共有をわかりやすく:みんなで持つ物の使い方・直し方・売り方

共有(きょうゆう)とは、1つの物を何人かで一緒に持つことです。一人ひとりの取り分を「持分(もちぶん)」といいます。共有物について何かを決めるときは、することの重さで3段階に分かれます。

こわれるのを防ぐ「保存」は1人で決められます。使い方などの「管理」は持分の価格の過半数で決めます。形や働きを大きく変える「変更」は全員の同意が必要です(民法251条・252条)。

このルールは、令和5年4月1日施行の改正で大きく書き直されました。形や働きを大きく変えない工事(軽微な変更)は、過半数で決められるようになっています。この記事は、令和8年4月1日時点の改正後の条文で説明します。古い教材の「変更はすべて全員の同意」という説明のままにしないよう注意してください。

身近な例で考えると

きょうだい3人が、お金を出し合って海辺の小さな別荘(土地と建物)を買いました。出したお金に合わせて、持分を決めています。

人物立場持分
なつみさん姉2分の1
りくさん弟4分の1
こうへいさん弟4分の1

別荘をめぐって、1年の間にいろいろなことが起きます。

  1. 台風で窓ガラスが割れ、雨が吹き込んでいる。近くに住むこうへいさんが、すぐ業者を呼んで直す。
  2. なつみさんが、庭の空いている所を、近所の人に1年契約の駐車場として貸したいと言う。
  3. 古くなった外壁を、同じ色で塗り直したい。
  4. なつみさんが、2階を増築して部屋を増やしたいと言い出す。
  5. 最後に、りくさんが「別荘ごと売ってしまおう」と言う。

1の窓の修理は、物がこわれるのを防ぐ「保存行為」です。ほかの2人の同意がなくても、こうへいさんが1人でできます(252条5項)。

2の駐車場の貸し出しは「管理」です。持分の価格の過半数で決めます(252条1項)。ここで気をつけたいのが、なつみさんの持分は2分の1だという点です。2分の1は「半分より多い」ではないので、なつみさん1人では決められません。りくさんかこうへいさんの賛成が必要です。土地の賃貸は5年以内なら、管理として過半数で決められます(252条4項2号)。

3の外壁の塗り直しは、形や働きを大きく変えません。改正後は「軽微な変更」として、管理と同じく過半数で決められます(251条1項のかっこ書き、252条1項)。

4の増築は、建物の形を大きく変える「変更」です。3人全員の同意が必要です(251条1項)。

5の別荘全体の売却も、3人全員がそろわないとできません。ほかの人の持分まで勝手に売ることはできないからです。ただし、自分の持分だけなら、1人で売ることができます。たとえば、りくさんが自分の4分の1の持分を友人に売ると、その友人がなつみさん・こうへいさんと一緒の共有者になります。

「マンションの管理組合のように多数決で決める」とたとえると、管理の部分はつかみやすいでしょう。ただし本物のルールでは、頭数ではなく持分の価格で数えます。3人のうち2人が賛成しても、その2人がりくさんとこうへいさん(合わせて2分の1)なら過半数になりません。

条文ではこう決まっている

使い方と持分

  • 249条1項:各共有者は「共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」。別荘の一部屋だけ、ではなく全体を、持分に応じて使える。
  • 249条2項:自分の持分を超えて使った共有者は、別の合意がなければ、ほかの共有者にその分の対価を払う。
  • 249条3項:共有物は「善良な管理者の注意」(人から預かった物と同じくらいの注意)で使う。
  • 250条:持分がはっきりしないときは、等しいと推定する(推定=反対の証拠がなければ、そうだとして扱う)。

保存・管理・変更

  • 変更(251条1項):ほかの共有者の同意がなければ、共有物に変更を加えられない。ただし「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」は除く。形状は形、効用は働きや使い道のこと。形や働きを大きく変えないものを「軽微(けいび)な変更」と呼ぶ。
  • 管理(252条1項):管理に関することは「各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する」。共有物を使っている共有者がいるときも同じ。軽微な変更や、管理者の選任・解任もここに入る。
  • 特別の影響(252条3項):過半数の決定が、共有者の間の決定に基づいて共有物を使っている共有者に特別の影響を及ぼすときは、その人の承諾がいる。
  • 短い賃貸(252条4項):次の期間を超えない賃貸などは、管理として過半数で設定できる。木を植えたり切ったりするための山林は10年、ほかの土地は5年、建物は3年、動産は6か月。
  • 保存行為(252条5項):各共有者が単独でできる。
  • 管理者(252条の2):共有者は管理者を置ける。管理者は管理の行為ができるが、変更(軽微なものを除く)には共有者全員の同意がいる。

お金と、共有のやめ方

  • 費用(253条):管理の費用は持分に応じて負担する。1年以内に払わない共有者がいれば、ほかの共有者は相当の償金(つぐないのお金)を払って、その人の持分を取得できる。
  • 放棄・相続人なしの死亡(255条):共有者が持分を放棄したとき、または相続人なしで亡くなったときは、その持分はほかの共有者のものになる。
  • 相続人なしの死亡の順番(判例):この場合の持分は、まず特別縁故者への分与の対象になる(最高裁判所第二小法廷 平成元年11月24日判決)。特別縁故者(とくべつえんこしゃ)とは、一緒に暮らしていた人や介護をした人など、亡くなった人と特に縁が深かった人。分与がされないときに、はじめてほかの共有者のものになる。特別縁故者の規定は、判決当時の958条の3で、今は958条の2。
  • 分割の請求(256条1項):各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できる。ただし、5年を超えない期間内は分割しないという約束はできる。
  • 裁判による分割(258条):話し合いがまとまらないときなどは、裁判所に分割を請求できる。物そのものを分ける方法のほか、1人が持分を取得してほかの人にお金を払う方法もある。

連絡がつかない共有者がいるとき(令和5年4月施行)

  • 変更(251条2項):だれか分からない、または居場所が分からない共有者がいるときは、裁判所の決定を得て、残りの共有者の同意で変更できる。
  • 管理(252条2項):同じように、だれか分からない・居場所が分からない共有者がいるときは、裁判所の決定を得て、残りの共有者の過半数で決められる。期間を決めて賛成か反対かを尋ねても答えない共有者がいるときも同じ。
  • 持分の取得・譲渡(262条の2・262条の3):不動産なら、裁判所の決定で、居場所の分からない共有者の持分を取得できる。また、ほかの共有者全員の持分と一緒に第三者へ譲ることもできる。ただし、その持分が遺産で、遺産分割をすべきときは、相続開始から10年たつまで使えない(262条の2第3項・262条の3第2項)。

当てはまる例・当てはまらない例

判断の手がかりをまとめると、次のようになります。

する人・すること区分必要な同意
割れた窓の修理保存1人でできる
庭を1年だけ駐車場に貸す管理持分の過半数
同じ色での外壁の塗り直し軽微な変更持分の過半数
2階の増築・建て替え変更全員
別荘全体を売る全体の処分全員
自分の持分だけ売る自分の持分1人でできる

当てはまらない例:2分の1の持分だけで貸す

なつみさんが1人の判断で、庭を駐車場として貸す契約をしたとします。管理は「過半数」で決めるので、2分の1の持分だけでは足りません。管理の決定として有効にするには、ほかのきょうだいの賛成が必要です。「いちばん持分が大きい人が決められる」わけではありません。

ひっかけやすい例:1人で住み始めた弟

りくさんが、ほかの2人に相談せず、別荘に1人で住み始めたとします。各共有者は共有物の全部を持分に応じて使えるので(249条1項)、すぐに「出ていけ」とは言いにくい場面です。ただし、りくさんは自分の持分を超えて使った分の対価を、ほかの2人に払う義務を負います(249条2項)。

さらに改正後は、共有物を使っている共有者がいるときも、使い方を持分の過半数で決められます(252条1項後段)。なつみさんとこうへいさん(合わせて4分の3)が「夏はみんなで交代で使う」と決めることもできます。252条3項の「特別の影響」で承諾が必要になるのは、共有者の間の決定に基づいて使っている共有者です。相談なしに住み始めたりくさんは、この条文の守りを受けません。

ひっかけやすい例:固定資産税を払わない弟

別荘の固定資産税や修理代は、持分に応じて負担します(253条1項)。なつみさんが立て替えたのに、こうへいさんが1年以上払わなかったとします。この場合、なつみさんは相当の償金を払って、こうへいさんの持分を取得できます(253条2項)。「1年」という数字と、「ただで取り上げられる」のではなく償金を払う点が問われます。

似ているルールとの違い

相続でみんなの物になった場合(遺産共有)

親が亡くなり、相続人が何人かいると、遺産を分けるまでの間は共有になります(898条)。共有のルールを使うときは、法定相続分などを持分として扱います(898条2項)。ただし、分け方には違いがあります。遺産分割をすべき財産は、原則として共有物分割の裁判(258条)では分けられず、遺産分割の手続で分けます(258条の2第1項)。相続開始から10年たったときは、一定の場合に共有物分割の手続も使えます(同条2項)。相続人と相続分は相続の記事で説明しています。

賃貸借との関係

共有物を人に貸すとき、「誰の同意で貸せるか」は共有のルール(252条4項)で決まります。貸したあとの貸主と借主の関係(修繕・敷金など)は、賃貸借のルールで決まります。2つを分けて考えると混乱しません。賃貸借は賃貸借の記事で扱っています。

改正前の説明との違い

場面改正後(令和5年4月1日から)
形や働きを大きく変えない工事持分の過半数で決められる(軽微な変更)
使っている共有者がいるときの使い方過半数で決められると明記
短い賃貸期間を条文で示し、過半数で設定できる
管理者選任・解任の規定ができた
連絡がつかない共有者裁判所の決定で変更・管理・持分の取得ができる

なお、分譲マンションの共用部分などには、建物の区分所有等に関する法律という別の法律のルールがあります。この記事の民法のルールとは分けて覚えます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 過半数は頭数ではない:持分の価格で数える。2分の1ちょうどは過半数ではない。
  • 軽微な変更は過半数:「変更はすべて全員の同意」は改正前の説明。形状または効用の著しい変更を伴わないものは過半数。
  • 賃貸の期間:山林10年・土地5年・建物3年・動産6か月。この範囲なら管理として過半数。
  • 保存行為は1人で:同意も、多数決もいらない。
  • 持分の処分は自由、全体の処分は全員:自分の持分だけなら1人で売れる。
  • 費用を払わない共有者:1年以内に払わなければ、償金を払って持分を取得できる。
  • 放棄した持分の行き先:国ではなく、ほかの共有者(255条)。相続人なしで亡くなったときは、特別縁故者への分与が先(平成元年11月24日判決)。
  • 不分割の約束:5年を超えない期間に限る。

行政書士試験では、改正後の条文の言葉(軽微な変更、管理者、所在等不明共有者)に合っているかを問う形が考えられます。宅建試験では、共有の土地・建物を貸す・直す・売る場面で、必要な同意を判断させる形が問われやすいでしょう。登記との関係は177条の記事、民法の優先順位は民法の勉強法を参考にしてください。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題) ゆかさん(持分2分の1)、たくみさん(4分の1)、まおさん(4分の1)が共有する土地を、1年契約で資材置き場として貸す。ゆかさんが1人で賛成すれば、この賃貸を決めることができる。

答え:✕ 5年を超えない土地の賃貸は管理に当たり、持分の価格の過半数で決めます(252条1項・4項)。2分の1は過半数ではないので、ゆかさんだけでは決められません。

問2(このサイトのオリジナル問題) 共有の倉庫の雨どいがこわれ、雨水で中が傷みそうになっている。共有者のだれか1人が、ほかの共有者の同意なしに雨どいを修理することはできない。

答え:✕ こわれるのを防ぐ修理は保存行為です。各共有者が1人でできます(252条5項)。

問3(このサイトのオリジナル問題) 共有の建物について、形状や効用の著しい変更を伴わない工事をするには、共有者全員の同意が必要である。

答え:✕ 形状または効用の著しい変更を伴わない変更(軽微な変更)は、251条1項の「変更」から除かれ、持分の価格の過半数で決めます(252条1項)。令和5年4月1日施行の改正後のルールです。

まとめ

  • 保存は1人で、管理と軽微な変更は持分の価格の過半数で、変更は全員の同意で。
  • 過半数は持分の価格で数え、2分の1ちょうどは足りない。
  • 短い賃貸(土地5年・建物3年など)は管理として過半数で設定できる。
  • 自分の持分は1人で売れる。全体を売るには全員がそろう必要がある。
  • 費用を1年払わない共有者の持分は、償金を払って取得できる。分割はいつでも請求でき、不分割の約束は5年まで。

次に読むなら、相続の記事がおすすめです。相続人が何人かいると遺産は共有になり、相続分がそのまま持分になります(898条)。2つの記事を続けて読むと、この流れを一緒に押さえられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、行政書士試験・宅建試験の基準日である令和8年4月1日時点の内容を、e-Gov法令検索で確かめています。共有の規定が令和3年法律第24号により令和5年4月1日に改正施行されたことは、e-Gov の改正履歴で確かめました。