公開会社と大会社:会社法の2つの分け方と、それぞれで置かなければならない機関

ひとことで言うと、会社法は株式会社を2つの物差しで分けています。1つは公開会社かどうか(株式の譲渡のしばりの物差し)、もう1つは大会社かどうか(会社の大きさの物差し)です。公開会社は、株式の全部には「譲り受けるには会社の承認がいる」という定款の定めを付けていない会社です(2条5号)。大会社は、最終事業年度の貸借対照表で、資本金が5億円以上か、負債の合計が200億円以上の会社です(2条6号)。

2つは別々に決まるので、「公開会社で大会社」「公開会社だが大会社ではない」「公開会社ではないが大会社」「どちらでもない」の4通りがあります。公開会社は取締役会を、大会社は会計監査人を呼び込み、両方なら監査役会も要ります。機関の組み合わせの全体は株式会社の機関の記事で扱っているので、この記事では、それぞれの物差しで「何が変わるか」を条文ごとに並べます。条文は、令和8年度の行政書士試験の基準日(令和8年4月1日)時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました。

身近な例で考えると

舞台は2つの会社です(架空の話です)。

会社株式の譲渡大きさ
みなみ食品株式会社全部の株式に譲渡制限あり資本金1億円・負債80億円
そよかぜ工業株式会社一部の種類の株式だけ譲渡制限なし資本金3億円・負債150億円
  1. みなみ食品は、株式の全部に譲渡制限があるので、公開会社ではありません。大会社でもありません。取締役1人だけの形もとれます(326条1項)。
  2. そよかぜ工業は、譲渡制限がない株式が一部あるので、公開会社です。上場していなくても公開会社です。取締役会を置かなければなりません(327条1項1号)。
  3. みなみ食品は、事業年度の途中で増資し、資本金が6億円になった。
  4. しかし、大会社かどうかは「最終事業年度に係る貸借対照表」で決まります(2条6号)。資本金6億円が載った貸借対照表を含む計算書類が、定時株主総会で承認されるまでは、みなみ食品は大会社ではありません。
  5. 次の定時株主総会でその計算書類が承認されると、みなみ食品は大会社になり、会計監査人を置かなければならなくなります(328条2項)。

たとえるなら、公開会社かどうかは「店の入口を開けているか(だれでも株主になれるか)」、大会社かどうかは「店の大きさ」です。ただし本物のルールでは、入口が一つでも開いていれば(一部の株式でも譲渡が自由なら)公開会社になり、店の大きさは決算の数字で一年ごとに見直されます。

条文ではこう決まっている

  • 公開会社(2条5号):「その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」。一部の株式でも譲渡制限がなければ公開会社です。
  • 大会社(2条6号):最終事業年度に係る貸借対照表に、資本金として計上した額が5億円以上(イ)か、負債の部に計上した額の合計額が200億円以上(ロ)のどちらかに当たる会社。会社ができてから最初の定時株主総会までは、成立の日の貸借対照表(435条1項)で見ます。
  • 最終事業年度(2条24号):計算書類について定時株主総会の承認(会計監査人設置会社で一定の場合は取締役会の承認)を受けた事業年度のうち、いちばん新しいもの。
  • 資本金と負債は「どちらか」でよく、売上や従業員の数は物差しに入っていません。

公開会社かどうかで変わる決まり

公開会社でない会社は、株主が限られているので、手続がゆるめられている決まりが多くあります。

決まり公開会社公開会社でない会社
取締役会(327条1項1号)置かなければならない置かなくてもよい
取締役を株主に限る定款(331条2項)定められない定められる
取締役・監査役の任期の伸長(332条2項・336条2項)できない定款で10年まで
株主総会の招集通知(299条1項)2週間前まで原則1週間前まで
招集請求・議題提案の6か月の保有(297条・303条)要る要らない
監査役の監査を会計に限る定款(389条1項)定められない定められる(監査役会・会計監査人を置く会社を除く)
募集株式の募集事項の決定(199条2項・200条1項・201条1項)原則として取締役会株主総会(取締役・取締役会への委任もできる)
議決権制限株式の数(115条)発行済株式の2分の1以下にするこの制限はない

数字の決まりは会社法で覚える数字の一覧に、募集株式を決める機関の場合分けは募集株式の発行の記事にまとめています。

大会社かどうかで変わる決まり

決まり大会社大会社でない会社
会計監査人(328条)置かなければならない(委員会型を含めて必要)置かなくてもよい(委員会型の会社は必要)
監査役会(328条1項)公開会社なら置かなければならない義務なし
業務の適正を確保する体制の決定(362条5項・348条4項)決定しなければならない義務なし(委員会型の会社は必要)
決算の公告(440条1項)貸借対照表と損益計算書貸借対照表
連結計算書類(444条3項)有価証券報告書を出す会社は作らなければならない義務なし
社外取締役(327条の2)公開会社の監査役会設置会社で、有価証券報告書を出す会社は置く義務なし

328条1項は、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社を除いています。この2つの型(委員会型)は、大会社かどうかにかかわらず会計監査人を置き(327条5項)、監査役は置けません。委員会型のしくみは指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社の違いで、会計監査人がだれで何をするかは会計参与と会計監査人の違いで扱っています。

物差しが変わると、置く機関も変わる

2つの物差しを組み合わせた4つの型と、それぞれで置かなければならない機関は、冒頭で紹介した株式会社の機関の記事の表にまとめています。ここでは、会社が途中で「公開会社になる」「大会社になる」ときに何が起きるかだけを見ます(委員会型を除きます)。

  • 公開会社でない会社が、大会社になったとき:会計監査人を置き(328条2項)、会計監査人を置くと監査役も要ります(327条3項)。取締役会と会計参与を置いて監査役を置かずにいた会社(327条2項ただし書)も、監査役が要るようになります。監査の範囲を会計に限る定款の定め(389条1項)も、会計監査人設置会社は使えません。
  • 公開会社でない会社が、一部の株式の譲渡制限をやめたとき:公開会社になるので、取締役会が要ります(327条1項1号)。会計参与で監査役に代えるただし書(327条2項ただし書)は「公開会社でない」会社だけの例外なので、監査役も要ります。任期を10年に延ばす定款の定め(332条2項・336条2項)も使えなくなります。
  • 公開会社が、大会社になったとき:監査役会と会計監査人を置かなければなりません(328条1項)。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:資本金は3億円だが、最終事業年度の貸借対照表の負債の合計が210億円の会社。負債の物差し(2条6号ロ)で大会社です。
  • 当てはまる例:上場していないが、一部の種類の株式に譲渡制限を付けていない会社。2条5号の「全部又は一部」により公開会社です。
  • 当てはまらない例:全部の株式に譲渡制限があり、株主が数百人いる会社。株主の数は物差しではないので、公開会社ではありません。
  • ひっかけやすい例:事業年度の途中で増資して資本金が5億円以上になった会社。大会社かどうかは最終事業年度の貸借対照表で決まるので、増資した時点ではまだ大会社ではありません。
  • ひっかけやすい例:売上が1,000億円あるが、資本金1億円・負債150億円の会社。売上は物差しに入っていないので、大会社ではありません。

試験ではここをまちがえやすい

  • 公開会社=上場会社とする形。条文の定義は譲渡制限の定款の定めの有無で、上場とは関係ありません。
  • 「一部」の読み落とし:一部の株式でも譲渡制限がなければ公開会社です(2条5号)。
  • 「かつ」と「又は」:大会社は資本金5億円以上「か」負債200億円以上。両方そろう必要はありません。
  • 判定の時点:最終事業年度の貸借対照表で判定する。増資や借入れをした時点ではない。
  • 物差しの入れ替え:取締役会を呼ぶのは公開会社、会計監査人を呼ぶのは大会社。「大会社だから取締役会が必要」「公開会社だから会計監査人が必要」は誤りです。
  • 公開会社でない会社の特則の向き:任期の10年への伸長、招集通知の1週間、6か月の保有要件の不要は、公開会社でない会社の話です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
公開会社でないみなみ食品の最終事業年度の貸借対照表では、資本金が3億円、負債の部の合計額が210億円であった。この場合、みなみ食品は会計監査人を置かなければならない。

答え:○ 分かれ目は、大会社の2つの物差しが「どちらか」でよい点です。大会社は、最終事業年度の貸借対照表で資本金5億円以上か、負債の合計額200億円以上の会社です(2条6号イ・ロ)。資本金が5億円に届かないので✕に見えますが、負債の物差しで大会社に当たります。公開会社でない大会社は会計監査人を置かなければなりません(328条2項)。公開会社なら、監査役会も要ります(328条1項)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
公開会社でないみなみ食品は、事業年度の途中で増資をして、資本金が6億円になった。みなみ食品は、増資の効力が生じた日から大会社となり、その時点で会計監査人を置かなければならない。

答え:✕ 分かれ目は、大会社かどうかを判定する時点です。大会社かどうかは「最終事業年度に係る貸借対照表」で決まり(2条6号)、最終事業年度は計算書類の承認を受けた事業年度のうちいちばん新しいものです(2条24号)。正しくは、資本金6億円が載った計算書類が定時株主総会などで承認されたときに大会社になります。増資の効力が生じる日(資本金の額が変わる日)と、大会社の判定の基準を取り違えた形です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
全部の株式に譲渡制限を付けているみなみ食品は、大会社となり、監査役と会計監査人を置いている。この場合、みなみ食品は、定款で、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限ることはできない。

答え:○ 分かれ目は、389条1項のかっこ書の除外です。監査の範囲を会計に限る定款を定められるのは「公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)」です(389条1項)。みなみ食品は公開会社でないので✕に見えますが、会計監査人を置く会社は除かれます。公開会社でない大会社は会計監査人を置かなければならない(328条2項)ので、大会社になると、この定款の定めは使えなくなります。公開会社かどうかだけで決まると考えて取り違えやすい形です。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。

まとめ

  • 公開会社:株式の全部には譲渡制限を付けていない会社(一部でも自由なら公開会社)。上場とは関係ない(2条5号)。
  • 大会社:最終事業年度の貸借対照表で資本金5億円以上か負債200億円以上(2条6号)。増資の時点ではなく、計算書類の承認で判定が変わる。
  • 公開会社→取締役会。公開会社でない会社は、任期10年・招集通知1週間・6か月不要・監査の会計限定などの特則がある。
  • 大会社→会計監査人。公開会社で大会社なら監査役会も。内部統制の体制の決定、損益計算書の公告も大会社の決まり。

このサイトで次に読むなら、株式会社の機関の記事です。2つの物差しで呼び込まれた機関が、それぞれ何をするのかがつながります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

  • e-Gov法令検索「会社法」(2条5号・6号・24号、115条、199条2項、200条1項、201条1項、297条、299条、303条、326条〜328条、327条の2、331条2項、332条1項・2項、336条1項・2項、348条4項、362条5項、389条1項、440条1項、444条3項。令和8年4月1日時点)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です