国の予算と国債:本予算・暫定予算・補正予算、建設国債と赤字国債(財政法4条)、財政投融資

ひとことで言うと、国の歳出(さいしゅつ=国が使うお金)は、借金(公債)以外の収入でまかなうのが原則で、例外として公共事業費・出資金・貸付金にだけ建設国債を出せます(財政法4条1項)。それ以外の経費に充てる赤字国債(正式には特例国債)は、財政法ではなく、特例公債法という別の法律を根拠に出しています。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の経済・財政の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、条文の骨組みを知るために読んでください。

扱うのは、予算の種類(本予算・暫定予算・補正予算)、国債の根拠(建設国債・赤字国債)、財政投融資のしくみです。国債の残高・推移・割合は年ごとに変わるので書きません。予算の国会での議決と衆議院の優越、予備費は憲法の財政の記事と衆議院の優越の記事に任せます。条文は令和8年4月1日時点のものを、2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確かめました。外務省の資料がODAの事業予算の財源を一般会計・特別会計・財政投融資等などに分けて示していることはODAの記事、財政の3つの機能とプライマリーバランスの意味は財政の3つの機能の記事で扱っています。

身近な例で考えると

会社員のみおさんは、行政書士試験の勉強の合間に、ある年度(架空の年度です)の国の予算の流れを、財務省の説明と条文で追ってみました。

  1. 1月:内閣が、翌年度の予算を国会に出した。前年度の1月中に出すのが「常例」とされている(財政法27条)。
  2. 3月:国の会計年度が始まる4月1日(11条)までに、予算が成立する見込みがない。
  3. そこで内閣は、4月からの一定の期間だけの暫定予算(ざんていよさん)を作り、国会に出した(30条1項)。
  4. その後:年度の予算(本予算)が成立し、暫定予算は失効した(30条2項)。
  5. 秋:予算を作ったあとに起きた事情で、特に急いで必要になった経費が出てきた。内閣は補正予算を作り、国会に出した(29条1号)。

この年度の予算では、道路や橋の工事(公共事業費)の財源の一部に建設国債を充て、それでも足りない分は、特例公債法にもとづく特例国債(赤字国債)で補いました。

たとえると、建設国債は「家を建てるためのローン」、赤字国債は「毎月の生活費が足りないための借金」に近いと説明されることがあります。ただし本物のルールでは、建設国債を出せるかどうかは「形の残るものか」ではなく、条文が挙げる3つの費目(公共事業費・出資金・貸付金)に当たるかで決まります。

条文ではこう決まっている

予算の形と会計(11条・13条・16条・27条)

  • 会計年度(11条):毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わる。
  • 一般会計と特別会計(13条):国の会計は一般会計と特別会計に分ける。特別会計は、特定の事業を行う場合などで、一般会計と分けて経理する必要があるときに限り、法律で置く。
  • 予算の中身(16条):予算は、予算総則・歳入歳出予算・継続費・繰越明許費・国庫債務負担行為からなる。
  • 提出の時期(27条):内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の1月中に国会に出すのを常例とする。

本予算・暫定予算・補正予算(29条・30条)

「本予算」「当初予算」は法律の言葉ではなく、暫定予算や補正予算と区別するときの呼び方です。条文が定めているのは、暫定予算と補正予算です。

種類どんな予算か条文
本予算(当初予算)その年度の1年分の予算。前年度の1月中に出すのが常例27条
暫定予算必要に応じて、年度のうち一定期間の分だけ作る(本予算が年度の始めまでに成立しないときなど)。本予算が成立すると失効し、それまでの支出は本予算にもとづいたものとみなす30条1項・2項
補正予算予算を作ったあとの事情で、予算に追加するか、追加以外の変更を加えるときに作る29条1号・2号

補正予算を作れる場面は、29条で2つに限られています。1号は、法律や契約で国が払う義務のある経費の不足を補う場合と、予算を作ったあとの事情で特に緊要になった経費の支出などのために予算を追加する場合です。2号は、予算を作ったあとの事情で、予算に追加以外の変更を加える場合です。補正は「足す」だけではありません。

公債の原則と建設国債(4条)

  • 原則(4条1項本文):国の歳出は、公債または借入金以外の歳入を財源としなければならない。
  • 例外(同項ただし書):公共事業費・出資金・貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を出し、借入れができる。これが建設国債。
  • 償還の計画(2項):ただし書で公債を出すときは、その償還(しょうかん=返済)の計画を国会に出す。
  • 公共事業費の範囲(3項):1項の公共事業費の範囲は、毎会計年度、国会の議決を経る。

赤字国債(特例国債)と特例公債法

「赤字国債」も法律の言葉ではありません。財務省は、この国債は通常「特例国債」と呼ばれ、その性質から「赤字国債」と呼ばれることもある、と説明しています。根拠は「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律」(平成24年法律第101号。この記事では特例公債法と呼びます)です。

  • 対象の年度:令和8年度から令和12年度までの間の各年度(1条・3条1項)。令和8年法律第13号の改正で、この年度に改められ、令和8年4月1日に施行されています。
  • 中身(3条1項):財政法4条1項ただし書の規定による公債のほか、一般会計の歳出の財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を出せる。

財務省の説明では、特例国債は、建設国債を出してもなお歳入が足りないと見込まれるときに、公共事業費以外の歳出に充てるために出すものです。建設国債も特例国債も、発行の限度額は予算の中で国会の議決を受けます。対象の年度は法改正で変わるので、年度は覚える対象ではなく、「財政法とは別の法律が根拠」という骨組みで押さえます。

日本銀行の引受けの禁止(5条)

国が公債を出すとき、日本銀行に引き受けさせることと、日本銀行から借り入れることは、原則として禁止されています(5条本文)。ただし、特別の事由がある場合に、国会の議決を経た金額の範囲内なら例外が認められます(同条ただし書)。日本銀行の側の決まりは日本銀行の役割の記事で扱います。日本銀行が金融機関を相手に国債などを売り買いする公開市場操作は、これとは別の金融政策の手段です(金融政策の手段の記事)。

財政投融資とは何か

財務省は、財政投融資を「税財源によらず、国債の一種である財投債の発行によって調達した資金などを財源とする、国による投融資活動」と説明しています。手法は次の3つです(財務省「財政投融資の概要2026」)。

  • 財政融資:財投債で調達した資金などを元に、政策的な必要が高く、返済が確実な事業に、主に長期・固定・低利で貸す。
  • 産業投資:国が持つ株式の配当金などを元に、民間だけでは資金が回りにくい分野に出資する。
  • 政府保証:財投機関が出す債券や借入金について、政府が元本と利息の支払いを保証する。

条文では次のように決まっています。

  • 財政融資資金法1条・10条:財政融資資金を置き、国・地方公共団体・特別の法律で設立された法人などに融資する。運用先は、国債、国への貸付け、地方債、地方公共団体への貸付けなどと10条1項に並んでいる。
  • 特別会計に関する法律50条:財政投融資特別会計は、財政融資資金の運用と、産業の開発・貿易の振興のための投資の経理を明確にすることを目的とする。
  • 同法62条:財政融資資金勘定において、財政融資資金の運用の財源に充てる必要があるときは、同勘定の負担で公債を出せる(1項)。その発行の限度額は、予算をもって国会の議決を経なければならない(2項)。

財投債は国債の一種ですが、一般会計ではなく、財政投融資特別会計の財政融資資金勘定の負担で出します(62条1項)。財政投融資計画は、予算と一体のものとして閣議に出され、予算とあわせて国会で審議されると財務省は説明しています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:堤防の工事(公共事業費)の財源に、国会の議決を経た金額の範囲内で公債を出した。財政法4条1項ただし書の建設国債です。
  2. 当てはまらない例:省庁の事務費の財源が足りないので、財政法4条1項ただし書で公債を出した。事務費は公共事業費・出資金・貸付金のどれでもありません。公債を出すなら特例公債法が根拠になります。
  3. 当てはまらない例:本予算が成立していないので、内閣が国会に出さずに暫定予算で支出を始めた。暫定予算も、内閣が作って国会に出すものです(30条1項)。
  4. ひっかけやすい例:年度の途中で税収が見込みより増え、予定していた公債を減らすことにした。歳出を足すわけではありませんが、予算に追加以外の変更を加える補正予算(29条2号)で扱えます。
  5. ひっかけやすい例:財投債は「国債の一種」ですが、財政法4条のただし書ではなく、特別会計に関する法律62条が根拠です。

似ているルールとの違い

国債根拠何に使うかだれの負担か
建設国債財政法4条1項ただし書公共事業費・出資金・貸付金一般会計
特例国債(赤字国債)特例公債法3条1項一般会計の歳出の財源(建設国債の対象以外)一般会計
財投債特別会計に関する法律62条財政融資資金の運用の財源財政投融資特別会計の財政融資資金勘定

3つとも、発行の限度額は予算として国会の議決を受けます。違うのは、根拠の法律と、何に使うか、どの会計の負担で出すかです。

試験ではここをまちがえやすい

  • 建設国債の費目:公共事業費・出資金・貸付金の3つ。人件費や事務費は入らない。
  • 赤字国債の根拠:財政法ではなく特例公債法。対象の年度が法律で区切られている。
  • 補正予算の中身:追加(29条1号)だけでなく、追加以外の変更(2号)もある。
  • 暫定予算と補正予算:暫定予算は「年度のうち一定期間」の予算、補正予算は「予算を作ったあとの事情」による変更。
  • 財投債の会計:一般会計ではなく、財政投融資特別会計の財政融資資金勘定の負担。限度額は国会の議決を経る。
  • 「本予算」「赤字国債」は通称:条文の言葉は「暫定予算」「補正予算」「公債」。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
国の一般会計で、人件費や事務費のように、公共事業費・出資金・貸付金のどれにも当たらない経費の財源が足りなくなった。この場合、内閣は、財政法4条1項ただし書を根拠に、国会の議決を経た金額の範囲内で、その財源に充てる公債を出すことができる。

答え:✕ 分かれ目は、公債を出す根拠の法律です。財政法4条1項ただし書が公債を認めているのは、公共事業費・出資金・貸付金の財源に限られます。正しくは、それ以外の経費に充てる公債(特例国債)は、特例公債法3条1項を根拠に、国会の議決を経た金額の範囲内で出します。「国会の議決を経れば4条で何にでも出せる」と考えると○にしてしまいます。4条ただし書は建設国債の根拠、特例公債法は赤字国債の根拠、と分けて覚えます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
ある年度の予算が成立したあと、予算を作ったあとに生じた事由により、計上していた経費の一部が要らなくなった。この場合、内閣は、予算に追加する以外の変更を加える補正予算を作り、国会に出すことができる。

答え:○ 財政法29条は、補正予算を作れる場合を2つに限っています。1号は経費の不足や緊要な経費のために予算を追加する場合、2号は予算作成後に生じた事由にもとづいて、予算に追加以外の変更を加える場合です。経費が要らなくなったときの変更は2号に当たります。補正予算は「予算を足すもの」とだけ覚えていると✕に見えます。年度のうち一定期間の分だけ作る暫定予算(30条)とは別のものです。

問3(このサイトのオリジナル問題)
財政融資資金の運用の財源に充てる公債(財投債)は、財政投融資特別会計の財政融資資金勘定の負担で出される。特例国債と違い、財投債の発行の限度額は、予算として国会の議決を経る対象にならない。

答え:✕ 分かれ目は、国会の議決の有無です。特別会計に関する法律62条1項は、財政融資資金勘定の負担で公債を出せるとし、2項で、その発行の限度額は予算をもって国会の議決を経なければならないとしています。正しくは、財投債の限度額も国会の議決を経ます。前半の「どの会計の負担か」は正しく、後半だけが誤りです。建設国債(財政法4条1項)、特例国債(特例公債法3条1項)と同じく、議決が要る点はそろっています。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 国の歳出は公債以外の歳入でまかなうのが原則。公共事業費・出資金・貸付金にだけ建設国債を出せる(財政法4条1項)。
  • 赤字国債(特例国債)の根拠は特例公債法。令和8年4月1日時点の対象は令和8年度〜令和12年度。
  • 暫定予算は年度のうち一定期間の予算(30条)、補正予算は追加と追加以外の変更(29条)。
  • 財投債は財政投融資特別会計の負担で出す国債で、限度額は国会の議決を経る(特別会計に関する法律62条)。

このサイトで次に読むなら、地方交付税の記事です。国のお金が地方公共団体にどう渡るかを、交付税・国庫支出金・地方債の違いで続けて確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令を、2026年10月17日に確かめました。特例公債法の対象の年度は、令和8年法律第13号による改正(令和8年4月1日施行)のあとの条文です。

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