事務所と案内所のルールをわかりやすく:専任の宅建士の数・標識・10日前の届出

宅建業者は、事務所ごとに「成年者である専任の宅建士」を、その事務所で業務に従事する人の5分の1以上置きます。契約や申込みを受ける案内所などには1人以上です(宅地建物取引業法31条の3第1項、施行規則15条の5の3)。足りなくなったら2週間以内に補います(31条の3第3項)。

契約や申込みを受ける案内所などは、業務を始める10日前までに、免許をくれた大臣か知事と、案内所のある場所の知事の両方に届け出ます(50条2項、施行規則19条3項)。標識は、事務所にも案内所にも、まとまった数の分譲をする物件のある場所(現地)にも掲げます(50条1項、施行規則19条1項)。一方、報酬額の掲示・従業者名簿・帳簿は「事務所ごと」のルールです。

この記事では、事務所と案内所などの「場所」にかかるルールを扱います。宅建士の登録や宅建士証そのものは宅建士の登録と宅建士証の記事で説明しています。条文は e-Gov 法令検索の、令和8年4月1日時点の条文で確かめました。

身近な例で考えると

愛知県知事の免許を持つ不動産屋さん「さくら台不動産」の話です。登場人物は次のとおりです。

人物立場したこと
ゆうとさんさくら台不動産の社長事務所と案内所を運営する
みさきさんさくら台不動産の宅建士事務所の専任の宅建士
あおぞらハウス別の宅建業者(売主)岐阜市で20戸のマンションを分譲する
  1. さくら台不動産の事務所は名古屋市の本店だけ。そこで宅建業の業務に従事する人は10人。専任の宅建士は、みさきさんを入れて2人いる。10人の5分の1は2人なので、足りている。
  2. 新しく2人を雇い、業務に従事する人が12人になった。2人では12人の5分の1(2.4人)に届かないので、3人目が必要になる。ゆうとさんは、2週間以内に3人目の専任の宅建士を置いた。
  3. あおぞらハウスから、岐阜市に建てる20戸のマンションの販売の代理を頼まれた。現地近くの建物の中にモデルルームを兼ねた案内所を作り、そこで買いたい人の申込みを受けることにした。
  4. 案内所には専任の宅建士を1人置く。業務を始める10日前までに、免許をくれた愛知県知事と、案内所のある岐阜県の知事に届け出る。案内所には標識も掲げる。
  5. マンションが建つ現地には、売主のあおぞらハウスが標識を掲げる。
  6. 週末、ショッピングモールで物件の展示会を開いた。そこではパンフレットを配るだけで、申込みは受けない。標識は掲げるが、専任の宅建士を置く義務も、10日前の届出もない。

たとえると、事務所は「本店や支店などの常設の店」、案内所は「売り出しの期間だけ開く出張所」です。出張所でも申込みを受けるなら、宅建士を置き、役所に前もって知らせます。ただし本物のルールでは、案内所で申込みを受けても、それだけで事務所になるわけではありません。岐阜県に案内所を作っても、愛知県知事の免許のままで大丈夫です(事務所の場所で免許が決まる点は宅建業の免許の記事で説明しています)。

条文ではこう決まっている

「事務所」とはどこか(3条1項、施行令1条の2)

  • 事務所は、①本店または支店(会社などでない人は、主たる事務所か従たる事務所)、②それ以外で、続けて業務ができる施設があり、宅建業の契約を結ぶ権限のある使用人を置いている場所(施行令1条の2)。
  • 免許をくれるのが知事か大臣かは、この「事務所」の場所で決まる(3条1項)。

専任の宅建士を置く(31条の3)

  • 事務所と、国土交通省令で定める場所(あわせて「事務所等」)ごとに、省令で定める数の「成年者である専任の宅建士」を置く(1項)。
  • 事務所は、そこで業務に従事する人の数に対して、宅建士の数の割合が5分の1以上になる数。省令で定める場所(案内所など)は1人以上(施行規則15条の5の3)。
  • 省令で定める場所とは、事務所以外で、宅地・建物の売買や交換の契約(予約を含む)、または売買・交換・貸借の代理や媒介の契約を結ぶ場所か、その申込みを受ける場所のうち、次のもの(施行規則15条の5の2)。①続けて業務ができる施設がある、事務所以外の場所。②10区画以上の宅地か10戸以上の建物の分譲(一団の宅地建物の分譲)をするための案内所。③ほかの業者が行う一団の分譲の代理・媒介をするための案内所。④業務に関する展示会などの催しをする場所。
  • 業者本人(法人ならその役員=業務を執行する社員・取締役・執行役やこれに準ずる人)が宅建士なら、その人が自分で主に業務をしている事務所等では、その人を「成年者である専任の宅建士」とみなす(2項)。
  • 1項に反する事務所等を開いてはいけない。今ある事務所等が足りなくなったら、2週間以内に必要な措置をとる(3項)。

「専任」の細かい意味は、31条の3には書かれていません。試験では、まず「どこに・何人・いつまでに」を条文の数字で押さえます。

標識と10日前の届出(50条、施行規則19条)

  • 標識:事務所等と、それ以外の省令で定める業務の場所ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げる(50条1項)。省令で定める場所は、契約も申込みも受けない案内所や展示会の場所、そして一団の分譲をする物件のある場所(現地)など(施行規則19条1項)。
  • 届出:31条の3第1項の省令で定める場所(契約や申込みを受ける案内所など)について、あらかじめ、所在地・業務内容・業務を行う期間・専任の宅建士の氏名を届け出る(50条2項)。
  • 届出先は、免許をくれた国土交通大臣か都道府県知事と、その場所を管轄する都道府県知事の両方(50条2項)。
  • 届出は、業務を開始する日の10日前までに届出書を出す(施行規則19条3項)。

事務所ごとに備えるもの(46条4項・48条・49条)

  • 報酬額の掲示:事務所ごとに、国土交通大臣が決めた報酬の額を、公衆の見やすい場所に掲示する(46条4項)。
  • 従業者証明書:従業者には、従業者であることを証明する書面を持たせないと、業務をさせてはいけない。取引の関係者に求められたら見せる(48条1項・2項)。これは事務所に限らず、案内所で働く人にもかかる。
  • 従業者名簿:事務所ごとに備え、取引の関係者に求められたら見せる(48条3項・4項)。最後に書いた日から10年間保存する(施行規則17条の2第4項)。
  • 帳簿:事務所ごとに備え、取引があるたびに、年月日や物件の所在・面積などを書く(49条)。各事業年度の末日で閉じ、閉じてから5年間保存する。業者が自ら売主となる新築住宅のものは10年間(施行規則18条3項)。

変わったときの届出(9条)

事務所の名称・所在地や、事務所ごとに置く専任の宅建士の氏名が変わったら、30日以内に、免許をくれた大臣か知事に届け出ます(9条、4条1項4号・5号)。ここでいう宅建士は「事務所ごと」の人です。案内所の宅建士は、50条2項の届出のほうで扱います。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:業務に従事する人が23人の事務所。23人の5分の1は4.6人なので、専任の宅建士は5人必要です。4人では足りません。
  2. 当てはまる例:岐阜市の案内所で、マンションの購入の申込みを受ける。契約は名古屋の事務所で結ぶ予定でも、申込みを受ける以上、専任の宅建士1人と10日前の届出が必要です(施行規則15条の5の2)。
  3. 当てはまらない例:ショッピングモールの展示会で、パンフレットを配って物件を紹介するだけ。契約も申込みも受けないので、専任の宅建士を置く義務も、50条2項の届出もありません。ただし標識は掲げます(施行規則19条1項5号)。
  4. 当てはまらない例:さくら台不動産が開いた代理の案内所について、売主のあおぞらハウスが専任の宅建士を置き、届け出る義務を負う、と考えるのは誤りです。条文で宅建士を置く場所とされているのは、代理・媒介をする業者が「案内所を設置して行う場合」のその案内所です(施行規則15条の5の2第3号)。宅建士を置き、届け出るのは案内所を開いたさくら台不動産で、自分で案内所を開いていないあおぞらハウスではありません。ただし現地の標識は、分譲をするあおぞらハウスが掲げます(施行規則19条1項2号)。
  5. ひっかけやすい例:専任の宅建士が1人やめて、5分の1に足りなくなった。「次の免許の更新までに補えばよい」は誤りです。2週間以内に補います(31条の3第3項)。また、事務所の専任の宅建士の氏名が変わったので、30日以内の変更の届出(9条)も必要です。
  6. ひっかけやすい例:案内所の標識だけ掲げ、届出は案内所を開いた後にした。50条2項は「あらかじめ」で、10日前までです。あとからでは間に合いません。
  7. ひっかけやすい例:17歳の宅建士が、ある会社の取締役で、自分で主に業務をしている事務所がある。その事務所では「成年者である専任の宅建士」とみなされます(31条の3第2項)。役員でない17歳の社員なら、成年者ではないので数に入りません。

似ているルールとの違い

場所ごとに、何が必要かを比べます。

項目事務所契約・申込みを受ける案内所など契約も申込みも受けない案内所・現地
専任の宅建士5分の1以上1人以上置く義務なし
標識必要必要必要
10日前の届出対象外必要不要
報酬額の掲示・名簿・帳簿必要条文は事務所ごと条文は事務所ごと

事務所が増えたり移ったりしたときは、50条2項の届出ではなく、9条の変更の届出(30日以内)や、県をまたぐなら免許換えの話になります。案内所の届出は「前もって・10日前」、事務所の変更の届出は「あとから・30日以内」と、向きが逆なのが覚えどころです。

もう一つ、ここでいう「事務所等」は、クーリング・オフで使う「事務所等」と言葉は似ていますが、範囲が同じではありません。クーリング・オフでは、案内所が土地に定着する建物の中にあるかどうかも問われ、テント張りの案内所で申し込んだなら、ほかの条件を満たせば申込みの撤回ができます。くわしくはクーリング・オフの記事で確かめてください。

試験ではここをまちがえやすい

このテーマは宅建試験の宅建業法の論点です。次のような形で問われやすい論点です。

  • 数字の入れかえ:事務所は5分の1以上、案内所は1人以上。「10分の1」「2人以上」に変えた形に注意します。
  • 人数の数え方:5分の1は「業務に従事する人の数」に対する割合です。「割合が5分の1以上になる数」なので、割り切れないときは繰り上げた人数が必要です(23人なら5人)。
  • 補う期限:足りなくなったら2週間以内。変更の届出の30日以内と混ぜた形に注意します。
  • 成年者:専任の宅建士は成年者であることが必要。例外は、業者本人や役員が宅建士で、自分で主に業務をしている事務所等だけです。
  • 契約するかどうか:専任の宅建士と10日前の届出が必要なのは、契約を結ぶか申込みを受ける場所だけ。標識は、契約しない案内所や現地にも必要です。
  • 届出先:免許をくれた大臣か知事と、場所を管轄する知事の「両方」。片方だけとする形に注意します。
  • だれの義務か:ほかの業者の分譲を代理・媒介する案内所では、案内所を開いた業者が宅建士を置き、届け出ます。現地の標識は分譲する業者です。
  • 事務所だけのもの:報酬額の掲示、従業者名簿(10年保存)、帳簿(閉鎖後5年、自ら売主の新築住宅は10年)。従業者証明書は場所を問わず全員に持たせます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者は、業務に従事する者が16人の事務所には、成年者である専任の宅建士を3人置けば足りる。

答え:✕
必要なのは、宅建士の割合が5分の1以上になる数です(施行規則15条の5の3)。16人の5分の1は3.2人なので、3人では届きません。4人必要です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者が、一団の宅地の分譲を案内所を設置して行う場合、その案内所で契約の締結も申込みの受付もしないときは、その案内所に標識を掲げる必要はない。

答え:✕
契約も申込みも受けない案内所には、専任の宅建士を置く義務も、50条2項の届出もありません。しかし標識は必要です(50条1項、施行規則19条1項3号)。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者は、申込みを受ける案内所を設けるときは、業務を開始した日から10日以内に、免許を受けた知事に届け出ればよい。

答え:✕
届出は「あらかじめ」で、業務を開始する日の10日前までです(50条2項、施行規則19条3項)。届出先も、免許権者と案内所の所在地を管轄する知事の両方です。

まとめ

  • 専任の宅建士は、事務所なら業務に従事する人の5分の1以上、契約・申込みを受ける案内所などなら1人以上。成年者であること。
  • 足りなくなったら2週間以内に補う。事務所の宅建士の氏名が変われば30日以内に変更の届出。
  • 契約・申込みを受ける案内所などは、業務開始の10日前までに、免許権者と所在地の知事の両方へ届け出る。
  • 標識は、事務所・案内所・展示会・分譲の現地に掲げる。契約しない案内所にも必要。
  • 報酬額の掲示・従業者名簿(10年)・帳簿(5年、自ら売主の新築住宅は10年)は事務所ごと。

このサイトで次に読むなら、宅建士の登録と宅建士証の記事がおすすめです。ここで出てきた「専任の宅建士」になるまでの手続きと、重要事項の説明など宅建士にしかできない仕事がつながります。案内所での申込みにかかわるクーリング・オフの記事も、場所の判断を続けて練習できます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)