6/10。特定行政庁が指定した区域では、住居系が6/10、それ以外が4/10または8/10になる。
  • 3項:地階(ちかい=地下の階)で、天井が地面から1メートル以下の高さにあるものは、住宅や老人ホームなどに使う部分なら、延べ面積に入れない。ただし入れなくてよいのは、建物の住宅・老人ホームなどの部分の床面積の合計の1/3まで。
  • 6項:エレベーターの昇降路(しょうこうろ=かごが上下する縦の通り道)や、マンションなどの共同住宅・老人ホームなどの共用の廊下・階段は、延べ面積に入れない。
  • 7項:敷地が容積率の違う地域にまたがるときは、建ぺい率と同じく、面積の割合をかけて合計する。

用途地域ごとの数値(52条1項・53条1項の主なもの)

用途地域建ぺい率容積率
低層住居専用・田園住居3/10〜6/105/10〜20/10
中高層住居専用3/10〜6/1010/10〜50/10
第一種・第二種住居、準住居5/10・6/10・8/1010/10〜50/10
近隣商業6/10・8/1010/10〜50/10
商業8/1020/10〜130/10
準工業5/10・6/10・8/1010/10〜50/10
工業5/10・6/1010/10〜40/10
工業専用3/10〜6/1010/10〜40/10

例題で計算してみる(検算つき)

例題1(緩和が重なる):なつみさんの土地について、次の3つの条件を足してみます。

  • 道路が2本(5メートルと4メートル)あり、特定行政庁が角地に指定している。
  • 準防火地域にある。
  • 耐火建築物等を建てる。

建ぺい率は、6/10+1/10(角地)+1/10(準防火地域の耐火建築物等)=8/10です。建築面積の上限は、200平方メートル×8/10=160平方メートル。検算:200×0.6=120。120+20(角地の分)+20(準防火の分)=160。

容積率は、道路が2本なら広いほうの5メートルで計算します。5×4/10=20/10のままなので、延べ面積の上限は400平方メートルで変わりません。角地や防火地域の1/10の加算は、建ぺい率だけのルールです。

例題2(道路が広いとき):同じ土地で、前面道路が8メートルなら、8メートル×4/10=32/10。都市計画の30/10のほうが小さいので、30/10が使われます。延べ面積の上限は200平方メートル×30/10=600平方メートルです。検算:0.4×8=3.2で3.0より大きいので、小さいほうの3.0。200×3.0=600。

例題3(制限がなくなる):商業地域(建ぺい率8/10)で、防火地域にある100平方メートルの敷地に耐火建築物等を建てます。53条6項1号により建ぺい率の制限を使わないので、建築面積は100平方メートル(敷地いっぱい)まで可能です。もし近隣商業地域で建ぺい率が6/10と決められた所なら、制限はなくならず、6/10+1/10=7/10、70平方メートルまでになります。

例題4(敷地が二つの地域にまたがる):敷地300平方メートルのうち、200平方メートルが近隣商業地域(建ぺい率8/10・容積率40/10)、100平方メートルが第一種住居地域(建ぺい率6/10・容積率20/10)にあります。前面道路の幅は6メートルです。道路がどちらの地域の側にあっても、この6メートルを両方の部分の計算に使います。

  • 建築面積の上限:200×8/10+100×6/10=160+60=220平方メートル。
  • 容積率は、地域ごとに道路の数字と比べてから合計します。近隣商業地域は6×6/10=36/10で、40/10より小さいので36/10。第一種住居地域は6×4/10=24/10で、20/10より大きいので20/10。
  • 延べ面積の上限:200×36/10+100×20/10=720+200=920平方メートル。

検算:割合で計算すると、建ぺい率は8/10×2/3+6/10×1/3=22/30。300×22/30=220で一致します。容積率は36/10×2/3+20/10×1/3=92/30。300×92/30=920で一致します。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる(角地の加算):特定行政庁が角地として指定した敷地なら、建ぺい率に1/10を加えます(例題1)。
  • 当てはまらない(角地でも指定がない):交差点の角にあっても、特定行政庁の指定がなければ加算はありません。条文は「特定行政庁が指定するもの」と書いています。
  • 当てはまらない(防火地域でも耐火でない):防火地域にあっても、建てる建物が耐火建築物等でなければ、建ぺい率の加算はありません。
  • ひっかけやすい(建ぺい率8/10の地域で防火地域):8/10の地域では「1/10加算して9/10」ではなく、防火地域の耐火建築物等なら制限そのものがなくなります(6項1号)。逆に、8/10以外の地域で防火地域の耐火建築物等なら、制限はなくならず1/10の加算です。
  • ひっかけやすい(容積率は道路で減ることがある):都市計画で30/10と決まっていても、それが上限とは限りません。前面道路が12メートル未満なら道路の幅でも計算し、小さいほうが上限です(なつみさんの例)。建ぺい率には前面道路による制限はありません。

似ているルールとの違い

比べる点建ぺい率容積率
何の割合か建築面積÷敷地面積延べ面積÷敷地面積
前面道路の影響なし12m未満なら道路の幅×4/10など
緩和角地・防火地域などで1/10加算地階の住宅・共用廊下などを入れない
2地域にまたがる面積の割合で合計面積の割合で合計

ここで注意したいのは、建物の用途の制限(どんな建物を建ててよいか)との違いです。敷地が二つの用途地域にまたがるとき、用途の制限は敷地の過半が属する地域のルールが敷地全体に使われます(91条)。一方、建ぺい率と容積率は91条の対象から外されていて、面積の割合で計算します。用途の制限は用途地域の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

宅建試験の法令上の制限では、数字を当てはめる計算と、「緩和される・されない」の文章の両方で問われやすい論点です。

  • 道路の数字の掛け算:住居系は4/10、それ以外(近隣商業・商業・準工業・工業・工業専用)は6/10。近隣商業地域を住居系とまちがえやすいので注意します。
  • 道路が2本:容積率で使うのは、最も広い前面道路の幅です。
  • 小さいほうを使う:都市計画の容積率と、道路の幅で計算した数字を比べて、小さいほう。
  • またがる敷地の容積率:地域ごとに道路の数字と比べてから、面積の割合で合計します。合計した後で道路と比べると、答えがずれることがあります。
  • 緩和の条件:角地は「特定行政庁の指定」が必要。防火地域は「耐火建築物等」、準防火地域は「耐火建築物等または準耐火建築物等」が条件。
  • 延べ面積に入れない部分:地階の住宅・老人ホームなどの部分は1/3まで。共同住宅の共用の廊下・階段とエレベーターの昇降路は入れない。

計算の前提になる「どの用途地域で、どんな数値が選ばれるか」をつかむには、用途地域の記事をあわせて読むと整理しやすくなります。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題):第二種住居地域(都市計画の容積率40/10)にある敷地で、前面道路の幅が7メートルのとき、容積率の上限は28/10である。

答え:○。7メートル×4/10=28/10。都市計画の40/10より小さいので、28/10が上限です(52条2項2号)。

問2(このサイトのオリジナル問題):建ぺい率が8/10と定められた近隣商業地域で、防火地域にある敷地に耐火建築物等を建てるときは、建ぺい率は9/10になる。

答え:✕。建ぺい率8/10の地域で防火地域にある耐火建築物等には、建ぺい率の制限そのものが使われません(53条6項1号)。9/10ではなく、制限なしです。

問3(このサイトのオリジナル問題):敷地150平方メートル、建ぺい率5/10の地域で、特定行政庁が指定した角地にある場合、建築面積の上限は90平方メートルである。

答え:○。5/10+1/10=6/10。150平方メートル×6/10=90平方メートルです(53条3項2号)。検算:150×0.5=75、角地の分150×0.1=15、75+15=90。

まとめ

  • 建ぺい率=建築面積÷敷地面積、容積率=延べ面積÷敷地面積。数値は用途地域ごとに都市計画で決まる。
  • 容積率は、前面道路(最も広いもの)が12m未満なら「道路の幅×4/10(住居系)・×6/10(それ以外)」と比べて小さいほう。
  • 建ぺい率は、指定された角地で1/10、防火地域の耐火建築物等(8/10の地域以外)・準防火地域の耐火・準耐火建築物等で1/10を加える。両方で2/10。
  • 建ぺい率8/10の地域の防火地域にある耐火建築物等は、建ぺい率の制限なし。
  • 敷地がまたがるときは、建ぺい率・容積率とも面積の割合で合計する(用途の制限は過半のルール)。

法令上の制限の全体像と勉強の順番は宅建試験の科目と出題範囲にまとめています。建物を建てる前の土地の造成のルールを続けて押さえたい人には、開発許可の記事がおすすめです。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容をe-Gov法令検索で確かめました。