番号法(マイナンバー法):個人番号と特定個人情報、利用できる事務と提供の制限(9条・19条)

ひとことで言うと、番号法は、マイナンバー(個人番号)を使ってよい場面を法律と条例で決めたものに限り、その番号を含む情報(特定個人情報)を渡す・集める・持つことも限られた場合だけにした法律です。正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)です。

一般の個人情報は、本人の同意があれば第三者に提供できます。特定個人情報は、本人の同意があっても、19条に並ぶ場合でなければ提供できません。この記事では、マイナンバーカードの手続や時事は扱わず、試験の論点として条文のしくみを整理します。別表の細目や省令も扱いません。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました。行政のデジタル化を決める法律どうしの関係(デジタル社会形成基本法・官民データ活用推進基本法)はデジタル社会形成基本法の記事で扱っています。

身近な例で考えると

りこさんは「ひまわり商事」で働く会社員です。年末に、会社から個人番号を出すよう言われました。

人物・機関番号法での立場すること
りこさん本人自分の個人番号を会社に出す
ひまわり商事個人番号関係事務実施者法令で決まった書類に番号を書いて税務署などに出す
税務署・市役所など個人番号利用事務実施者番号を使って情報を管理する
  1. ひまわり商事は、法令で決まった書類に従業員の番号を書く事務のために、りこさんに番号の提供を求めた(15条の例外に当たる)。
  2. ひまわり商事は、りこさんから個人番号カードを見せてもらうなどして、本人確認をした(16条)。
  3. ひまわり商事は、その事務に必要な限度で番号を使い、書類を提出した(9条4項・19条2号)。
  4. ひまわり商事の営業部が、取引先への年賀状の名簿づくりに、りこさんの番号を使おうとした。これは、法律で決まった事務ではないのでできない。

たとえると、個人番号は「決まった窓口でしか使えない専用の通行証」です。ふつうの個人情報が「本人がいいと言えば見せてよい名刺」だとすると、通行証は、本人がいいと言っても決まった窓口以外では出せません。ただし本物のルールでは、人の命や財産を守るときなど、19条に並ぶ例外があります。

条文ではこう決まっている

定義(2条)

言葉意味条
個人番号住民票コードを変換して得られる番号で、その人を識別するために指定されるもの2条5項
本人個人番号で識別される特定の個人2条6項
特定個人情報個人番号をその内容に含む個人情報2条9項
特定個人情報ファイル個人番号をその内容に含む個人情報ファイル2条10項
個人番号利用事務行政事務を処理する者が、情報を効率的に検索・管理するため個人番号を使って処理する事務2条11項
個人番号関係事務個人番号利用事務に関して、他人の個人番号を必要な限度で使って行う事務2条12項

個人番号利用事務を処理する者と、その委託を受けた者が「個人番号利用事務実施者」、個人番号関係事務を処理する者と、その委託を受けた者が「個人番号関係事務実施者」です(2条13項・14項)。会社が従業員の番号を書類に書くのは関係事務、行政機関が番号で情報を管理するのは利用事務、と分けると覚えやすくなります。

使える事務は決まっている(9条)

  • 1項:別表に掲げる者が、別表に掲げる事務について、情報を効率的に検索・管理するために必要な限度で使える。委託を受けた者も同じ。
  • 2項:地方公共団体の長その他の執行機関は、別表の事務のほか、条例で定める事務について、必要な限度で使える。
  • 3項:法務大臣は、戸籍関係情報の提供のための事務について、情報提供用個人識別符号を使える。
  • 4項:法令や条例で、他人の個人番号を書いた書面の提出などをするものとされた者は、その事務に必要な限度で使える(会社の関係事務はここ)。
  • 5項:4項の者のうち所得税法の一定の者(金融機関など)は、激甚災害が起きたときなど政令で定めるときに、契約に基づく金銭の支払に必要な限度で使える。
  • 6項:19条13号〜17号で特定個人情報の提供を受けた者は、その目的の達成に必要な限度で使える。

求める・渡す・集める・持つの制限(15条・16条・19条・20条)

  • 提供の求めの制限(15条):何人も、19条の各号に当たって特定個人情報の提供を受けられる場合を除き、他人に個人番号の提供を求めてはならない。ここでいう他人は、自分と同一の世帯に属する者以外の者。
  • 本人確認(16条):個人番号利用事務等実施者は、本人から個人番号の提供を受けるとき、個人番号カードの提示を受けるなどの本人確認の措置をとらなければならない。
  • 提供の制限(19条):何人も、19条の各号のどれかに当たる場合を除き、特定個人情報を提供してはならない。
  • 収集・保管の制限(20条):何人も、19条の各号のどれかに当たる場合を除き、他人の個人番号を含む特定個人情報を収集し、または保管してはならない。

19条は、令和8年4月1日時点で1号〜17号まであります。代表的なものだけを挙げます。

号提供できる場合
1号個人番号利用事務実施者が、その事務に必要な限度で、本人・代理人・個人番号関係事務実施者に提供
2号個人番号関係事務実施者が、その事務に必要な限度で提供
3号本人や代理人が、本人の番号を含む情報を個人番号利用事務等実施者に提供
6号委託や合併などで事業が引き継がれるのに伴う提供
8号情報提供ネットワークシステムを使った行政機関どうしの提供
13号個人情報保護委員会から35条1項で求められた提供
15号訴訟の手続、裁判の執行、刑事事件の捜査など、公益上の必要がある場合
16号人の生命・身体・財産の保護に必要で、本人の同意があるか、同意を得るのが難しい場合

本人の同意だけで提供できる号はありません。同意が出てくるのは16号(生命・身体・財産の保護)と4号(勤め先が変わるときの前の勤め先から後の勤め先への提供)のように、ほかの条件と組み合わさった場面です。

特定個人情報保護評価と委員会の監督(27条〜35条)

  • 指針(27条):個人情報保護委員会が、評価の実施などの指針を作って公表し、少なくとも3年ごとに見直す。
  • 特定個人情報保護評価(28条):行政機関の長などは、特定個人情報ファイルを保有する前に、評価書を公示して広く国民の意見を求め、見直したうえで委員会の承認を受ける。
  • ファイルの作成の制限(29条):事務の処理に必要な範囲を超えて、特定個人情報ファイルを作ってはならない。
  • 漏えいなどの報告(29条の4):個人の権利利益を害するおそれが大きい漏えいなどが起きたら、委員会に報告し、本人にも知らせる(例外あり)。
  • 指導・助言、勧告・命令(33条・34条):委員会は指導・助言ができる。法令違反があれば、期限を定めて勧告し、正当な理由なく従わなければ命令できる。重大な権利利益の侵害が起きていて緊急のときは、勧告を経ずに命令できる(34条3項)。
  • 報告・立入検査(35条):委員会は報告を求め、職員に立入検査をさせられる。犯罪捜査のための権限と解釈してはならない(同条3項)。

個人情報保護法との違いを1枚で

比べる点個人情報保護法(一般のルール)番号法(特定個人情報)
第三者への提供原則は本人の同意が必要。同意があれば提供できる(27条1項)同意があっても19条の各号に当たらなければ提供できない
同意なしの提供の手続オプトアウトの手続がある(27条2項)19条の各号だけ
集める・持つ偽りその他不正の手段による取得の禁止など19条の各号に当たる場合しか収集・保管できない(20条)
監督個人情報保護委員会個人情報保護委員会(33条〜35条)

一般のルールは個人情報保護法の記事、行政機関が持つ個人情報の開示などは行政機関の個人情報の記事で扱っています。住民票コードや住民票の写しの交付は戸籍法・住民基本台帳法の記事で確かめられます。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:ひまわり商事が、法令で決まった書類に書くため、りこさんに番号の提供を求め、カードを見て本人確認をした。15条の例外に当たり、16条の措置もとっています。
  2. 当てはまらない例:ひまわり商事が、りこさんの同意をもらって、番号を取引先の会員カードの登録に使わせた。同意があっても19条の各号に当たらないので、提供できません。
  3. 当てはまらない例:A市が、市独自の事務に番号を使うのに、条例を定めず要綱だけで済ませた。9条2項は「条例で定める」事務に限っています。
  4. ひっかけやすい例:りこさんが、同じ世帯の父の番号を、父に教えてもらうよう頼んだ。15条の「他人」は同一の世帯に属する者以外の者なので、15条の制限には当たりません。
  5. ひっかけやすい例:りこさんがひまわり商事を辞めて、別の会社に移った。本人の同意を得て、関係事務に必要な限度で、前の会社から後の会社へ提供するのは、19条4号の場合です。

試験ではここをまちがえやすい

  • 同意の位置:同意だけで提供できる号はない。同意が出てくるのは、16号(生命・身体・財産)や4号(勤め先の移動)のように条件と組み合わさる場面。
  • 条例か要綱か:地方公共団体の独自の利用は「条例で定める」事務(9条2項)。
  • 「他人」の範囲:15条・20条の他人は、同一の世帯に属する者以外の者。
  • 評価の時点と相手:保護評価は、ファイルを保有する前。承認するのは個人情報保護委員会(28条)。
  • 勧告を経ない命令:原則は勧告→命令。緊急のときは勧告を経ずに命令できる(34条3項)。
  • 基準日と改正:番号法は令和8年4月1日のあとも、5月26日・6月1日・7月17日などに改正が施行されている(e-Gov の改正履歴)。号の番号が動くことがあるので、号は中身で覚える。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
会社員のりこさんは、年末の書類を準備するため、同じ世帯で暮らす父に、父の個人番号を教えてくれるよう頼んだ。りこさんのこの求めは、番号法15条の提供の求めの制限に反しない。

答え:○ 分かれ目は、15条の「他人」の範囲です。15条は、19条の各号に当たる場合を除き、他人に個人番号の提供を求めてはならないとしていますが、かっこ書で、他人を「自己と同一の世帯に属する者以外の者」としています。同じ世帯の父は他人に当たらないので、制限に反しません。「何人も」とあるので家族にも求められない、と読むと✕に見えます。20条の収集・保管の制限の「他人」も同じ意味です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
A市長は、番号法の別表に掲げられていない市独自の子育て支援の事務について、市の要綱で定めれば、その事務の処理に必要な限度で個人番号を利用できる。

答え:✕ 分かれ目は、独自の利用を定める形式です。9条2項は、地方公共団体の長その他の執行機関が、別表の事務のほか、「条例で定めるもの」の処理に関して個人番号を利用できるとしています。正しくは、A市が独自の事務に使うには、条例でその事務を定める必要があります。要綱は条例ではないので、9条2項の「条例で定める」には当たりません。別表の事務(1項)と条例の事務(2項)の区別も一緒に確かめておきます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
個人情報保護委員会は、特定個人情報の取扱いに法令違反があり、個人の重大な権利利益を害する事実があって緊急に措置をとる必要があると認めるときでも、まず勧告をしなければ、是正の命令をすることはできない。

答え:✕ 分かれ目は、勧告を経ない命令の例外です。34条は、違反があれば勧告し(1項)、正当な理由なく従わなければ命令する(2項)のが原則ですが、3項で、重大な権利利益の侵害の事実があり緊急に措置をとる必要があるときは、勧告をせずに命令できるとしています。正しくは、この場面では勧告を経ずに命令できます。2項の原則(勧告→命令)だけで答えると○にしてしまいます。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 特定個人情報は、個人番号を含む個人情報(2条9項)。会社の書類の事務は個人番号関係事務、行政の管理は個人番号利用事務。
  • 使える事務は、別表の事務、条例で定める事務、法令で番号を書く事務など、9条で決まったものだけ。
  • 提供・収集・保管は19条の各号の場合だけ。同意だけで提供できる号はない。他人の範囲は同一世帯以外。
  • 行政機関の長などは、ファイルを持つ前に保護評価を行い、委員会の承認を受ける。委員会は勧告・命令ができ、緊急なら勧告なしで命令できる。

このサイトで次に読むなら、情報通信の用語の記事です。基礎知識の情報通信・個人情報保護の分野で、番号法と並ぶ法律と用語をまとめて見直せます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令(令和8年4月1日施行の版)を確かめました。基準日のあとの改正は、e-Gov 法令API の改正履歴で確かめました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です