相続分の計算:代襲相続・養子・半血の兄弟・相続放棄・内縁を事例で

相続分の計算は、次の5つの手順で出せます。①相続人になれない人を外す(相続放棄をした人、内縁の配偶者など)。②順位を決める(子→直系尊属→兄弟姉妹。配偶者は常に相続人)。③配偶者とほかの相続人の割合を当てる(子となら2分の1ずつ、直系尊属となら3分の2と3分の1、兄弟姉妹となら4分の3と4分の1)。④同じ順位の人で等しく分ける(代襲相続人は親の分を分け、父母の片方だけが同じ兄弟姉妹は2分の1)。⑤全員の分を足して1になるか確かめる。

この記事は、この手順を10通りの家族で練習するためのものです。相続の全体(承認と放棄の期間、遺留分、配偶者居住権など)は相続の記事で扱っているので、ここでは「だれが・どれだけ」の計算に絞ります。

身近な例で考えると:手順どおりに1つ解く

亡くなったのは、たろうさんです。家族は、妻のはなこさん、長男のけんさん、次男のじろうさん。じろうさんは、たろうさんより先に亡くなっていて、子が2人(まなさん・ゆうさん)います。

  1. 外す人:いません。じろうさんは亡くなっていますが、その子が代わりに相続します(代襲相続)。
  2. 順位:子がいるので、第1順位の子の組。配偶者のはなこさんは常に相続人。
  3. 配偶者と子:はなこさん2分の1、子の組全体で2分の1。
  4. 子の組で分ける:けんさんとじろうさんで2分の1を2つに分けて、4分の1ずつ。じろうさんの4分の1を、まなさん・ゆうさんで分けて、8分の1ずつ。
  5. 検算:2分の1+4分の1+8分の1+8分の1=8分の4+8分の2+8分の1+8分の1=1。

たとえると、相続分の計算は「ケーキを、まず配偶者と家族の組で切り、次に組の中で人数分に切り、亡くなった人の分はその子どもたちでさらに切る」作業です。ただし本物のルールでは、だれが組に入れるか(代襲できるか、放棄した人か)を先に条文で決めないと、切り方が全部ずれます。

条文ではこう決まっている

  • 胎児(886条):相続については、すでに生まれたものとみなします。死んで生まれたときは、この扱いはしません。
  • 子(887条1項):被相続人の子は相続人になります。
  • 代襲(887条2項):子が相続の開始以前に死亡したとき、または欠格(891条)・廃除で相続権を失ったときは、その子の子が代わりに相続人になります。ただし、被相続人の直系卑属(ちょっけいひぞく=子・孫など、自分より下の世代の血のつながった人)でない人は代襲しません。
  • 再代襲(887条3項):代襲する人も先に亡くなっていたときなどは、さらにその子が代襲します。
  • 直系尊属・兄弟姉妹(889条1項):子がいないときは、①直系尊属(親等の近い人が先)、②兄弟姉妹の順に相続人になります。
  • 兄弟姉妹の代襲(889条2項):887条2項だけを準用し、3項(再代襲)は準用していません。兄弟姉妹の代襲は、その子(甥・姪)までです。
  • 配偶者(890条):常に相続人になり、ほかの相続人と同じ順位になります。
  • 法定相続分(900条):子と配偶者は各2分の1、配偶者と直系尊属は3分の2と3分の1、配偶者と兄弟姉妹は4分の3と4分の1。同じ順位の人が何人かいれば等しく分け、父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です(4号)。
  • 代襲相続人の相続分(901条):代わりに相続する人の分は、親が受けるはずだった分と同じ。何人かいれば、それを900条で分けます。兄弟姉妹の子が代襲するときも同じです。
  • 相続放棄(939条):放棄した人は、その相続について、初めから相続人にならなかったものとみなされます。887条2項の代襲の原因(死亡・欠格・廃除)に放棄は入っていないので、放棄した人の子は代襲しません。
  • 養子(727条):養子と、養親やその血族との間には、縁組の日から血族と同じ関係が生じます。

10の家族で練習する

どの家族も、亡くなったのはたろうさんです。「先に死亡」は、たろうさんより前に亡くなったことを表します。

1.配偶者と子2人

家族:妻、長男、長女。→ 妻2分の1、長男・長女は4分の1ずつ。検算:2分の1+4分の1+4分の1=1。

2.代襲(子が先に死亡)

家族:妻、長男、次男(先に死亡。子が2人)。→ 妻2分の1、長男4分の1、次男の子は8分の1ずつ(901条1項)。検算は上の手順のとおり1。

3.再代襲(孫も先に死亡)

家族:妻はいない。長男、長女(先に死亡)。長女の子(孫)も先に死亡し、孫の子(ひ孫)が2人。→ 子の組で2分の1ずつ。長男2分の1、ひ孫は長女の2分の1を分けて4分の1ずつ(887条3項)。検算:2分の1+4分の1+4分の1=1。

4.兄弟姉妹の代襲は1代まで

家族:子も直系尊属もいない。妻、兄、姉(先に死亡)。姉の子(甥)も先に死亡し、甥の子が1人。→ 妻4分の3、兄弟姉妹の組4分の1。甥の子は代襲できない(889条2項は887条3項を準用しない)ので、兄が4分の1を全部受けます。検算:4分の3+4分の1=1。もし甥が生きていれば、兄8分の1、甥8分の1です。

5.半血の兄弟姉妹

家族:子も直系尊属もいない。妻、父母とも同じ兄、父だけが同じ弟。→ 妻4分の3。兄弟姉妹の組4分の1を、兄2:弟1で分けます(900条4号ただし書)。兄12分の2(=6分の1)、弟12分の1。検算:12分の9+12分の2+12分の1=1。

6.養子と、縁組の前に生まれた養子の子

家族:妻、実子の長女、養子(先に死亡)。養子には、縁組の前に生まれた子が1人。→ 養子も、縁組の日から養親の子としての関係が生じるので(727条)、実子と同じく子として相続人になれます。ただし、この養子は先に死亡しています。727条で生じるのは、縁組の日からの、養子と、たろうさんやその血族との間の関係です。縁組の前に生まれた養子の子は、この関係に入らないので、たろうさんの直系卑属ではありません。887条2項ただし書で代襲しません。妻2分の1、長女2分の1。検算:1。養子の子が縁組の後に生まれていれば、たろうさんの孫として代襲し、妻2分の1、長女4分の1、養子の子4分の1です。

7.相続放棄

家族:妻、長男(相続放棄。子が1人)、次男。→ 長男は初めから相続人でなかったものとみなされ(939条)、長男の子は代襲しません。妻2分の1、次男2分の1。検算:1。もし長男も次男も放棄し、たろうさんの母が生きていれば、子の組がいなくなるので第2順位に移り、妻3分の2、母3分の1です。

8.内縁の妻

家族:内縁の妻(婚姻の届出をしていない)、弟。子も直系尊属もいない。→ 890条の「配偶者」は、婚姻をした配偶者です。婚姻は届出によって効力を生じる(739条1項)ので、届出をしていない内縁の妻は相続人ではありません。弟が全部(1)を相続します。検算:1。

9.胎児

家族:妻(妊娠中)、長女。→ 胎児は生まれたものとみなされ(886条1項)、無事に生まれれば子が2人です。妻2分の1、長女4分の1、生まれた子4分の1。死んで生まれたときは子は長女だけで、妻2分の1、長女2分の1(886条2項)。

10.直系尊属は近い世代が先

家族:子はいない。妻、母、父方の祖父。→ 直系尊属は親等の近い人が先(889条1項1号ただし書)なので、母だけが相続人で、祖父は相続人になりません。妻3分の2、母3分の1。検算:1。父も母も生きていれば、父母で3分の1を分けて6分の1ずつです。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる(代襲):子が先に死亡、欠格、廃除。孫が代わりに相続し、孫も先に死亡ならひ孫(家族2・3)。
  • 当てはまらない(代襲しない):相続放棄した人の子(家族7)、縁組の前に生まれた養子の子(家族6)、甥・姪の子(家族4)。
  • ひっかけやすい(相続人でない人):内縁の妻(家族8)、近い世代の直系尊属がいるときの祖父母(家族10)。
  • ひっかけやすい(割合):半血の兄弟姉妹は2分の1(家族5)。等しく分けると答えがずれます。

似ているルールとの違い:代襲できる・できない

場面子の系統兄弟姉妹の系統
先に死亡代襲する。孫も先に死亡なら再代襲甥・姪まで。その子は代襲しない
欠格・廃除代襲する代襲する(廃除は兄弟姉妹にはない)
相続放棄代襲しない代襲しない
縁組前に生まれた養子の子代襲しない―

廃除は「遺留分を有する推定相続人」が対象(892条)で、遺留分のない兄弟姉妹は対象になりません。兄弟姉妹の系統で代襲の原因になるのは、死亡と欠格です。遺言で兄弟姉妹の取り分をなくせる理由と、遺留分の計算は相続の記事、遺言の方式は遺言の記事、養子縁組の要件は親子の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、相続が主な論点の問題は27問(26回)、ほかの論点の問題の中に4問でした。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では、主な論点として8問、ほかの論点の中に2問出ています(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。計算で取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 放棄と代襲:放棄した人の子が代襲する、は誤り。
  • 兄弟姉妹の再代襲:甥・姪の子まで代襲する、は誤り。
  • 半血:等しく分ける、は誤り。2分の1。
  • 養子の子:縁組の前に生まれた子は代襲しない。縁組の後に生まれた子は代襲する。
  • 内縁:内縁の配偶者は相続人ではない。
  • 順位の繰り上がり:子の全員が放棄すると、次の順位(直系尊属、いなければ兄弟姉妹)に移る。

計算の練習を、報酬や税額などほかの計算とあわせてしたいときは、宅建の計算問題の記事も使えます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
Aが死亡した。Aには子も直系尊属もなく、相続人になりうるのは妻Bと、Aより先に死亡した姉Cの系統だけである。Cの子Dも先に死亡しており、Dの子Eがいる。この場合、EはCを再代襲してAの相続人となる。

答え:✕ 分かれ目は、兄弟姉妹の系統の代襲の範囲です。兄弟姉妹の代襲は、887条2項だけを準用し、再代襲を定めた3項を準用していません(民法889条2項)。正しくは、代襲できるのは兄弟姉妹の子(甥・姪)までで、Eは相続人になりません。この例では妻Bだけが相続人です。子の系統なら孫・ひ孫と何代でも代襲できる(887条3項)ので、これと取り違えた形です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
Aが死亡した。相続人は、妻Bと、Aと父母の双方を同じくする兄C、Aと父だけを同じくする弟Dの3人である。この場合、Dの法定相続分は12分の1である。

答え:○ 分かれ目は、半血の兄弟姉妹の割合です。配偶者と兄弟姉妹が相続人なので、Bは4分の3、兄弟姉妹の組が4分の1です(900条3号)。父母の一方だけを同じくするDは、Cの2分の1なので(900条4号ただし書)、4分の1を2:1で分け、Cは6分の1、Dは12分の1になります。✕に見えるのは、等しく分けて8分の1と考えやすいからです。検算:4分の3+6分の1+12分の1=1。

問3(このサイトのオリジナル問題)
Aの養子Bは、Aより先に死亡した。Bには、AとBの養子縁組の前に生まれた子Cがいる。この場合、Cは、Bを代襲してAの相続人となる。

答え:✕ 分かれ目は、代襲する人が被相続人の直系卑属かどうかです。養子と養親の側との血族の関係は、縁組の日から生じます(727条)。縁組の前に生まれたCはAの直系卑属ではないので、887条2項ただし書により代襲しません。正しくは、Cは相続人になりません。縁組の後に生まれた子なら、Aの孫として代襲できます。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。

まとめ

  • 手順は、外す人→順位→配偶者との割合→同じ順位で分ける→検算。合計が1にならなければ、どこかで人を入れ違えている。
  • 子の系統は何代でも代襲する。兄弟姉妹の系統は甥・姪まで。
  • 相続放棄をした人の子、縁組の前に生まれた養子の子は代襲しない。内縁の配偶者は相続人ではない。
  • 父母の一方だけが同じ兄弟姉妹は2分の1。直系尊属は近い世代が先。
  • 胎児は生まれたものとみなす。死んで生まれたら、いなかったものとして計算し直す。

次に読むなら、遺産分割の記事がおすすめです。計算した法定相続分を、実際にどう分けるか(協議・審判、分割の効力)につながります。

兄弟姉妹が相続人になる場面は、試験でも実際の相続でも計算を間違えやすいところです。配偶者がいる場合と兄弟だけの場合の割合を判定表で整理した兄弟が相続人になる場合の割合と順位(いまから相続)も、確認に使えます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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