保証と連帯保証をわかりやすく:保証人が言える2つの言い分

保証(ほしょう)は、ひとことで言うと「借りた本人が払えないときに、代わりに払うと約束すること」です。普通の保証人は、請求されても「まず本人に請求して」「まず本人の財産から取って」という2つの言い分を出せます。連帯保証人(れんたいほしょうにん)は、この2つを出せません。だから連帯保証人は、本人とほぼ同じ重さで責任を負います。

この記事では、保証の基本、2つの言い分、連帯保証との違い、書面・極度額・公正証書のルールを扱います。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

カフェを開きたいそうたさんの話で考えます。

人物立場したこと
そうたさん借りた本人(主たる債務者)300万円を借りた
こはる商店貸した人(債権者)そうたさんに貸した
ゆいさん普通の保証人公正証書を作り、書面で保証した
りくさん連帯保証人(もしもの場合)同じ手順で連帯保証した
  1. そうたさんは、カフェのコーヒーの機械を買うためのお金300万円を、こはる商店から借りました。
  2. 友人のゆいさんが、普通の保証人になりました。カフェ(事業)のための借金なので、ゆいさんは契約の前に公正証書を作り、そのうえで保証契約の書面に署名しました(公正証書のルールは後で説明します)。
  3. 返済日が来ても、そうたさんは払いません。こはる商店は、いきなりゆいさんに「300万円払って」と請求しました。
  4. ゆいさんは「まず、そうたさんに請求してください」と言えます(催告の抗弁)。
  5. こはる商店がそうたさんに請求したあとでも、ゆいさんにはもう一つの言い分があります。「そうたさんには預金があり、差し押さえるのも簡単です」と証明すれば、「先にそちらから取って」と言えます(検索の抗弁)。

もし保証人がゆいさんではなく、同じ手順で連帯保証人になったりくさんだったらどうでしょう。りくさんは、この2つの言い分を出せません。こはる商店は、そうたさんより先にりくさんへ全額を請求できます。

保証人は「本人の後ろに控える補欠」とたとえられます。ただし本物のルールでは、補欠でも払う金額は本人と同じ全額です。普通の保証人と連帯保証人の違いは、「払う順番の言い分を出せるかどうか」です。

条文ではこう決まっている

保証の基本(446条〜448条・457条)

  • 446条1項:保証人は、本人が払わないときに払う責任を負う。
  • 446条2項・3項:保証契約は「書面でしなければ、その効力を生じない」。電磁的記録(でんじてききろく=電子データ)で結んだ場合も書面とみなされる。口約束の保証は効力がない。
  • 447条:保証は、利息・違約金・損害賠償など、元の借金に付いてくるものも含む。
  • 448条:保証人の負担が本人より重いときは、本人の負担まで減らされる。保証契約の後で本人の借金が重くなっても、保証人の負担は重くならない。
  • 457条1項:本人への請求などで時効の完成猶予(かんせいゆうよ=時効がしばらく完成しなくなること)や更新(こうしん=時効がゼロからやり直しになること)が起きると、保証人にも効力が及ぶ。
  • 457条2項・3項:保証人は、本人が出せる言い分(抗弁=こうべん)を使える。本人が相殺(そうさい=お互いの借りを打ち消し合うこと)・取消し・解除をできるときは、その分だけ払うのを拒める。

2つの言い分と連帯保証(452条〜454条・458条)

  • 452条(催告の抗弁=さいこくのこうべん):請求された保証人は、まず本人に催告(さいこく=支払いを求めること)するよう求められる。ただし、本人が破産手続開始の決定を受けたとき(裁判所で破産の手続が始まったとき)や、行方が分からないときは使えない。
  • 453条(検索の抗弁=けんさくのこうべん):本人に「弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であること」を保証人が証明すれば、債権者はまず本人の財産から取らなければならない。資力(しりょく)=払えるだけの財産、執行(しっこう)=裁判所の手続で差し押さえて取ること、という意味です。
  • 454条:本人と「連帯して」債務を負った保証人は、前の2条の権利を持たない。
  • 458条:連帯保証人について起きたことの効力は、連帯債務の一部の条文を当てはめて決める。当てはめるのは、438条(更改=こうかい:借金を別の約束に置きかえること)、439条1項(相殺)、440条(混同=こんどう:貸した人と払う人が同じ人になること)、441条。
  • 441条により、それ以外のこと(たとえば連帯保証人への請求)は、原則として本人には効力が及ばない。

保証人を守る追加のルール(458条の2〜465条の10)

  • 458条の2:本人に頼まれて保証人になった人が求めたら、債権者は、本人の払い遅れの有無・残っている額・期限が来ている額を、遅滞なく教えなければならない。
  • 458条の3:本人が期限の利益(期限まで払わなくてよい立場)を失ったら、債権者は、それを知った時から2か月以内に保証人へ知らせなければならない。知らせないと、遅延損害金(ちえんそんがいきん=払いが遅れたことへの賠償のお金)の一部を保証人に請求できない。請求できないのは、期限の利益を失った時から実際に知らせるまでの分(期限の利益を失わなくても生じた分を除く)。保証人が法人(会社など)なら、このルールはない。
  • 465条の2(個人根保証契約):将来の不特定の借金をまとめて保証する契約を根保証(ねほしょう)という。個人が根保証をするときは、極度額(きょくどがく=保証する上限額)を決めないと効力が生じない。極度額の定めも書面が必要。
  • 465条の6:事業のための借金(貸金等債務)を個人が保証するときは、公正証書(こうせいしょうしょ=公証人が作る文書)が必要。契約の日の前1か月以内に作った公正証書で、保証人になる人が払う意思を示していなければ、効力が生じない。
  • 465条の9:次の人が保証人になるときは、465条の6の公正証書はいらない。借りた会社の取締役、その会社の議決権(株主総会で投票する権利)の過半数を持つ人、本人と共同で事業をする人、本人の事業に現に従事している配偶者など。
  • 465条の10:事業のための債務(借金に限らない)の保証を個人に頼むとき、本人は自分の財産や収支の状況などを説明しなければならない。説明しなかったり、事実と違う説明をしたりして、保証人が誤解したとする。債権者がそれを知っていたか、知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消せる。

当てはまる例・当てはまらない例

例1(当てはまる例):本人に預金があるのに保証人へ請求された

そうたさんの銀行預金は500万円あり、差し押さえも簡単です。普通の保証人のゆいさんは、それを証明すれば検索の抗弁を出せます。こはる商店は先にそうたさんの預金から取らなければなりません(453条)。

例2(当てはまらない例):本人が行方不明

そうたさんが店を閉めて行方が分からなくなりました。この場合、ゆいさんは催告の抗弁を出せません(452条ただし書)。本人に請求しようがないからです。連帯保証人のりくさんなら、そもそもどちらの言い分も出せません(454条)。

例3(ひっかけやすい例):請求の効力が及ぶ向き

こはる商店が本人のそうたさんに請求すると、時効の完成猶予・更新の効力は保証人のりくさんにも及びます(457条1項)。逆に、連帯保証人のりくさんだけに請求しても、原則としてそうたさんには及びません(458条・441条)。こはる商店とそうたさんが「りくさんへの請求はそうたさんにも効く」と合意していれば、その合意に従います(441条ただし書)。向きによって結論が変わるので、ひっかけに使われやすいところです。時効の基本は時効の記事で確かめてください。

例4(当てはまる例):アパートの保証人と極度額

そうたさんがアパートを借りるとき、父親のけんじさんが保証人になりました。家賃の滞納や部屋の修理代など、これから生じる不特定の借金をまとめて保証するので、個人根保証契約です。極度額(たとえば「上限100万円」)を書面で決めていないと、保証は効力を生じません(465条の2)。賃貸借の話は賃貸借の記事につながります。

例5(ひっかけやすい例):事業の借金でも公正証書がいらない人

そうたさんが会社を作り、会社がお金を借りたとします。その会社の取締役であるそうたさん自身が保証人になるときは、公正証書はいりません(465条の9第1号)。一方、事業と関係のない友人のゆいさんが個人で保証するなら、公正証書が必要です(465条の6)。「事業の借金なら、だれが保証しても公正証書がいる」とは言えない点に注意します。

似ているルールとの違い

比べる点普通の保証連帯保証
催告の抗弁ある(452条)ない(454条)
検索の抗弁ある(453条)ない(454条)
保証人が複数のとき人数で割った額だけ負う(456条・427条)全額を請求されうる
本人への請求の効力保証人に及ぶ(457条)保証人に及ぶ(457条)
保証人への請求の効力本人に及ばない原則及ばない(458条・441条)

保証人が複数いるとき、普通の保証人は人数で割った額だけを負います(分別の利益=ぶんべつのりえき)。456条が427条を当てはめているためです。連帯保証人に分別の利益がないことは、条文に直接の言葉はありません。本人と「連帯して」債務を負うこと(454条)から導かれる考え方です。

抵当権との違いも押さえます。保証は「人」、抵当権は「物(土地や建物)」を当てにする担保です。他人の借金のために自分の土地に抵当権を付けた人(物上保証人)は、土地を失うことはあっても、それ以上を払う約束はしていません。保証人は、自分の財産全体で払う責任を負います。抵当権は抵当権の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 「保証契約は口頭でも成立する」→誤り。書面(または電磁的記録)が必要です(446条2項・3項)。
  • 「連帯保証人も検索の抗弁を出せる」→誤り(454条)。
  • 「検索の抗弁は、本人に財産があると言えば足りる」→誤り。資力があり、かつ執行が容易なことを保証人が証明する必要があります(453条)。
  • 「連帯保証人に請求すれば、本人の時効も止まる」→原則誤り。逆向き(本人への請求→保証人)は正しい。
  • 「後から本人の借金が増えたら、保証人の負担も増える」→誤り(448条2項)。
  • 「個人根保証は、極度額がなくても元本確定期日を決めればよい」→誤り。極度額がないと効力を生じません(465条の2第2項)。元本確定期日の5年・3年のルール(465条の3)は、貸金等の根保証だけに当てはまります。

行政書士試験では、保証と連帯債務の効力の違い(どの出来事が他の人に影響するか)を、条文の細かい言い回しで問うのが、問われやすい形の一つです。記述式なら「保証人が出せる言い分と、その要件」を40字にまとめる形が考えられます。

宅建試験では、アパートや事務所の賃貸借を借りるときの保証人の場面が、問われやすい形の一つです。普通の保証と連帯保証の違い、極度額がいるかどうかを、場面の中で判断できるようにしておきます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題):あやかさんがのぞみさんの借金の連帯保証人になっている。お金を貸したたかしさんが、のぞみさんに請求せずにいきなりあやかさんに全額を請求したとき、あやかさんは「まずのぞみさんに請求してほしい」と言って支払いを拒める。

答え:✕。連帯保証人は催告の抗弁を持ちません(454条)。普通の保証人なら言えます(452条)。

問2(このサイトのオリジナル問題):たかしさんが、借りた本人ののぞみさんに支払いを求めて裁判を起こした。この場合、時効の完成猶予の効力は、保証人のあやかさんにも及ぶ。

答え:○。本人への履行の請求などによる時効の完成猶予・更新は、保証人にも効力を生じます(457条1項)。

問3(このサイトのオリジナル問題):個人のあやかさんが、のぞみさんの借りるマンションの家賃などをまとめて保証する契約を書面で結んだ。極度額を決めていなくても、保証する期間を2年と決めていれば、この契約は効力を生じる。

答え:✕。個人根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません(465条の2第2項)。期間を決めても代わりにはなりません。

まとめ

  • 保証契約は書面(電磁的記録を含む)が必要(446条)。保証人の負担は本人より重くならない(448条)。
  • 普通の保証人の2つの言い分:催告の抗弁(452条)と検索の抗弁(453条)。連帯保証人にはない(454条)。
  • 本人への請求は保証人に及ぶ(457条1項)。連帯保証人への請求は原則本人に及ばない(458条・441条)。
  • 個人の根保証は極度額がないと無効(465条の2)。事業の借金の個人保証は、前1か月以内の公正証書が必要(465条の6)。取締役などは例外(465条の9)。

保証人が払うのは「本人が約束を守らなかったとき」です。約束が守られないとき債権者に何ができるかは、債務不履行と解除の記事でまとめています。期間や数字(2か月・1か月・5年・3年)を他の論点とあわせて覚えるなら、期間・数字の一覧が便利です。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点(行政書士試験・宅建試験の出題の基準日)の内容を e-Gov 法令検索で確かめています。