宅建の法令上の制限は、令和3年度(10月)の問題で当サイトが確かめた並びでは問15〜問22の8問でした。都市計画法2問・建築基準法2問、宅地造成の規制・土地区画整理法・農地法・国土利用計画法が1問ずつです。公式の内訳ではなく、年度で変わりうる数です。
勉強は、都市計画法の区域の分け方(市街化区域・市街化調整区域など)だけ先に押さえてから、1問ずつの4つの法律を固めます。範囲が狭く、問われる軸が「どの区域で」「だれの許可(届出)か」「何㎡から」にほぼ決まっているからです。都市計画法と建築基準法は2問ずつですが範囲が広いので、軸になる所(区域区分・開発許可・用途地域・建ぺい率と容積率・建築確認)を固めます。
覚え方の中心は、数字の表を眺めるのではなく、白紙に表の枠だけ書いて、思い出して埋めることです。埋めたら教材で答え合わせをし、まちがえたマスだけ数日後にもう一度埋めます。
法令上の制限は何問で、どの法律に比重を置くか
範囲は、宅地建物取引業法施行規則8条3号の「土地及び建物についての法令上の制限に関すること。」です。どの法律から何問出るかは公式に発表されていないので、機構(不動産適正取引推進機構)の公開している令和3年度(10月)の問題冊子で、各問が扱う法律を当サイトが確かめました。
| 法律 | 問数(令和3年度10月) | 主に問われる軸 |
|---|---|---|
| 都市計画法 | 2問 | 区域区分・地域地区・開発許可 |
| 建築基準法 | 2問 | 用途制限・建ぺい率と容積率・確認 |
| 宅地造成の規制 | 1問 | 規制区域・許可がいる規模 |
| 土地区画整理法 | 1問 | 仮換地と換地処分 |
| 農地法 | 1問 | 3条・4条・5条と許可する人 |
| 国土利用計画法 | 1問 | 事後届出の面積・期限・届け出る人 |
宅地造成の規制は、令和3年度には「宅地造成等規制法」という名前でした。いまは改正されて「宅地造成及び特定盛土等規制法」になり、規制の中身も広がっています。古い過去問を解くときは、答えの理由を今の条文で確かめてください(宅地造成及び特定盛土等規制法をわかりやすく)。
比重の考え方は、「1問を取るのに読む量」です。農地法・国土利用計画法・土地区画整理法・盛土規制法は、それぞれ1冊の教材の中で章が短く、聞かれる所も限られます。この4問は、時間あたりで点にしやすい所です。都市計画法と建築基準法は合わせて4問ですが、用途地域の種類や道路・高さの制限まで広がります。宅建試験の得点戦略の「宅建業法で稼ぐ型」なら、法令上の制限で落としてよいのは2問、つまり8問中6問が目標です。当サイトは、1問ずつの4問で4問、都市計画法と建築基準法の4問で2問以上を取る形をすすめます。
何を覚えればよいのか:「どこで・だれが・どれだけ」
法令上の制限は「暗記科目」と言われますが、覚えるものの形は決まっています。ほとんどの選択肢は、次の4つの軸のどこかを入れ替えて作られています。
- どこで(区域):市街化区域・市街化調整区域・区域区分のない都市計画区域・準都市計画区域・それ以外。区域の意味は都市計画区域と区域区分で確かめます。
- だれが(許可する人・届け出る先):都道府県知事、農業委員会、建築主事等など。
- どれだけ(面積・高さ・割合):1,000㎡、2,000㎡、1m、500㎡など。「以上」か「超える」かまで。
- どの手続き(許可か届出か、前か後か):開発許可は工事の前の許可、国土利用計画法は契約の後の届出、というように。
ですから、数字を一つずつ覚えるより、軸ごとに法律を横に並べた表で覚えるほうが、問題の作られ方に合っています。まちがえるのは、たいてい「知らない数字」ではなく「別の法律の数字」を当てはめたときだからです。
数字の表は、なぜ自分で作ると覚えるのか
教材や、このサイトの数字の一覧には、すでに完成した表があります。それを眺めたり書き写したりするのと、白紙に枠を書いて中身を思い出して埋めるのとでは、同じ表でも頭の使い方がちがいます。
手がかりになる研究が2つあります。
- 思い出す練習(Roediger と Karpicke、2006年):大学生が短い説明文を学び、「くり返し読む」組と「読んだあと何も見ずに思い出して書く」組を比べました。5分後のテストでは読んだ組が上でしたが、1週間後には思い出して書いた組のほうがよく覚えていました。
- 自分で作り出す(Slamecka と Graf、1978年):言葉の組をそのまま読むより、手がかりから自分で作り出したほうが、あとのテストでよく覚えていました。これを「生成効果」といいます。
どちらも、法律の数字の表で試した実験ではありません。ここからは当サイトの当てはめです。完成した表を写すのは「読む」に近い作業で、白紙の枠を埋めるのは「思い出す」「作り出す」作業です。埋められなかったマスが、そのまま次に覚える所の一覧になります。学習法の研究をまとめた Dunlosky ら(2013年)も、思い出す練習(練習テスト)を効果が高い方法、要約や線を引くことを効果が低い方法と評価しています。「自分で作る」とは、きれいなまとめ表を作ることではなく、思い出して埋め、答え合わせをすることだと考えてください。くわしくは読むより「思い出す」ほうが覚えるで説明しています。
自分で作る表は、どう作るか(2つの例)
手順は4つです。
- 教材の該当の章を一度読む(いきなり埋めない)。
- 教材を閉じ、白紙に行(区域や場面)と列(法律)の見出しだけを書く。
- 何も見ずにマスを埋める。分からないマスは空けたままにする。1枚5分ほどで止める。
- 教材で答え合わせをし、まちがえたマスと空けたマスに印を付ける。2〜3日後と1週間後に、同じ枠をもう一度白紙から埋める。
下の2つの表は、埋め終わったときの答えの例です。条文は e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の版を指定して確かめました。
例1:区域ごとの面積(開発許可と国土利用計画法)
| 区域 | 開発許可がいる広さ | 事後届出がいる広さ |
|---|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡以上(一部の区域は500㎡以上など) | 2,000㎡以上 |
| 市街化調整区域 | 面積による例外なし | 5,000㎡以上 |
| 区域区分のない都市計画区域 | 3,000㎡以上 | 5,000㎡以上 |
| 準都市計画区域 | 3,000㎡以上 | 10,000㎡以上 |
| 上のどれでもない区域 | 1ha以上 | 10,000㎡以上 |
開発許可は、都市計画法29条1項1号と施行令19条1項(市街化区域は千平方メートル、区域区分のない都市計画区域と準都市計画区域は三千平方メートル。この規模「未満」なら許可がいらない)、29条2項と施行令22条の2(都市計画区域・準都市計画区域の外は一ヘクタール以上)です。市街化区域の500㎡は、施行令19条2項が三大都市圏の一部の区域について読み替えているものです。市街化調整区域には、面積で許可がいらなくなる例外がありません(農林漁業用の建物などの別の例外はあります)。くわしくは開発許可をわかりやすくへ。
事後届出は、国土利用計画法23条2項1号です。市街化区域は二千平方メートル、それ以外の都市計画区域(市街化調整区域を含む)は五千平方メートル、それ以外の区域は一万平方メートル「未満」なら届出がいりません。準都市計画区域は「都市計画区域」ではないので、一万平方メートルの側に入ります。開発許可では3,000㎡の行にいた準都市計画区域が、国土利用計画法では10,000㎡の行に移る。この表を自分で埋めると、ここで手が止まります。止まった所が、試験でねらわれる所です(国土利用計画法の届出)。
例2:だれの許可か・どこへの届出か
| 場面 | だれに | 手続き |
|---|---|---|
| 開発行為をする | 都道府県知事(指定都市・中核市は市長) | 工事の前に許可 |
| 農地を農地のまま売る(農地法3条) | 農業委員会 | 当事者が許可 |
| 農地を転用する(4条)・転用のため売る(5条) | 都道府県知事等 | 許可。市街化区域は農業委員会への届出で足りる |
| 大きな土地を買う(国土利用計画法) | 市町村長を経由して都道府県知事 | 買った側が契約から2週間以内に届出 |
| 規制区域で盛土・切土をする | 都道府県知事 | 工事の前に許可 |
| 建物を建てる(建築確認) | 建築主事等か指定確認検査機関 | 工事の前に確認 |
根拠は、都市計画法29条1項、農地法3条1項(「当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。」)、4条1項と同項7号・5条1項と同項6号(市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可がいらない)、国土利用計画法23条1項(権利取得者が「契約を締結した日から起算して二週間以内」に、市町村の長を経由して知事へ)、宅地造成及び特定盛土等規制法12条1項、建築基準法6条1項・6条の2第1項です。
取り違えの型:区域・許可する人・面積
表を埋めて手が止まった所は、そのまま選択肢の「ひっかけ」の型になっています。当サイトが整理した型は次の5つです。
- 同じ区域で法律を入れ替える:市街化区域の1,000㎡(開発許可)と2,000㎡(事後届出)。
- 区域の行をずらす:市街化調整区域を市街化区域と同じ扱いにする。準都市計画区域を都市計画区域と同じ扱いにする。
- 許可する人を入れ替える:農地法3条を都道府県知事等に、4条・5条を農業委員会にする。
- 特例の範囲を広げる:市街化区域の届出の特例は4条・5条の転用だけで、3条(農地のまま売る)にはない。
- 手続きの向きを変える:事後届出を「売主と買主が共同で」「契約の前に」とする。開発許可の「以上」を盛土の「超える」と混ぜる。
(このサイトのオリジナル問題)次の文は正しいか。
- 市街化調整区域内の4,000㎡の土地を売買で取得した者は、国土利用計画法の事後届出をしなければならない。
- 市街化調整区域で800㎡の開発行為をする場合、市街化区域と同じく1,000㎡未満なので、開発許可はいらない(農林漁業用の建物などの例外には当たらないものとする)。
- 農地を農地のまま売る場合は、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。
- 市街化区域内の農地を所有者が自分で駐車場にする場合、あらかじめ農業委員会に届け出れば、農地法4条の許可はいらない。
- 準都市計画区域内の6,000㎡の土地の売買契約を結んだ場合、買った者は国土利用計画法の事後届出をしなければならない。
答え:1は誤り(市街化調整区域は「市街化区域以外の都市計画区域」なので5,000㎡以上。23条2項1号ロ)。2は誤り(29条1項1号の面積による例外は、市街化区域・区域区分のない都市計画区域・準都市計画区域だけで、市街化調整区域にはない)。3は誤り(3条は農業委員会の許可)。4は正しい(4条1項7号)。5は誤り(準都市計画区域は都市計画区域ではないので10,000㎡以上。23条2項1号ハ)。
まちがえた問題は、型の番号をメモしておきます。同じ番号が続くなら、その軸の表をもう一度白紙から埋めます。
都市計画法と建築基準法は、どこまでやるか
2問ずつの2つの法律は、範囲を全部同じ深さでやろうとすると時間が足りません。宅建業法35条1項2号が重要事項説明の対象に「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限」を挙げているとおり、宅建士の仕事の中心にある法律でもあるので、捨てずに軸を固めます。
- 用途地域:13種類すべての「建てられる・建てられない」の表を丸ごと覚えようとしない。住居系・商業系・工業系の並びと、低層住居専用地域など両端の地域の特徴から固め、間の地域は問題で出たものを足していく(用途地域をわかりやすく)。
- 建ぺい率と容積率:数字を覚えるより、計算を手で何回かやる。前面道路の幅を使う計算と、角地・防火地域の緩和の順番を、例題で確かめる(建ぺい率と容積率)。
- 建築確認:2025年4月の改正で、確認がいる建物の区分が変わっている。古い教材の区分で覚えない(建築確認をわかりやすく)。
- 土地区画整理法:仮換地と換地処分で、だれが・いつから使えるかが変わる流れを、図で一度描く(土地区画整理法をわかりやすく)。
語呂合わせを使う人もいますが、語呂は数字そのものしか運んでくれません。「どの法律の、どの区域の、以上か超か」まで一緒に思い出せるかは、表の枠を埋めて確かめます。
働きながら、どう回すか
当サイトの例です。1つの法律を読み終えるたびに表を1枚作り、表がたまってきたら、法律を混ぜて解きます。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 平日30分 | 教材を10分読む→閉じて表の枠を5分で埋める→答え合わせ→同じ法律の問題を肢ごとに解く |
| 通勤・昼休み | 前に作った表の枠だけを手帳に書き、印のあるマスを埋め直す |
| 休日 | 開発許可・国土利用計画法・農地法の問題を混ぜて解く→1年分の法令上の制限の問題を時間を計って解く |
混ぜて解く理由は、法令上の制限の失点の多くが「似たものの見分け」だからです。画家の絵を見分ける実験(Kornell と Bjork、2008年)では、1人の画家の絵をまとめて見るより、いろいろな画家の絵を混ぜて見たほうが、初めて見る絵の画家をよく当てられました。法律の問題で同じ差が出るかは確かめられていませんが、開発許可・国土利用計画法・農地法のように、区域と面積で見分ける問題には合う練習だと当サイトは考えます。やり方は問題を「混ぜて解く」練習のしかたにまとめています。
この回し方も、勉強の量を減らすためのものではありません。表を作って埋め直す時間と、問題を何度も解き直す時間が、法令上の制限だけでもまとまって要ります。
今日からやること
- 都市計画法の区域の分け方(市街化区域・市街化調整区域・準都市計画区域など)を先に確かめ、そのあと農地法・国土利用計画法・土地区画整理法・盛土規制法の4つを、都市計画法・建築基準法の残りより先に1周すると決める。
- 白紙に「区域×面積」の枠(例1)を書き、何も見ずに埋める。答え合わせをして、まちがえたマスに印を付ける。
- 同じように「だれに・どの手続き」の枠(例2)を埋める。
- 印のあるマスだけ、2〜3日後と1週間後に白紙から埋め直す日を手帳に書く。
- 教材が令和8年4月1日時点の法令に合わせてあるか(盛土規制法・建築確認の改正後か)を確かめる。
このサイトで次に読むなら、農地法をわかりやすくがおすすめです。3条・4条・5条と許可する人の違いは、例2の表のいちばん取り違えやすい所で、1問分を固める最初の一歩になります。表の答え合わせに使う数字をまとめて見たい人は、宅建で覚える数字の一覧の法令上の制限の表が使えます。
参考にした公式の情報・研究(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令API(v2)で令和8年4月1日時点(asof=2026-04-01)の版を指定して確かめました。
- 不動産適正取引推進機構「宅建試験の問題及び正解番号表」(並びを確かめた令和3年度10月試験の問題。公式の内訳ではない)、同「試験概要」(出題の範囲・法令の基準日)
- e-Gov法令検索「都市計画法」(29条)、「都市計画法施行令」(19条、22条の2)
- e-Gov法令検索「国土利用計画法」(23条)、「農地法」(3条、4条、5条)
- e-Gov法令検索「宅地造成及び特定盛土等規制法」(12条)、「建築基準法」(6条、6条の2)、「宅地建物取引業法」(35条)、「宅地建物取引業法施行規則」(8条)
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
- Slamecka, N. J., & Graf, P. (1978). The generation effect: Delineation of a phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory, 4(6), 592–604. https://doi.org/10.1037/0278-7393.4.6.592
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Learning concepts and categories: Is spacing the “enemy of induction”? Psychological Science, 19(6), 585–592. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02127.x
働く人の法律試験ノート