共有物分割(きょうゆうぶつぶんかつ)は、何人かで持っている物(共有物)を分けて、共有をやめることです。各共有者は、いつでも分割を請求できます。ただし、5年を超えない期間は分割しないという約束はできます(民法256条1項)。
ひとことで言うと、分け方は「まず話し合い(協議)、まとまらなければ裁判」です。裁判所は、物を分ける現物分割(げんぶつぶんかつ)か、だれかが持分を取得してお金を払う賠償分割(ばいしょうぶんかつ)を命じられます。どちらでも分けられないときなどは、競売(けいばい)を命じます(258条)。賠償分割は、令和5年4月1日施行の改正で条文に書かれました。
相続で共有になった持分は、原則として遺産分割で分けます。相続が始まってから10年たつと、一定の場合に共有物分割でも分けられます(258条の2)。この記事では、分割請求の自由と不分割の約束、裁判による分割の3つの方法、遺産の共有との関係を扱います。訴訟の手続や登記の費用・税は扱いません。保存・管理・変更の決め方は共有の記事にあります。
身近な例で考えると
友人3人が、月極駐車場にする土地をお金を出し合って買いました。
| 人物 | 持分 | 考えていること |
|---|---|---|
| あきらさん | 2分の1 | 土地全部を自分のものにしたい |
| まいさん | 4分の1 | 土地を手放したくない |
| しんじさん | 4分の1 | 自分の分をお金に換えたい |
- 3人は「5年間は分割しない」と約束した。5年を超えないので、この約束はできる(256条1項ただし書)。
- 5年たったとき、約束を更新することもできるが、更新の時から5年を超えられない(256条2項)。3人は更新しなかった。
- あきらさんが分割を求めた。話し合いでは、まいさんが反対してまとまらない。
- あきらさんは、裁判所に分割を請求した(258条1項)。
- 裁判所が選べる方法は、土地を線で区切って別々の土地にする方法(現物分割)と、あきらさんに2人の持分を取得させ、代わりに2人へお金を払わせる方法(賠償分割)。どちらでも分けられないとき、または分けると土地の価値が大きく下がるおそれがあるときは、競売して代金を分ける(258条2項・3項)。
- 裁判所は、あわせて、お金の支払・土地の引渡し・登記の手続を命じることができる(258条4項)。
しんじさんが、分割の前に亡くなっていたとします。しんじさんの持分4分の1は、妻と子2人が相続し、3人の遺産共有になります。この持分を相続人の間でどう分けるかは遺産分割で決めることになり、原則として、あきらさんの共有物分割の訴えの中では決められません(258条の2第1項)。相続開始から10年たつと、共有物分割の中で分けられるようになります(同条2項)。
たとえるなら、3つの方法はピザの分け方です。切り分ける(現物分割)、1人が全部取ってほかの人にお金を払う(賠償分割)、売ってお金を分ける(競売)。ただし本物のルールでは、どの方法にするかは裁判所が決め、競売は、ほかの2つで分けられないときなどに限られます。
条文ではこう決まっている
分割の請求と不分割の約束(256条・257条)
- 256条1項:各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることは妨げない。
- 256条2項:不分割の契約は更新できる。その期間は、更新の時から5年を超えられない。
- 257条:境界線上の境界標・囲障(いしょう=塀や垣根)・障壁・溝・堀(229条)には、256条を適用しない。隣どうしで共有する境界の塀などは、分割を請求できない。
裁判による分割(258条)
- 1項:分割について協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、裁判所に分割を請求できる。
- 2項:裁判所は、次の方法で分割を命じられる。①共有物の現物を分割する方法。②「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」(賠償分割)。
- 3項:2項の方法で分割できないとき、または分割で価格を著しく減少させるおそれがあるときは、競売を命じられる。
- 4項:分割の裁判では、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行などの給付を命じられる。
遺産の共有との関係(258条の2)
- 1項:共有物の全部またはその持分が相続財産に属し、共同相続人の間で遺産分割をすべきときは、その共有物や持分について258条の分割はできない。
- 2項:共有物の持分が相続財産に属する場合で、相続開始から10年を経過したときは、相続財産に属する持分についても258条で分割できる。ただし、その持分について遺産分割の請求があり、相続人が258条の分割に異議の申出をしたときは、できない。
- 3項:異議の申出は、258条1項の請求を受けた裁判所から通知を受けた日から2か月以内に、その裁判所にする。
法務省の説明資料は、2項を、遺産共有と通常の共有が一緒になっている場合に、相続開始から10年たてば、遺産共有の解消も地方裁判所などの共有物分割訴訟で行えるようにしたもの、と説明しています。賠償分割ができることを明文化したことも、同じ資料に書かれています。
分割のあとのこと(260条・261条)
- 260条:共有物に権利を持つ人や共有者の債権者は、自分の費用で分割に参加できる。参加の請求があったのに参加させずに分割したときは、その分割を請求した人に対抗できない。
- 261条:各共有者は、ほかの共有者が分割で取得した物について、売主と同じように、持分に応じて担保の責任を負う。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(賠償分割):土地を区切ると、駐車場として使いにくくなる。裁判所は、あきらさんに2人の持分を取得させ、まいさん・しんじさんに持分の価格を払わせる方法を命じられる(258条2項2号)。
- 当てはまらない(境界の塀):あきらさんの家と隣の家の境界線上にある、2軒で共有する塀。この塀は、分割を請求できない(257条・229条)。
- ひっかけやすい(競売はいつか):共有者の一人が「売ったほうが高い」と言うだけでは、競売になるとは限らない。競売は、現物分割も賠償分割もできないとき、または分割で価格を著しく減少させるおそれがあるときに命じる(258条3項)。
- ひっかけやすい(土地の全部が遺産のとき):亡くなった一人が土地の全部を持っていて、相続人がそれを共有している場合は、相続人の間の遺産分割で分ける。258条の2第2項は「共有物の持分が相続財産に属する場合」の定めです。
似ているルールとの違い
同じ「分ける」でも、共有物分割と遺産分割は手続も効果も違います。
| 比べる点 | 共有物分割 | 遺産分割 |
|---|---|---|
| 分ける物 | ふつうの共有物 | 相続人が共有する遺産 |
| 協議がまとまらないとき | 裁判所に請求(258条1項) | 家庭裁判所に請求(907条2項) |
| 分けない約束 | 5年以内。更新も5年以内(256条) | 遺言なら相続開始から5年まで。契約・家庭裁判所は1回5年以内で、終わりは相続開始から10年まで(908条) |
| 効果がさかのぼるか | さかのぼる定めはない | 相続開始の時にさかのぼる(909条) |
遺産分割の効力・預貯金の払戻しは遺産分割の記事で扱っています。相続開始から10年という区切りは、原則として特別受益と寄与分を遺産分割で考えなくなる時期にも使われています(特別受益と寄与分)。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している宅建試験の問題(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、共有が主な論点の問題は14問で、直近10回(平成30年度〜令和7年度)では3問でした。ほかの論点の問題の中で共有を副の論点として扱ったものは1問でした。共有物分割だけの数は、分けて数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。取り違えやすい形は次のとおりです。
- 不分割の約束:5年を超えない期間。更新も更新の時から5年まで(通算の上限はない)。遺産分割の「終わりは相続開始から10年まで」と混ぜない。
- 分割の方法:現物分割と賠償分割が先で、競売はそれらができないときなど。賠償分割は令和5年4月施行の改正で条文になった。
- 遺産の持分:遺産分割をすべき持分は、原則として共有物分割では分けない。相続開始から10年で分けられる。ただし、遺産分割の請求があり相続人が異議を出せば別。
- 異議の期限:裁判所から通知を受けた日から2か月以内。
- 効果:遺産分割はさかのぼる(909条)。共有物分割にはその定めがない。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
あきらさん・まいさん・しんじさんが共有する土地の分割の協議がまとまらず、あきらさんが裁判所に分割を請求した。裁判所は、あきらさんに他の2人の持分の全部を取得させ、あきらさんに2人への金銭の支払を負担させる方法で、分割を命じることができる。
答え:○ 分かれ目は、裁判による分割の方法に賠償分割が入るかです。民法258条2項2号は、「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」を定めています。裁判による分割は、物を分けるか競売するかのどちらかだと考えると✕にしてしまいます。法務省の説明資料は、令和5年4月1日施行の改正で賠償分割ができることを明文化したとしています。条文に現物分割と競売しか書かれていなかったころの「現物分割か競売」という覚え方と取り違えた考え方です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
あきらさん・まいさん・しんじさんが共有する土地で、しんじさんが亡くなり、その持分を妻と子2人が相続した(遺産分割はまだ)。相続開始から3年後にあきらさんが共有物分割の訴えを起こした場合、この訴えの中で、しんじさんの持分を相続人の間でどう分けるかも決められる。
答え:✕ 分かれ目は、相続開始から10年たっているかです。共有物の持分が相続財産に属し、共同相続人の間で遺産分割をすべきときは、その持分について共有物分割はできません(民法258条の2第1項)。正しくは、3年後の時点では、しんじさんの持分は相続人の間の遺産分割で分けます。相続開始から10年を過ぎると、異議の申出がない限り共有物分割の中で分けられる(同条2項)ので、この10年の定めと取り違えた文です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
あきらさん・まいさん・しんじさんは、土地を買った日に「5年間は分割しない」と約束し、その後、5年ごとに同じ約束を2回更新した。最初の約束から通算すると15年になるが、どの更新も更新の時から5年以内なので、この更新は有効である。
答え:○ 分かれ目は、不分割の約束に通算の上限があるかです。民法256条1項ただし書は5年を超えない期間内の不分割の契約を認め、2項は更新を認めたうえで「その期間は、更新の時から五年を超えることができない」と定めるだけで、通算の上限は置いていません。遺産分割を契約で禁じる場合は、更新しても終わりが相続開始から10年を超えられない(908条2項・3項)ので、それと同じに考えると✕にしてしまいます。共有物分割の5年は1回ごとの上限、遺産分割の10年は通算の上限です。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。
まとめ
- 各共有者は、いつでも分割を請求できる。不分割の約束は5年まで、更新も5年まで(256条)。
- 協議がまとまらなければ裁判所へ。方法は現物分割と賠償分割、できないときなどは競売(258条)。
- 賠償分割は、令和5年4月1日施行の改正で条文になった。
- 遺産分割をすべき持分は、原則として共有物分割で分けない。相続開始から10年で分けられるが、遺産分割の請求があり相続人が異議を出せば別(258条の2)。
- 共有物分割にはさかのぼる定めがない。遺産分割は相続開始の時にさかのぼる(909条)。
次に読むなら、所在等不明共有者の持分の取得・譲渡がおすすめです。共有者の一人と連絡がつかないとき、分割の訴えを起こさずに持分を取得する手続があり、10年の区切りもここと同じ形で出てきます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。
- e-Gov法令検索「民法」(229条、256条〜262条、907条、908条、909条)
- 法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(賠償分割の明文化、遺産共有と通常の共有が併存する場合の10年)
- 不動産適正取引推進機構(宅建試験の問題の公開。出題数は当サイトが数えたもので、公式の内訳ではありません)
働く人の法律試験ノート