会計参与と会計監査人の違い:だれがなれるか・何をするか・置かなければならない会社

ひとことで言うと、会計参与(かいけいさんよ)は、取締役と共同して計算書類を「作る」側の役員です。会計監査人は、できあがった計算書類を「監査する」側の専門家です。計算書類は、会社の1年の成績表(損益計算書)と、財産と借金の一覧(貸借対照表)などのことです。会計参与には税理士もなれますが、会計監査人になれるのは公認会計士と監査法人だけです。計算書類が作られてから監査・承認・公告・備置きまでの流れは計算書類の流れの記事にあります。

置く義務にも違いがあります。会計参与は、どの会社でも置くかどうかを定款で選べます。会計監査人は、大会社と、委員会型の会社(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社)では置かなければなりません。この記事では、資格・仕事・任期・置かなければならない会社・兼ねられない地位を、令和8年4月1日時点の会社法で確かめて比べます。株主総会・取締役・監査役の基本は株式会社の機関の記事にあります。

身近な例で考えると

舞台は、取締役会を置いている「あさひ食品株式会社」です。株を売るには会社の承認がいる(公開会社でない)会社で、今は大会社でもありません。

人物立場この話での役
まさきさん代表取締役計算書類を作る責任者
ふみやさん税理士あさひ食品の顧問
さきさん公認会計士監査の専門家
  1. あさひ食品は、監査役を置かず、ふみやさんを会計参与に選んだ。公開会社でない会社が会計参与を置くと、取締役会があっても監査役を置かなくてよい(327条2項ただし書)。
  2. 決算のとき、ふみやさんはまさきさんと共同して計算書類を作り、「会計参与報告」もまとめた(374条1項)。
  3. 会社が大きくなり、負債の合計が200億円を超えて大会社になった。大会社は会計監査人を置かなければならない(328条2項)。
  4. あさひ食品は、さきさんを会計監査人に選んだ。会計監査人を置くと、監査役も置かなければならない(327条3項)。会計参与がいても、この義務は外れない。
  5. 決算では、まさきさんとふみやさんが作った計算書類を、さきさんが監査し、「会計監査報告」を作る(396条1項)。

たとえると、会計参与は「宿題をいっしょに書く家庭教師」、会計監査人は「提出された宿題を採点する先生」です。ただし本物のルールでは、会計参与も会計監査人も、株主総会で選ばれる会社の機関です。そのうち会計参与は「役員」に入り、会計監査人は入りません(329条1項)。ここがたとえと違う点です。

条文ではこう決まっている

会計参与(326条2項・333条・334条・374条〜378条)

  • 定款で定めれば、どの株式会社でも置ける(326条2項)。327条・328条で「置かなければならない」とされる機関には入っていない。
  • なれるのは、公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人(333条1項)。法人が選ばれたときは、社員の中から職務を行う人を選んで会社に通知する(333条2項)。
  • なれないのは、その会社や子会社の取締役・監査役・執行役・支配人などの使用人、業務の停止の処分を受けてその期間中の人、税理士の業務ができない人(333条3項)。
  • 役員の一つなので、株主総会で選び(329条1項)、いつでも株主総会の決議でやめさせられる(339条1項)。
  • 任期は、取締役の任期の規定(332条。4項・5項を除く)を準用する(334条1項)。原則2年で、公開会社でない会社(委員会型を除く)は定款で10年まで延ばせる。会計参与を置く定款の定めをなくすと、任期は終わる(334条2項)。
  • 取締役と共同して、計算書類・その附属明細書・臨時計算書類・連結計算書類を作り、会計参与報告を作る(374条1項)。会計帳簿をいつでも見て、取締役などに会計の報告を求められる(374条2項)。
  • 取締役の不正の行為や、法令・定款に違反する重大な事実を見つけたら、遅滞なく株主に報告する。監査役設置会社では監査役、監査役会設置会社では監査役会に報告する(375条1項・2項)。
  • 計算書類を承認する取締役会に出席し、必要があれば意見を述べなければならない(376条1項)。
  • 計算書類の作成について取締役と意見が違うときは、株主総会で意見を述べられる(377条1項)。
  • 計算書類と会計参与報告を、会計参与が決めた場所に5年間備え置く。株主と債権者は閲覧などを請求できる(378条)。

会計監査人(327条・328条・337条・338条・396条〜398条)

  • 置かなければならないのは、大会社(328条1項・2項)と、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社(327条5項)。ほかの会社も定款で置ける(326条2項)。
  • 会計監査人を置く会社は、監査役も置かなければならない(327条3項。委員会型を除く)。
  • なれるのは、公認会計士と監査法人だけ(337条1項)。
  • なれないのは、公認会計士法で計算書類の監査ができない人、子会社や会社の役員などから公認会計士の業務以外で継続して報酬を受けている人とその配偶者など(337条3項)。
  • 株主総会で選び、いつでも株主総会の決議でやめさせられる(329条1項・339条1項)。監査役設置会社では、選任・解任などの議案の内容を監査役が決める(344条1項)。
  • 任期は1年。その任期の最後の定時株主総会で別段の決議がなければ、再任されたものとみなす(338条1項・2項)。
  • 計算書類などを監査し、会計監査報告を作る(396条1項)。会計帳簿をいつでも見て、取締役・会計参与などに会計の報告を求められる(396条2項)。
  • 計算書類が法令・定款に合うかについて監査役と意見が違うときは、定時株主総会に出て意見を述べられる(398条1項)。

会計参与と会計監査人を表で比べる

比べる点会計参与会計監査人
なれる人公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人公認会計士・監査法人
仕事取締役と共同して計算書類を作る計算書類を監査する
任期取締役と同じ(原則2年)1年(別段の決議がなければ再任とみなす)
置く義務義務のある会社はない大会社・委員会型の会社
役員か役員役員ではない
意見を述べる場株主総会(取締役と意見が違うとき)定時株主総会(監査役と意見が違うとき)

覚えるときは、「作る人か、確かめる人か」から出発します。作る人(会計参与)は取締役のそばにいるので、任期も取締役にそろえ、意見がぶつかる相手も取締役です。確かめる人(会計監査人)は、同じく確かめる立場の監査役と組みます。そのため、会計監査人を置く会社には監査役が要り(327条3項)、会計監査人の選任議案は監査役が決め(344条1項)、意見がぶつかる相手も監査役です(398条1項)。

監査役とはどう違うか

監査役も「確かめる人」ですが、確かめる範囲が違います。監査役は、取締役の職務の執行を監査します。会計参与を置く会社では、会計参与の職務の執行も監査します(381条1項)。会計だけでなく、業務の進め方も対象です。会計監査人が監査するのは、計算書類などの会計の書類です(396条1項)。

比べる点監査役会計監査人
監査する範囲取締役の職務の執行計算書類などの会計
なれる人資格の要件はない(欠格は取締役と同じ:335条1項)公認会計士・監査法人
任期4年(336条1項)1年
役員か役員役員ではない

監査役と会計参与の関係では、公開会社でない取締役会設置会社が会計参与を置くと、監査役を置かなくてよいという例外があります(327条2項ただし書)。会計参与は監査をする人ではないので、会計参与を置いても監査はされません。そのかわり、会計参与が不正を見つけたときの報告先は株主になります(375条1項)。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:大会社でない非公開のあさひ食品が、取締役会を置き、監査役を置かずに、税理士のふみやさんを会計参与にした。327条2項ただし書と333条1項に合っています。
  2. 当てはまらない例:あさひ食品の取締役であるまさきさんが、公認会計士の資格を持っていたので、取締役のまま会計参与も兼ねた。会計参与は、その会社の取締役を兼ねられません(333条3項1号)。取締役と「共同して」作る役目を取締役自身が兼ねては、会計参与を置く意味がなくなります。
  3. ひっかけやすい例:大会社になったあさひ食品が、会計監査人を置いたが、会計参与がいるので監査役は置かなかった。会計監査人を置く会社は監査役が要り(327条3項)、327条2項ただし書の例外は使えません。
  4. ひっかけやすい例:会計監査人のさきさんの任期が終わる定時株主総会で、会計監査人について何も決議しなかった。この場合、さきさんは再任されたものとみなされます(338条2項)。選任の決議をし直さなければ退任する、と考えるとまちがえます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 資格の入れ替え:税理士・税理士法人がなれるのは会計参与だけ。会計監査人は公認会計士・監査法人だけです(333条1項・337条1項)。
  • 役員かどうか:329条1項は「役員(取締役、会計参与及び監査役)」と会計監査人を分けて書いています。会計監査人は役員ではありません。
  • 任期の入れ替え:会計参与は取締役と同じ(原則2年、非公開会社は定款で10年まで)。会計監査人は1年で、別段の決議がなければ再任とみなす。監査役は4年です。
  • 置く義務:会計参与を名指しで置かなければならないとされる会社はありません。ただし、公開会社でない取締役会設置会社(委員会型を除く)は、監査役を置かないなら会計参与を置くことになります(327条2項ただし書)。会計監査人は大会社と委員会型の会社で必要です。
  • 報告先:会計参与が不正を見つけたときの報告先は、監査役設置会社なら監査役、そうでなければ株主です(375条1項)。監査の範囲を会計に限った監査役しかいない会社は、監査役設置会社に入りません(2条9号)。
  • 意見がぶつかる相手:会計参与は取締役と(377条)、会計監査人は監査役と(398条)。

決議の要件・任期・期間の数字は会社法で覚える数字の一覧で、ほかの数字と並べて見直せます。設立・株式・機関をまたいで場面の問題を解きたいときは、会社法の一問一答の20問が使えます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
非公開会社で大会社でもないあさひ食品は、顧問の税理士ふみやさんに、計算書類にかかわる機関の役目を任せたいと考えている。税理士は、会計参与になれるのと同じく、会計監査人にもなれる。

答え:✕ 分かれ目は、なれる人の資格です。会計監査人は「公認会計士又は監査法人」でなければなりません(337条1項)。正しくは、税理士は会計監査人になれません。税理士・税理士法人がなれるのは会計参与で(333条1項)、その資格の規定と取り違えた形です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
あさひ食品は、公開会社でなく、監査等委員会設置会社でも指名委員会等設置会社でもない。この会社は、定款で定めれば、会計参与の任期を、選任後10年以内に終わる最後の事業年度の定時株主総会の終結の時まで延ばせる。

答え:○ 分かれ目は、会計参与の任期にどの規定を使うかです。会計参与の任期には、取締役の任期の332条(4項・5項を除く)を準用します(334条1項)。そのため、公開会社でない会社(委員会型を除く)は、取締役と同じく定款で10年まで延ばせます(332条2項)。会計の専門家だから会計監査人と同じく1年と考えると、✕に見えます。会計監査人の任期は1年で(338条1項)、延ばす定めはありません。

問3(このサイトのオリジナル問題)
あさひ食品は、取締役会を置く非公開会社で、監査役を置かずに会計参与を置いている。会計参与が取締役の不正の行為を見つけたときは、遅滞なく株主に報告しなければならない。

答え:○ 分かれ目は、監査役がいる会社かどうかです。375条1項は、報告先を株主とし、監査役設置会社では監査役としています。あさひ食品は327条2項ただし書で監査役を置いていないので、報告先は株主です。取締役会に報告すると考えると✕に見えます。監査役がいる会社なら監査役、監査役会設置会社なら監査役会、監査等委員会設置会社なら監査等委員会が報告先です(375条1項〜3項)。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。

まとめ

  • 会計参与は取締役と共同して計算書類を作る役員。なれるのは公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人。置く義務のある会社はない。
  • 会計監査人は計算書類を監査する人で、役員ではない。なれるのは公認会計士・監査法人だけ。大会社と委員会型の会社で必要。
  • 任期は、会計参与が取締役と同じ(原則2年)、会計監査人が1年(別段の決議がなければ再任とみなす)。
  • 会計監査人を置く会社は監査役も要る(委員会型を除く)。公開会社でない会社は、会計参与を置けば取締役会があっても監査役なしでよい。

このサイトで次に読むなら、指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社の違いです。会計監査人を置かなければならない委員会型の会社で、監査をだれがするのかが分かります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。

  • e-Gov法令検索「会社法」(2条9号、326条2項、327条、328条、329条1項、332条、333条、334条、335条1項、336条1項、337条、338条、339条1項、344条、374条〜378条、381条1項、396条、398条)

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