民法上の組合をわかりやすく:組合契約・業務の決め方・財産と借金、権利能力なき社団との違い

ひとことで言うと、民法上の組合(くみあい)は、2人以上が出資をして、共同の事業をする約束(契約)です(民法667条1項)。お金や物だけでなく、働くこと(労務)も出資にできます(同条2項)。組合は法人ではなく、組合の財産は組合員みんなで持ちます(668条)。組合の借金は、組合の財産のほか、組合員一人ひとりにも請求できます(675条)。

組合の条文(667条〜688条)は、令和2年4月施行の改正で大きく整理されました。この記事では、改正後の条文で、①成り立ち、②業務の決め方、③財産、④借金、⑤加入と脱退を扱います。団体としての組織が整った法人でない団体(町内会など)は、組合ではなく権利能力なき社団として扱われる場合があり、ルールがかなり違います。

身近な例で考えると

3人がキッチンカーの事業を始めます。会社はつくらず、組合契約を結びました。

人物立場出資したもの
ゆきさん組合員キッチンカーの車両
こうたさん組合員現金200万円
あんなさん組合員料理をする労務
しんごさん食材店の店主組合に食材を売った。代金の一部が未払い
  1. 車両と200万円は、3人の共有の「組合財産」になった(668条)。
  2. 出店する場所の決定は、3人の過半数(2人)の賛成で決めた(670条1項)。毎日の食材の注文は、だれか一人でできる(670条5項の常務)。
  3. しんごさんへの代金が払えなくなった。しんごさんは、組合財産から回収できるほか、組合員一人ひとりにも請求できる(675条)。
  4. こうたさんが個人で借りたお金の貸主は、組合財産である車両を差し押さえることはできない(677条)。

たとえるなら、組合財産は「3人で一つの財布を持ち合っている状態」です。ただし本物のルールでは、財布のお金をいま分けてほしいと一人が言っても、事業をたたむ清算の前には分けられません(676条3項)。ふつうの共有と違う点です。

条文ではこう決まっている

成り立ちと、ふつうの契約と違う点(667条〜667条の3)

  • 667条:各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約束すると、効力が生じる。労務も出資にできる。
  • 667条の2第1項:同時履行の抗弁(533条)と危険負担(536条)は、組合契約には使わない。
  • 667条の2第2項:ほかの組合員が出資などの債務を果たさないことを理由に、組合契約を解除することはできない。
  • 667条の3:組合員の一人に意思表示の無効や取消しの原因があっても、ほかの組合員の間では、組合契約の効力はそのまま。

売買なら、相手が払わなければこちらも渡さない、解除する、が使えます。組合は「みんなで一つの事業をする」契約なので、一人の不履行で全体が止まらないようにしています。

業務の決め方と代理(670条・670条の2)

場面決め方・やり方
ふつう組合員の過半数で決め、各組合員が実行する(670条1項)
業務執行者を置いた業務執行者が決めて実行。複数なら業務執行者の過半数(同条2項・3項)。総組合員の同意で決めることもできる(4項)
常務(日常の軽い仕事)各組合員・各業務執行者が一人でできる。終わる前にほかの人が異議を述べたらできない(5項)
外の人との取引(代理)組合員の過半数の同意があれば、ほかの組合員を代理できる。業務執行者がいれば業務執行者だけが代理する。常務は一人で代理できる(670条の2)

業務を決める権利がない組合員でも、業務と組合財産の状況を検査できます(673条)。

財産と借金(668条・674条〜677条)

  • 668条:出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。
  • 676条:組合員が組合財産の持分を処分しても、組合と、組合と取引した第三者に対抗できない(1項)。組合財産である債権の持分を一人で行使できない(2項)。清算の前に組合財産の分割を求められない(3項)。
  • 677条:組合員の(個人の)債権者は、組合財産に権利を行使できない。
  • 674条:損益分配の割合を決めなければ、出資の価額に応じる。利益か損失の一方だけ決めたときは、両方に共通と推定する。
  • 675条:組合の債権者は、組合財産に権利を行使できる(1項)。さらに、その選択で、各組合員に損失分担の割合か等しい割合で請求できる。ただし、債権が生じた時に損失分担の割合を知っていたときは、その割合による(2項)。

加入・脱退・解散(677条の2〜688条)

  • 677条の2:全員の同意か組合契約の定めで、新しい組合員を加入させられる。加入した人は、加入前に生じた組合の債務を弁済する責任を負わない。
  • 678条:存続期間を決めていなければ、いつでも脱退できる。ただし、やむを得ない事由がなければ、組合に不利な時期には脱退できない(1項)。期間を決めていても、やむを得ない事由があれば脱退できる(2項)。
  • 679条・680条:死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判、除名で脱退する。除名は、正当な事由があるときに、ほかの組合員の一致でする。
  • 680条の2:脱退した人は、脱退前に生じた組合の債務を、従前の責任の範囲で弁済する責任を負う。払ったら組合に求償できる。
  • 681条:脱退した人の持分は、出資の種類にかかわらず、金銭で払い戻せる。
  • 682条・688条3項:事業の成功・不能、期間の満了、総組合員の同意などで解散する。清算後の残りの財産は、出資の価額に応じて分ける。

最高裁判所第三小法廷平成11年2月23日判決は、やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約の約定は無効だとしました。678条の「やむを得ない事由があれば脱退できる」は、約束で奪えない決まりだということです。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる(キッチンカーの3人):それぞれが出資し、共同の事業をする約束なので、組合契約です。
  • 当てはまる(建設工事の共同企業体):最高裁判所第三小法廷平成10年4月14日判決は、共同企業体(いわゆるジョイントベンチャー)は基本的には民法上の組合の性質を有するとしました。そのうえで、構成員に会社を含む共同企業体の各構成員は、事業のために第三者に負った債務について、商法511条1項により連帯債務を負うとしました。
  • 当てはまらない(合同会社をつくった):3人が合同会社を設立すると、会社は法人です(会社法3条)。財産も借金も会社のもので、組合の条文は使いません。会社の種類は持分会社の記事で扱っています。
  • ひっかけやすい(出資しない組合員):こうたさんが200万円を払わない。ゆきさんは「こうたさんが払うまで車両を出さない」とは言えず、組合契約の解除もできません(667条の2)。金銭の出資を怠った人は、利息を払い、損害も賠償します(669条)。
  • ひっかけやすい(過半数の数え方):670条1項の過半数は「組合員の過半数」で、出資の額ではありません。損益の分け方(674条)が出資の価額によるのと混ぜないようにします。

似ているルールとの違い

比べる点民法上の組合権利能力なき社団合名会社
法人か法人ではない(契約)法人ではない法人(会社法3条)
財産の持ち方総組合員の共有(668条)。持分の処分・分割に制限構成員の総有(判例)。持分なし会社の財産
債権者は構成員に請求できるかできる(675条2項)できない(判例)会社の財産で払いきれないときなどに、社員が連帯して責任(会社法580条1項)

組合財産は「共有」ですが、ふつうの共有では共有者がいつでも分割を請求できるのが原則です。組合では清算の前に分割を求められません(676条3項)。ふつうの共有のルールは共有の記事で確かめられます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 675条2項の割合:債権者が「損失分担の割合」か「等しい割合」かを選べる。損失分担の割合に限られるのは、債権が生じた時にその割合を知っていたとき。
  • 加入と脱退の向き:加入した人は加入前の債務を負わない。脱退した人は脱退前の債務を従前の範囲で負う。逆にした形に注意。
  • 組合員の個人の債権者:組合財産には手を出せない(677条)。組合の債権者が組合員の個人の財産に請求できる(675条2項)のと向きが逆です。
  • 同時履行・解除:組合には533条・536条を使わず、ほかの組合員の不履行で解除もできない(667条の2)。
  • 脱退の制限の約束:やむを得ない事由があっても脱退させない約束は無効(平成11年判決)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
A・B・Cが組合契約を結び、損失分担の割合をA6割・B2割・C2割と定めた。組合に300万円を貸したDが、貸した時にこの割合を知らなかった場合でも、DがCに請求できるのは60万円までである。

答え:✕ 分かれ目は、債権者が割合を選べるかです。675条2項本文は、組合の債権者は「その選択に従い」、各組合員に損失分担の割合か等しい割合で権利を行使できるとしています。正しくは、Dは等しい割合を選んで、Cに100万円(300万円の3分の1)を請求できます。60万円に限られるのは、ただし書のとおり、Dが債権の発生の時に損失分担の割合を知っていた場合です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
組合の成立後に加入したEは、加入前に生じた組合の債務を弁済する責任を負わないが、その組合から脱退したFは、脱退前に生じた組合の債務について、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負う。

答え:○ 分かれ目は、加入と脱退で責任の向きが違うことです。677条の2第2項は、成立後に加入した組合員は加入前に生じた組合の債務を弁済する責任を負わないとし、680条の2第1項は、脱退した組合員は脱退前に生じた債務について従前の責任の範囲内で弁済する責任を負うとしています。「仲間になったら過去の借金も負う」「抜けたら責任もなくなる」と考えると✕に見えます。脱退した人が払ったときは、組合に求償できます(680条の2第2項)。

問3(このサイトのオリジナル問題)
A・B・Cは、組合の存続期間を5年と定め、「やむを得ない事由があっても、期間中は脱退できない」と約束した。この約束は有効であり、Cは、やむを得ない事由があっても5年間は脱退できない。

答え:✕ 分かれ目は、脱退を制限する約束の効力です。最高裁判所第三小法廷平成11年2月23日判決は、やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約の約定は無効だとしました。正しくは、期間を定めていても、Cはやむを得ない事由があれば脱退できます(678条2項)。やむを得ない事由がないときに組合に不利な時期の脱退が許されないこと(678条1項ただし書)とは別の話です。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「民法」で続けて解けます。

まとめ

  • 組合は、出資して共同の事業をする契約。労務も出資になる。法人ではない。
  • 業務は組合員の過半数で決め、常務は一人でできる。533条・536条は使わず、不履行を理由に解除もできない。
  • 組合財産は総組合員の共有だが、清算前の分割は不可。組合員の個人の債権者は組合財産に手を出せない。
  • 組合の債権者は、組合財産と各組合員に請求できる。割合は損失分担か等分を選べる(知っていたら損失分担)。
  • 加入者は加入前の債務を負わず、脱退者は脱退前の債務を負う。やむを得ない事由での脱退を奪う約束は無効。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。判例は、裁判所ウェブサイトで裁判年月日・法廷・事件番号・判示事項・裁判要旨を確かめ、平成10年判決の理由の言葉は判決全文で確かめました。

このサイトで次に読むなら、民法の一問一答です。組合のように条文の細かい向きで決まる論点を、ほかの分野の判例の論点と混ぜて20問で確かめられます。

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