制限行為能力者をわかりやすく:未成年者・成年被後見人の契約はどうなるか

制限行為能力者(せいげんこういのうりょくしゃ)とは、一人で契約をする力が法律で制限されている人のことです。民法は未成年者・成年被後見人(せいねんひこうけんにん)・被保佐人(ひほさにん)・被補助人(ひほじょにん)の4つを決めています。

ひとことで言うと、この人たちが保護者の同意なしにした契約は、あとから取り消せるというルールです。どこまで一人でできるかが4つで異なり、取り消せない例外もあります。また、相手方が困りすぎないよう、返事を求める催告や「うそで信じさせたら取り消せない」というルールもあります。

この記事では、4つの種類と取消し・追認・相手方の保護までを扱います。後見人の仕事の中身や、任意後見の制度は扱いません。

身近な例で考えるとどうなるか

登場人物は4人です。高校生のれんさん(17歳)、れんさんの母のなおみさん(親権者=法定代理人)、バイク店の店主ひろしさん、れんさんの祖父のしげるさんです。

① 17歳が親にだまってバイクを買った

れんさんは、なおみさんに相談せず、ひろしさんの店で30万円のバイクを買う契約をしました。れんさんは18歳未満なので未成年者です。未成年者が契約するには、法定代理人(ほうていだいりにん=法律で決まった保護者。ふつうは親)の同意が必要です。同意がないので、れんさん本人も、なおみさんも、この契約を取り消せます。

ただし、れんさんがお年玉から「好きに使っていい」と許された5万円で、中古のヘルメットを買ったのなら話は別です。処分を許されたお金の範囲なので、取り消せません。

② 成年後見を受けている祖父が土地を売った

しげるさんは、病気で物事を判断する力がほとんどない状態が続き、家庭裁判所で後見開始の審判を受けました。成年被後見人となり、なおみさんが成年後見人です。しげるさんが一人で土地を売る契約をしたら、取り消せます。たとえ、なおみさんが「売っていいよ」と同意していても取り消せます。同意どおりに動けるとは限らないからです。一方、コンビニでお茶を買うような日常の買い物は、取り消せません。

③ 店主のひろしさんはどうすればいいか

取り消されるかどうか分からないままだと、ひろしさんは困ります。そこでひろしさんは、なおみさんに「1か月の期間を決めるので、その間に契約を認めるか答えてください」と催告(さいこく=返事を求めること)できます。なおみさんが返事をしなければ、契約を追認(ついにん=取り消さないと決めること)したものとみなされます。

また、れんさんが偽の身分証を見せて「20歳です」とひろしさんを信じさせていたなら、れんさん側は取り消せません。うそをついた人まで守る必要はないからです。

条文ではどう決まっているか

未成年者(4条〜6条)

  • 「年齢十八歳をもって、成年とする。」(4条)。令和4年(2022年)4月1日に、20歳から18歳に引き下げられました。
  • 契約などをするには法定代理人の同意が必要。同意のない行為は取り消せる(5条1項・2項)。
  • 例外1:「単に権利を得、又は義務を免れる」行為は同意がいらない(5条1項ただし書)。例:ただで物をもらう、借金を免除してもらう。
  • 例外2:法定代理人が処分を許した財産は、自由に処分できる。目的を決めて許したときはその目的の範囲で、決めずに許したときも同じ(5条3項)。
  • 例外3:営業を許された未成年者は、その営業については成年者と同じ(6条1項)。

成年被後見人(7条〜9条)

  • 対象は、精神上の障害で「事理を弁識する能力を欠く常況」にある人。物事の損得を判断する力がない状態が続いている、という意味です。家庭裁判所が後見開始の審判をし(7条)、成年後見人が付く(8条)。
  • 成年被後見人の法律行為(契約など、権利や義務を生む行為)は取り消せる。ただし「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は別(9条)。
  • 9条には「同意があれば取り消せない」という定めがない。だから成年後見人の同意を得ていても取り消せる、と読みます。

被保佐人(11条〜13条)

  • 判断する力が「著しく不十分」な人について、保佐開始の審判をする(11条)。
  • 13条1項に並ぶ重要な行為だけ、保佐人の同意が必要。例:借金や保証人になること(2号)、不動産その他重要な財産の売買など(3号)、相続の承認・放棄(6号)、新築・増改築(8号)。
  • 同意(または家庭裁判所の許可)なしにした、同意が必要な行為は取り消せる(13条4項)。それ以外の行為は一人でできる。

被補助人(15条〜17条)

  • 判断する力が「不十分」な人について、補助開始の審判をする。本人以外が請求するときは、本人の同意が必要(15条1項・2項)。
  • 補助人の同意がいる行為は、家庭裁判所が13条1項の行為の一部から選んで決める(17条1項)。その審判を本人以外が求めるときも、本人の同意が必要(17条2項)。
  • 同意がいると決められた行為を同意なしにしたら、取り消せる(17条4項)。

取消し・追認・相手方の保護

  • 取り消せる人:制限行為能力者本人、代理人、承継人(しょうけいにん=相続人など、あとを継いだ人)、同意をすることができる者(120条1項)。本人も一人で取り消せます。
  • 返すもの:取り消すと、はじめから無効とみなす(121条)。制限行為能力者は「現に利益を受けている限度」で返せばよい(121条の2第3項)。
  • 追認:取消しの原因がなくなり(未成年者なら18歳になるなど)、かつ取消権があると知った後でないと効かない(124条1項)。ただし法定代理人・保佐人・補助人が追認するときなどは、取消しの原因がなくなるのを待たなくてよい(同条2項)。
  • 法定追認:追認できる時以後に、代金の支払い(履行)や履行の請求などをすると、追認したものとみなす。異議をとどめたときは別(125条)。
  • 相手方の催告:1箇月以上の期間を定めて、追認するか答えるよう求められる(20条)。結果は次の章の表を見てください。
  • 詐術(さじゅつ):行為能力者だと信じさせるために詐術(うそや、だます手段)を使ったときは、取り消せない(21条)。
  • 期間:取消権は、追認できる時から5年、行為の時から20年で消える(126条)。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる:被保佐人の人が、保佐人の同意なしに友人の借金の保証人になった。保証は13条1項2号の行為なので、取り消せます。
  2. 当てはまらない:れんさんが、親せきから自転車をただでもらう契約をした。単に権利を得るだけなので同意はいらず、取り消せません。
  3. 当てはまらない:被保佐人の人が、一人で文房具を買った。13条1項の行為ではないので、同意なしでも有効です。
  4. ひっかけやすい:れんさんは、18歳になり、契約を取り消せることも知った後に、残りのバイク代を自分で払った。追認できる時以後の「履行」なので、異議をとどめていなければ追認したものとみなされ、もう取り消せません(125条1号)。
  5. ひっかけやすい:成年被後見人のしげるさんが、近所のスーパーで夕食の材料を買った。成年被後見人の行為でも、日用品の購入など日常生活に関する行為は取り消せません(9条ただし書)。「成年被後見人の行為はすべて取り消せる」と覚えていると落とします。

似ているルールとどう違うか

まず4つの種類を並べます。判断する力が弱いほど、一人でできることが少なくなります。

種類当てはまる人保護者取り消せる行為
未成年者18歳未満法定代理人同意のない行為(例外あり)
成年被後見人判断する力を欠く常況成年後見人日常生活の行為以外すべて
被保佐人著しく不十分保佐人13条1項の行為など
被補助人不十分補助人審判で決めた行為

次に、相手方の催告(20条)です。返事をする力がある人が黙っていれば「追認」、保護者の追認をもらってくるよう言われた本人が黙っていれば「取消し」、と覚えると条文の理由に合います。

催告の相手返事がないと条文
行為能力者になった本人追認とみなす20条1項
法定代理人・保佐人・補助人追認とみなす20条2項
被保佐人・被補助人本人取消しとみなす20条4項

2行目には例外があります。後見監督人の同意が必要な行為のように、特別な手続がいる行為では、期間内に「手続をすませた」と通知がなければ、取り消したものとみなされます(20条3項)。

3行目の催告は、「保佐人(補助人)の追認をもらってきてください」と本人に求めるものです。期間内に「追認をもらった」と通知がなければ、取り消したものとみなされます。なお、20条には未成年者や成年被後見人本人への催告の定めはありません。98条の2は、未成年者・成年被後見人に向けた意思表示は、その人に主張できないと定めています。法定代理人が知った後などは別です。

もう一つまぎらわしいのが、意思能力がない場合です。ひどく酔っていた、重い病気だったなど、そのとき判断する力がまったくなかった人の契約は「無効」です(3条の2)。審判を受けた成年被後見人の契約は「取り消せる」です。意思表示の無効と取消しの整理は意思表示をわかりやすくで扱っています。

試験ではどこをまちがえやすいか

  • 成年後見人の同意で取り消せなくなるとする型:成年被後見人は、同意を得ていても取り消せます。同意で有効になるのは未成年者・被保佐人・被補助人です。
  • 本人は一人で取り消せないとする型:取消しは本人もできます(120条1項)。取消しに保護者の同意はいりません。
  • 催告の結果を入れかえる型:法定代理人が黙っていたら「追認」。被保佐人が保佐人の追認を得た通知をしなければ「取消し」。無権代理の催告(返事がなければ拒絶)とも混ざりやすいので、代理をわかりやすくと並べて確認します。
  • 催告の期間をずらす型:20条の期間は「1箇月以上」です。無権代理の催告(114条)は「相当の期間」で、日数の定めはありません。
  • 被補助人の審判で本人の同意を落とす型:補助開始や同意権を付ける審判を本人以外が求めるときは、本人の同意が必要です。保佐開始(11条)にはこの定めがありません。
  • 成年の年齢:今の成年は18歳です。古い教材の「20歳」のまま覚えないようにします。

行政書士試験では、5肢択一式で4つの種類の違い、催告の結果、法定追認を組み合わせる形が考えられます。記述式(40字程度)では、「相手方はどうすれば早く結果を確定できるか」に対して、期間(1箇月以上)・相手・効果をそろえて書けるかが問われやすい形です。書き方は記述式の書き方を参考にしてください。

宅建試験では、未成年者や被保佐人が土地・建物を売った・買った場面で、「取り消せるか」を4肢択一で問う形が考えられます。不動産の売買は13条1項3号の「不動産その他重要な財産」に当たる、という点が手がかりになります。宅建試験の科目全体の中での位置は宅建試験の科目と出題範囲で確かめられます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
家庭裁判所で後見開始の審判を受けたみのるさんが、成年後見人の同意を得たうえで、自分のマンションを売る契約をした。この契約は、成年後見人の同意があるので取り消すことができない。

答え:✕ 成年被後見人の法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて取り消せます(9条)。9条には同意による例外がないので、同意を得ていても取り消せます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
16歳のあおいさんが、親の同意なしにゲーム機を買った。店は、あおいさんの親に対し、1箇月以上の期間を定めて追認するかどうか答えるよう催告した。親が期間内に返事をしなかった場合、この契約は追認したものとみなされる。

答え:○ 法定代理人に催告して、期間内に確答がないときは、追認したものとみなされます(20条2項)。

問3(このサイトのオリジナル問題)
被保佐人のいさむさんは、保佐人の同意を得ないで、自分の土地を売る契約をした。この契約は、保佐人だけが取り消すことができ、いさむさん本人は取り消すことができない。

答え:✕ 土地の売買は13条1項3号の行為で、同意がなければ取り消せます(13条4項)。取り消せる人には制限行為能力者本人も入るので(120条1項)、いさむさん本人も取り消せます。

まとめ

  • 制限行為能力者は、未成年者(18歳未満)・成年被後見人・被保佐人・被補助人の4つ。
  • 成年被後見人は、日常生活の行為以外は同意があっても取り消せる。
  • 未成年者は「単に権利を得・義務を免れる」行為と、処分を許された財産は一人でできる。
  • 催告は1箇月以上。保護者や行為能力者になった本人が黙れば追認、被保佐人・被補助人が黙れば取消し。
  • 詐術を使ったら取り消せない。取消しは本人もでき、返すのは現に利益を受けている限度。

次に読むなら、代理をわかりやすくがおすすめです。法定代理人は代理の一種で、催告や取消しのルールを並べて覚えると、似た選択肢を見分けやすくなります。民法の中での優先順位は民法の勉強法にまとめています。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。