行政書士の勉強法:科目ごとのやり方と勉強する順番、何から始めるか

行政書士試験の勉強は、行政法(最初は行政手続法)から入り、民法を早めに並行させ、そのあと憲法、基礎知識、商法・会社法と基礎法学の順に広げるのが当サイトのすすめです。行政法は点がいちばん大きく、条文の言葉がそのまま正誤の決め手になるので、読んだその日に解いて確かめられます。民法は範囲が広く、理解が固まるまで時間がかかるので、間をあけて何度も戻れるよう早く始めます。

どの科目でも、やり方の芯は3つです。読んだらその日のうちに本を閉じて思い出す。間をあけて前の単元に戻る。一通り終えたら、取り違えやすい制度を混ぜて解く。この記事では、順番の理由と、科目ごとに「何を覚え、どう回すか」を1枚の地図にして、科目別の記事へつなぎます。教材の選び方と1年の計画は行政書士試験を独学で受けるにはで扱っているので、ここでは「どう勉強するか」に絞ります。

何から始めて、どの順番で進めるか

順番は、点の大きさと、条文で答えが固まる度合いで決めます。科目ごとの問題数は公式に公表されていないので、下の表の問数は、当サイトが令和3年度の問題で数えたものです(公式の内訳ではありません。基礎知識の欄は、令和6年度に科目の名前と出題分野が今の形になる前の14問で数えています)。点は、令和7年度の合否判定基準の配点(5肢択一式1問4点、多肢選択式1問8点、記述式1問20点)に当てはめました。

順番科目問数と点(当サイト調べ)その順にする理由
1行政法択一19・多肢2・記述1で112点点が最大。条文の言葉で正誤が決まる
2民法(1と並行)択一9・記述2で76点範囲が広く、戻る回数がいちばん要る
3憲法択一5・多肢1で28点条文は103条まで。人権は判例を読む
4基礎知識14問で56点足切りがある。文章理解は早めに少しずつ
5商法・会社法、基礎法学択一5で20点、択一2で8点範囲のわりに点が小さい。最低限を決める

行政法の中では、行政手続法から入ります。行政手続法は、役所が許可を出す・取り消すときの手続を定めた法律で、「申請に対する処分」「不利益処分」「行政指導」と、手続の種類ごとに章が分かれています。ここで覚えた「処分」「聴聞」などの言葉が、行政不服審査法・行政事件訴訟法へそのままつながります。

順番は「入る順」。前の科目は回し続ける

「行政法を終わらせてから民法へ」と受け取ると、試験のころには行政法を何か月もさわっていない、ということが起きます。次の科目に入ったら、前の科目は解き直しの枠に移して回し続けます。平日の机の時間を新しい科目に、通勤などのすき間と休日の一部を解き直しに使うと、二つを両立できます。月ごとにどの科目を置くかは勉強スケジュールの記事で、残りの期間別に示しています。

順番を変えたほうがよい人

  • 宅建などで民法を勉強したことがある人:民法は維持の枠にとどめ、行政法に時間を寄せます。行政書士で新しく増える範囲(親族・債権の深い所・記述式)は、宅建の次に行政書士を受けるならで整理しています。
  • 試験まで3か月ほどしかない人:行政法と民法の1周目を最優先にし、憲法は統治の数字と人権の主な判例、基礎知識は文章理解と業務関連法令に絞ります。商法・会社法は設立・株式・機関の入口だけにします。
  • 法律の勉強が初めての人:民法の総則(意思表示・代理)を、行政法と同じ週に少しずつ読みます。民法の「無効」「取消し」「対抗」などの言葉は、行政法の判例の文章にも出てきます。

どの科目にも共通する勉強のしかたと、覚え方

学習法の研究をまとめた Dunlosky ら(2013年)は、10の学習法を比べ、練習テスト(自分で思い出す練習)と分散学習(間をあけた学習)を「有用性が高い」、読み返しや線を引くこと、要約を「有用性が低い」と評価しました。行政書士の勉強に落とすと、次の3つになります。

読んだら、その日のうちに本を閉じて思い出す

Roediger と Karpicke(2006年)の実験では、学生が短い説明文を学び、読み返す組と、思い出して書き出す組を比べました。5分後のテストでは読み返した組のほうがよくできましたが、2日後と1週間後には、思い出した組のほうがよく覚えていました。読み返しは「覚えた」という自信を高めましたが、記憶の残り方とは一致しませんでした。ただし、実験は文章の中身を書き出すテストで、5肢択一式とは形が違います。

行政書士の勉強では、基本書の1単元を読んだら、本を閉じて「誰が・何を・いつまでに」を3行で書き出し、そのあと同じ単元の肢別の問題を解きます。書き出せなかった所と、まちがえた肢だけ基本書に戻ります。やり方は読むより「思い出す」ほうが覚えるでくわしく説明しています。

間をあけて、前の単元に戻る

Cepeda ら(2006年)は、間をあけて学ぶ場合と続けて学ぶ場合を比べた多くの実験を集めて分析し、間をあけたほうがよく残ること、テストが先になるほど、よい間隔も長くなることを示しました。月曜に読んだ行政手続法の単元は、木曜のすき間に○✕で思い出し、翌週の休日にもう一度その単元の問題を解く、という形にします。正解した問題も、間をあけてもう一度解きます。

覚え方:条文・数字・判例で、思い出す形を変える

「行政書士の覚え方」は、覚える物の種類で変えます。どれも、見て覚えるのではなく、隠して言えるかで確かめます。

覚える物思い出す形使う科目
条文の言葉(主語・義務か努力義務か)条文の一語を隠して言う行政手続法・行政不服審査法・憲法の統治
期間・数字似た数字を並べた表の列を隠す行政不服審査法・行政事件訴訟法・地方自治法・会社法
要件と効果「どんなとき・どうなる」を一行で言う民法・行政事件訴訟法
判例事案の一行から結論と理由の一言を言う憲法の人権・行政法・民法

語呂合わせは、数字の組み合わせを覚える補助にはなりますが、要件や理由の代わりにはなりません。判例は、結論が逆になる組(合憲と違憲、処分にあたる・あたらない)を並べて覚えると、肢の入れ替えに気づけます。

科目ごとに、何を覚えてどう回すか(1枚の地図)

科目ごとの要点を一つの表にしました。くわしいやり方は、右の列の記事で科目ごとに説明しています。

科目覚えること回し方くわしい記事
行政法手続の順番、期間、主語、義務と努力義務法律ごとに条文→肢別。似た制度を表で比べる行政法の勉強法
民法要件と効果、登場人物の関係図を描いて事例を読む。要件を一行で言う民法の勉強法
憲法人権は判例、統治は条文の数字と主語判例は組で、統治は数字の表で憲法の勉強法
基礎知識文章理解の手順、業務関連法令、個人情報保護の定義文章理解は週に数問を最初から基礎知識の取り方
商法・会社法設立・株式・機関の入口やる範囲を先に決めて深追いしない会社法は捨てていいか
基礎法学法令用語、裁判制度、期間の数え方条文に書いてある所だけ基礎法学の範囲
記述式・多肢選択式条文の要件と効果、判例の言葉択一の1周目のあとに週1〜2問記述式の書き方・多肢選択式の解き方

行政法と民法は、どう勉強するか

行政法:法律ごとに「手続の流れ」で回す

  • 行政手続法→行政不服審査法→行政事件訴訟法→国家賠償法→地方自治法の順に入り、一般的な法理論(行政行為・行政裁量など)は途中から並行させます。役所の手続→不服の申立て→裁判→損害の賠償、という流れの順です。
  • 期間と主語を表にする:審査請求と取消訴訟の期間、審査庁と処分庁、聴聞と弁明の機会の付与など、数字と主語の入れ替えが正誤の分かれ目になります。
  • 判例は、処分性・原告適格・訴えの利益を、結論が逆になる組で覚えます。

民法:図を描き、要件を一行で言う

  • 事例の肢は、登場人物と矢印(売った・貸した・登記した)を余白に描いてから読みます。誰と誰の争いかが見えると、使う条文が決まります。
  • 結論だけでなく、要件を一行で言えるようにします。「第三者が善意なら」なのか「善意で過失がないなら」なのかの一語が、択一でも記述式でも点を分けます。
  • 優先は総則(意思表示・代理・時効)と債権(債務不履行・契約・不法行為)、次に物権と担保物権、親族・相続は期間と数字から入ります。令和8年4月1日に施行された家族法の改正が範囲に入る点にも注意します。

どの科目で何問を取るかの目標は、先に決めておくと時間の配り方がぶれません。記述式に頼らず180点に届く組み立てなど4つの型は、得点戦略の記事で計算しています。

憲法・基礎知識・商法会社法・基礎法学は、どう勉強するか

  • 憲法:最初に前文から103条まで一度通して読みます。人権は判例ごとに「何条の話か・結論・理由の一言」を、統治は国会・内閣・裁判所の数字と主語を表で覚えます。
  • 基礎知識:令和7年度の基準では、14問中6問(24点)に届かないと、ほかの点が高くても不合格でした。文章理解は最初から週に数問ずつ解き、行政書士法などの業務関連法令と個人情報保護法の定義は条文で固めます。範囲の読みにくい一般知識は、時事の深追いをしません。
  • 商法・会社法:やる範囲を先に決めます。設立・株式・機関の入口を押さえ、それ以上は行政法・民法の仕上がりを見て決めます。
  • 基礎法学:法令用語(「又は」と「若しくは」など)、裁判制度、期間の数え方のように条文に書いてある所だけを押さえ、範囲を追いかけません。

記述式と多肢選択式は、いつ・どう始めるか

記述式は3問で、令和7年度の配点では1問につき20点(計60点)でした。多肢選択式も3問で、1問につき8点(計24点)でした。どちらも、択一の知識があって初めて解ける形式です。始めるのは、行政法・民法の1周目が終わってからで足ります。

  • 記述式:1周目のあと、週に1〜2問、条文の要件と効果を40字程度にまとめる練習を入れます。当サイトの数え方では記述式3問のうち2問が民法だったので、民法の要件を言葉で言う練習が中心です。書き方の型は、記述式の書き方の記事にあります。
  • 多肢選択式:空欄1つ2点なので、分かる空欄から積めます。憲法の判例の言葉と、行政法の条文の言葉に慣れておくことが準備になります。解く手順は多肢選択式の記事で、語群の仕分けから説明しています。

今日からやること

  • e-Gov法令検索で行政手続法を開き、第1章の総則を読む。読み終えたら本や画面を閉じて、「処分」「申請」「行政指導」の意味を一言ずつ書く。
  • 民法の総則の最初の単元(意思表示)を、今週中に1回読む。行政法と同じ週に、少しずつ並行させる。
  • 読んだ日から3〜4日後のすき間と、翌週の休日を、解き直しの日として先に予定に入れる。
  • 文章理解を週に2〜3問、今週から始める。
  • 目標点を決めていない人は、得点戦略の4つの型から一つを選ぶ。

このサイトで次に読むなら、最初に入る科目の行政法の勉強法です。6つの法律ごとに、覚える定義・期間・要件と、似た制度の見分け方を説明しています。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

  • Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.(DOI)
  • Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.(DOI)
  • Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.(DOI)
  • 行政書士試験研究センター「試験概要」(試験科目、出題の範囲)、同「令和7年度 合否判定基準」(PDF。配点と基準点)、同「過去の試験問題と正解」(令和3年度の問題で科目の並びを確認)
  • e-Gov法令検索「行政手続法」