宅建の暗記カードは、次の形で作ります。表には、答えを一つに言える問いを1つだけ書きます。裏には、結論と条番号を書きます。原則と例外は、同じカードに詰めず、別のカードにして対で持ちます。
回し方の決まりは3つです。①カードは小さな束に分けず、1日に回す分を1つの束にする。②1回言えただけで束から外さない。③「覚えていない・あやしい・覚えた」の3つの箱に分け、間をあけて戻す。どれも、単語カードを使った学習の研究に支えがあります。
この記事では、宅建の数字・要件・例外の3つの例でカードの作り方を示し、回し方と、紙とアプリの使い分けを説明します。分野ごとに何を覚えるかの地図は宅建の覚え方の記事にあります。ここでは「カード1枚の作り方と回し方」だけを扱います。
暗記カードは何のための道具か
カードは、読む道具ではなく、思い出す道具です。表を見て、裏を見ずに答えを言い、裏で確かめる。この「何も見ずに頭から取り出す」動きが、覚えを強くします。順番のある一覧を覚える記憶術(場所法)の研究と使いどころは場所法の記事で扱っています。
10の学習法についての研究をまとめて評価した論文(Dunloskyら、2013年)は、練習テスト(思い出す練習)と分散学習(間をあけてくり返すこと)の2つを「有用性が高い」と評価しました。読み返しや線を引くことは、多くの学生が使うものの、成績を一貫しては高めない、とされています。カードは、この2つを同時に手軽にできる形です。表で思い出し、箱で間をあける、という使い方ができるからです。
思い出す練習そのものの効き方と、テキスト・問題集との使い分けは読むより「思い出す」ほうが覚えるの記事で説明しています。
1枚の作り方:表に問い1つ、裏に結論と条番号
表は「問い」の形にする
表に「媒介契約」「案内所」のような言葉だけを書くと、裏に何を言えばよいかが決まりません。説明を全部言うのか、数字だけ言うのかがあいまいで、言えたかどうかも判定できません。表は、答えが一つに決まる問いの形にします。
- よくない表:「案内所の届出」
- よい表:「契約や申込みを受ける案内所の届出は、業務を始める何日前までか」
1枚に問いは1つ
「何日前までに、どこへ届け出るか」のように問いが2つあると、片方だけ言えたときの判定に迷います。答えが2つになるなら、カードを2枚にします。
裏は「結論+条番号」
裏には、結論を一語か一行で書き、その下に条番号を書きます。条番号を書いておくと、あとで迷ったときにテキストや条文に戻れます。余白があれば、取り違えやすい相手を一言だけ書きます(例:「30日以内は業者の変更の届出」)。説明の文を長く写すと、カードが読む道具に戻ってしまいます。
例外は別のカードにする
「原則は〜。ただし〜」を1枚に書くと、原則だけ言えて満足しがちです。原則のカードと例外のカードを別に作り、2枚を並べて持ちます。例外のカードの表は「〜しなくてよいのはどんな場合か」の形にすると、問いが一つに決まります。
どこからカードにするか
全部の論点をカードにすると、作る時間が勉強の時間を食います。カードにするのは、問題集で間違えた所と、根拠を言えなかった所、それに理由で導けない数字です。間違えた所の記録のしかたは間違いノートの作り方の記事にあり、カードはその中の「隠して言える形にしたい所」を移す先と考えると、重なりません。
例:数字・要件・例外のカード
宅建の3つの型で、表と裏の例を示します。条文は令和8年4月1日時点のものです。
| 型 | 表(問い) | 裏(結論と条番号) |
|---|---|---|
| 数字 | 契約や申込みを受ける案内所の届出は、業務を始める何日前までか | 10日前まで。免許権者と所在地の知事の両方へ(宅建業法50条2項、施行規則19条3項) |
| 数字(対) | 業者の変更の届出は、変更から何日以内か | 30日以内。免許権者へ(宅建業法9条) |
| 要件 | 代襲相続が起きる原因を3つ挙げよ | 相続開始以前の死亡・欠格・廃除(民法887条2項)。放棄は入らない(939条) |
| 原則 | 宅建士証の交付を受けるとき、法定講習は要るか | 原則として要る。交付の申請前6か月以内の講習(宅建業法22条の2第2項本文) |
| 例外 | 宅建士証の交付で法定講習が要らないのはどんな人か | 試験に合格した日から1年以内に交付を受ける人など(22条の2第2項ただし書) |
作り方の要点を、例に沿って確かめます。
- 数字のカードは、似た数字を「対」で作ります。案内所の届出の「10日前」と、変更の届出の「30日以内」は、前と後ろの向きも違います。2枚を同じ日に回すと、取り違えに気づきやすくなります。似た数字を一覧で並べ直したいときは宅建の暗記一覧の記事が使えます。
- 要件のカードは、「3つ挙げよ」のように数を表に書きます。数が分かっていれば、言えなかった1つに気づけます。裏には「入らないもの」も一言書きます。代襲相続なら、放棄が入らないことが取り違えやすい所です。
- 例外のカードは、「例外があること」と「例外の中身」を言えるかを確かめる1枚です。原則のカードの裏に「例外あり→別カード」と書いておくと、2枚を行き来できます。
回し方:3つの箱と、外す決まり
3つの箱
カードは、言えたかどうかで3つの箱(または3つの束)に分けます。次に見る間隔は、当サイトの目安です。
| 箱 | 入るカード | 次に見る目安 |
|---|---|---|
| 覚えていない | 言えなかった、または間違えた | その日のうちか翌日 |
| あやしい | 言えたが時間がかかった、根拠の条番号が出なかった | 2〜3日後 |
| 覚えた | すぐに結論と条番号まで言えた | 1週間後、その次は3〜4週間後 |
言えなかったら、どの箱からでも「覚えていない」に戻します。「覚えた」の箱で2回続けてすぐに言えたら、試験の直前にまとめて見る束へ移します。間隔の決め方の考え方は復習の間隔の決め方の記事で説明しています。
1回言えただけで外さない
どんな研究か:Kornell と Bjork(2008年)は、英語とスワヒリ語の単語の組をカードで覚える4つの実験で、「もう覚えた」と思ったカードを束から外してよい条件と、外せない条件などを比べました。
何が分かったか:カードを外してよい条件は、学習に小さいながら一貫してマイナスの影響がありました。4つ目の実験(大学生57人)では、1回正しく思い出せたら自動で外す条件の最終テストの成績がもっとも低く、2回正しく思い出してから外す条件は、外さない条件と統計的にはっきりした差がありませんでした。著者らは、1回の正答で外すやり方を、うまくいかない方法だったとまとめています。
試験勉強ではこう使う:1回すぐに言えたカードも、すぐには外しません。日をあけてもう一度言えたら、次の箱へ進めます。ただし、2回という数が最もよいと示された研究ではないので、「2回」は当サイトの目安です。
束は小さく分けない
どんな研究か:Kornell(2009年)は、ウェブ上の学習プログラムで、大学院入試(GRE)の形式の単語の組をカードで覚える3つの実験をしました。同じ枚数を、1つの大きな束で回す条件と、4つの小さな束に分けて1束ずつ回す条件などを比べています。
何が分かったか:1つの大きな束で回すほうが、4つの小さな束に分けるより成績がよくなりました。大きな束では、同じカードが次に出てくるまでの間があくからです。テストの前日にまとめて覚える「一夜漬け」より、間をあけるほうがよいという結果も出ています。実験全体で、間をあけるほうが成績がよかった人は90%でした。それなのに、最初の学習のあとでは、72%の人が「まとめて回したほうがよかった」と感じていました。
試験勉強ではこう使う:その日に回すカードは、分野ごとの小さな束に分けず、1つの束にまぜて回します。小さな束をくり返すと、すぐに同じカードが戻ってくるので言えた気になりますが、それは直前に見たから言えているだけのことがあります。「言いやすい」と「覚えている」は別だと考えて、言いにくいほうのやり方を選びます。
紙とアプリはどう使い分けるか
紙でもアプリでも、作り方(1枚1問・裏に結論と条番号・例外は別カード)は同じです。違いは、作る手間と、間隔の管理です。
| 比べる点 | 紙のカード | アプリ |
|---|---|---|
| 作る手間 | 手で書くので時間がかかる | 入力は早いが、増やしすぎやすい |
| 間隔の管理 | 箱を自分で分けて管理する | 次に出す日を任せられるものが多い |
| 並べて比べる | 対のカードを机に並べやすい | 一度に1枚ずつになりやすい |
| 持ち歩き | 束が厚くなると重い | 通勤のすき間に使いやすい |
当サイトのすすめ方は、次のとおりです。
- 作りながら考えたい所(数字の対、原則と例外)は、紙で作って机に並べる。
- 通勤や昼休みに回すのは、アプリでも紙でもよい。間隔の管理を自分でしない分、アプリが楽なことはある。
- 他人が作ったカードの束を丸ごと使うのは避ける。自分が間違えた所と合わず、もう分かっている所に時間が流れやすいからです。
このサイトの宅建の5分○✕ドリルも、間をあけて問題が戻ってくる仕組みです。カードは「自分が間違えた所」、ドリルは「本番の形の○✕」と役割を分けると重なりません。
カードに向かないもの
- 計算(報酬の上限、容積率など):表と裏の一問一答にすると、式の立て方が身につきません。問題集で計算します。
- 長い手続の流れ(開発許可の手続、換地処分までの流れなど):1枚に入りません。白紙に矢印で流れを書く練習のほうが合います。
- 判例の事案:事案の流れが要るので、問題集の事例の肢で練習します。
カードは、一語か一行で答えが決まる所に使い、それ以外は別の練習に任せます。
今日からやること
- 問題集で間違えた肢を3つ選び、表に「問い1つ」、裏に「結論+条番号」を書いたカードを3枚作る。
- 例外のある論点は、原則のカードと例外のカードを2枚に分ける。
- その日のカードは1つの束にまぜて回し、言えたかどうかで3つの箱に分ける。
- 1回すぐに言えたカードも、日をあけてもう一度言えるまで外さない。
- 計算と長い手続はカードにせず、問題集と白紙の練習に回す。
参考にした研究・資料(2026年10月確認)
- Kornell, N. (2009). Optimising learning using flashcards: Spacing is more effective than cramming. Applied Cognitive Psychology, 23(9), 1297–1317.(DOI。書誌と抄録は Crossref で確認)
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Optimising self-regulated study: The benefits—and costs—of dropping flashcards. Memory, 16(2), 125–136.(DOI/著者の研究室のPDF)
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.(DOI)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第9条、第22条の2第2項、第50条第2項)、「宅地建物取引業法施行規則」(第19条第3項)、「民法」(第887条第2項、第939条)。いずれも令和8年4月1日時点の条文で確認。
働く人の法律試験ノート