行政書士試験の記述式の書き方:40字の型と、公表されていない部分点の考え方

行政書士試験の記述式(40字くらいで答えを書く問題)は、法令等の中で3問出ます。令和7年度の合否判定基準では、1問20点、3問で60点でした。公式が示している書き方の決まりは「40字程度で記述する」ことだけです。採点基準や部分点の付け方は公表されていません。

そのため「この言葉が入れば何点」という話は、どれも推測です。当サイトがすすめるのは、点の付き方を当てにいくことではありません。毎回、次の型で書くことです。①問われている条文を決める。②その条文の要件(どんなときに)と効果(どうなる)を、3つの要素で書く。③問いの聞き方(誰が・誰に対し・何を求めるか)に、文の形を合わせる。この記事では、この型を自作の例題で通してみます。

記述式について、公式は何を言っていて何を言っていないか

まず、確かめられる事実と、確かめられないことを分けておきます。ここをあいまいにしたまま勉強すると、根拠のない「部分点のコツ」に時間を取られます。

項目公式の情報出どころ
字数「40字程度」で記述する試験案内
問題数・配点3問、1問20点(令和7年度)合否判定基準
配点の公表事前には公表せず、合否発表のときに公表センターFAQ
正解例過去の問題の正解ページに掲載されている過去問ページ
採点基準・部分点公表されていない―

試験研究センター(試験を行う機関。以下「センター」)は、記述式について「40字程度で記述するものを出題します」としています。配点は、前もっては公表されません。合否発表のときに「合否判定基準」で、その年度の問題ごとの点が公表されます。令和8年度の配点はまだ公表されていません。この記事の「1問20点」は、令和7年度の数字です。

センターのサイトでは、過去の試験の正解ページに、記述式の「正解例」が載っています。たとえば令和3年度の正解ページでは、3問の正解例に、それぞれ(37字)(40字)(44字)と字数が書かれています。ここから、「40字程度」が40字ぴったりという意味ではないことが分かります。ただし、何字までなら「程度」に入るのかという基準は示されていません。

一方で、採点の中身は、FAQにも試験案内にも書かれていません。たとえば、どの要素が書けていれば何点か、誤字や字数オーバーがどう扱われるか、などです。合否通知書には点数が書かれます。ただ、それで分かるのは結果だけで、採点のしかたは分かりません。

部分点は、どう考えて計画に入れればよいか

採点基準が公表されていない以上、「◯字書けば◯点」「キーワード1つで◯点」とは言えません。当サイトでは、部分点について次の2つだけを前提にしています。

  1. 正解例は、問いが求める法律上の結論を、短く言い切る形になっている。公開されている正解例を読むと、条文の要件と効果をつないだ1文になっています。これに近い答えを書くことが点につながりやすい、と考えるのが自然です。
  2. 記述の点は、受験前には読めない。採点のしかたが分からないので、自己採点でも、記述の点は幅を持たせて見積もるしかありません。

2つ目は、勉強の計画に関わってきます。令和7年度の配点で考えます。記述式を除いた点は、5肢択一式160点・多肢選択式24点・基礎知識56点で、合わせて240点です。全体の基準点180点(令和7年度)は、この240点の75%にあたります。記述式で点が取れれば、その分だけ楽になります。でも、記述の点を大きく当てにした計画は、外れたときに立て直せません。当サイトでは、択一式と多肢選択式で合格点に近づける計画を土台にすることをすすめます。記述式は「上乗せを取りにいく」ものとして準備します。合格基準と補正(ほせい=合格ラインの調整)の仕組みは、合格点と足切りの記事にまとめています。

ただし、記述式は1問20点です。5肢択一式(1問4点)の5問分にあたります。「上乗せ」といっても、軽くはありません。だからこそ、毎回同じ型で書けるようにして、取れる問題を落とさないことが大事です。

型1:問われている条文を特定する

公開されている正解例を読むと、答えは「ある条文の要件と効果を、問題の事実に当てはめた形」になっています。最初にやるのは、問題の事実から「どの条文の場面か」を決めることです。

  • 登場人物の関係を図にする。A・B・Cが出てきたら、契約・雇用・代理などの関係を線で結びます。どんな線になるかで、使う条文の候補がしぼれます。
  • 最後の一文(問い)を先に読む。問いの形で、答えの文の終わり方がほぼ決まります。たとえば「何を請求できるか」「どのような訴えを提起すべきか」「誰が責任を負うか」などです。
  • 条文の番号まで思い出す。番号まで思い出せると、その条文の要件と効果を正確に引き出せます。

この型が使えるかどうかは、ふだんの条文の読み方で決まります。条文を読むときは、要件(どんなときに)と効果(どうなる)を分けて線を引きましょう。ただし書(がき=「ただし、〜」で始まる例外の部分)があれば、別の色にしておきます。そうすると、記述の練習でそのまま使えます。民法・行政法でどの条文を先に読むかは、民法の勉強法と行政法の勉強法で、分野ごとに書いています。

型2:要件・効果を3つの要素で書く

40字程度は、句読点を入れて、短い要素を3つつなげると、ちょうど埋まる長さです。当サイトでは、答えを次の3つの要素に分けて組み立てることをすすめています。

  1. 根拠・名前:制度や権利の名前(例:使用者責任、義務付け訴訟、詐害行為(さがいこうい)取消請求)。
  2. 要件:その条文が求める条件のうち、問題の事実に当てはまる部分(例:被用者(ひようしゃ=雇われて働く人)が事業の執行について加えた損害)。
  3. 効果:結論として何ができるか、どうなるか(例:損害の賠償を請求できる、訴えを提起する)。

3つのうちどれかが欠けると、答えとして成り立ちにくくなります。名前だけでは、「なぜそうなるか」が書けていません。要件だけでは、結論がありません。効果だけでは、どの制度の話か分かりません。

反対に、聞かれていないことは書きません。たとえば、損害賠償を請求できるかを聞かれたとします。そこで、相手が責任をまぬがれる例外(ただし書)や、その後の求償(きゅうしょう=払った人が、本来払うべき人にお金を返してもらうこと)まで書くとどうなるでしょう。字数が足りなくなり、大事な要件が削られてしまいます。「問いが求めている要素だけが、全部入っている」状態を目指します。

型3:設問の聞き方(誰が・誰に対し・何を)に文の形を合わせる

内容が正しくても、文の形が問いとずれていると、採点する人に伝わりにくくなります。書き終えたら、次の3点を問いと見比べます。

  • 主語:問いが「Cは」なら、答えもCの立場で書きます。途中で「A社は…責任を負う」と主語が入れ替わると、何を答えたのかがぼやけます。
  • 相手:「誰に対し」「誰を被告として」と聞かれたら、そこを落としません。行政についての裁判では、特に注意が必要です。被告(訴えられる側)は「行政庁(市長など)」ではありません。「行政庁の所属する国又は公共団体(市など)」になります(行政事件訴訟法11条1項)。
  • 文の終わり:「何を請求できるか」なら「〜を請求できる。」で終えます。「どのような訴えを提起すべきか」なら「〜の訴えを提起する。」で終えます。

問題の文と重なる部分(「Cは、A社に対し」など)は、字数に余裕がなければ省いても意味は通ります。ただ、省いてよいかどうかの公式の基準はありません。「迷ったら入れる。字数が厳しいときだけ削る」と決めておくと、本番で迷いません。

自作の例題で、型を通してみる

ここからの2問は、過去の試験問題ではなく、当サイトが作った問題です。本番に近い形にするため、登場人物はA・B・Cで書いています。

例題1(民法)(このサイトのオリジナル問題)

運送会社A社の従業員Bは、A社の配送業務として車を運転している最中に、前方不注意で歩行者Cにけがをさせた。Cは、Bではなく、A社に損害賠償を求めたいと考えている。Cは、A社に対し、どのような根拠に基づき、どのような損害について、何を請求することができるか。40字程度で記述しなさい。

型1(条文を決める):A社とBは、雇う・雇われるの関係です。そのBが、Cにけがをさせました。従業員の不法行為(わざと、または不注意で人に損害を与えること)について、会社の責任を問う場面です。そこで、民法715条1項(使用者等の責任)を使います。条文は「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定めています。

型2(3つの要素):根拠=使用者責任。要件=Bが事業の執行についてCに加えた損害。効果=その損害の賠償を請求できる。

型3(聞き方に合わせる):問いは「Cは、A社に対し…何を請求することができるか」です。なので、Cの立場で書き、「〜を請求できる。」で終えます。

解答例(38字):使用者責任に基づき、Bが事業の執行についてCに加えた損害の賠償を請求できる。

よくない例(33字):A社は、Bの不法行為について責任を負うので、損害賠償を請求できる。

よくない例には、3つの問題があります。①主語が「A社は」なのに、文の終わりが「請求できる」です。誰が請求するのかが、ねじれています。②715条の中心の要件である「事業の執行について」が抜けています。③「使用者責任」という根拠の名前もありません。なお、この問いで聞かれていないことは書きません。たとえば715条1項ただし書(会社が、人を選ぶときや監督するときに十分注意していた場合の例外)や、3項の求償です。

例題2(行政法)(このサイトのオリジナル問題)

Xは、ある法律に基づき、Y市長に営業の許可を申請したが、Y市長は許可をしない処分(拒否処分)をした。Xは、この処分は違法であり、許可がされるべきだと考えている。Xが許可を得ることを目的として裁判で争う場合、誰を被告として、どのような訴えを提起すべきか。40字程度で記述しなさい。

型1(条文を決める):申請を断られ、許可そのものがほしい場面です。ここで使うのは、行政事件訴訟法37条の3の義務付けの訴え(裁判所から市などに「許可を出しなさい」と命じてもらう裁判)です。同条1項2号は、使える場合の一つとして次を挙げています。申請を却下・棄却(きゃっか・ききゃく=申請を受け付けない・認めない)する処分がされ、その処分が取り消されるべきもの(または無効・不存在)である場合です。そして3項2号は、その場合に、処分の取消訴訟(処分をなかったことにしてもらう裁判)または無効等確認の訴えを併合して提起しなければならないとしています。「併合して提起」とは、2つの訴えを一緒に起こすことです。被告は、11条1項により、処分をした行政庁の所属する公共団体、つまりY市です。11条1項は取消訴訟のための条文ですが、38条1項で、取消訴訟以外の抗告訴訟(こうこくそしょう=行政の処分などに不服を言う裁判)にも準用(じゅんよう=同じルールを当てはめること)されます。

型2(3つの要素):被告=Y市。一緒に起こす訴え=拒否処分の取消訴訟。中心になる訴え=許可をすべき旨を命ずる義務付け訴訟。

解答例(40字):Y市を被告に、拒否処分の取消訴訟と併合して、許可を命ずる義務付け訴訟を提起する。

よくない例(28字):Y市長を被告として、許可を命ずる義務付け訴訟を提起する。

よくない例には、まちがいが2つあります。被告を「Y市長」にしている点と、一緒に起こす必要がある取消訴訟が抜けている点です。これでは、問いの「誰を被告として」と「どのような訴え」の両方に答えきれていません。条文の要件を一つずつ確かめていれば、防げるずれです。

字数はどう数えるか(句読点・かぎかっこ・英字)

答えは、マス目のある解答欄に書きます。字数の数え方で確かめられたのは、令和3年度の問題冊子の注意書きにある「字数には、句読点も含む」という一文です。読点(、)や句点(。)も、1字として数えます。

かぎかっこ(「」)や、A・Bのような英字の扱いは、確認できた公式の資料には書かれていませんでした。当サイトでは、練習のときからかぎかっこも英字も1マス1字として数えることをすすめています。少なめに見積もって本番でマスが足りなくなるより、多めに数えておくほうが安全だからです。

練習で字数をそろえるとき、当サイトでは「35〜45字に収める」を目安にしています。これは、公開されている正解例の字数(令和3年度は37〜44字)を参考にした、練習のための目安です。公式の基準ではありません。それより短いときは、要素が欠けていないかを見直します。長いときは、聞かれていないことを書いていないかを見直します。

手で数えるより速いので、練習の回数を増やせます。

毎日の練習はどう組めばよいか

記述式の練習は、まとまった時間がなくてもできます。当サイトがすすめるのは、条文から自分で問いを作る練習です。

  1. その日に勉強した条文から1つ選び、要件と効果を書き出す。
  2. その条文が使われる場面を、A・B・Cを使って2〜3行の事例にする。
  3. 「誰が・誰に対し・何を」の問いを付けて、何も見ずに40字程度で答えを書く。
  4. 条文と見比べて、3つの要素がそろっているか、字数が収まっているかを確かめる。

問いを自分で作ると、「この条文は、どんな聞かれ方をするだろう」と考える癖がつきます。これは、本番で型1(条文を決める)を速くする練習にもなります。

本物の試験問題の形に慣れたいときは、センターの過去の試験問題と正解のページで、問題と正解例を見られます。センターは、試験問題を書籍・ホームページ等に載せるには許諾(きょだく=許可)が必要としています。そのため当サイトでは問題文を載せず、自作の例題で説明しています。

試験の後に記述の点をどう見積もるかは、自己採点のしかたで扱っています。同じ「記述式・多肢選択式」のカテゴリーにある多肢選択式の解き方も参考になります。多肢選択式は空欄1つごとに点が付くので、記述式とは点の取り方が違います。

型を使うには、条文の要件と効果を正確に覚えていることが前提です。例題1で使った715条を含め、民法の条文をどこから固めるかは民法の勉強法にまとめています。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)