行政書士試験の模試(模擬試験=本番に似せた練習の試験)は、予備校など民間の団体が行うものです。問題もその団体が作っています。行政書士試験研究センター(以下「センター」)の試験ではありません。模試の点数や順位で、本番の合否が分かるわけではありません。本番の合否は、その年度の合格基準の点数で決まるからです。模試を受けた人の中での順位では決まりません。
模試の使い道は3つです。①本番と同じ3時間で、時間配分と解く順番を試す。②法令等・基礎知識・全体の3つの基準のうち、どれが危ないかを知る。③まちがえた問題を、残りの期間の復習の材料にする。受けるのは、通し練習を始める試験の2〜3か月前からが目安です。回数は「次の模試までに復習を終えられる数」までにします。
模試は本番と何が違うのか
模試の問題は、模試を作った団体が自分で作った問題です。本番の出題を予想して作られていても、本番に同じ問題が出るわけではありません。形式や採点のしかたも、模試ごとに違います。申し込む前に、次の点を確かめます。
- 時間と形式:本番と同じ3時間か。5肢択一式・多肢選択式・記述式の3つの形式がそろっているか。
- 配点と満点:令和7年度の本番は、5肢択一式が1問4点、多肢選択式が1問8点、記述式が1問20点でした。満点は300点(法令等244点・基礎知識56点)です。模試の配点が違うなら、結果を読むときに割合に直します(下で説明します)。
- 受け方:会場で受けるのか、自宅で解いて答案を送るのか。
- 結果の返し方:記述式を採点して返してくれるか。問題ごとの正答率(正しく答えた人の割合)が示されるか。結果がいつ届くか。
センターは試験を行う機関です。よくある質問では、資格講座や教材についての問い合わせには答えないとしています。模試について公式の情報はありません。中身は、模試を行う団体の案内で確かめます。
模試を受けなくても準備はできるのか
できます。本番と同じ3時間の通し練習は、センターのサイトにある過去の試験問題(PDF)でもできます。正解もセンターのサイトに載っています(解説はありません)。午後1時から4時の時間を取り、本番と同じ順で解けば、時間配分の練習になります。
ただし、公開されている問題PDFには、著作権の関係で載っていない問題があります(各年度の問題1と58〜60など)。その分、解く問題が少なくなります。時間には少し余裕が出ると考えて使います。
そのうえで模試を足す意味があるのは、次のような点です。
| 比べる点 | 公式の過去問PDF | 模試 |
|---|---|---|
| 問題 | 本番の問題。一度見ると初見ではなくなる | 初めて見る問題 |
| 記述式の採点 | 自分で見積もる | 採点されて返る場合がある |
| 場の雰囲気 | 自宅で解く | 会場の場合は本番に近い |
| 費用 | 無料 | 受験料がかかる |
過去問を何度も解いて、答えを覚えてしまった人もいるでしょう。そういう人ほど、模試の意味は大きくなります。初めて見る問題で、時間配分を試せるからです。逆に、公式の過去問をまだ通しで解いていないなら、先にそちらで1回試しましょう。お金をかけずに、自分の弱いところが分かります。
模試はいつ受けるのがよいか
目安は、全科目に一度手が付いて、通し練習を始める時期からです。試験は毎年11月の第2日曜日です。そこで当サイトでは、8月から10月ごろを考えています。
- 早すぎる場合:まだ読んでいない科目が多い時期に受けると、点数は「やっていない所が多い」ことを示すだけです。次に何を直せばよいかが、あまり分かりません。
- 遅すぎる場合:本番の直前に受けると、結果が届いてから直す時間が残りません。結果が返るまでの日数も見て、復習の時間が取れる日程を選びます。
この記事を書いた2026年10月10日の時点で、令和8年度の試験(11月8日)までは約1か月です。この時点から受けるなら、10月中に受けます。そして残りの週末を、復習と、公式の過去問での通し練習に回す組み方になります。期間ごとの組み方は勉強スケジュールの記事に書いています。
模試は何回受けるのがよいか
決まった回数はありません。当サイトでは、「次の模試までに、前の模試の復習を終えられるか」で回数を決めることをすすめます。模試は1回3時間かかり、そのあとに見直しの時間が要ります。復習が終わらないまま次を受けると、同じ所でまた点を落とします。同じ弱点を、もう一度確かめるだけになってしまいます。
2回受ける場合の例です。
- 1回目(試験の2〜3か月前):3つの基準のどれが危ないかを知る。どの形式で時間を使いすぎるかも知る。
- 2回目(試験の1か月前ごろ):1回目のあとに直した所が、点になっているかを確かめる。時間配分を変えた結果どうなったかも見る。
その間の週末は、公式の過去問での通し練習に使えます。3回目からを足すかどうかは、2回目までの復習が終わっているかで決めます。
点数はどう読むか
合計点だけを見ずに、本番の3つの基準に分けて読みます。令和7年度の合否判定基準では、次の3つを全部満たすと合格でした。
- 法令等122点以上(244点の50%)
- 基礎知識24点以上(56点の40%は22.4点。点は4点きざみなので24点)
- 全体180点以上(300点の60%)
基準は補正(年度によって調整)されることがあります。令和8年度の基準は、合格発表のときに公表されます。
| 見る所 | 比べる相手 | 足りなければ |
|---|---|---|
| 法令等の点 | 満点の50% | 行政法・民法の択一を見直す |
| 基礎知識の点 | 満点の40%(令和7年度は24点) | 平日の時間を基礎知識に回す |
| 全体の点 | 満点の60% | 形式ごとの失点を見る |
| 形式ごとの失点 | 択一・多肢・記述 | 失点の大きい形式から直す |
たとえば、みさきさんが本番と同じ配点の模試を受けたとします。結果は、法令等130点・基礎知識20点・全体150点でした。法令等は122点を越えています。でも基礎知識は24点に届かず、全体も180点に届いていません。この場合は、まず平日の時間を基礎知識に回します。そのうえで、形式ごとの失点を見て全体の点を上げます。
模試の満点や配点が本番と違うときは、点数ではなく割合(50%・40%・60%)で比べます。正解した問題の数を入れると、3つの基準を満たすかが分かります。
記述式の点は、幅を持って見ます。模試の記述式の点は、その模試の採点基準で付いた点です。本番の記述式の採点基準は、公式に示されていません。だから、模試で付いた点が本番でも付くとは限りません。
そこで、記述式を0点と見込んでみます。それでも、ほかの点で3つの基準を越えているかを一度確かめておきます。そうすれば、記述式に頼りすぎる計画を避けられます(自己採点の記事で、記述式を幅で見積もる方法を書いています)。
順位や合格判定はどう受け止めるか
模試の順位や偏差値は、その模試を受けた人の中での位置です。本番を受ける人全体の中での位置ではありません。また、本番の合否は点数の基準で決まります。「上位何%に入れば合格」という仕組みではありません。
令和7年度の合格率は14.54%でした。でもこれは、基準を越えた人の割合が、結果としてそうなっただけです。上位14.54%を合格にしたわけではありません。
模試の「合格判定」(AやBなどの評価)も、模試を行う団体が自分で出した見込みです。公式の予測ではありません。良くても悪くても、それだけで勉強の方針を大きく変えないようにします。
順位の情報で役に立つのは、問題ごとの正答率です。正答率が示される模試なら、「正答率が高いのに自分は落とした問題」を探します。正答率が高い問題は、受けた人の多くが解けた問題です。そこで落とすと、ほかの受験者との差が開きます。だから先に直します。正答率がとても低い問題は、復習の順番を後ろにしてかまいません。
模試のあと、何をどの順で復習するか
受けた週のうちに、次の順で見直します。当サイトがすすめる手順です。
- 失点を4つに分ける:知らなかった/知っていたが読み違えた/時間が足りなかった/マークのずれやもれ。どれに入るかで、直し方が変わります。
- 直す順を決める:先にするのは、正答率が高い問題、配点の大きい科目(行政法・民法)、足切りのある基礎知識です。
- 根拠の条文を確かめる:解説にある条番号を、六法かe-Gov法令検索で、元の言葉で読みます(六法の記事)。模試の解説が、古い条番号で書かれていないかも見ます。
- 記述式を条文と見比べる:自分の答案に、条文の要件(当てはまる条件)と効果(どうなるか)が入っているかを見ます。書き方の型は記述式の書き方に書いています。
- 時間の使い方を記録する:どの形式に何分使ったか、どこで止まったかを書きます。次の通し練習で、配分を変えます(試験当日の時間配分)。
「時間が足りなかった」と「マークのずれやもれ」は、知識を足しても直りません。解く順番や、1問にかける時間の上限を変えて、次の通し練習で試します。
模試の問題そのものを覚え直す必要はありません。予想の問題なので、同じ問題が本番に出るとは限らないからです。覚えるのは、その問題のよりどころになった条文のほうです。
結果が悪かったときは、どうするか
1回の模試の点数で、受けるかどうかや、勉強のやり方全体を決め直す必要はありません。模試の問題の難しさが、本番と同じとは限らないからです。見るのは、3つの基準のどれに、どれだけ足りなかったかです。
- 基礎知識が足りない:足切り(そこだけで不合格になる最低点)があるので、いちばん先に時間を回します。6問を取る分野の決め方は基礎知識の記事。
- 法令等が足りない:配点の大きい行政法の択一から直します。新しい範囲を広げるより、まちがえた問題の根拠条文を固めるほうを先にします。
- 2つは越えたが全体が足りない:形式ごとの失点を見ます。失点の大きい形式と科目から直します。
残りが2か月以上あるなら、削る範囲を決め直して、計画を組み直せます。残りが1か月を切っているなら、新しい範囲は入れません。足りない基準に関わる所だけを見直します。
このサイトで次に読むなら、勉強スケジュールの記事がおすすめです。模試で分かった弱点を、残りの週のどこに入れるかを決める手順を書いています。遅れたときにどこを削るかも分かります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 行政書士試験研究センター「令和7年度 合否判定基準」(PDF)(配点・合格基準)
- 同「よくある質問(試験について)」(補正的措置、配点の公表時期、講座・教材についての問い合わせ)
- 同「最近10年間における行政書士試験結果の推移」(PDF)(令和7年度の合格率)
- 同「過去の試験問題と正解」
- 同「令和8年度 試験案内」(試験日時)
働く人の法律試験ノート