会社法で覚える数字の一覧:決議の要件・少数株主権・任期・期間

会社法の数字は、ばらばらに覚えると混ざります。いちばん効く覚え方は、「公開会社でない会社は、ゆるくなる」という一本の軸です。株主の権利の「6か月前から引き続き」がいらなくなる、招集通知が2週間から1週間になる、取締役・監査役の任期を定款で10年まで伸ばせる、新株発行の無効の訴えが6か月から1年になる。どれも公開会社でない会社の特則です。

この記事では、行政書士試験で問われやすい会社法の数字を、①株主総会の決議の要件、②少数株主権(1%・3%・10%と6か月)、③任期と人数、④手続と訴えの期間の4つの表にまとめます。条文は令和8年4月1日時点のものを、e-Gov法令検索で確かめました。

商法・会社法を捨てるか、後回しにするかは、行政法・民法の仕上がりと残り時間で決めるのが現実的です(行政書士の会社法は捨てていいか)。最低限の範囲だけやる人も、数字の表は条文に戻る目印として使えます。行政法・民法の数字は期間・数字の一覧にまとめています。

身近な例で考えるとどうなるか

二つの会社で比べます。さくら商事は、全部の株式に「譲り受けるには会社の承認がいる」という定款の定めがある会社(公開会社でない会社)です。あおば工業は、株式の譲渡に制限がない会社(公開会社)で、取締役会と監査役を置いています。

  1. 株主のゆいさんは、両方の会社の株式を、1か月前に買って議決権の5%を持っている。
  2. ゆいさんは、経営に不満があり、株主総会を開くよう取締役に求めたい。
  3. さくら商事に対しては、すぐに請求できる。あおば工業に対しては、6か月たつまで請求できない。

会社法297条は、総株主の議決権の3%以上を「6箇月…前から引き続き有する」株主に、総会の招集請求を認めています。ただし公開会社でない会社では、この6か月の要件がありません(297条2項)。株主が入れ替わりやすい公開会社では保有期間を求め、株主が限られた会社では求めない、と並べて覚えます。

ここでいう公開会社は、「上場している会社」ではありません。発行する全部または一部の株式について、譲渡に会社の承認がいるという定款の定めを置いていない会社です(2条5号)。株式の一部でも自由に譲渡できれば、公開会社です。

① 株主総会の決議の要件

決議定足数賛成条文
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普通決議議決権の過半数の株主が出席(定款で変更・排除できる)出席した議決権の過半数309条1項
役員の選任・解任議決権の過半数の出席。定款でも3分の1未満にできない出席した議決権の過半数(定款で上げられる)。監査役の解任などは特別決議341条、309条2項7号
特別決議議決権の過半数の出席。定款で3分の1まで下げられる出席した議決権の3分の2以上309条2項
特殊決議(譲渡制限を付ける定款変更など)議決権を行使できる株主の半数以上(頭数)その議決権の3分の2以上309条3項
特殊決議(株主ごとに異なる扱いの定款の定めの変更)総株主の半数以上(頭数)総株主の議決権の4分の3以上309条4項

覚え方は、上から下へ「重くなる」順です。特別決議は「出席の3分の2」、309条3項は「頭数の半数と議決権の3分の2」、309条4項は「総株主の頭数の半数と議決権の4分の3」。特殊決議だけが頭数(株主の人数)を数えます。309条4項は、109条2項の定款の定め(公開会社でない会社が、105条1項に掲げる権利について株主ごとに異なる取扱いを行う定め)を変える決議です。

② 少数株主権:1%・3%・10%と6か月

権利(条文)必要な割合6か月の保有ほかの数字
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議題提案権・議案の要領の通知請求(303条・305条)議決権の1%以上または300個以上(取締役会設置会社)要る(公開会社でない会社は不要)総会の日の8週間前まで。305条は10個を超える部分に使えない
総会の検査役の選任(306条)議決権の1%以上公開会社の取締役会設置会社は要る―
総会の招集請求(297条)議決権の3%以上要る(公開会社でない会社は不要)請求から8週間以内の日を総会の日とする招集通知がなければ、裁判所の許可を得て自ら招集
業務執行の検査役の選任(358条)議決権または発行済株式の3%以上要らない―
会計帳簿の閲覧・謄写(433条)議決権または発行済株式の3%以上要らない請求の理由を明らかにする
役員の解任の訴え(854条)議決権または発行済株式の3%以上要る(公開会社でない会社は不要)総会の日から30日以内
解散の訴え(833条)議決権または発行済株式の10%以上要らないやむを得ない事由が必要

割合の要件がなく、1株でも使える権利(単独株主権)にも、6か月の要件がつくものがあります。

  • 取締役の違法行為の差止め(360条):6か月前から引き続き株式を持つ株主(公開会社でない会社は不要)。会社に「著しい損害」が生ずるおそれが要件で、監査役設置会社などでは「回復することができない損害」に重くなる。
  • 責任追及等の訴え(株主代表訴訟、847条):6か月前から引き続き株式を持つ株主(公開会社でない会社は不要)。会社が請求の日から60日以内に訴えを起こさないとき、株主が会社のために訴えを起こせる。回復することができない損害が生ずるおそれがあれば、60日を待たずに起こせる。
  • 議案提出権(304条):総会の場で議案を出す権利。ただし、実質的に同じ議案が総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年たっていないときは出せない。

覚え方は、「総会まわりは1%(議題・検査役)、会社の中身をのぞく・役員を外すは3%、会社をなくすは10%」です。6か月の要件がないのは、3%の検査役・帳簿閲覧と10%の解散の訴えです。

③ 任期と人数

役職原則の任期伸ばす・縮める条文
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取締役選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時まで定款・総会決議で短くできる。公開会社でない会社は定款で10年まで伸ばせる(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)332条1項・2項
監査等委員会設置会社の取締役監査等委員でない取締役は1年、監査等委員は2年監査等委員の2年は短くできない332条3項・4項
指名委員会等設置会社の取締役1年―332条6項
会計参与取締役と同じ(2年)取締役と同じ334条
監査役4年公開会社でない会社は定款で10年まで伸ばせる336条1項・2項
会計監査人1年定時総会で別段の決議がなければ再任されたものとみなす338条

人数の数字は次の3つです。取締役会設置会社の取締役は3人以上(331条5項)。監査役会設置会社の監査役は3人以上で、そのうち半数以上が社外監査役(335条3項)。監査等委員である取締役は3人以上で、その過半数が社外取締役(331条6項)。「半数以上」と「過半数」の言い分けが急所です。

取締役・会計参与・会計監査人は、いつでも株主総会の決議で解任できます。正当な理由なく解任された人は、会社に損害の賠償を請求できます(339条)。

④ 手続と訴えの期間

手続・訴え期間公開会社でない会社条文
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招集通知総会の日の2週間前まで1週間前まで(書面・電磁的方法による議決権行使を定めた場合を除く。取締役会設置会社でなければ定款でさらに短くできる)299条1項
累積投票の請求総会の日の5日前まで同じ342条
議事録の備置き本店に10年間、支店に写しを5年間同じ318条
決議取消しの訴え決議の日から3か月以内同じ831条1項
決議の無効確認・不存在確認の訴え期間の定めなし同じ830条
新株発行の無効の訴え効力が生じた日から6か月以内1年以内828条1項2号
設立の無効の訴え会社の成立の日から2年以内同じ828条1項1号
合併・会社分割などの無効の訴え効力が生じた日から6か月以内同じ828条1項7号〜12号

決議取消しの訴えには、もう一つ数字のない急所があります。招集の手続や決議の方法の法令・定款違反でも、違反が重大でなく、決議に影響を及ぼさないと認めるときは、裁判所は請求を棄却できます(831条2項、裁量棄却)。

混同しやすい数字の組

  • 2週間と8週間:招集通知は総会の2週間前(299条)。株主が議題を出すのは総会の8週間前(303条)。株主の招集請求で、請求から8週間以内の日を総会の日とする通知がないと、株主が自ら招集できる(297条4項)。
  • 3か月と30日:決議取消しの訴えは決議の日から3か月(831条)。役員の解任の訴えは総会の日から30日(854条)。
  • 6か月と1年と2年:新株発行の無効は6か月(公開会社でない会社は1年)。設立の無効は2年。
  • 2年・4年・1年:取締役2年、監査役4年、会計監査人1年。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の取締役(監査等委員を除く)は1年。
  • 60日:株主代表訴訟で、株主が自ら訴えるまでに待つ期間(847条3項)。

試験ではここをまちがえやすい

  • 公開会社の特則を逆にする型:任期を10年まで伸ばせる、6か月の要件がない、招集通知が1週間。これらは公開会社でない会社の話です。公開会社に当てはめた肢は誤りです。
  • 6か月の要件をつけ足す型:会計帳簿の閲覧(433条)・業務執行の検査役(358条)・解散の訴え(833条)には、6か月の要件がありません。
  • 割合を入れ替える型:議題提案権は1%(または300個)、招集請求・帳簿閲覧・解任の訴えは3%、解散の訴えは10%。
  • 特殊決議の頭数を落とす型:309条3項・4項は、議決権だけでなく株主の頭数(半数以上)も要ります。
  • 定足数の下限を入れ替える型:特別決議の定足数は定款で3分の1まで下げられる。普通決議は定款で排除できるが、役員の選任・解任の決議は3分の1未満にできない。
  • 「半数以上」と「過半数」を入れ替える型:監査役会の社外監査役は半数以上、監査等委員の社外取締役は過半数。

行政書士試験では、5肢択一式で、数字そのものより「公開会社かどうか」「取締役会設置会社かどうか」の前提を変えて数字をずらす形が考えられます。問題文の最初で、会社の種類を確かめてから数字を見ます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
取締役会設置会社であるが公開会社でないさくら商事の株式を、ゆいさんは1か月前に取得し、総株主の議決権の5%を有している。この場合、ゆいさんは、取締役に対し、株主総会の目的である事項と招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

答え:○ 分かれ目は、6か月の保有期間がいるかどうかです。総会の招集請求は、議決権の3%以上を6か月前から引き続き有する株主ができますが(会社法297条1項)、公開会社でない会社では6か月の要件がかかりません(同条2項)。取得して1か月なので✕に見えますが、さくら商事は公開会社でないので請求できます。取締役会設置会社かどうかは、議題提案権(303条)の割合の要件にかかわる前提で、招集請求の6か月の要件とは別の話です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
公開会社であるあおば工業は、定款で定めることにより、監査役の任期を、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸ばすことができる。

答え:✕ 分かれ目は、任期を伸ばせる会社の種類です。監査役の任期は4年で(会社法336条1項)、定款で10年まで伸ばせるのは公開会社でない会社に限られます(同条2項)。正しくは、公開会社のあおば工業は伸ばせません。取締役の任期を10年まで伸ばせるのも公開会社でない会社(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)で、どちらも「公開会社でない会社の特則」とまとめて覚えます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
公開会社であるあおば工業の株式を2か月前に取得し、総株主の議決権の3%を有するゆいさんは、請求の理由を明らかにして、あおば工業の会計帳簿の閲覧を請求することができる。

答え:○ 分かれ目は、6か月の保有期間の有無です。会計帳簿の閲覧・謄写の請求は、議決権または発行済株式の3%以上を有する株主ができ、6か月の保有の要件はありません(会社法433条1項)。公開会社で、取得から2か月しかたっていないので✕に見えますが、6か月の要件がかかるのは総会の招集請求(297条)や役員の解任の訴え(854条)などです。会社は、請求が権利の確保と関係ない目的のときなど、433条2項の事由があれば拒めます。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。

まとめ

  • 会社法の数字は「公開会社でない会社はゆるくなる」で整理する(6か月不要・招集通知1週間・任期10年まで・新株発行無効1年)。
  • 決議:普通は過半数、特別は出席の3分の2、309条3項は頭数半数と3分の2、309条4項は総株主の頭数半数と4分の3。
  • 少数株主権:総会まわり1%、のぞく・外す3%、解散10%。帳簿閲覧・業務執行の検査役・解散の訴えに6か月の要件はない。
  • 任期:取締役2年、監査役4年、会計監査人1年。人数は取締役会3人以上、監査役会は3人以上で半数以上が社外。
  • 期間:招集通知2週間、議題提案8週間、決議取消し3か月、解任の訴え30日、代表訴訟の待ち60日。

次に読むなら、株式会社の機関がおすすめです。表の数字が、取締役会や監査役のどんな役割にくっついているのかを確かめると、数字だけを覚えるより取り違えが減ります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。

  • e-Gov法令検索「会社法」(2条5号、109条2項、297条、299条、303条〜306条、309条、318条、331条、332条、334条〜336条、338条、339条、341条、342条、358条、360条、433条、828条、830条、831条、833条、847条、854条)