宅建業の報酬の上限をわかりやすく:売買と賃貸の計算のしかたと特例

宅建業者(たっけんぎょうしゃ=免許を受けて、不動産の売買や、売買・賃貸の仲介を仕事にする会社や人)が受け取れる報酬には、上限があります。上限は国土交通大臣が「告示(こくじ)=国が決めて公に知らせるルール」で決めています(宅建業法46条)。売買の仲介なら、税抜きの代金が400万円を超えるとき「代金×3%+6万円」に消費税(10%)を足した額が、売主・買主それぞれから受け取れる上限です。賃貸の仲介は、貸す人と借りる人から合わせて「家賃1か月分+消費税」までです。

この記事では、宅建試験で出る報酬の計算を、手順・計算例・ひっかけの順に説明します。消費税は10%、業者は消費税を納める業者(課税事業者)として計算します。根拠は令和8年4月1日時点の宅建業法と、令和6年7月1日から使われている告示です。

身近な例で考えると

登場人物は3人です。売る人=はるかさん(親から相続した土地を手放したい)、買う人=そうたさん(家を建てる土地を探している)、仲介する業者=みどり不動産です。

  1. はるかさんが、みどり不動産に「土地を売りたいので買い手を探して」と頼みます(媒介=ばいかい、つまり仲介の依頼)。
  2. みどり不動産は、契約の前に「報酬はいくらまでいただきます」と説明します。
  3. そうたさんも、みどり不動産に「土地を買いたい」と頼みます。
  4. はるかさんとそうたさんの売買契約が、代金2,500万円で成立します。
  5. みどり不動産は、はるかさんからも、そうたさんからも報酬を受け取れます。

上限はいくらでしょうか。告示は、代金を3つの区間に分けて、区間ごとに割合をかけるしくみです。

  • 200万円までの部分:200万円×5.5%=11万円
  • 200万円を超え400万円までの部分:200万円×4.4%=8万8,000円
  • 400万円を超える部分:2,100万円×3.3%=69万3,000円

合計は89万1,000円です。これが、はるかさんから受け取れる上限です。そうたさんからも、別に89万1,000円まで受け取れます。

区間ごとに割合が下がるところは、坂道を区切って、区間ごとに傾きが違うイメージです。ただし本物のルールでは、割合は「代金全体」ではなく「その区間に入る部分」にだけかかります。ここをまちがえると計算が合いません。

条文と告示ではこう決まっている

宅建業法46条と47条2号、そして告示が根拠です。

  • 46条1項:売買・交換・貸借の代理や媒介で受け取れる報酬の額は、国土交通大臣が定める。
  • 46条2項:業者は、その額をこえて報酬を受けてはならない。
  • 46条4項:業者は、事務所ごとに、報酬の額を見やすい場所に掲示しなければならない。
  • 47条2号:「不当に高額の報酬を要求する行為」をしてはならない。受け取らなくても、要求しただけで違反になる書き方です。

告示の中身は次のとおりです。

  • 売買の媒介(第二):代金(消費税分を含まない額)を、200万円以下は5.5%、200万円超400万円以下は4.4%、400万円超は3.3%で計算して合計。この額は消費税分を含んだ上限です。
  • 売買の代理(第三):媒介の計算額の2倍以内。相手方からも受け取るときは、合計で2倍を超えてはならない。
  • 貸借の媒介(第四):双方から受け取る合計で、家賃(消費税分を含まない額)の1か月分の1.1倍以内。居住用の建物では、依頼者の一方から受け取れるのは0.55倍以内。ただし媒介の依頼を受けるときに、その依頼者の承諾を得ていれば別です。
  • 貸借の代理(第五):家賃1か月分の1.1倍以内。相手方からも受け取るときも、合計で1.1倍まで。
  • 権利金(第六):居住用の建物を除く賃貸借で、返さないお金(権利金)を受け取るときは、権利金を売買代金とみなして計算してよい。
  • 低廉(ていれん)な空家等の売買の媒介(第七):代金800万円以下の宅地・建物は、媒介にかかる費用を考えて、ふつうの計算額を超えて受け取れる。ただし依頼者1人から「三十万円の一・一倍」(33万円)まで。代理(第八)はその2倍以内。
  • 長期の空家等の貸借(第九・第十):長い間使われていない物件(これからも使う見込みがない物件を含む)の賃貸の媒介は、借りる人からの額をふつうの上限内にすることを条件に、双方の合計で家賃1か月分の2.2倍まで。
  • そのほか(第十一):上の決まり以外の報酬は受け取れない。ただし「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」は別に受け取れる。

国土交通省の通達(解釈・運用の考え方)の資料は、特例を使うときは、媒介・代理の契約を結ぶ際に前もって、上限の範囲で報酬額を依頼者に説明し、合意しておく必要があるとしています。

計算は3つの手順でする

試験では、区間ごとに計算するより、次の手順が速くてまちがえにくいです。

  1. 税抜きの代金を出す。土地には消費税がかかりません。建物の代金に消費税が入っているときは、税の分を除きます(税込み880万円なら、880万円÷1.1=800万円)。
  2. 速算式(そくさんしき)にあてはめる。400万円超なら「代金×3%+6万円」、200万円超400万円以下なら「代金×4%+2万円」、200万円以下なら「代金×5%」です。
  3. 最後に1.1倍する(消費税を足す)。代理なら、さらに2倍します。

速算式は告示に書いてある式ではなく、当サイトが告示の区間計算をまとめたものです。400万円超の式は、こう確かめられます。200万円×5.5%+200万円×4.4%+(代金−400万円)×3.3%=11万円+8.8万円−13.2万円+代金×3.3%=代金×3.3%+6.6万円。これは(代金×3%+6万円)×1.1と同じです。

計算例1(はるかさんの土地):2,500万円×3%+6万円=81万円。81万円×1.1=89万1,000円。区間ごとの計算(11万円+8.8万円+69.3万円=89.1万円)と一致します。

計算例2(新築の家):土地1,200万円と建物(税込み880万円)を、業者の媒介で売買したとします。税抜きの代金は1,200万円+800万円=2,000万円。2,000万円×3%+6万円=66万円。66万円×1.1=72万6,000円。検算:11万円+8.8万円+1,600万円×3.3%(52.8万円)=72.6万円。

計算例3(賃貸):大学生のりなさんが、大家の山本さんのアパート(家賃月8万円)を、みどり不動産の媒介で借ります。双方から受け取れる合計は8万円×1.1=8万8,000円。居住用なので、りなさんからも山本さんからも、それぞれ8万円×0.55=4万4,000円までが原則です。依頼を受けるときにりなさんの承諾を得ていれば、りなさんから8万8,000円を受け取れます。そのときは山本さんからは受け取れません(合計が上限だからです)。

計算例4(店舗と権利金):店舗を家賃月15万円(税抜き)、返さない権利金300万円で貸す媒介です。家賃で計算すると合計15万円×1.1=16万5,000円。権利金で計算すると、300万円×4%+2万円=14万円、14万円×1.1=15万4,000円を、貸す人と借りる人それぞれから受け取れ、合計30万8,000円です。どちらか一方の方法で計算します。検算:200万円×5.5%(11万円)+100万円×4.4%(4.4万円)=15.4万円。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる(代理):みどり不動産が、はるかさんの「代理」として2,500万円の土地を売るなら、はるかさんから受け取れる上限は89万1,000円×2=178万2,000円です。買主のそうたさんからも媒介の報酬を受け取るなら、2人からの合計が178万2,000円までになります。
  • 当てはまらない(業者が自分で売る):みどり不動産が自分の持っている土地を売る場合は、仲介ではありません。46条は「代理又は媒介に関して」受け取る報酬のルールなので、この売買には報酬の上限の話は出てきません。業者が自分で売るときのルールは8種制限のほうで学びます。
  • 当てはまらない(依頼者が同意しても):はるかさんが「早く売ってくれたので100万円払います」と言っても、89万1,000円を超えて受け取ることはできません。46条2項は、依頼者が同意しているかどうかで区別していません。
  • ひっかけやすい(800万円以下の特例):古い空き家を500万円で売る媒介です。ふつうの計算は500万円×3%+6万円=21万円、×1.1で23万1,000円。特例を使えば、事前に説明して合意したうえで、売主・買主それぞれから33万円まで受け取れます。告示は「依頼者」と書いていて、売主に限っていません。国土交通省の資料は、使用の状態は問わないとしています。空き家でなくても、800万円以下なら対象です。
  • ひっかけやすい(ちょうど800万円):800万円×3%+6万円=30万円、×1.1で33万円。ちょうど800万円では、ふつうの計算でも33万円になります。特例で上限が上がるのは、800万円より安い物件です。
  • ひっかけやすい(広告料):依頼者から頼まれて新聞に特別な広告を出したなら、その広告料は報酬と別に受け取れます。頼まれていない広告の費用を後から請求することはできません。

似ているルールとの違い

取引上限注意点
売買の媒介速算式×1.1売主・買主それぞれから
売買の代理媒介の2倍相手方の分と合計で2倍まで
賃貸の媒介家賃1か月×1.1双方の合計。居住用は一方0.55か月
賃貸の代理家賃1か月×1.1相手方の分と合計で1.1か月

特例は、売買と賃貸で中身が違います。

特例対象上限
低廉な空家等代金800万円以下の売買依頼者1人33万円(代理は2倍)
長期の空家等長く使われていない物件の賃貸双方合計で家賃2.2か月

国土交通省の資料は、「長期」の例として、少なくとも1年を超えて住む人がいない空き家を挙げています。

試験ではここをまちがえやすい

宅建試験では、計算問題と「〇〇できる・できない」の文章問題の両方で問われやすい論点です。

  • 消費税を抜き忘れる:建物の代金が税込みで書かれていたら、まず1.1で割ります。土地の代金はそのまま使います。
  • 1.1倍を忘れる・2回かける:速算式の答えに1.1をかけるのは最後に1回だけです。代理の2倍は、1.1倍の前でも後でも結果は同じです。
  • 代理と媒介の合計:売主の代理と買主の媒介を両方する場合、受け取れるのは「1人あたり」ではなく「合計で」代理の上限(媒介の2倍)までです。
  • 居住用の0.55か月:0.55か月は「一方から」の上限で、合計は1.1か月です。告示は、承諾を「媒介の依頼を受けるに当たって」得ることを求めています。承諾の時期をずらした選択肢に注意します。
  • 権利金は居住用には使えない:権利金で計算できるのは、店舗や事務所など居住用でない建物と宅地の賃貸借です。
  • 要求だけでも違反:不当に高額の報酬は「要求する行為」が禁止です。受け取っていなくても違反になります。

「報酬に関する事項」は、媒介契約を結んだときに業者が依頼者に渡す書面に書く事項でもあります(宅建業法34条の2第1項7号)。媒介契約の種類や書面の中身は媒介契約の記事で確かめてください。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題):宅建業者が、土地(代金1,000万円)の売買を売主から頼まれて媒介した。業者が売主から受け取れる報酬の上限は、39万6,000円である。

答え:○ 1,000万円×3%+6万円=36万円。36万円×1.1=39万6,000円です。検算:11万円+8.8万円+600万円×3.3%(19.8万円)=39.6万円。

問2(このサイトのオリジナル問題):居住用のマンション(家賃月10万円)の貸借の媒介で、業者は、依頼を受けるときに承諾を得ていなくても、借りる人から11万円を受け取ることができる。

答え:✕ 居住用の建物では、承諾がなければ一方から受け取れるのは0.55か月分の5万5,000円までです。依頼を受けるときに借りる人の承諾を得ていれば、11万円まで受け取れます。

問3(このサイトのオリジナル問題):代金300万円の古家付きの土地の売買の媒介で、業者は、事前に説明して合意を得れば、買主からも33万円を上限に報酬を受け取ることができる。

答え:○ 800万円以下の宅地・建物は、低廉な空家等の特例の対象です。告示は「依頼者」と定めていて、売主だけに限っていません。なお、ふつうの計算では300万円×4%+2万円=14万円、×1.1で15万4,000円です。

まとめ

  • 売買の媒介:税抜き代金で「3%+6万円」(400万円超)を出し、1.1倍。売主・買主それぞれから。代理は2倍で、相手方の分と合計して2倍まで。
  • 賃貸の媒介:双方の合計で家賃1か月分×1.1。居住用は、依頼のときの承諾がなければ一方から0.55か月分まで。
  • 権利金での計算は居住用以外だけ。長期の空家等の賃貸は合計2.2か月分まで。
  • 800万円以下の売買は、事前の説明と合意で、依頼者1人33万円まで。
  • 上限を超えて受け取るのも、不当に高額な報酬を要求するのも違反。

宅建業法の全体の中で報酬がどこに位置づくかを知りたい人は、宅建試験の科目と出題範囲を先に読むと、ほかの論点との関係がつかめます。業者が自分で売主になるときのルールを続けて押さえたい人には、8種制限の記事がおすすめです。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容をe-Gov法令検索で確かめました。