宅建の一問一答はいらない?四択(過去問)との使い分けと、効く使い方

宅建の一問一答は、1つの文(肢=選択肢)が正しいか誤りかを、理由とともにすぐ答える練習です。四択の過去問は、事例を読み、4つの肢を比べ、2時間で50問をさばく練習です。練習している力が違うので、どちらか一方を選ぶものではありません。

「一問一答はいらない」かどうかは、使い方で決まります。机に向かう時間の代わりにするなら、いりません。四択で✕や△になった肢を一問一答の形にして、通勤や昼休みに間をあけて思い出す道具にするなら、役に立ちます。「一問一答だけで受かるか」には、当サイトは正直に「それだけでは足りない」と答えます。

この記事では、2つの練習の違い、「いらない」と言われる理由のどこが正しいか、研究にもとづく使い方、紙・アプリ・サイトのドリルの使い分けを順に説明します。過去問を何年分・何周やるかは宅建の過去問の記事に任せ、ここでは一問一答との組み合わせ方に絞ります。

一問一答と四択(過去問)は、何を練習しているのか

宅建試験は、50問の四肢択一式(4つの肢から1つを選ぶ形)です。四択の1問は、言いかえれば「4つの○✕の束」です。ですから、1つの肢を正しく判定する力は、一問一答でも四択でも同じように要ります。

とくに一問一答の力がそのまま効くのは、「正しいもの(誤っているもの)はいくつあるか」と数を答えさせる形の問題です(このサイトでは「個数問題」と呼びます)。機構が公開している令和7年度の問題冊子にも、この形の問題が何問もありました。ア〜エのうち正しいものを全部選ばせる組合せの形もあります。どちらも、ほかの肢と比べて消していく解き方が使えません。肢を1つずつ、自分の力で○か✕に決める必要があります。

一方で、四択でしか練習できないこともあります。違いを表にします。

比べる点一問一答四択(過去問)
1回の量短い文が1つ事例と4つの肢
練習する力1肢の正誤と理由を即答する事例を読み取り、比べて選ぶ
向く時間通勤・昼休みの数分机の時間・休日
練習できないこと事例の読み取り、時間配分同じ肢を短い間隔でくり返すこと

本番は2時間で50問なので、1問にかけられるのは平均2.4分です。この時間の中で、「AがBに〜した」という事例から、誰が何をした場面なのかを読み取る。これは、短い文の一問一答では練習できません。

「一問一答はいらない」と言われるのはなぜか

よく挙がる理由は4つです。それぞれ、どこまで当たっているかを見ます。

① 本番は事例で問われるから:当たっている

たとえば一問一答で「重要事項の説明は、宅建士にさせなければならない」に○と答えられても、それだけでは足りません。四択では、「宅建業者Aは、宅建士ではない社員Bに重要事項を説明させ、書面を渡した」のような事例の形で出ます。ここで違反だと気づけるかは、別の力です(宅地建物取引業法35条1項は、宅建業者は「宅地建物取引士をして」書面を交付して説明をさせなければならない、としています)。

対策は、一問一答の文を読んだら、頭の中で「誰が・誰に・何をした場面か」に置きかえてみることです。四択の事例は、その置きかえの逆の作業だからです。

② 過去問の肢を短くしただけで、重なるから:半分当たっている

一問一答集の文は、過去問の肢をもとに作られていることがあります。ただ、重なっていること自体は悪くありません。同じ肢を、すき間時間に、間をあけて解ける形にしたことが一問一答の利点です。困るのは、過去問集と一問一答集を別々に1周ずつして、どちらの✕も見直さないことです。当サイトは、新しい一問一答集を足すより、自分が四択で✕や△にした肢を、一問一答の形に流すことをすすめます。

③ すぐ答えを見て、分かった気になるから:当たっている

文を読んで、考える前に答えを見る。これをくり返すと、読み返しと同じで「見覚え」が増えるだけです。思い出す練習にするには、答えを見る前に、自分で○か✕かと理由を決める必要があります。

④ ✕の文を何度も読むと、まちがいを覚えるから:答え合わせ次第

選択肢の問題を解いたあとに答え合わせをしないと、まちがいの選択肢を正しいと思いこむことがあります。大学生72人が文章を読んで選択肢の問題を解いた実験(Butler & Roediger、2008年)では、答え合わせをしなかった場合、1週間後のテストで、選択肢の問題で見たまちがいの選択肢を答えとして書いてしまうことがありました。答え合わせをした場合はそれが減り、正しく書ける答えが増えました。

一問一答の✕の文は、まちがいの文そのものです。「✕」と押して終わりにせず、どこを直せば○になるかまで言います。こうすれば、まちがいの文を覚えこむおそれは小さくなります。

まとめると、「いらない」と言われる理由の多くは、一問一答そのものより使い方の問題です。

それでも効く使い方:答えを見る前に思い出し、間をあけて戻す

読み返すより、何も見ずに思い出すほうが後まで残ることは、学習の研究で何度も確かめられています(テスト効果。くわしくは読むより「思い出す」ほうが覚える)。ここでは、一問一答の使い方に関係する研究を1つ紹介します。

Kangら(2007年)の実験では、参加者が心理学の短い論文4本を読み、そのあと「選択肢から選ぶ問題」か「自分で答えを書く問題」で練習しました。3日後に、同じ事実を問うテストをしています。答え合わせのない実験では、選択肢の練習のほうが成績がよくなりました。ところが、1問ごとに正しい答えを見せた実験では、自分で答えを書く練習のほうが成績がよくなりました(3日後のテストが選択肢の形のとき。書く形のテストでは、2つの練習に目立った差は出ませんでした)。

この実験は論文の事実を覚えるもので、法律の○✕とは同じではありません。それでも「自分で答えを作ってから、答え合わせをする」という順番は、一問一答にそのまま使えます。○✕は見て選ぶ形ですが、押す前に正しい形を自分で言えば、答えを作る練習に近づけられます。当サイトがすすめる手順は次のとおりです。

  1. 押す前に、正しい形を一言で言う:「誰が・いつまでに・何を」の形で、条文の中身を先に言います。
  2. ✕なら、直し方まで言う:どの言葉を入れかえれば○になるかを言います。
  3. 答え合わせで印を付ける:理由まで言えたら○、当たったが迷ったら△、まちがえたら✕(付け方は「できたつもり」を防ぐ記事)。
  4. ✕と△だけ、間をあけて戻す:3日後、1週間後、3〜4週間後が当サイトの目安です。日をあけて2回続けて○なら、その肢は外します(間隔の考え方は間をあけて繰り返す復習の記事)。
  5. 1回は10問・5分ほどで切る:すき間時間に収まる量にして、毎日の習慣にします(当サイトの目安)。

実際にやってみます(このサイトのオリジナル問題)。答えを見る前に、○か✕かと、✕なら直し方を言ってみてください。

  1. 宅建業法:重要事項の説明は、売買契約を結んだあと、物件を引き渡すまでにすればよい。
  2. 権利関係:未成年者が法定代理人の同意を得ずに結んだ土地の売買契約は、無効である。
  3. 法令上の制限:市街化区域内の農地を、耕作を続ける目的で買う場合は、あらかじめ農業委員会に届け出れば、農地法3条の許可はいらない。

答えは3つとも✕です。直し方は次のとおりです。

  1. 「契約を結んだあと」ではなく、契約が成立するまでの間に説明する(宅地建物取引業法35条1項)。時期のずれで作られた✕です。
  2. 「無効」ではなく、取り消すことができる(民法5条1項・2項)。効果のずれで作られた✕です。無効と取消しの違いは、権利関係で何度も出てくる分かれ目です。
  3. 市街化区域の届出で足りるのは、農地を農地以外にする4条・5条(転用)の場合です(4条1項7号、5条1項6号)。耕作のために権利を移す3条には、この特例がありません。条文の取り違えで作られた✕です。

「時期」「効果」「どの条文か」のように、✕の作られ方を一言で残しておくと、次に別の形で出ても気づきやすくなります。

一問一答だけで受かるか

当サイトの答えは「それだけでは足りない」です。理由は3つあります。

練習した形から離れるほど、効き目は移りにくい

思い出す練習の効果が、練習とは違う問い方にも移るのかを調べた研究をまとめた論文があります(Pan & Rickard、2018年)。122の実験、192の結果を合わせて分析しています。結論は「移ることはある。ただし条件しだい」でした。移りやすかったのは、次のような場合です。

  • 練習と本番で、答えの中身が重なっているとき
  • 答えだけでなく、理由やまわりの知識まで説明する形で練習したとき
  • 練習の段階で、正しく答えられた割合が高いとき

こうした条件がないときは、移らないことが多かった、とも書いています。一問一答の文を「この文は✕」と覚えるだけでは、形の違う四択の事例で使えるとは限りません。上の手順で直し方まで言うのは、理由まで説明する練習にするためです。そのうえで、四択そのものでも練習します。

事例の読み取りと2時間の配分は、四択でしか練習できない

前の見出しのとおり、事例から場面を読み取る力と、50問を2時間で解く時間配分は、一問一答では身につきません。本番と同じ2時間の通し練習の回し方は、宅建の過去問の記事で説明しています。

一問一答集に入っていない所が出る

一問一答集に入っているのは、作った人が選んだ文だけです。試験の範囲は、宅地建物取引業法施行規則8条の7つの事項です。一問一答集の文の数で決まっているわけではありません。法改正で新しくできたルールや、毎年変わる統計の数字も、別に押さえる必要があります。範囲を一通り学ぶのは、基本書(テキスト)の役目です。

「アプリだけで合格」はどう考えるか

アプリか紙かは、道具の形の違いです。アプリの中で四択の過去問を肢ごとに解き、解説から条文に戻り、2時間の通し練習もしているなら、紙の過去問集と同じ練習をしていることになります。足りなくなるのは、アプリの一問一答のモードだけで済ませた場合です。範囲を学ぶ基本書の代わりにもなりません。教材の組み合わせ方は宅建試験の教材の選び方にまとめています。

なお、すき間時間の一問一答は、机の時間の代わりではなく上乗せと考えてください。通勤の数分を毎日足しても、範囲を学んで四択を解く時間が減れば、全体の量は足りなくなります。

四択と一問一答を、1週間の中でどうつなぐか

つなぎ方の決まりは2つです。①四択で✕や△になった肢は、一問一答の形にして、すき間時間に回す。②一問一答で○が続いた論点は、週末に分野を混ぜた四択で、事例の形でも解けるかを確かめる。当サイトの1週間の例です。

いつやること使うもの
平日の机(30〜60分)基本書で1単元を読み、その単元の四択を肢ごとに解く基本書・分野別の過去問集
平日のすき間(5〜15分)3日前・1週間前・3〜4週間前の✕と△を一問一答でカード・アプリ・ドリル
休日分野を混ぜた四択。月に1〜2回は2時間の通し練習年度別の過去問・公式のPDF

四択の肢を一問一答にするときは、問題文を写さず、自分の言葉で1行にします。「35条:説明は契約の成立前。説明するのは宅建士」のように、正しい形を書きます。✕の形(まちがいの文)を書き残さないのは、④の理由からです。

時期によって、一問一答の比重も変わります。範囲を学んでいる時期は、読んだ単元の✕と△を戻す道具です。試験の1か月前からは、宅建業法と法令上の制限の数字・期間の最終確認に使います。試験まで1週間ほどになったら、新しい一問一答集は始めません。これまでに✕と△を付けた肢だけを回します。

紙・アプリ・サイトのドリルは、どう使い分けるか

どの形でも、やることは上の手順と同じです。違うのは、どこで・どう続けやすいかです。

道具向いている使い方確かめること
紙の一問一答集机の横で使う。書き込む。論点のまとまりを見渡す受ける年度向けの版か。条番号があるか
アプリ通勤・昼休み。✕だけを出し直す改正への対応。解説の根拠。自分の✕を残せるか
サイトのドリル登録なしですぐ始める。戻す間隔を任せるどの時点の法令か。根拠の条文が出るか

どれを選ぶときも、次の4つを確かめます。

  • 受ける年度の4月1日の時点の法令に合わせてあるか:宅建試験は、試験の年度の4月1日に施行されている法令から出ます(令和8年度なら令和8年4月1日)。版や更新日を見ます。
  • 解説に条番号があるか:迷ったときに条文へ戻れるかどうかが、△を○にできるかを分けます。
  • ✕と△だけを、間をあけて出し直せるか:できない道具なら、自分で日付を書いて管理します。
  • 文の正誤が、法律の中身で分かれているか:要件・効果・期間・数字・誰がするか、で正誤が決まる文か。言葉遊びのひっかけばかりでは、本番の練習になりません。

道具を2つも3つも並べて使うと、✕と△の記録が分かれて、どれを戻せばよいか分からなくなります。✕と△を集める場所は1つに決めます。

このサイトにも、上の手順をそのまま形にした宅建の5分○✕ドリルがあります。宅建業法・権利関係・法令上の制限・税・その他から、本試験の肢と同じ形のオリジナルの肢を用意しています(過去問の文は使っていません)。1回10問で、答えると解説と根拠の条文が出ます。自分で○・△・✕を付けると、✕と△は3日後・7日後・24日後に戻ってきます。肢は令和8年4月1日の時点の法令で確かめています。記録は使っている端末のブラウザにだけ残り、登録はいりません。紙やほかの道具で同じことをしてもかまいません。

今日からやること

  • 一問一答は、押す前に正しい形を一言で言い、✕なら直し方まで言う。
  • 四択で✕や△にした肢を、正しい形の1行にして、一問一答の束に入れる。
  • ✕と△だけを、3日後・1週間後・3〜4週間後に戻す。日付をどこに残すかを決める。
  • 一問一答で○が続いた論点は、週末に混ぜた四択で、事例の形でも解けるかを確かめる。
  • 使っている一問一答の道具が、受ける年度の4月1日の時点の法令に合わせてあるかを確かめる。

このサイトで次に読むなら、宅建の過去問:何年分・何周・過去問だけで受かるかがおすすめです。この記事で一問一答に流す✕と△を生む、四択の回し方と印の付け方を具体的に決められます。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

  • Kang, S. H. K., McDermott, K. B., & Roediger, H. L. (2007). Test format and corrective feedback modify the effect of testing on long-term retention. European Journal of Cognitive Psychology, 19(4–5), 528–558.(DOI)
  • Butler, A. C., & Roediger, H. L. (2008). Feedback enhances the positive effects and reduces the negative effects of multiple-choice testing. Memory & Cognition, 36(3), 604–616.(DOI/PubMed)
  • Pan, S. C., & Rickard, T. C. (2018). Transfer of test-enhanced learning: Meta-analytic review and synthesis. Psychological Bulletin, 144(7), 710–756.(DOI/著者の研究室のPDF)
  • Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.(DOI/PubMed)
  • Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.(DOI/PubMed)
  • 不動産適正取引推進機構「試験概要」(50問・四肢択一式、試験の時間、出題の根拠となる法令は試験の年度の4月1日現在施行のもの)、同「令和7年度 試験問題」(PDF)(数を答えさせる形・組合せの形の問題があることを確認)
  • e-Gov法令検索:宅地建物取引業法(35条1項)、民法(5条1項・2項)、農地法(3条1項、4条1項7号、5条1項6号)、宅地建物取引業法施行規則8条