行政書士試験の多肢選択式の解き方:空欄12個・1問8点を落とさない読み方

行政書士試験の多肢選択式(たしせんたくしき)は、文章の空欄(ア〜エ)に入る言葉を、選択肢の一覧(語群)から選ぶ問題です。令和7年度の合否判定基準では、3問出ました。1問8点、空欄1つにつき2点で、合計24点でした。

空欄ごとに点が付くので、1問まるごと分からなくても、分かる空欄から2点ずつ積めます。解き方の手順は3つです。①語群を先に、種類ごとに仕分ける。②空欄の前後から、「どんな種類の言葉が入るか」を決める。③確かな空欄から埋め、残りは消去法でしぼる。この記事では、この手順を自作の例題で通します。

多肢選択式はどんな形式か

令和7年度の実績では、法令等(法律の科目)の問題数は次のとおりでした。5肢択一式(5つから1つ選ぶ問題)が40問、多肢選択式が3問、記述式(40字くらいで書く問題)が3問です。多肢選択式は法令等の中で出て、基礎知識では出ません。

問題の形は、公開されている令和3年度の問題冊子で確かめられます。指示の文は、「文章の空欄ア〜エに当てはまる言葉を、枠の中の選択肢(1〜20)から選ぶ」という形でした。つまり、1問につき空欄が4つ、選択肢が20個です。3問で、空欄は12個になります。

どの科目から出るかについて、センター(行政書士試験研究センター)は、科目ごとの問題数を公表していません。当サイトで令和3年度の問題冊子を確かめたところ、多肢選択式の3問は、憲法が1問、行政法が2問でした。これは当サイトが問題の中身から数えたもので、公式の内訳ではありません。年度によって変わることもあります。勉強の配分を決めるときは、センターの過去の試験問題と正解のページで、自分の目で確かめておくと安心です。

配点は、前もっては公表されません。合否発表のときに、「合否判定基準」で公表されます。令和8年度の配点はまだ出ていないので、この記事の「1問8点・空欄1つ2点」は、令和7年度の数字です。

24点は、合格点の中でどれくらいの重さか

令和7年度の配点で比べると、多肢選択式の24点は、5肢択一式(1問4点)の6問分です。空欄1つの2点は、択一1問のちょうど半分にあたります。

形式1問の点令和7年度の満点
5肢択一式(法令等)4点160点
多肢選択式8点(空欄1つ2点)24点
記述式20点60点

多肢選択式は、記述式と違って、点の付き方がはっきりしています。記述式は採点基準が公表されていません。一方、多肢選択式は空欄1つにつき2点と決まっています。12個の空欄のうち9個が合えば18点、10個なら20点です。点が読みやすいので、合格点までの見通しを立てるときの土台にしやすい形式です。

令和7年度の合否判定基準では、法令等の基準点が122点、全体が180点でした(合格基準は、補正(ほせい=合格ラインの調整)されることがあります)。多肢選択式を何点と見込むと、択一式と記述式で何点必要になるか。足切りと補正の仕組みは合格点と足切りの記事に、形式ごとの全体像は科目と配点の記事にまとめています。

解く前に、語群を種類ごとに仕分ける

20個の言葉を、文章を読む前に、ざっと種類で分けます。手間に見えますが、この仕分けをしておくと、空欄1つあたりの候補が20個から数個に減ります。

  • 人・機関:行政庁、審査庁、裁判所、責任者など。
  • 制度・手続の名前:審査基準、処分基準、不利益処分、聴聞(ちょうもん)など。
  • 条件・例外を表す言葉:正当な理由、特別の支障、緊急の必要など。
  • 行為・性質を表す言葉:任意の協力、不利益な取扱い、裁量、違法、不当など。

仕分けのときに見ておきたいのが、似た言葉・対になる言葉が両方入っている組み合わせです。たとえば「不利益処分」と「不利益な取扱い」、「違法」と「不当」、「法律」と「条例」のような組です。どちらか一方が正解で、もう一方はひっかけとして置かれている、と考えて読みましょう。条文の正確な言葉を思い出すきっかけになります。

空欄の前後から「入る語の種類」を決める

次に文章を読みます。空欄に来たら、すぐに語群を見てはいけません。まず「ここにはどの種類の言葉が入るか」を決めます。

  • すぐ後ろの言葉:「( )によって」「( )をしてはならない」「( )がない限り」の形を見ます。そこから、手段・行為・条件のどれが入るかが分かります。
  • つなぎの言葉:「しかし」「したがって」「また」の後ろを見ます。前の文との関係(反対・結論・追加)から、入る言葉の向きが決まります。
  • 同じ記号の空欄:同じ記号の空欄が2か所にあれば、両方に当てはまる言葉だけが残ります。2か所で試すと、候補が大きく減ります。

種類が決まれば、仕分けておいたグループの中だけを見ればよくなります。そのグループの中で、条文の言葉として正しいものを選びます。

確かな空欄から埋め、残りは消去法で絞る

空欄は、ア→イ→ウ→エの順に解く必要はありません。文章を一度通して読み、自信のある空欄から埋めます。埋めた言葉は候補から消えるので、残りの空欄の候補も減ります。

どうしても決まらない空欄が残ったら、仕分けたグループの中で、文章の流れと合わない言葉を消していきます。最後まで2つで迷ったら、条文の言葉に近いほうを選びます。空欄のままにしても点は入りません。消去法で1つに決めて、マークしておきます。

自作の例題で、手順を通してみる

次の問題は、過去の試験問題ではありません。行政手続法の条文をもとに、当サイトが作った問題です。本番の語群は20個ですが、ここでは短くするために12個にしています。

読む前に、言葉を1つだけ説明しておきます。行政指導(ぎょうせいしどう)とは、役所が「こうしてください」とお願いや助言をすることです。命令ではないので、従うかどうかは相手が決めます。たとえば、市が飲食店を開くさくらさんに「看板を小さくしてください」と頼む、といった場面です。

例題(このサイトのオリジナル問題)

次の文章は、行政手続法が定める行政指導のルールを説明したものである。空欄ア〜エに当てはまる語句を、語群(1〜12)から選びなさい。

行政指導は、相手方に一定の行為を求めるものだが、その内容は相手方の(ア)によってのみ実現されるものである。そのため、行政指導に携わる者は、相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、(イ)をしてはならない。また、行政指導に携わる者は、相手方に対して、その行政指導の趣旨及び内容並びに(ウ)を明確に示さなければならない。行政指導が口頭でされた場合に、相手方からこれらの事項を記載した書面の交付を求められたときは、行政上(エ)がない限り、これを交付しなければならない。

語群:1 任意の協力 2 法律の根拠 3 不利益な取扱い 4 不利益処分 5 責任者 6 処分基準 7 特別の支障 8 正当な理由 9 公益上の必要 10 同意 11 処分庁 12 審査基準

解き方

①語群の仕分け:人・機関=5 責任者、11 処分庁。制度・手続=4 不利益処分、6 処分基準、12 審査基準。条件・例外=7 特別の支障、8 正当な理由、9 公益上の必要。行為・性質=1 任意の協力、3 不利益な取扱い、10 同意、2 法律の根拠。ここで、似た言葉の組に印を付けておきます。「3 不利益な取扱い/4 不利益処分」「1 任意の協力/10 同意」「7 特別の支障/8 正当な理由」の3組です。

②ア:「(ア)によってのみ実現される」なので、相手の側の行動や気持ちが入ります。候補は1と10です。行政手続法32条1項は、行政指導の中身が、相手の「任意の協力によってのみ実現される」ものだと心にとめるよう求めています。「任意」とは、自分の意思で決めることです。答えは1です。10の「同意」は、別の場面で出てくる言葉です。行政手続法2条4号ハで、名あて人(なあてにん=処分を受ける本人)の同意のもとにする処分を、不利益処分から外す場面に出てきます。ここには入りません。

③イ:「(イ)をしてはならない」なので、役所の側の行為が入ります。候補は3と4です。行政手続法32条2項は、相手が行政指導に従わなかったことを理由に、「不利益な取扱い」をしてはならないと決めています。先ほどの例なら、さくらさんが看板を小さくしなかったからといって、市が意地悪な扱いをしてはいけない、ということです。答えは3です。4の「不利益処分」は、2条4号で決められた処分(役所が法律にもとづいて一方的に決めること)の一種です。行政指導とは別の制度です。

④ウ:「趣旨及び内容並びに(ウ)を明確に示さなければならない」なので、「趣旨・内容」と並ぶ言葉です。人・機関のグループから、5か11です。行政手続法35条1項は、「趣旨及び内容並びに責任者」をはっきり示すよう求めています。答えは5です。

⑤エ:「行政上(エ)がない限り」なので、条件・例外のグループから選びます。行政手続法35条3項は、口で行われた行政指導について、書面を求められたときのルールを決めています。「行政上特別の支障がない限り」、書面を渡さなければなりません。答えは7です。8の「正当な理由」は、たとえば行政不服審査法18条に出てきます。審査請求(役所の処分に不服を申し立てる手続)の期限のただし書(正当な理由があるときは、この限りでない)です。組み合わせて覚えておくと、取りちがえを防げます。

答え:ア 1、イ 3、ウ 5、エ 7。この例題の4つの空欄のうち3つは、仕分けで印を付けた「似た言葉の組」のどちらを選ぶかで決まっています。条文の言葉を一字ずつ正確に覚えているかどうかが、そのまま点の差になるということです。

憲法・行政法の多肢選択式に効く勉強のしかた

多肢選択式のために特別な教材を用意する必要はありません。ふだんの択一式の勉強のしかたを少し変えるほうが効きます。

  • 行政法は、条文の言葉をそのまま覚える。「任意の協力」「特別の支障」「相当の期間」「正当な理由」のような言葉は、意味が分かるだけでは足りません。どの条文の、どの場面の言葉かまで結びつけて覚えます。分野ごとに覚える条文は、行政法の勉強法で整理しています。
  • 憲法は、判例の結論だけでなく、理由の言葉も読む。判例(はんれい)とは、裁判所が過去に出した判断のことです。どんな理由でその結論になったのかを、判決の中の言葉ごと読んでおきます。すると、文章の空欄を前後の筋道から埋めやすくなります。
  • 似た言葉の組を、自分で一覧にしておく。勉強中に「これとこれはまぎらわしい」と思った言葉の組を、書きためておきます。試験の直前に見返しましょう。仕分けの段階で、ひっかけに気づけるようになります。

本番で時間をかけすぎないために

多肢選択式は、読む文章の量が多い問題です。1問に時間をかけすぎると、記述式や基礎知識に使う時間が減ります。次のように決めておくと、迷いが減ります。

  • 1問の中で、確かな空欄を先に埋める。残りは仕分けと消去法で1つに決めて、マークする。
  • 迷った空欄には、問題冊子に印を付けておく。全体を解き終えてから戻る。
  • 同じ言葉を2つの空欄に入れていないか、最後にもう一度見る。

3時間の中でどの順番で解くかは、人によって合う形が違います。当日の時間配分と解く順番の決め方は、試験当日の記事で扱っています。

多肢選択式で点が読めるようになったら、次は記述式です。記述式は採点基準が公表されていません。点の付き方が見えない分、書き方の型を決めておくことが大事になります。記述式の書き方で、40字の型を自作の例題とあわせて確かめてみてください。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)