宅地造成及び特定盛土等規制法は、盛土(もりど=土を盛ること)や切土(きりど=土を削ること)で崖くずれや土砂の流出が起きないよう、工事を規制する法律です。知事が指定した「宅地造成等工事規制区域」の中で、一定の規模を超える盛土・切土・土石の堆積(たいせき=積み置き)をするには、工事を始める前に知事の許可がいります(12条1項)。
この法律は、もとは「宅地造成等規制法」という名前でした。令和4年法律第55号による改正が2023年5月26日に施行され、今の名前になりました。宅地だけでなく、農地や森林での盛土や、土を一時的に積んでおくことも規制の対象に入っています。古い問題集の知識のままだと答えがずれることがあるので、注意が必要です。この記事は、令和8年4月1日時点の条文で確かめています。
身近な例で考えると
愛知県の山あいの町で、畑を宅地にして家を建てる話です。町の一部は、知事が宅地造成等工事規制区域に指定しています。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| りょうさん | 工事主(工事を頼む人) | 畑を宅地にする |
| ちさとさん | 工事施行者(工事をする会社) | 盛土の工事を請け負う |
| しんじさん | 建設会社の社長 | 空き地に土を積んでおく |
- りょうさんは、斜面の畑に土を盛って平らにし、家を建てたい。盛土をすると、高さ1.5mの崖ができる。
- 許可を申請する前に、りょうさんは近所の人に説明会を開き、工事の中身を知らせた(11条)。
- りょうさんは、工事を始める前に知事に許可を申請した。土地を借りている人など、工事する土地に権利を持つ人全員の同意も集めた。
- 許可が下り、ちさとさんの会社が工事をした。終わったあと、りょうさんが知事の完了検査を受け、検査済証をもらった。
- 同じ区域で、しんじさんは別の工事で出た土を空き地に3mの高さで積んでおき、あとで運び出す予定だ。これも工事の前に知事の許可がいる。
たとえると、規制区域は「土をいじるときは届け出て、先生の許可をもらう場所」です。ただし本物のルールでは、小さな工事まで全部が対象ではありません。崖の高さや面積が政令の規模を超えるときだけ許可がいります。
なお、畑を宅地にするときは、農地法の許可も別に問題になります。くわしくは農地法をわかりやすくを見てください。
条文ではこう決まっている
言葉の意味(2条、施行令3条・4条)
- 宅地:農地・採草放牧地・森林(まとめて「農地等」)と、道路・公園などの公共施設の土地を除いた土地(2条1号)。
- 宅地造成:「宅地以外の土地を宅地にするため」の盛土などで、政令で定める規模のもの(2条2号)。
- 特定盛土等:宅地か農地等で行う盛土などで、となりや近くの宅地に災害を起こすおそれが大きいとして政令で定めるもの(2条3号)。畑のままの盛土も入りうる。
- 土石の堆積:宅地か農地等で、土や石を一定期間積んでおき、あとで取り除くもの(2条4号)。
- 工事主:工事を注文する人か、自分で工事をする人(2条7号)。工事施行者:工事を請け負う人か、自分で工事をする人(2条8号)。
宅地造成と特定盛土等の規模は、施行令3条で同じ基準が決まっています。土石の堆積は施行令4条です。
| 工事の種類 | 対象になる規模 |
|---|---|
| 盛土 | 高さ1m超の崖ができる |
| 切土 | 高さ2m超の崖ができる |
| 盛土と切土を同時に | 合わせて高さ2m超の崖ができる |
| 崖ができない盛土 | 盛土の高さが2m超 |
| 上のどれでもない盛土・切土 | 面積が500㎡超 |
| 土石の堆積 | 高さ2m超、または面積500㎡超 |
宅地造成等工事規制区域(10条〜17条)
- 知事は、基本方針と基礎調査の結果をふまえ、市街地や集落などで、災害のおそれが大きい区域を指定できる(10条1項)。指定の前に関係市町村長の意見を聴き、指定したら公示する(10条2項・4項)。
- 条文は、都市計画区域の中かどうかで区域を決めていない。
- 工事主は、許可の申請の前に、説明会などで周辺の住民に工事の中身を知らせる(11条)。
- 区域内の宅地造成等(宅地造成・特定盛土等・土石の堆積)の工事は、工事主が着手前に知事の許可を受ける。災害のおそれがないとして政令で定める工事は除く(12条1項)。
- 許可の基準:技術的な基準(13条)に合う。工事主に資力と信用がある。工事施行者に能力がある。土地の所有者など権利を持つ人「全ての同意」がある(12条2項)。知事は災害防止のための条件を付けられる(12条3項)。
- 国や都道府県などが行う工事は、知事との協議が成立すれば許可があったとみなす。区域の指定後に都市計画法29条の開発許可を受けた宅地造成・特定盛土等の工事も、許可を受けたとみなす(15条)。
- 工事の計画を変えるときは知事の許可。軽い変更なら、遅滞なく届け出ればよい(16条)。
- 工事が終わったら知事の検査を受け、合格すると検査済証が出る。土石の堆積は、土を全部取り除いたことの確認を受ける(17条)。
許可のかわりに届け出る場面(21条)と、土地の保全(22条)
| 場面 | 期限 | 条文 |
|---|---|---|
| 区域の指定のとき、すでに工事中 | 指定の日から21日以内 | 21条1項 |
| 擁壁などに関する政令の工事 | 着手の14日前まで | 21条3項 |
| 道路などの公共施設の土地を宅地などに転用 | 転用した日から14日以内 | 21条4項 |
- 区域内の土地の所有者・管理者・占有者は、土地を常に安全な状態に保つよう「努めなければならない」(22条1項)。努力の義務。
- 知事は、擁壁(ようへき=土どめの壁)の設置などを勧告できる(22条2項)。
特定盛土等規制区域と造成宅地防災区域(26条・27条・30条・45条)
- 特定盛土等規制区域:宅地造成等工事規制区域「以外」の区域で、盛土などで人の命や体に危害が出るおそれが特に大きい区域を、知事が指定する(26条1項)。
- この区域で特定盛土等・土石の堆積をする工事主は、着手の30日前までに知事に届け出る(27条1項)。
- そのうち大規模なものは、着手前に知事の許可がいる(30条1項)。盛土・切土の規模は、盛土で高さ2m超の崖、切土で高さ5m超の崖、盛土の高さ5m超、面積3,000㎡超など(施行令28条・23条)。
- 造成宅地防災区域:すでに造成された宅地のまとまりで、災害のおそれが大きいものを知事が指定する。宅地造成等工事規制区域の中の土地は除く(45条1項)。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:規制区域で、りょうさんが畑に盛土をして、高さ1.5mの崖ができる宅地にする。盛土で1m超の崖なので、知事の許可がいります(12条1項、施行令3条1号)。
- 当てはまらない例:規制区域で、切土をして高さ1.5mの崖ができる。面積は300㎡。切土は2m超の崖から、面積は500㎡超からなので、許可はいりません。
- ひっかけやすい例:規制区域で、畑のまま使うために、畑に高さ2.5mの盛土をする。「宅地にしないから対象外」ではありません。農地等での盛土も特定盛土等に入り、崖ができない盛土でも高さ2m超なら許可がいります。
- ひっかけやすい例:規制区域で、しんじさんが土を高さ1.5m、面積600㎡で積んでおく。高さは2m以下ですが、面積が500㎡超なので、土石の堆積として許可がいります(施行令4条2号)。
- 当てはまらない例:規制区域の指定より前から続けている工事は、許可を取り直すのではありません。指定の日から21日以内に知事に届け出ます(21条1項)。
3つの区域はどう違うか
| 区域 | どんな場所 | 主なルール |
|---|---|---|
| 宅地造成等工事規制区域 | 市街地・集落など | 一定規模で許可(1m・2m・500㎡など) |
| 特定盛土等規制区域 | 規制区域の外で危険な所 | 30日前の届出、大規模なら許可 |
| 造成宅地防災区域 | 造成ずみの危険な宅地 | 規制区域の中には指定しない |
都市計画法の開発許可とのちがいも整理しておきます。開発許可は、建物を建てるための土地の区画や形を変えるとき、都市計画区域などで面積を基準に求められる許可です。くわしくは開発許可をわかりやすくで説明しています。規制区域の指定後に開発許可を受けた宅地造成・特定盛土等の工事は、この法律の許可も受けたとみなされます(15条2項)。2つの許可を別々に取る必要はありません。
また、この法律の12条1項の許可は、宅建業法33条で「広告を始めてよい時期」を決める許可の一つに入っています(宅建業法施行令2条の5)。広告の話は宅建業の広告のルールをわかりやすくで扱います。
試験ではここをまちがえやすい
- 数字の入れかえ:盛土は1m超の崖、切土は2m超の崖。盛土と切土を合わせて2m超、崖のない盛土は2m超、面積は500㎡超。盛土と切土の数字を入れかえた形に注意します。
- 「宅地以外は対象外」とする形:改正後は、農地等での盛土(特定盛土等)や土石の堆積も規制区域の許可の対象です。旧法の知識で答えるとまちがえます。
- 期限の取りちがえ:指定時に工事中なら21日以内、擁壁などの工事は14日前まで、公共施設の土地の転用は14日以内、特定盛土等規制区域の届出は30日前まで。
- だれが許可を受けるか:条文は「都道府県知事」の許可としています。許可を受けるのは工事主で、工事を請け負う会社(工事施行者)ではありません。
- 保全の義務:土地を安全に保つことは「努めなければならない」という努力義務です。「保たなければならない」とする形に注意します。
- 区域の重なり:造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域の中には指定されません。
宅建試験は、試験を行う年度の4月1日現在で施行されている法令から出題されます(不動産適正取引推進機構の試験概要)。機構は過去問のページで、法改正により現在の法律と一致しない場合があると注意しています。この法律は2023年に大きく変わったので、古い問題を解くときは今の条文と見比べてください。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
宅地造成等工事規制区域内で、宅地にするために切土をし、高さ1.5mの崖ができる。土地の面積が400㎡なら、知事の許可はいらない。
答え:○
切土は高さ2m超の崖ができるときに対象になります(施行令3条2号)。面積も500㎡以下です。ほかの号にも当たらないので、許可はいりません。
問2(このサイトのオリジナル問題)
宅地造成等工事規制区域内の農地で、農地として使い続けるために行う盛土は、宅地にしない以上、知事の許可が必要になることはない。
答え:✕
農地等で行う盛土も、政令の規模に当たれば特定盛土等です(2条3号、施行令3条)。規制区域内の特定盛土等の工事は、着手前に知事の許可がいります(12条1項)。
問3(このサイトのオリジナル問題)
特定盛土等規制区域内で特定盛土等の工事をする工事主は、規模にかかわらず、工事に着手した日から30日以内に知事に届け出ればよい。
答え:✕
届出は、着手する日の「30日前まで」です(27条1項)。また、大規模なものは着手前の許可がいります(30条1項)。許可を受けた工事は、27条1項の届出はいりません(30条5項)。
まとめ
- 2023年5月26日施行の改正で「宅地造成及び特定盛土等規制法」に。農地等の盛土や土石の堆積も対象。
- 宅地造成等工事規制区域で一定規模の工事をするなら、工事主が着手前に知事の許可。申請前に住民へ周知。
- 規模:盛土1m超の崖、切土2m超の崖、合わせて2m超、盛土の高さ2m超、面積500㎡超。土石の堆積は高さ2m超か面積500㎡超。
- 届出:指定時に工事中は21日以内、擁壁などは14日前まで、転用は14日以内、特定盛土等規制区域は30日前まで。
- 造成宅地防災区域は規制区域の中に指定しない。土地の保全は努力義務。
このサイトで次に読むなら、同じく工事中の土地のルールを扱う土地区画整理法をわかりやすくがおすすめです。こちらも「だれの許可か」が問われやすく、並べて覚えると区別しやすくなります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法(e-Gov 法令検索):2条、10条、11条、12条、15条、16条、17条、21条、22条、26条、27条、30条、45条。令和8年4月1日時点の条文で確認しました。改正履歴で、令和4年法律第55号の施行(2023年5月26日)により題名が変わったことも確かめています。
- 宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(e-Gov 法令検索):3条、4条、23条、28条。
- 宅地建物取引業法施行令(e-Gov 法令検索):2条の5。
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」、同「宅建試験の問題及び正解番号表」:出題の基準日と、法改正についての注記。
働く人の法律試験ノート