ひとことで言うと、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は、監査役を置かず、取締役でつくる委員会に監査をさせる会社の形です。監査等委員会設置会社は委員会が1つで、会社の仕事を動かすのは代表取締役です。指名委員会等設置会社は指名・監査・報酬の3つの委員会を置き、仕事を動かすのは取締役会が選ぶ執行役(しっこうやく)です。
この記事では、この2つの型(以下「委員会型」)を、ふつうの監査役会設置会社と並べて比べます。株主総会・取締役・監査役の基本は株式会社の機関の記事で説明しています。条文は、令和8年度の行政書士試験の基準日(令和8年4月1日)時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました。
身近な例で考えると
舞台は、株をだれでも自由に買える(公開会社である)大きな会社「みなと電機株式会社」です。今は取締役会・監査役会・会計監査人を置いています。
| 人物 | 立場 | この話での役 |
|---|---|---|
| そうたさん | 代表取締役社長 | 会社の仕事を動かす |
| なおみさん | 社外取締役 | 会社の外から来た取締役 |
| けいすけさん | 常勤の監査役 | 取締役の仕事を監査する |
みなと電機は、機関の形を変えることを考えています。
- 今の形:監査は、けいすけさんたち監査役が行う。監査役会の監査役は3人以上で、半数以上は社外監査役。
- 案A(監査等委員会設置会社):監査役は置けなくなる。なおみさんたち取締役のうち3人以上が「監査等委員」になり、監査をする。そうたさんは代表取締役のまま会社の仕事を動かす。
- 案B(指名委員会等設置会社):取締役会の中に、指名委員会・監査委員会・報酬委員会をつくる。会社の仕事は、取締役会が選ぶ執行役が動かす。そうたさんは取締役のまま代表執行役になれる。
- どちらの案でも、委員会を置く定款の変更をした時点で、今の取締役の任期は終わる(332条7項1号)。
たとえるなら、監査役会設置会社は「見回り係を別に置く家」、委員会型は「家族会議の中に見回り班をつくる家」です。ただし本物のルールでは、監査をする委員も取締役なので、取締役会の決議にも加わります。監査役は取締役ではありません。ここがたとえと違う点です。
条文ではこう決まっている
どちらの型にも共通すること(326条・327条)
- 定款で定めれば、どの株式会社でも監査等委員会か指名委員会等を置ける(326条2項)。
- 取締役会を置かなければならない(327条1項3号・4号)。
- 監査役を置いてはならない(327条4項)。
- 会計監査人を置かなければならない(327条5項)。
- 両方を一緒には置けない。指名委員会等設置会社は、監査等委員会を置いてはならない(327条6項)。
監査等委員会設置会社(2条11号の2・399条の2ほか)
- 監査等委員会は、すべての監査等委員でつくる。監査等委員は取締役でなければならない(399条の2第1項・2項)。
- 監査等委員である取締役は3人以上で、その過半数は社外取締役(331条6項)。
- 株主総会は、監査等委員である取締役と、それ以外の取締役を区別して選ぶ(329条2項)。報酬も区別して決める(361条2項)。
- 任期は、監査等委員でない取締役が1年、監査等委員である取締役が2年。監査等委員の任期は、定款や決議で短くできない(332条1項・3項・4項)。補欠の監査等委員は、定款で前の人の残りの任期までにできる(332条5項)。
- 監査等委員は、その会社や子会社の業務執行取締役・支配人などの使用人、子会社の会計参与・執行役を兼ねられない(331条3項)。
- 仕事は、取締役の職務の執行の監査と監査報告の作成、株主総会に出す会計監査人の選任・解任などの議案の内容の決定など(399条の2第3項)。
- 取締役会は、監査等委員でない取締役の中から代表取締役を選ぶ(399条の13第3項)。
- 重要な業務執行の決定は、原則として取締役に任せられない(399条の13第4項)。ただし、取締役の過半数が社外取締役のとき、または定款で定めたときは、一部の事項を除いて任せられる(同条5項・6項)。
- 監査等委員である取締役を解任する株主総会の決議は、特別決議(309条2項7号)。
指名委員会等設置会社(2条12号・400条〜420条)
- 指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つを置く(2条12号)。
- 各委員会は委員3人以上。委員は、取締役の中から取締役会の決議で選ぶ。各委員会の委員の過半数は社外取締役(400条1項〜3項)。社外取締役に当たる要件(2条15号)と、社外取締役を置かなければならない会社は社外取締役の記事にあります。
- 委員は、取締役会の決議でいつでも解職できる(401条1項)。
- 指名委員会は、株主総会に出す取締役の選任・解任の議案の内容を決める(404条1項)。
- 監査委員会は、執行役・取締役の職務の執行を監査し、会計監査人の選任・解任などの議案の内容を決める(404条2項)。
- 報酬委員会は、執行役・取締役の個人別の報酬等の内容を決める(404条3項)。
- 執行役は1人以上。取締役会の決議で選び、いつでも解任できる。任期は1年で、定款で短くできる。取締役を兼ねてもよい(402条1項・2項・6項・7項、403条1項)。
- 執行役は、取締役会から任された業務執行の決定をし、業務を執行する(418条)。取締役会は、一部の事項を除き、業務執行の決定を執行役に任せられる(416条4項)。
- 取締役会は、執行役の中から代表執行役を選ぶ。執行役が1人のときは、その人が代表執行役に選ばれたものとされる(420条1項)。
- 取締役は、法律に別段の定めがある場合を除き、会社の業務を執行できない(415条)。会社の支配人などの使用人も兼ねられない(331条4項)。取締役の任期は1年(332条6項)。
- 監査委員は、その会社や子会社の執行役・業務執行取締役、子会社の会計参与、会社や子会社の支配人などの使用人を兼ねられない(400条4項)。
3つの型を1枚の表で比べる
監査役会設置会社と2つの委員会型を、同じ項目で並べます(会社法326条〜332条・335条・361条・399条の2〜420条)。
| 比べる点 | 監査役会設置会社 | 監査等委員会設置会社 | 指名委員会等設置会社 |
|---|---|---|---|
| 監査をする機関 | 監査役会 | 監査等委員会 | 監査委員会 |
| その人数と社外 | 監査役3人以上・半数以上が社外 | 取締役3人以上・過半数が社外 | 取締役3人以上・過半数が社外 |
| 業務を執行する人 | 代表取締役など | 代表取締役など | 執行役・代表執行役 |
| 取締役の任期 | 2年 | 1年(監査等委員は2年) | 1年 |
| 監査役・委員を選ぶ | 株主総会 | 株主総会(区別して選ぶ) | 取締役会 |
| 取締役の報酬 | 定款か株主総会 | 定款か株主総会(区別して) | 報酬委員会が個人別に |
| 会計監査人 | 大会社なら必要 | 必要 | 必要 |
監査役会設置会社でも、公開会社でなければ、取締役の任期を定款で10年まで延ばせます(332条2項)。2つの委員会型は、この延長の対象から外されています。社外取締役は、委員会型ではどちらも委員の過半数に必要です。監査役会設置会社では、公開会社で大会社であり、株式について有価証券報告書を出さなければならない会社が、社外取締役を置かなければなりません(327条の2)。
数字だけを見直したいときは、会社法で覚える数字の一覧で、決議の要件や任期を並べています。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(許される)例:公開会社でなく、大会社でもない会社が、定款で監査等委員会を置いた。委員会型はどの株式会社でも選べます(326条2項)。ただし、取締役会と会計監査人を置かなければなりません(327条1項3号・5項)。
- 当てはまらない例:みなと電機が監査等委員会設置会社に移ったのに、けいすけさんを監査役として残した。委員会型の会社は、監査役を置いてはなりません(327条4項)。
- 当てはまらない例:指名委員会等設置会社に移ったみなと電機で、取締役のなおみさんが、本社の支配人を兼ねた。指名委員会等設置会社の取締役は、会社の支配人などの使用人を兼ねられません(331条4項)。
- ひっかけやすい例:指名委員会等設置会社で、そうたさんが取締役と代表執行役を兼ねた。執行役は取締役を兼ねられるので、許されます(402条6項)。会社を代表するのは、代表取締役ではなく代表執行役です(420条)。
- ひっかけやすい例:監査等委員会設置会社で、監査等委員のなおみさんを代表取締役に選んだ。代表取締役は、監査等委員でない取締役の中から選ぶので、認められません(399条の13第3項)。
似ているルールとの違い:監査等委員と監査委員
名前は似ていますが、選び方とやめさせ方が違います。監査等委員は株主総会が選ぶ取締役の「種類」です。監査委員は、取締役の中から取締役会が選ぶ委員会の「担当」です。
| 比べる点 | 監査等委員(監査等委員会設置会社) | 監査委員(指名委員会等設置会社) |
|---|---|---|
| 選ぶ機関 | 株主総会(329条2項) | 取締役会(400条2項) |
| やめさせ方 | 株主総会の特別決議(309条2項7号) | 委員の地位は取締役会がいつでも解職(401条1項) |
| 任期 | 2年。短くできない(332条4項) | 取締役として1年(332条6項) |
| 兼ねられない地位 | 会社・子会社の業務執行取締役や使用人など(331条3項) | 会社・子会社の執行役・業務執行取締役や使用人など(400条4項) |
監査委員を委員会から外しても、取締役の地位は残ります。取締役そのものをやめさせるのは株主総会です(339条1項)。取締役が会社に対して負う責任や、利益相反取引の承認は、取締役の義務と責任の記事で整理しています。
試験ではここをまちがえやすい
- 監査役の扱い:委員会型は監査役を「置いてはならない」(327条4項)。会計監査人は「置かなければならない」(327条5項)。2つの向きを入れ替えた形に注意します。
- 任期の数字:監査等委員会設置会社は、監査等委員でない取締役が1年、監査等委員が2年。指名委員会等設置会社は、取締役も執行役も1年。監査役会設置会社の取締役は2年です。
- 選ぶ機関の入れ替え:監査等委員は株主総会。各委員会の委員・執行役・代表執行役は取締役会です。
- 業務を執行する人:指名委員会等設置会社では執行役が執行します。取締役は、別段の定めがある場合を除き、業務を執行できません(415条)。
- 兼任の向き:執行役は取締役を兼ねられます(402条6項)。指名委員会等設置会社の取締役は、支配人などの使用人を兼ねられません(331条4項)。
- 社外の割合:委員会型の委員は「過半数」が社外取締役(331条6項・400条3項)。監査役会の社外監査役は「半数以上」(335条3項)です。
会社法全体のうち、機関設計にどこまで時間をかけるかは、商法・会社法は捨てていいかの記事で配点と合わせて決められます。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
監査等委員会設置会社であるみなと電機の株主総会は、監査等委員である取締役を、ほかの取締役と区別して選ぶ。補欠ではない監査等委員の任期は、定款で定めても1年に短くできない。
答え:○ 分かれ目は、任期を短くできるかどうかです。監査等委員である取締役は区別して選ばれ(329条2項)、任期は2年です。取締役の任期は定款や決議で短くできるのが原則ですが(332条1項ただし書)、監査等委員である取締役には、このただし書を使いません(332条4項)。監査等委員でない取締役(1年)は短くできるので、同じと考えると✕に見えます。例外は補欠として選ばれた監査等委員で、定款で前の人の残りの任期までにできます(332条5項)。
問2(このサイトのオリジナル問題)
指名委員会等設置会社であるみなと電機で、監査委員会の委員を1人増やすため、社外取締役のなおみさんを委員にする。委員は取締役の中から選ぶが、選ぶのは株主総会の決議である。
答え:✕ 分かれ目は、委員を選ぶ機関です。各委員会の委員は、取締役の中から「取締役会の決議によって」選びます(400条2項)。正しくは、委員を選ぶのは取締役会で、株主総会が選ぶのは取締役そのものです(329条1項)。監査等委員会設置会社の監査等委員は、株主総会がほかの取締役と区別して選ぶので(329条2項)、その決まりと取り違えた形です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
指名委員会等設置会社であるみなと電機の定款には、取締役の報酬の定めがない。この場合、株主総会の決議で報酬の総額を定め、その範囲で、各取締役の額を取締役会が決める。
答え:✕ 分かれ目は、報酬を決める機関です。指名委員会等設置会社では、報酬委員会が、執行役と取締役の個人別の報酬等の内容を決めます(404条3項)。この規定は、株主総会などで報酬を決める361条1項の規定にかかわらず適用されるので、株主総会の決議で総額を決める形にはなりません。正しくは、報酬委員会が一人ひとりの内容を決めます。株主総会(または定款)で報酬を決めるのは、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社の決まり(361条)です。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。
まとめ
- 委員会型の2つは、監査役を置かず(327条4項)、取締役会と会計監査人を置く(327条1項・5項)。両方を一緒には置けない。
- 監査等委員会設置会社:監査等委員(取締役3人以上・過半数が社外)は株主総会が区別して選ぶ。任期は監査等委員2年(短縮不可)、ほかの取締役1年。業務執行は代表取締役。
- 指名委員会等設置会社:3つの委員会(各3人以上・過半数が社外)の委員は取締役会が選ぶ。業務執行は執行役・代表執行役。取締役は原則として業務を執行しない。任期は取締役も執行役も1年。
- 報酬は、指名委員会等設置会社なら報酬委員会が個人別に決める。
このサイトで次に読むなら、会計参与と会計監査人の違いです。委員会型で置かなければならない会計監査人が、だれで、何をするのかが分かります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。
- e-Gov法令検索「会社法」(2条11号の2・12号、309条2項7号、326条、327条、327条の2、329条、331条3項〜6項、332条、335条3項、339条1項、361条2項、399条の2、399条の13、400条〜404条、415条、416条、418条、420条)
働く人の法律試験ノート