親子をわかりやすく:嫡出の推定・認知・養子のルールを家族の例で

民法は、だれとだれが法律上の親子になるかを決めています。ひとことで言うと、結婚している夫婦の妻が産んだ子は、夫の子と推定されます(嫡出〔ちゃくしゅつ〕の推定。772条)。この推定は、決められた人が3年以内に訴えを起こすことでしか崩せません。

結婚していない父母の子は、父が認知(にんち=自分の子だと認めること)して、はじめて父子の関係ができます(779条)。血のつながりがなくても、養子縁組(ようしえんぐみ)で親子になれます。

この記事では、嫡出の推定と否認、認知、普通養子と特別養子を扱います。結婚そのもののルールは婚姻と離婚をわかりやすくで、子がどれだけ相続するかは相続をわかりやすくで説明しています。

身近な例で考えるとどうなるか

3つの家族の場面で考えます。

① 離婚して再婚したあとに生まれた子

みさきさんは、前の夫のこうじさんと離婚し、だいすけさんと再婚しました。時間の流れで見ます。

  1. 1月:みさきさんとこうじさんが離婚する。
  2. 3月:みさきさんとだいすけさんが結婚する。
  3. 8月:子のひなたさんが生まれる。離婚から300日以内。

離婚から300日以内の出生なので、こうじさんとの結婚中にできた子とも推定されます。しかし、生まれる前に再婚しています。この場合、生まれた時にいちばん近い結婚の夫=だいすけさんの子と推定されます(772条3項)。

これは令和6年4月1日に施行された改正(令和4年法律第102号)で入ったルールです。あわせて、女性だけに再婚を待たせていた期間(再婚禁止期間)はなくなりました(733条は削除)。

② 結婚していない父が認知する

けんたさんとあやさんは結婚していません。あやさんが子のそらさんを産みました。結婚していないので、772条の推定は働きません。父子の関係は、けんたさんが認知の届出をしてできます(781条1項)。認知の効果は、生まれた時にさかのぼります(784条)。そのあと2人が結婚すると、そらさんは嫡出子(ちゃくしゅつし=結婚している父母の子)の身分を得ます。これを準正(じゅんせい)といいます(789条1項)。

③ 夫婦が小学生を養子にする

はるみさん夫婦は、親類ではない小学生のゆいさんを養子にしたいと考えました。ゆいさんは未成年者なので、家庭裁判所の許可がいります(798条)。はるみさんは結婚しているので、夫と一緒に養親(ようしん=養子の親)になります(795条)。ゆいさんは15歳未満なので、ゆいさんの親などの法定代理人が、代わりに承諾します(797条1項)。

親子のルールは「入口の決まった扉」にたとえられます。親子になる扉は、出生・認知・養子縁組の3つです。ただし本物のルールでは、推定された親子を外す出口も、決められた人と期間に限られています。

条文ではどう決まっているか

嫡出の推定(772条)

  • 妻が結婚中に懐胎(かいたい=妊娠)した子は、夫の子と推定する(1項前段)。
  • 結婚前に懐胎し、結婚が成立した後に生まれた子も、同じく夫の子と推定する(1項後段)。
  • 結婚の成立から200日以内に生まれた子は、結婚前に懐胎したものと推定する(2項)。
  • 結婚の成立から200日を過ぎて生まれた子、または離婚などから300日以内に生まれた子は、結婚中に懐胎したものと推定する(2項)。
  • 懐胎から出生までに2回以上結婚していたときは、出生にいちばん近い結婚の夫の子と推定する(3項)。
  • 3項の夫の子であることが否認されたら、その結婚を除いて、次に近い結婚の夫の子と推定する(4項)。

嫡出の否認(774条〜778条の2)

推定を外すには、嫡出否認の訴えを起こします(775条)。改正前は夫だけでしたが、今は次の4人が否認できます(774条)。期間はどれも3年です(777条)。

否認する人訴える相手3年の数え始め
父子または親権を行う母父が出生を知った時
子父出生の時
母父出生の時
前夫父と、子または親権を行う母前夫が出生を知った時
  • 母と前夫の否認は、子の利益を害することが明らかなときはできない(774条3項・4項)。
  • 子の否認権は、親権を行う母などが代わりに使える(774条2項)。
  • 父または母が、出生後に「自分たちの嫡出子だ」と承認すると、その人は否認権を失う(776条)。
  • 子が父と一緒に暮らした期間が3年未満なら、子は21歳になるまで否認の訴えを起こせる。ただし父の利益を著しく害するときは除く(778条の2第2項)。
  • 前夫の否認の訴えは、子が成年になった後は起こせない(778条の2第4項)。

認知(779条〜789条)

  • 嫡出でない子は、父または母が認知できる(779条)。
  • 方式は、戸籍法の届出(781条1項)。遺言でもできる(同条2項)。
  • 成年の子は、本人の承諾がなければ認知できない(782条)。
  • おなかの中の子(胎児)も認知できる。母の承諾がいる(783条1項)。
  • 亡くなった子は、その子に子や孫(直系卑属〔ちょっけいひぞく〕)がいるときだけ認知できる。その人が成年なら、その承諾がいる(783条3項)。
  • 効果は出生の時にさかのぼる。ただし、第三者がすでに取得した権利は害せない(784条)。
  • 認知した父または母は、認知を取り消せない(785条)。
  • 父が認知しないときは、子などが認知の訴えを起こせる。父の死亡の日から3年を過ぎるとできない(787条)。

普通養子と特別養子(792条〜817条の11)

くらべる点普通養子特別養子
成立のしかた合意と届出(799条)家庭裁判所の審判(817条の2)
養親の年齢20歳以上(792条)25歳以上。夫婦の一方は20歳以上でよい(817条の4)
養親は夫婦か一人でもよい。未成年者を養子にするなら原則夫婦で(795条)夫婦でなければならない(817条の3)
養子の年齢年上・尊属はだめ(793条)請求の時に15歳未満が原則。成立までに18歳になるとだめ(817条の5)
実の親との関係続く終わる(817条の9)
離縁協議でできる(811条)原則できない(817条の10)
  • 普通養子で未成年者を養子にするときは、家庭裁判所の許可がいる。自分や配偶者の子・孫なら不要(798条)。
  • 配偶者のある人が縁組をするときは、配偶者の同意がいる。一緒に縁組するときは不要(796条)。
  • 養子は、縁組の日から養親の嫡出子の身分を得る(809条)。
  • 特別養子は、実の父母の同意が原則いる(817条の6)。6か月以上の監護(かんご=世話)の様子も考える(817条の8)。

令和8年4月1日に施行された改正(親権など)

父母の離婚後の子の養育を見直す改正法(令和6年法律第33号)は、令和8年4月1日に施行されました(法務省の案内による)。離婚のとき、父母の双方または一方を親権者と決めるしくみになりました(819条1項)。父が認知した子の親権は母が行い、協議で双方または父と決めることもできます(819条4項)。父母は、結婚しているかどうかにかかわらず、子のために互いに協力しなければならないとも定められました(817条の12)。令和8年度試験の基準日に施行されているので、試験の範囲に入ります。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例:結婚から100日目に生まれた子

みさきさんの友人は、妊娠が分かってから結婚し、結婚から100日目に出産しました。結婚前に懐胎し、結婚後に生まれた子なので、夫の子と推定されます(772条1項後段)。200日以内でも推定が働く点が、改正後のルールです。

当てはまらない例:DNA鑑定で血縁がないと分かった

772条で夫の子と推定される子について、DNA鑑定で血のつながりがないと分かったとします。最高裁判所第一小法廷の平成26年7月17日判決は、科学的な証拠で生物学上の父子関係がないことが明らかで、夫婦がすでに離婚して別居しているなどの事情があっても、親子関係不存在確認の訴えでは争えないとしました。推定を外す道は、原則として嫡出否認の訴えです。

ひっかけやすい例:おなかの子の認知

けんたさんが、生まれる前のそらさんを認知するとします。胎児の認知はできますが、母のあやさんの承諾がいります(783条1項)。成年の子なら子本人の承諾です(782条)。承諾する人が入れかわる点がひっかけになります。

ひっかけやすい例:孫を養子にする

はるみさんが、未成年の孫を普通養子にするときは、家庭裁判所の許可はいりません(798条ただし書)。一方、年上の人や、おじ・おばのような尊属(そんぞく=自分より上の世代の親族)は、養子にできません(793条)。

似ているルールとどう違うか

親子をめぐる訴えは、名前も期間も似ています。並べて覚えます。

訴え何をするか期間
嫡出否認の訴え推定された父子を外す3年(777条)
認知の訴え父子の関係を作る父の死亡の日から3年まで(787条)
認知無効の訴え事実に反する認知を争う7年(786条1項)

認知無効の訴えは、令和4年の改正で期間が決まりました。子や母は認知を知った時から、認知した本人は認知の時から7年です(786条1項)。母の訴えは、子の利益を害することが明らかなときはできません(同項ただし書)。認知した本人は「取り消し」はできませんが(785条)、反対の事実を理由に「無効」を主張する道は残っています。

認知は遺言でもできます(781条2項)。遺言の方式や撤回のルールは、遺言をわかりやすくで扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 否認できるのは「夫だけ」とする古い型:今は父・子・母・前夫の4人です(774条)。
  • 期間を「1年」とする型:改正後は3年です(777条)。
  • 再婚後300日以内の子を「前夫の子」とする型:出生直前の結婚の夫の子と推定します(772条3項)。
  • 承諾する人の入れかえ:成年の子は子、胎児は母、亡くなった子は成年の直系卑属です(782条・783条)。
  • 普通養子と特別養子の年齢の入れかえ:20歳と25歳、15歳と18歳を混ぜてきます(792条・817条の4・817条の5)。
  • 特別養子は「養子から離縁できる」とする型:離縁は家庭裁判所が認めるときだけで、協議ではできません(817条の10)。

行政書士試験では、5肢択一式で、条文の数字や「だれの承諾か」を入れかえる形が考えられます。判例の結論を問う肢もありえます。宅建試験の権利関係では、相続の問題の中で、養子や認知された子が「子」として相続人になるかを考える形が考えられます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
ゆかりさんは夫と離婚した2か月後に別の男性と結婚し、離婚から250日目に子を産んだ。この子は、離婚した前の夫の子と推定される。

答え:✕ 懐胎から出生までに2回結婚しているので、出生にいちばん近い結婚の夫、つまり再婚後の夫の子と推定されます(772条3項)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
たつやさんは、結婚していない女性との間に生まれた30歳の子を認知したい。子の承諾がなくても、届出をすれば認知できる。

答え:✕ 成年の子は、その承諾がなければ認知できません(782条)。

問3(このサイトのオリジナル問題)
結婚しているのぶこさんが、夫の連れ子ではない12歳の子を普通養子にするとき、夫と一緒に縁組し、家庭裁判所の許可を得る必要がある。

答え:○ 配偶者のある人が未成年者を養子にするときは、原則として配偶者と一緒にします(795条)。未成年者を養子にするので、家庭裁判所の許可もいります(798条)。自分や配偶者の子・孫ではないので、許可の例外にも当たりません。

まとめ

  • 妻が結婚中に懐胎した子、結婚後に生まれた子は夫の子と推定。再婚していれば出生直前の結婚の夫。
  • 否認は父・子・母・前夫が、訴えで、原則3年以内。
  • 認知は届出か遺言。成年の子は子の承諾、胎児は母の承諾。効果は出生の時にさかのぼる。
  • 普通養子は20歳以上・届出。特別養子は25歳以上の夫婦・審判・実親との関係が終わる。
  • 令和8年4月1日施行の改正で、離婚後は父母の双方または一方が親権者になる。

次に読むなら、相続をわかりやすくがおすすめです。この記事で決まった「子」が、相続ではだれと一緒に、どれだけ受け取るかにつながります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、行政書士試験・宅建試験の基準日である令和8年4月1日時点の内容を、e-Gov法令検索で確かめています。