用途地域(ようとちいき)は、「その場所に建ててよい建物の種類」を決める13の地域です(都市計画法8条・9条)。住宅・お店・工場がごちゃまぜになって困らないようにするためのしくみです。住宅のための地域が8つ、商業の地域が2つ、工業の地域が3つあります。具体的に何を建ててよいかは、建築基準法48条と別表第二が決めています。神社・寺院、診療所、保育所、公衆浴場(個室付浴場を除く)、派出所は13地域すべてで建てられ、住宅は工業専用地域だけで建てられません。
この記事では、13種類の違いと、宅建試験で問われやすい建物の例を扱います。工場の業種ごとの細かい区分は扱いません。条文は令和8年4月1日時点のものです。
身近な例で考えると
登場人物は2人です。カフェを開きたい人=ゆいさん、相談を受けた不動産会社の担当=れんさんです。
ゆいさんは、客席つきの喫茶店(床面積100平方メートル、1階だけ)を開きたいと考えています。れんさんは、候補の土地の用途地域を順に調べます。
- 第一種低層住居専用地域の土地:喫茶店だけの建物は建てられません。建てられるのは、住まいと店を兼ねた建物で、延べ面積の半分以上が住まい、店の部分が50平方メートル以下のものです。100平方メートルの店は無理です。
- 第二種低層住居専用地域の土地:喫茶店などの一定の店は、床面積150平方メートル以内(3階以上を使わない)なら建てられます。100平方メートルなので建てられます。
- 工業専用地域の土地:飲食店は建てられません。
次に、ゆいさんが「店の上に住みたい」と言ったとします。第二種低層住居専用地域なら住宅は問題ありません。工業専用地域では住宅も建てられません。
用途地域は、学校のクラブ活動の部屋割りにたとえられます。静かな部屋(低層住居)には静かな部活だけ、にぎやかな部屋(商業)には何でも、機械を使う部屋(工業)には作業用の部活が入る、というイメージです。ただし本物のルールでは、商業地域でも危険物を扱う一定の工場は建てられません。「何でも」ではない点が違います。
条文ではこう決まっている
都市計画法9条は、13の用途地域を、それぞれの目的で定義しています。
住居系(8つ)
- 第一種低層住居専用地域(9条1項):低層住宅の良い住環境を守る。
- 第二種低層住居専用地域(2項):主として低層住宅の住環境を守る。小さな店も少し入れる。
- 第一種中高層住居専用地域(3項):中高層住宅の住環境を守る。
- 第二種中高層住居専用地域(4項):主として中高層住宅の住環境を守る。
- 第一種住居地域(5項):住居の環境を守る。
- 第二種住居地域(6項):主として住居の環境を守る。
- 準住居地域(7項):道路沿いの業務の便利さと、住環境の調和を図る。
- 田園住居地域(8項):農業の便利さを図りつつ、それと調和した低層住宅の住環境を守る。
商業系(2つ)
- 近隣商業地域(9項):近くの住民に日用品を売る商業などの便利さを図る。
- 商業地域(10項):主として商業などの便利さを図る。
工業系(3つ)
- 準工業地域(11項):主として環境を悪くするおそれのない工業の便利さを図る。
- 工業地域(12項):主として工業の便利さを図る。
- 工業専用地域(13項):工業の便利さを図る。
ペアになっている地域では、条文に「主として」が付くほうが少しゆるい(ほかの建物も入れやすい)と覚えると整理しやすくなります。ペアは、第一種低層と第二種低層、第一種中高層と第二種中高層、第一種住居と第二種住居、工業専用と工業です。
建築基準法のしくみ
- 48条:用途地域ごとに、別表第二に書かれた建物の制限を守らなければならない。ただし特定行政庁(建築の許可などをする自治体)が、住環境を害するおそれがないなどと認めて許可すれば例外になる。許可の前には、近所の人など利害関係のある人の意見を公開の場で聞き、建築審査会(けんちくしんさかい=専門家でつくる自治体の会議)の同意を得る(48条15項)。
- 別表第二の書き方:第一種低層・第二種低層・第一種中高層・田園住居の4地域は「建てられる建物」を並べています。それ以外の9地域は「建ててはならない建物」を並べています。
- 91条:敷地が二つ以上の用途地域にまたがるときは、敷地の過半が属する地域の用途の制限が、敷地全体に使われる。
都市計画法のしくみ
- 市街化区域には少なくとも用途地域を定め、市街化調整区域には原則として用途地域を定めない(13条1項7号)。
当てはまる例・当てはまらない例
主な建物と、建てられる地域・建てられない地域です(別表第二より)。
| 建物 | 建てられない地域 | ポイント |
|---|---|---|
| 住宅・共同住宅 | 工業専用 | ほかの12地域はOK |
| 神社・診療所・保育所・公衆浴場(個室付浴場を除く)・派出所 | なし | 13地域すべてOK |
| 小学校・中学校・高校 | 工業・工業専用 | 低層住居でもOK |
| 大学・病院 | 低層2つ・田園住居・工業・工業専用 | 第一種中高層からOK |
| 老人ホーム | 工業専用 | 低層住居でもOK |
| ホテル・旅館 | 低層・中高層・田園住居・工業・工業専用 | 第一種住居は3,000㎡以下 |
| 映画館・劇場 | 準住居以外の住居系・工業・工業専用 | 準住居は客席200㎡未満だけ |
| キャバレー | 商業・準工業以外のすべて | 近隣商業でも不可 |
| 個室付浴場 | 商業以外のすべて | 商業地域だけ |
店や飲食店の大きさは、地域ごとに上限が違います(主なもの)。
| 用途地域 | 店・飲食店の上限 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用 | 住まいとの兼用で店部分50㎡以下 |
| 第二種低層住居専用 | 一定の店で150㎡以内(2階まで) |
| 田園住居 | 150㎡以内。農産物直売所・農家レストランなどは500㎡以内 |
| 第一種中高層住居専用 | 一定の店で500㎡以内(2階まで) |
| 第二種中高層住居専用 | 1,500㎡以下(2階まで) |
| 第一種住居 | 3,000㎡以下 |
| 第二種住居・準住居・工業 | 10,000㎡以下 |
| 近隣商業・商業・準工業 | 上限なし |
| 工業専用 | 物品販売店・飲食店は不可 |
- 当てはまる:ゆいさんが第二種低層住居専用地域に100平方メートルの喫茶店を建てる(150平方メートル以内なのでOK)。
- 当てはまらない:第一種低層住居専用地域に、大学を建てる。大学は(い)項の「学校」から外されているので建てられません。
- ひっかけやすい(病院と診療所):病院は第一種低層住居専用地域に建てられませんが、診療所は建てられます。名前が似ていても扱いは逆です。
- ひっかけやすい(工業地域の住宅):工業地域には住宅も老人ホームも建てられます。住宅が不可なのは工業専用地域だけです。一方、学校・病院・ホテルは工業地域で建てられません。
- ひっかけやすい(許可):別表第二で建てられない建物でも、特定行政庁が許可すれば建てられます。「どんな場合でも建てられない」という書き方の文は誤りになりやすいです。
似ているルールとの違い
用途地域が決めるのは、建物の「種類」だけではありません。同じ用途地域の指定から、建物の「大きさ」や「高さ」の上限も決まります。
| ルール | 何を決めるか | 主な条文 |
|---|---|---|
| 用途の制限 | 建ててよい建物の種類 | 建築基準法48条・別表第二 |
| 建ぺい率・容積率 | 建物の広さ・床面積の合計 | 建築基準法53条・52条 |
| 低層の高さの限度 | 10mまたは12m | 建築基準法55条 |
第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域では、建物の高さに上限があります。10メートルか12メートルのうち、都市計画で決めたほうです(55条1項)。
もう一つの違いは、敷地がまたがるときの扱いです。用途の制限は「敷地の過半が属する地域」のルールを敷地全体に使います(91条)。建ぺい率と容積率は、面積の割合で計算します。計算のしかたは建ぺい率と容積率の記事で扱っています。
試験ではここをまちがえやすい
宅建試験の法令上の制限では、「この用途地域にこの建物は建てられるか」を、表の知識で問われやすい論点です。
- 13種類の数:田園住居地域を忘れて12種類と数えないこと。住居系は田園住居地域を入れて8つです。
- どこでも建てられる建物:神社・寺院・教会、診療所、保育所、公衆浴場(個室付浴場を除く)、派出所。
- 住宅が不可なのは工業専用地域だけ:工業地域では住宅OK。
- 大学・病院は第一種中高層住居専用地域から:低層住居専用地域と田園住居地域では不可。小中高は低層でもOK。
- ホテル・旅館は第一種住居地域から(3,000平方メートル以下)。第二種中高層住居専用地域では不可。
- キャバレーは商業・準工業、個室付浴場は商業だけ。近隣商業地域はどちらも不可。
- またがる敷地:用途は過半の地域のルール。面積の割合で計算するのは建ぺい率と容積率。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題):工業地域には、住宅を建てることができない。
答え:✕。住宅を建てられないのは工業専用地域だけです(別表第二(わ)項)。工業地域では、住宅を建てられます。
問2(このサイトのオリジナル問題):第一種低層住居専用地域に、診療所を建てることはできるが、病院を建てることはできない(特定行政庁の許可がない場合)。
答え:○。診療所は(い)項8号に入っていますが、病院は(い)項に入っていません。病院は第一種中高層住居専用地域の(は)項から出てきます。
問3(このサイトのオリジナル問題):ある敷地は、3分の2が第一種住居地域、3分の1が近隣商業地域にある。この敷地にキャバレーを建てることができる(特定行政庁の許可がない場合)。
答え:✕。用途の制限は、敷地の過半が属する第一種住居地域のルールが敷地全体に使われます(91条)。キャバレーは第一種住居地域でも近隣商業地域でも建てられません(別表第二(り)項2号ほか)。
まとめ
- 用途地域は13種類:住居系8(田園住居地域を含む)・商業系2・工業系3。
- 神社・診療所・保育所・公衆浴場(個室付浴場を除く)・派出所は13地域すべてでOK。住宅は工業専用地域だけ不可。
- 大学・病院は第一種中高層住居専用地域から。小中高は工業・工業専用で不可。ホテルは第一種住居(3,000㎡以下)から。
- キャバレーは商業・準工業、個室付浴場は商業だけ。
- 敷地がまたがるときは、敷地の過半が属する地域の用途の制限。特定行政庁の許可があれば例外もある。
用途地域を決める前の、土地の造成の許可のルールは開発許可の記事で学べます。宅建業者がお客さんに説明する「法令上の制限」との関係は重要事項説明の記事で確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容をe-Gov法令検索で確かめました(建築基準法の別表第二は、令和8年4月1日施行の版を指定して確認)。
- e-Gov法令検索「都市計画法」(8条1項1号、9条、13条1項7号)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(48条、55条1項、91条、別表第二)
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」(130条の3、130条の5の2)
- 不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」(法令の基準日)
働く人の法律試験ノート