宅建で覚えることは、4つの型に分けられます。数字(期間・面積・割合)、要件(どんなときにそのルールが使えるか)、例外(原則と、そうならない場合)、手続の順番(だれが・いつまでに・何をするか)です。型によって、効く覚え方がちがいます。
- 数字は、隠して言い、似た数字を同じ表に並べる。
- 要件は、当てはまる例と当てはまらない例を、自分で1つずつ作って言う。
- 例外は、原則といっしょに、対にして言う。
- 手続の順番は、白紙に矢印で流れを書く。
どの型でも、土台は同じです。テキストを読み返すより、何も見ずに思い出すこと。同じ日にくり返すより、間をあけてくり返すこと。この記事では、まず「覚えること」と「理解すること」の分け方を示し、4つの型ごとの覚え方を条文の例で説明します。最後に、分野ごとの覚え方の記事への地図を置きます。語呂合わせを使うかどうかは、語呂合わせの記事に任せ、ここでは扱いません。
覚えることと理解することは、どう分けるか
分け方は、「理由から導けるかどうか」です。
- 覚えるしかないもの:専任媒介契約の有効期間が「3か月」であることに、理屈で導ける理由はありません。数字や名前は、そのまま覚えます。
- 理解すれば言えるもの:クーリング・オフは、宅建業者が自ら売主となる売買で、業者でない買主のためのルールです(宅建業法37条の2・78条2項)。「プロの売主から、プロでない買主を守るルール」とつかんでおけば、「業者どうしの取引では使えない」「業者が媒介するだけの売買では使えない」ことは、そこから言えます。
この分け方には、研究の裏づけもあります。10の学習法を比べた総説(Dunloskyら、2013年)は、「なぜそうなるのか」を自分に問いかけて説明をつける方法(精緻化質問)を「中くらいの有用性」に分類しました。数字や単語をイメージや音で結ぶキーワード法は「有用性が低い」側です。理由のある所は理由で覚え、理由のない数字だけを覚える対象にすると、覚える量そのものが減ります。
どの型でも土台になる2つのこと
同じ総説で「有用性が高い」とされたのは、練習テスト(思い出す練習)と分散学習(間をあけてくり返すこと)の2つでした。読み返し・線を引く・要約は「有用性が低い」側に入っています。
思い出す練習については、大学生が短い文章を学んだ実験があります(Roediger & Karpicke、2006年)。学んだ5分後のテストでは、くり返し読んだ組のほうがよくできました。ところが1週間後のテストでは、思い出して書き出す練習をした組のほうがよく覚えていました。くり返し読むことは「覚えている」という自信を高めましたが、1週間後の成績は高めませんでした。
間のあけ方については、大人1,350人あまりに事実を覚えてもらった実験があります(Cepedaら、2008年)。よい間隔は、テストまでの期間が長いほど長くなりました。ただしテストまでの期間に対する割合は小さくなり、1週間後のテストならその20〜40%、1年後のテストなら5〜10%ほどでした。
試験勉強に置きかえると、「読んだら閉じて思い出す」「その日に何周もせず、数日後と1週間後にまた思い出す」が、4つの型すべてに共通するやり方です。手順は読むより「思い出す」ほうが覚えると復習の間隔の決め方で説明しています。以下は、その上に乗せる型ごとの工夫です。
型1 数字:隠して言い、似た数字を同じ表に並べる
例として、宅建業法の媒介契約を使います。宅地建物取引業法34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間について「三月を超えることができない」とし、それより長い期間を決めたときは「その期間は、三月とする」と定めています。同じ条の9項は、業務の処理状況の報告を、専任媒介契約では「二週間に一回以上」、自分で見つけた相手とも契約できない特約がある専属専任媒介契約では「一週間に一回以上」としています。
数字を覚えるときの手順は3つです。
- 「制度の名前」を見て「数字」を言う形にする。試験では、制度の名前から数字を思い出すからです。「専任媒介の有効期間は?」「専属専任の報告は?」と、問いの形で書きます。
- 数字の横に条件を書く。「超えられない」「以上」「長く決めたら3か月になる」のように、数字の向きと、決まりに反したときにどうなるかを添えます。選択肢は、数字そのものより条件を入れ替えてくることがあるからです。
- 似た数字を同じ表に並べる。専任と専属専任の報告の頻度のように、取り違えやすい組は、別々のページで覚えず、同じ表の隣の行に置きます。
表の数字の列を手や紙で隠し、制度の名前だけを見て言います。言えなかった行に印を付け、数日後にもう一度隠して言います。宅建で覚える数字の全体は、宅建の暗記一覧に条文と一緒に並べています。
型2 要件:当てはまる例と当てはまらない例を自分で作る
要件は、「どんなときにそのルールが使えるか」の条件です。宅建業法37条の2のクーリング・オフを例にします。使えるのは、宅建業者が自ら売主となる売買で、事務所等以外の場所で買受けの申込みをした人や、契約を結んだ買主です。事務所等で申込みをして、事務所等以外の場所で契約した買主は対象外です。撤回等ができることと方法を告げられた日から8日がたつと使えなくなり、物件の引渡しを受けて代金の全部を支払ったときも使えなくなります。
なお、買主も宅建業者である取引には、37条の2は適用されません(78条2項)。要件は、文のまま覚えようとすると長くなります。かわりに、次の枠に分けます。
| 枠 | クーリング・オフの場合 |
|---|---|
| だれとだれ | 宅建業者が自ら売主、買主は業者でない人 |
| どこで | 事務所等以外の場所で申込み・契約 |
| いつまで | 告げられた日から8日/引渡しと代金全額で終わり |
| どうやって | 書面で |
枠を作ったら、当てはまる例を1つ、当てはまらない例を1つ、自分で作って言います。たとえば「喫茶店で申込みをして、翌日に事務所で契約した」は、申込みの場所で判断するので当てはまる。「事務所で申込みをして、喫茶店で契約した」は当てはまらない。自分で例を作ると、要件のどの部分が判断を分けているかが見えます。条文の言葉を読み返すより、選択肢の事例に当てはめる練習に近くなります。
型3 例外:原則と対にして言う
例外は、原則を覚えていないと意味を持ちません。だから、いつも原則とセットで言います。農地法を例にします。
- 農地を農地以外にする(転用する)ときは、原則として都道府県知事等の許可が要ります(農地法4条1項)。
- ただし、市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出れば、許可は要りません(4条1項7号)。転用のために権利を取得する5条にも、同じ例外があります(5条1項6号)。
- 農地のまま権利を移す3条には、市街化区域だからという例外はありません。
覚えるときは、「原則→例外→例外がない所」を1行で言います。「転用は知事等の許可。市街化区域なら届出で足りる(4条・5条)。3条は市街化区域でも許可」。例外だけを覚えると、例外のない3条に例外を当てはめた選択肢で迷います。
例外には、手がかりを一言添えると崩れにくくなります。都市計画法7条2項は、市街化区域を「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」としています。「市街化を進める区域だから、転用は届出で足りる」と結びつけておくと、例外の位置を思い出しやすくなります。これは当サイトの覚えるための結びつけで、農地法の条文に書かれた理由ではありません。
型4 手続の順番:白紙に矢印で書く
手続は、「だれが・いつまでに・何をするか」の並びです。建築基準法7条の完了検査を例にします。
- 建築主は、工事が終わったら、建築主事等に検査を申請する(7条1項)。
- 申請は、工事が完了した日から4日以内に、建築主事等に届くようにする(7条2項)。
- 建築主事等が申請を受理したら、受理した日から7日以内に検査をする(7条4項)。
- 適合していると認めたら、建築主に検査済証を交付する(7条5項)。
手続は、白紙に矢印で書いて覚えます。矢印の上に日数、矢印の下に主語を書きます。「工事完了 →(4日以内・建築主)→ 申請 →(7日以内・建築主事等)→ 検査 → 検査済証」。書けなかった矢印が、次に読む所です。白紙に思い出して書く練習は、上で紹介したRoediger & Karpickeの実験で使われたやり方とほぼ同じ形です。
手続の選択肢で取り違えやすいのは、主語(申請するのは建築主か、建築主事等か)と、起算日(工事完了の日からか、受理した日からか)です。矢印の上と下に分けて書くのは、この2つを別々に確かめるためです。
分野ごとに、どの型が多いか:覚え方の地図
4つの型の多さは、分野によってちがいます。下の表は、当サイトが各分野の記事で扱っている中身から整理したもので、公式の分類ではありません。分野ごとのくわしい覚え方は、表の記事で説明しています。
表を使うときは、「自分がまちがえた肢は4つの型のどれか」を先に決めます。数字をまちがえたなら隠して言う練習、要件なら例を作る練習、例外なら原則と対で言う練習、手続なら白紙の矢印です。同じ単元でも、まちがえ方によって直し方が変わります。
似た制度は、並べて覚え、混ぜて解く
宅建の選択肢には、似た制度どうしを入れ替えて作られたものがあります。専任と専属専任、農地法の3条・4条・5条、許可と届出、といった組です。これらは別々に覚えるより、同じ表の隣の行に置き、ちがいの列だけを隠して言うほうが、入れ替えに強くなります。
問題を解くときも、同じ単元の問題だけを続けて解くと、どの制度の問題かが最初から分かってしまいます。似た制度の問題を混ぜて解くと、「これはどの制度か」を自分で見分ける練習になります。混ぜ方は問題を「混ぜて解く」練習のしかたで説明しています。
今日からやること
- 最近まちがえた肢を5つ選び、それぞれが数字・要件・例外・手続のどの型かを書く。
- 数字の型なら、制度の名前と数字を問いの形で表に書き、数字の列を隠して言う。
- 要件の型なら、枠に分けて、当てはまる例と当てはまらない例を1つずつ作る。
- 例外の型なら、「原則→例外→例外がない所」を1行で書く。
- 手続の型なら、白紙に矢印で流れを書き、日数と主語を矢印の上下に分ける。
このサイトで次に読むなら、法令上の制限の勉強法と覚え方がおすすめです。4つの型のうち数字と例外が集まる分野で、表を自分で作る手順を例で示しています。
参考にした研究・資料(2026年10月確認)
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.(DOI)
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.(DOI)
- Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., Wixted, J. T., & Pashler, H. (2008). Spacing effects in learning: A temporal ridgeline of optimal retention. Psychological Science, 19(11), 1095–1102.(DOI)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」34条の2第3項・第9項、37条の2第1項、78条2項
- e-Gov法令検索「農地法」3条1項、4条1項7号、5条1項6号
- e-Gov法令検索「建築基準法」7条1項・2項・4項・5項
- e-Gov法令検索「都市計画法」7条2項(市街化区域)
- 条文は、いずれも令和8年4月1日時点の版で確かめました。
働く人の法律試験ノート