宅建の権利関係は、令和3年度(10月)の問題で当サイトが確かめた並びでは問1〜問14の14問でした。民法10問・借地借家法2問・区分所有法1問・不動産登記法1問です。公式の内訳ではなく、年度で変わりうる数です。
勉強の優先順位は、「よく出る所」ではなく「条文で答えが固まる所」から付けます。借地借家法と区分所有法の数字、意思表示・相続のように要件(ルールが当てはまる条件)と効果が条文に並んでいる所は、覚えた分だけそのまま点になります。反対に、判例の細かい事案、親族の細部、条文に書いていない理屈の積み上げは、深追いしません。事例問題は、読みながら図を描き、登場人物の表を作ってから選択肢に入ります。
読み終えたら、手元の教材の権利関係の章に「固める」「基本だけ」の2種類の印を付けるところから始めてください。
宅建の権利関係は何問で、どの法律から出るのか
権利関係の範囲は、宅地建物取引業法施行規則8条2号の「土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。」です。法律の名前は書かれていないので、どの法律から何問出るかは、問題を数えて確かめるしかありません。不動産適正取引推進機構(試験を実施している機関。以下「機構」)は、分野ごとの問題数を公表していません。
下の表は、機構の公開している令和3年度(10月)の問題冊子で、各問が扱う法律を当サイトが確かめたものです。分野の分け方は宅建試験の得点戦略と同じく、施行規則8条の号にそろえています。
| 法律 | 問数(令和3年度10月) | 主な中身 |
|---|---|---|
| 民法 | 10問(問1〜問10) | 契約・物権・担保・相続など |
| 借地借家法 | 2問(問11・問12) | 借地1問・借家1問(借家は民法とあわせて) |
| 区分所有法 | 1問(問13) | マンションの管理と集会 |
| 不動産登記法 | 1問(問14) | 登記の種類と申請 |
| 合計 | 14問 | 50問の約3割 |
この表から分かることは2つあります。1つ目は、民法以外の3つの法律で4問あることです。条文の数は民法よりずっと少ないので、1問あたりに読む量が小さい所です。2つ目は、民法の10問の範囲がとても広いことです。民法の条文は第千五十条まであり、どこから何問出るかは公式には決まっていません。
目標の置き方は得点戦略の記事の型に合わせます。「宅建業法で稼ぐ型」なら権利関係で落としてよいのは6問、つまり14問中8問が目標です。当サイトの目安としては、民法以外の4問で3問、民法10問で5問を取る形をすすめます。範囲の狭い4問を後回しにせず固めておくほうが、民法で取りこぼした年にも崩れにくいからです。
優先順位はどう付けるか:「よく出る所」ではなく「条文で固まる所」から
「権利関係 優先順位」で調べると、よく出るテーマの一覧が見つかります。けれど、民法は範囲が広く、どのテーマが出るかは公式に決まっていません。どこが出るかを当てにいくと、外れた年に何も残りません。そこで当サイトは、出る・出ないの予想ではなく、「覚えたことで正誤が決まるか」で順番を付けます。
権利関係の選択肢は、おおまかに次の3種類に分けられます。
- 条文の要件・効果・数字をそのまま聞く肢:「3か月以内」「善意でかつ過失がない第三者」のように、条文の言葉で正誤が決まります。
- 判例の結論を聞く肢:条文に書いていない場面について、裁判所がどう判断したかを聞きます。
- 事例に当てはめる肢:登場人物が3人、4人と出てきて、だれが勝つかを聞きます。使う道具は1か2です。
4つの選択肢から1つを選ぶ形なので、4肢のうち2つか3つを1の知識で切れれば、残りは比べて選べます。1の知識は、覚えた量がそのまま点になり、時間がたっても崩れにくい知識です。ですから1を最優先にし、3は1を使う練習として、2は結論と理由を一言で言えるところまでにとどめます。
もう一つの物差しは、施行規則8条2号の「土地及び建物についての」という言葉です。売る・貸す・お金を借りて担保に入れる・相続するといった、土地と建物の権利が動く場面が中心です。この物差しで、民法の中でも時間をかける所と、かけない所が分かれます。
民法の範囲はどこまでやるか:固める所と深追いしない所
2つの物差しで分けると、次のようになります。「基本だけ」は捨てるという意味ではありません。教材の該当ページを読み、問題で確かめるところまではやり、それ以上の細かい知識を追わない、という意味です。
| 扱い | どこ | 理由 |
|---|---|---|
| 固める | 借地借家法の期間・更新・特約 | 数字と「不利な特約は無効」で決まる |
| 固める | 区分所有法の決議の数字 | 条文の数字で決まる。改正あり |
| 固める | 意思表示・代理・177条・抵当権 | 第三者が守られる要件が条文にある |
| 固める | 相続(相続人・相続分・放棄) | 期間と割合が条文にある |
| 基本だけ | 不動産登記法 | 1問に対して手続きの細部が多い |
| 基本だけ | 債権の細かい仕組み・相隣関係など | 教材の章が小さく、出ても1肢 |
| 深追いしない | 婚姻・親子など親族の細部 | 土地・建物の権利から遠い |
| 深追いしない | 判例の細かい事案の暗記 | 結論と理由の一言で足りる |
固める所は、条文の言葉で覚える
たとえば借地借家法9条は「この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。」、30条は同じ形で「建物の賃借人に不利なもの」を無効としています。選択肢に「特約で〜と定めれば有効である」と出てきたら、まず「借りる人に不利な特約か」を見ます。それだけで切れる肢があります。期間の数字(借地権は30年など)とあわせて、借地借家法をわかりやすくで確かめてください。
民法96条3項は「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」です。守られるのは「詐欺」の場合の、「善意でかつ過失がない」第三者だけです。強迫には同じ定めがありません。条文の言葉どおりに覚えておけば、「強迫の場合も善意無過失の第三者には対抗できない」という肢を、すぐに誤りと判断できます。
相続では、915条1項の「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」が典型です。期間の起算点(数え始め)が「亡くなった時」ではなく「知った時」であることまで、条文の言葉で覚えます。
区分所有法は、教材の版を先に確かめる
区分所有法は、令和8年4月1日施行の改正で、集会の決議の数え方が変わりました。e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の版を見ると、39条1項は「出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数で決する。」です。令和8年度の試験は、この日に施行されている法令から出ます。古い教材の数字のまま覚えると、正しい肢を誤りと判断してしまいます。改正後の数字は区分所有法をわかりやすくにまとめています。
不動産登記法は1問分だけ
不動産登記法は、手続きの決まりが細かく、教材でも読むと長い所です。けれど令和3年度(10月)の問題では1問(問14)でした。表示の登記と権利の登記の違い、相続登記の申請義務(76条の2第1項。知った日から3年以内)、仮登記の基本までにとどめます。全体像は不動産登記法をわかりやすくで確かめられます。
民法の10問は、どの順番で進めるか
民法は、教材の章の順(総則→物権→債権→相続)で進めると、前半の抽象的な所で止まりやすくなります。当サイトは、土地と建物の場面ごとに、使う条文をまとめて進める順をすすめます。
- 売る・買う:だまされた・勘違いした契約(意思表示)、代わりに契約する人(代理)、二重に売られたとき(二重譲渡と登記)、欠陥があったとき(契約不適合責任)、約束が守られないとき(債務不履行と解除)。
- 貸す・借りる:民法の賃貸借を読んだら、すぐ続けて借地借家法を読みます。民法のどこを修正したのかが一度に見えます。
- お金を借りて担保に入れる:抵当権、保証と連帯保証。
- 持ち主が亡くなる:相続(相続人・相続分・放棄・遺留分)。
- 残り:時効、共有、不法行為、制限行為能力者など。
どの場面も、1周目のゴールは「その場面で使う条文の要件を、何も見ずに言える」ことです。判例は、結論と理由を一言で言えれば十分です。1周目から判例の事案の細部まで追うと、10問のために使える時間がすぐになくなります。
事例問題はどう読むか:図を描き、登場人物の表を作る
権利関係の事例問題は、知識が足りなくて落とすより、人物の関係を取り違えて落とすことがよくあります。頭の中だけで読まず、問題用紙の余白に書きます。手順は次のとおりです。
- 人物を横に並べ、物を書く:A・B・Cを左から並べ、土地や建物は「甲」と書きます。
- 出来事に矢印と番号を付ける:「①A→B 売買」「②B→C 売買」「③A 取消し」のように、時間の順に番号を振ります。順番で答えが変わる問題が多いからです。
- 人物の表を作る:人物ごとに「何をしたか」「事情を知っていたか」「登記はあるか」を一行で書きます。
- 争いを一行にする:「AはCに『甲を返せ』と言えるか」のように、だれがだれに何を言いたいのかを書きます。
- 条文を当てる:その一行に使う条文を決めてから、選択肢を読みます。
(このサイトのオリジナル問題)Aは、Bにだまされて、自分の甲土地をBに売った。Bは甲土地をCに売った。Cは、AがBにだまされたことを知らず、知らないことに過失もなかった。その後、AはBとの売買を詐欺を理由に取り消した。AはCに対して、甲土地を返すよう求めることができるか。
図は「A →① 売買 → B →② 売買 → C」「③ A 取消し(詐欺)」の一行で足ります。人物の表は次のとおりです。
| 人物 | したこと | 事情を知っていたか |
|---|---|---|
| A | だまされて売った。③で取り消した | (だまされた本人) |
| B | Aをだまして買い、Cに売った | 知っていた(だました) |
| C | Bから買った | 知らず、過失もない |
争いは「AはCに『甲を返せ』と言えるか」です。使うのは96条3項で、詐欺による取消しは「善意でかつ過失がない第三者」に対抗できません。Cはこれに当たるので、Aは返すよう求めることができません。表の一つのマスを変えるだけで答えが変わることも確かめます。Cが事情を知っていたなら、Cは守られません。だまされたのではなく強迫されたのなら、96条3項は当たりません。こうして「どのマスが答えを決めたか」を言えると、同じ型の問題を別の聞かれ方で出されても取り出せます。
問題の冒頭に判決文を示し、「判決文によれば正しいものはどれか」と聞く形もあります(令和3年度(10月)の問題でも、民法の問題の中にありました)。この形では、まず判決文の結論を一行にまとめ、選択肢がその言い換えか、判決文と逆のことを言っているかを照らします。知らない判例でも、読んで解ける肢が混ざっています。
行政書士の民法とは、どこが違うか
民法の条文そのものは同じですが、勉強のしかたは変わります。
| くらべる点 | 宅建 | 行政書士試験 |
|---|---|---|
| 範囲の書き方 | 土地・建物の権利(施行規則8条2号) | 科目として「民法」 |
| 民法以外の法律 | 借地借家法・区分所有法・不動産登記法 | なし |
| 答え方 | 4肢から1つ選ぶ | 5肢択一と、40字程度の記述式 |
| 親族の細部 | 深追いしない | 改正も含めて範囲に入る |
いちばん大きい違いは答え方です。宅建では、正しい肢を見分けられれば点になります。行政書士試験では、要件と効果を自分の言葉で書く記述式があります。それでも宅建の勉強で「教材を閉じて要件を言う」練習をすすめるのは、読み返すより何も見ずに思い出すほうが、時間がたっても記憶に残りやすいからです(理由は読むより「思い出す」ほうが覚えるで、研究とあわせて説明しています)。
もう一つ気をつけたいのは、宅建で覚えた借地借家法の決まりを、行政書士試験の民法の問題に持ち込まないことです。借地借家法は民法の賃貸借を修正した法律なので、民法だけを前提にした問題では答えが変わります。両方を受ける人は、宅建の次に行政書士を受けるならで、使える所と増える所を確かめてください。行政書士試験の民法の優先順位は行政書士試験の民法の勉強法にまとめています。
働きながら、1週間でどう回すか
権利関係は、1日に1つの場面だけ進めるのが続けやすい形です。当サイトの例を示します。
| 時間 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 平日30分 | 条文と教材を5分読む→閉じて要件を3分書き出す→分野別の問題を肢ごとに15分→言えなかった肢だけ教材に戻る | 1つの場面の条文を言えるようにする |
| 平日60分 | 30分の流れに、事例問題を図と表で解く練習を足す | 当てはめの練習 |
| 休日3時間 | 1年分の権利関係の問題を時間を計って解く→分野ごとの失点を数える→はみ出した場面を1つ選んで解き直す | 目標の8問との差を見る |
理由を言えなかった肢には印を付け、2〜3日後と1週間後にもう一度解きます。正解できた肢も、間をあけてもう一度解きます。間のあけ方は復習の間隔の決め方で説明しています。権利関係ばかり続けると宅建業法の復習が空くので、休日のうち1回は、権利関係と宅建業法を混ぜて解く日にします。宅建業法の8種制限のように、民法の知識が前提になる単元があるからです。
なお、この回し方は勉強の量を減らすためのものではありません。権利関係だけでも、場面ごとに条文を言えるようにして、問題で何度も確かめる時間がまとまって要ります。全体の時間の見積もり方は宅建の勉強時間の考え方を見てください。
今日からやること
- 教材の権利関係の目次に「固める」「基本だけ」「深追いしない」の印を付ける(上の表のとおり)。
- 教材の発行時期を見て、区分所有法が令和8年4月1日施行の改正後の数字になっているかを確かめる。
- 借地借家法・区分所有法・不動産登記法の4問分を、1周目の予定に入れる(借地借家法は民法の賃貸借のすぐあと、区分所有法と不動産登記法は民法の1周目のうちに)。後回しにしない。
- 次に事例問題を解くときから、余白に図と人物の表を書き、「どのマスが答えを決めたか」を一言で言う。
このサイトで次に読むなら、意思表示をわかりやすくがおすすめです。第三者が出てくる事例問題のほとんどは、ここで扱う「だれが、だれに、何を言い張れるか」の形をしているので、図と表の練習の材料にそのまま使えます。分野ごとに何点を目標にするかをまだ決めていない人は、宅建試験の得点戦略で型を選んでから読むと、どこまでやるかの線が引きやすくなります。
参考にした公式の情報・研究(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の版を指定して確かめました。
- 不動産適正取引推進機構「宅建試験の問題及び正解番号表」(並びを確かめた令和3年度10月試験の問題。公式の内訳ではない)、同「試験概要」(出題の範囲・法令の基準日)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」8条(試験の内容)
- e-Gov法令検索「民法」(96条、177条、915条)、「借地借家法」(9条、30条)、「建物の区分所有等に関する法律」(39条)、「不動産登記法」(76条の2)
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x(思い出す練習の効果)
働く人の法律試験ノート