不動産取得税の「取得」に当たる場合:相続・合併・贈与・交換・改築と、新築の家の6か月

不動産取得税は、不動産の取得に対し、その不動産がある都道府県が、取得した人に課す税金です(地方税法73条の2第1項)。かかるかどうかは、まず「取得」に当たるかで決まります。

ひとことで言うと、相続・法人の合併・持分どおりの共有物の分割は課税されない。贈与・交換・売買・家の建築は課税される。さらに、改築で家の価格が増えたら、その改築を取得とみなし、増えた分に課税します。新築の家は「最初に使われたか売られた時」に取得したとみなし、6か月たっても使われず売れないときは、6か月たった日に持ち主が取得したとみなします。

この記事は「取得」の範囲と、徴収のしかたに絞ります。税率、免税点、新築住宅の1,200万円控除、宅地の課税標準の特例など、計算の数字は不動産の税金をわかりやすく(不動産取得税と固定資産税)で扱っています。

身近な例で考えると

会社員のけいこさんの家族に、1年のあいだに次のことが起きました。

起きたこと不動産取得税理由
父が亡くなり、実家を相続したかからない相続は非課税(73条の7第1号)
兄と2分の1ずつの共有地を分け、半分ずつ単独の土地にしたかからない持分を超えない共有物の分割(同条2号の3)
叔母から土地をもらった(贈与)かかる非課税の一覧にない
自分の土地と、となりの人の土地を交換したかかる非課税の一覧にない
家の柱や屋根を取り替え、価格が上がったかかる(増えた分)改築を取得とみなす(73条の2第3項)

相続や持分どおりの分割は、財産が形の上で移るだけで、新しく財産を手に入れたとは見ない、という並びです。たとえるなら、家族の中で持ち物の名札を付け替えただけ、という扱いです。ただし本物のルールでは、同じ家族の中でも贈与は課税されます。「家族だから非課税」ではなく、条文の一覧に入っているかで決まります。

条文ではこう決まっている

課税されない取得(73条の7)

73条の7は、不動産取得税を課することができない取得を号ごとに並べています。宅建で押さえるのは次の号です。

  • 1号:相続(包括遺贈と、相続人に対する遺贈を含む)による取得。
  • 2号:法人の合併、または政令で定める分割による取得。
  • 2号の3:共有物の分割による取得。ただし、分割前の持分の割合を超える部分の取得は除く。
  • 3号:委託者から受託者に信託財産を移す場合の取得(信託の一定の場合)。

また、土地区画整理事業の換地処分で換地を取得した場合も、不動産取得税は課されません(73条の6第3項)。新しい土地をもらったように見えますが、従前の土地の置きかえだからです。

「取得」とみなす場合(73条の2)

  • 新築の家屋(2項):家屋が新築されたときは、最初の使用または譲渡が行われた日に家屋を取得したものとみなし、その家屋の所有者または譲受人を取得者とみなす。新築の日から6か月を経過しても最初の使用・譲渡が行われないときは、6か月を経過した日に取得があったものとみなし、その時の所有者を取得者とみなす。
  • 6か月の特例:都市再生機構、地方住宅供給公社、家屋を新築して譲渡することを業とする政令で定める者が売り渡す新築の住宅は、6か月を1年と読み替える期限つきの特例があります(附則10条の3第1項)。
  • 改築(3項):家屋を改築したことで価格が増加した場合は、その改築を家屋の取得とみなす。課税標準は「当該改築に因り増加した価格」(73条の13第2項)。

言葉の意味は73条で決まっています。「建築」は新築・増築・改築をまとめた言い方です(6号)。「増築」は家屋の床面積か体積を増やすこと(7号)。「改築」は、家屋の壁・柱・床・はり・屋根などの取替えや取付けで、その支出が資本的支出と認められるものです(8号)。

納め方(73条の17・73条の18)

  • 不動産取得税の徴収は、普通徴収(ふつうちょうしゅう=都道府県が税額を計算して納税通知書を送る方法)による(73条の17第1項)。
  • 不動産を取得した人は、都道府県の条例で定める期間内に、取得の事実などを申告または報告しなければならない。ただし、その期間内に表示の登記か所有権の登記を申請したときは、この限りでない(73条の18第1項)。

「申告するのだから、自分で税額を計算して納める申告納付だ」と考えるのは誤りです。申告は取得の事実を知らせるためのもので、税額は都道府県が決めて通知します。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:相続人でないめいに、遺言で土地を1筆あげた(特定遺贈)。→73条の7第1号の「相続」に入るのは、包括遺贈と相続人に対する遺贈です。相続人でない人への特定遺贈は入らないので、課税されます。
  • 当てはまる例:兄と2分の1ずつの共有地(600平方メートル)を分けて、けいこさんが400平方メートルを単独で取得した。→分割前の持分(2分の1)の割合を超えて取得した部分は、非課税から外れます(73条の7第2号の3のかっこ書き)。持分どおりに分けていれば、全部が非課税です。
  • 当てはまらない例:A社がB社を吸収合併し、B社の本社ビルがA社のものになった。→法人の合併による取得で、課税されません(73条の7第2号)。
  • ひっかけやすい例:家の改築で、価格が50万円増えた。→改築による取得は「建築」に当たるので、免税点は1戸66万円です(73条の15の2第1項。令和8年4月1日施行の改正後の額で、改正前は23万円でした)。課税標準は増えた50万円なので、免税点に届かず課税されません。
  • ひっかけやすい例:個人のこうじさんが家を新築したが、自分で住むか売るかを決めないまま、6か月だれも使わず、売れてもいない。→6か月を経過した日に取得があったものとみなされ、こうじさんが取得者になります(73条の2第2項ただし書)。

似ているルールとの違い

同じ「相続」「贈与」「交換」でも、税の種類によって扱いが違います。宅建で並べて比べる組み合わせです。

取得の原因不動産取得税ほかの税で気をつけること
相続課税されない相続税の対象。登録免許税は相続の税率
贈与課税される贈与税の対象。印紙税は記載金額のない契約書
交換課税される譲渡所得に交換の特例。印紙税は高いほうの価額
法人の合併課税されない―

贈与税の住宅取得等資金の特例は宅建の贈与税、交換をめぐる各分野のルールは宅建の「交換」をまとめてで整理しています。毎年かかる固定資産税の側の手続き(台帳・縦覧・審査の申出)は固定資産税の台帳と手続きで扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の宅建試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、不動産取得税が主な論点の問は21問(21回)でした。直近10回では不動産取得税が5回、固定資産税が5回で、同じ問24の位置にどちらか一方が出ていました(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。

  • 非課税の範囲を広げる型:「贈与・交換も非課税」は誤り。非課税は相続・合併・持分どおりの共有物の分割など、73条の7に並ぶものだけ。
  • 遺贈の範囲:非課税に入るのは包括遺贈と相続人に対する遺贈。相続人でない人への特定遺贈は課税。
  • 改築は取得でないとする型:価格が増加した改築は取得とみなす。課税標準は増えた分だけ。
  • 新築の家の取得の時期:完成の日ではなく、最初の使用か譲渡の日。6か月(特例の対象なら1年)たてば、その日の所有者。
  • 徴収の方法:普通徴収。申告納付ではない。固定資産税も普通徴収です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
家屋の建築や販売を仕事にしていない個人のこうじさんが家屋を新築したが、新築の日から6か月を経過しても、その家屋は使用も譲渡もされていない。この場合、6か月を経過した日に家屋の取得があったものとみなされ、その日の所有者であるこうじさんに不動産取得税が課される。

答え:○ 分かれ目は、使われず売れてもいない新築の家に、いつ取得があったとみなすかです。新築の家屋は、最初の使用か譲渡の日に取得したとみなすのが原則ですが、新築の日から6か月を経過してもそれがないときは、6か月を経過した日に取得があったものとみなし、その時の所有者を取得者とみなします(地方税法73条の2第2項)。まだ使っても売ってもいないから課税されない、と考えると✕を選びます。都市再生機構や政令で定める建売業者などが売る新築住宅は、6か月を1年とする期限つきの特例があります(附則10条の3第1項)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
けいこさんが自宅の柱や屋根を取り替える改築をし、家屋の価格が増加した。この改築は家屋の取得とみなされ、課税標準は、改築後の家屋全体の価格となる。

答え:✕ 分かれ目は、改築のときの課税標準です。価格を増加させた改築は家屋の取得とみなされます(73条の2第3項)が、その課税標準は「当該改築に因り増加した価格」です(73条の13第2項)。正しくは、改築で増えた分だけが課税標準になります。不動産を取得した時の不動産の価格を課税標準とする原則(73条の13第1項)を、改築にそのまま当てはめた取り違えです。増えた分が免税点(建築は1戸66万円)に届かなければ、課税されません。

問3(このサイトのオリジナル問題)
けいこさんは、自分の土地と、となりのたかおさんの土地を、交換差金の支払いなしで交換した。お金のやりとりがない交換なので、けいこさんがたかおさんの土地を取得したことについて、不動産取得税は課されない。

答え:✕ 分かれ目は、交換が非課税の取得に入るかどうかです。不動産取得税を課することができない取得は、73条の7が並べる相続・法人の合併・持分を超えない共有物の分割などで、交換はこの中にありません。正しくは、交換で土地を取得したけいこさんにも、たかおさんにも、不動産取得税が課されます。お金を払っていないことを、非課税の理由と取り違えた形です。同じく対価のない贈与も課税されます。

まとめ

  • 非課税:相続(包括遺贈・相続人への遺贈を含む)、法人の合併、持分を超えない共有物の分割、区画整理の換地など。
  • 課税:売買、贈与、交換、相続人でない人への特定遺贈、家の建築(新築・増築・改築)。
  • 改築で価格が増えたら取得とみなす。課税標準は増えた分。
  • 新築の家は最初の使用か譲渡の日に取得。6か月(特例の対象は1年)たてば、その日の所有者が取得者。
  • 徴収は普通徴収。取得した人は条例の期間内に申告・報告(期間内に登記を申請すれば不要)。

税の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「税・その他」で続けて解けます。税率・免税点・住宅の控除まで含めた20問は宅建の税・その他の一問一答にあります。次に読むなら、不動産の税金をわかりやすくで、この記事で「課税される」となった後の計算(課税標準の特例と税率)を確かめるのがおすすめです。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。期限つきの特例は、期限の年月日ではなく、しくみだけを書いています。

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