ひとことで言うと、地方交付税は、所得税・法人税・酒税・消費税のそれぞれ一定割合と地方法人税の全額を、国が地方公共団体に配る税で、国はその使い道に条件を付けられません(地方交付税法2条1号・3条2項・6条)。どの団体にいくら配るかは、「必要な額(基準財政需要額)」から「見込める収入(基準財政収入額)」を引いた不足額が基本です(10条)。
この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の経済・財政の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、制度の骨組みを知るために読んでください。
個別の自治体の名前・交付額・ランキングは書きません。地方公共団体の予算・決算・財産は地方公共団体の財務の記事に任せます。条文は令和8年4月1日時点のものを、2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確かめました(地方交付税法は令和8年法律第3号による改正後)。
身近な例で考えると
はるとさんは、架空の「さくら市」に住む会社員です。隣には、架空の「もみじ町」があります。どちらも住民に同じような行政サービスをしていますが、集まる税の額は違います。
| 団体 | 基準財政需要額 | 基準財政収入額 | 普通交付税(総額が足りるとき) |
|---|---|---|---|
| さくら市 | 120億円 | 90億円 | 30億円 |
| もみじ町 | 40億円 | 44億円 | 交付されない |
- 国は、所得税などの国税のうち一定割合を、交付税の財源としてとっておく(6条1項)。
- さくら市の標準的な税収入の見込みは120億円。基準税率75%を掛けて、基準財政収入額は90億円と計算する(14条。説明のため、譲与税などほかに足す項目は省いています)。120億円×75%=90億円。
- さくら市の基準財政需要額は120億円。不足額は120億円−90億円=30億円で、これが普通交付税の額の基本になる(10条2項)。
- もみじ町は、収入額44億円が需要額40億円を超えている。普通交付税は交付されない(10条1項)。こうした団体は、一般に「不交付団体」と呼ばれる。
- さくら市は、受け取った交付税を、道路にも福祉にも使える。国は「学校に使え」といった条件を付けられない(3条2項)。
たとえると、交付税は「同じクラスの班ごとに、教材費の足りない分を、学校全体で集めたお金から補う」しくみに近いものです。ただし本物のルールでは、必要な額も収入も実際の額ではなく、法律が決めた計算方法で出した「基準」の額で比べます。総務省は、交付税を「国が地方に代わって徴収する地方税」(固有財源)と説明しています。
条文ではこう決まっている
目的と運営の基本(1条・3条)
- 目的(1条):地方団体の自主性をそこなわずに、財源の均衡化(団体どうしの差をならすこと)を図り、交付の基準を決めることで地方行政の計画的な運営を保障し、地方団体の独立性を強める。
- 交付の考え方(3条1項):総務大臣は、財政需要額が財政収入額を超える地方団体に、その超過額を衡平に補うことを目途に交付する。
- 条件を付けない(3条2項):国は、交付に当たって、地方自治の本旨を尊重し、条件を付け、または使途を制限してはならない。
財源と割合(2条1号・6条・6条の2)
| 国税 | 交付税に回る割合 | 条文 |
|---|---|---|
| 所得税 | 100分の33.1 | 6条1項 |
| 法人税 | 100分の33.1 | 6条1項 |
| 酒税 | 100分の50 | 6条1項 |
| 消費税 | 100分の19.5 | 6条1項 |
| 地方法人税 | 全額 | 6条1項 |
地方法人税は、名前に「地方」と付いていますが、国の税です。法人税を納める義務のある法人が納め(地方法人税法4条)、申告書は税務署長に出します(16条など)。この法律は1条で、地方交付税の財源を確保するための税だと書いています。毎年度の交付税の総額は、その年度の各税の収入見込額にこの割合を掛けて足し、前の年度までの調整を加えたものです(6条2項)。
- 種類(6条の2第1項):普通交付税と特別交付税の2つ。
- 普通交付税(同条2項):総額の100分の94。
- 特別交付税(同条3項):総額の100分の6。94+6=100で、総額を2つに分け切る。
普通交付税の額(2条3号・4号・10条・14条)
- 基準財政需要額(2条3号):各団体の財政需要を合理的に測るため、11条の方法で出した額。総務省の説明では、行政の項目ごとの数値に単位費用などを掛けて合計する。
- 基準財政収入額(2条4号・14条):各団体の財政力を合理的に測るため、14条の方法で出した額。税は、標準的な税率をもとにした基準税率(100分の75に当たる率)で見込む。
- 交付する相手(10条1項):基準財政需要額が基準財政収入額を超える地方団体。
- 額(10条2項本文):需要額が収入額を超える額(財源不足額)。
- 総額が足りないとき(10条2項ただし書):各団体の財源不足額の合計が普通交付税の総額を超えるときは、条文の式で各団体の額を減らして調整する。
特別交付税(15条)
特別交付税は、基準財政需要額の計算ではつかみきれなかった特別の財政需要があるとき、算定の期日のあとに起きた災害などで特別の需要や収入の減少があるときなどに、普通交付税だけでは足りないと認められる団体に、総務省令の定めにより交付します(15条1項)。計算の画一的なしくみでは拾えない事情を補う役目です。普通交付税は、総務省の説明では年4回(4月・6月・9月・11月)に分けて交付されます。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:さくら市は、受け取った普通交付税を、市の判断で子育て支援にも道路の補修にも使った。国は使途を制限できないので(3条2項)、問題はありません。
- 当てはまらない例:国が、交付税の交付に「新しい図書館を建てること」という条件を付けた。3条2項に反します。使い道を決めて渡すのは、交付税ではなく国庫補助金などのしくみです。
- 当てはまらない例:もみじ町は、基準財政収入額が基準財政需要額を超えている。10条1項の相手に当たらないので、普通交付税は交付されません。
- ひっかけやすい例:財源不足額の合計が普通交付税の総額より大きい年は、さくら市は不足額の30億円どおりには受け取れません。10条2項ただし書の式で減らして調整します。
- ひっかけやすい例:「地方法人税」は地方税ではなく国税で、その全額が交付税の財源になります(6条1項)。
国庫支出金・地方債・地方税とどう違うか
総務省の用語の説明では、国庫支出金は「国と地方公共団体の経費負担区分に基づき、国が地方公共団体に対して支出する負担金、委託費、特定の施策の奨励又は財政援助のための補助金等」です。「国庫支出金」という言葉そのものは法律の題名ではなく、負担金・委託費・補助金をまとめた呼び方です。
| 財源 | だれが・どう決める | 使い道 | 返すか |
|---|---|---|---|
| 地方交付税 | 国税の一定割合を、国が計算式で配る(交付税法6条・10条) | 条件・使途の制限なし(3条2項) | 返さない |
| 国庫支出金 | 国が負担金・委託費・補助金として出す(地方財政法10条〜10条の4・16条) | 決まった事務・施策に使う | 返さない(借入れではない) |
| 地方債 | 地方公共団体が借りる。原則は総務大臣か知事と協議(地方財政法5条の3) | 5条ただし書の各号の経費 | 返す |
| 地方税 | 地方公共団体が地方税法にもとづいて課す | 団体が予算で決める | 返さない |
- 国が経費を負担する事務(地方財政法10条など):法令で地方公共団体が行う事務のうち、国と地方の利害に関係があり、国が進んで経費を負担する必要があるものは、国が全部か一部を負担する(義務教育職員の給与、生活保護など)。
- 補助金(同法16条):国は、施策を行うため特別の必要があると認めるとき、または地方公共団体の財政上特別の必要があると認めるときに限り、補助金を交付できる。
- 地方債の制限(同法5条):地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入を財源とするのが原則。ただし、公営企業の経費、出資金・貸付金、地方債の借換え、災害の応急・復旧・救助の事業費、学校その他の文教施設・保育所その他の厚生施設・道路などの公共施設や公用施設の建設事業費などには、地方債を充てられる。
総務省の用語では、地方税と地方交付税は、地方譲与税などとともに「一般財源」に数えられます。国の公債の原則(財政法4条)と地方債の原則(地方財政法5条)は形がよく似ているので、国の予算と国債の記事と並べて見ると整理しやすくなります。
試験ではここをまちがえやすい
- 使い道:交付税は条件・使途の制限なし(3条2項)。使い道が決まるのは国庫支出金。
- 財源の税目:所得税・法人税・酒税・消費税の一定割合と、地方法人税の全額。地方法人税は国税。
- 割合の組:所得税と法人税は同じ33.1%。酒税50%、消費税19.5%。普通94%・特別6%。
- 普通交付税の額:需要額−収入額が基本。総額が足りなければ10条2項ただし書で調整され、不足額どおりとは限らない。
- 需要額と収入額:実際の支出や税収そのものではなく、法律の方法で出した「基準」の額。
- 地方債の原則:原則は地方債以外の歳入でまかなう。例外は5条ただし書の各号に限られる。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
ある年度、各地方団体の財源不足額(基準財政需要額が基準財政収入額を超える額)を合計すると、普通交付税の総額を上回った。この場合、各団体が受け取る普通交付税の額は、それぞれの財源不足額より少なくなることがある。
答え:○ 地方交付税法10条2項は、本文で普通交付税の額を財源不足額としつつ、ただし書で、財源不足額の合算額が普通交付税の総額を超えるときは、条文の式で算定した額とするとしています。式は、各団体の財源不足額から、超えた分を需要額に応じて差し引く形です。「不足額はそのまま埋めてもらえる」と本文だけで考えると✕に見えます。総額そのものは6条の国税の割合で決まり、不足額に合わせて増えるしくみではありません。
問2(このサイトのオリジナル問題)
地方交付税の財源は、所得税・法人税・酒税・消費税のそれぞれ一定割合の額に限られる。地方法人税は地方公共団体の税なので、交付税の財源には含まれない。
答え:✕ 分かれ目は、地方法人税の扱いです。地方交付税法6条1項は、所得税・法人税・酒税・消費税の一定割合に並べて、「地方法人税の収入額」を交付税とするとしています。正しくは、地方法人税は国税で、その全額が交付税の財源です。名前の「地方」から地方税と取り違えた誤りです。地方法人税法1条は、この税を地方交付税の財源を確保するための税としています。
問3(このサイトのオリジナル問題)
A市は、市立小学校の校舎を建て替える事業費の財源に、地方債を充てた。学校などの公共施設の建設事業費は、地方財政法5条が地方債を財源にできる場合として挙げているので、この起債は同条の制限に反しない。
答え:○ 地方財政法5条は、本文で「地方債以外の歳入」を財源とする原則を定め、ただし書5号で、学校その他の文教施設などの公共施設・公用施設の建設事業費を例外に挙げています。校舎の建て替えはこれに当たります。「地方公共団体は借金で歳出をまかなえない」と原則だけで考えると✕に見えます。なお、起債には原則として総務大臣か都道府県知事との協議が要ります(5条の3)。職員の給与のような毎年の経費は、5条ただし書のどの号にも当たりません。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。
まとめ
- 交付税の財源は、所得税・法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%、地方法人税の全額(6条1項)。
- 普通交付税が総額の94%、特別交付税が6%(6条の2)。
- 普通交付税は需要額−収入額が基本。総額が足りなければ調整される(10条2項)。
- 国は交付税に条件を付けたり使途を制限したりできない(3条2項)。使い道が決まるのは国庫支出金、返すのは地方債。
このサイトで次に読むなら、地方自治の本旨の記事です。交付税法1条の「地方自治の本旨」「独立性」が、憲法92条の住民自治・団体自治とどうつながるかを確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令を、2026年10月17日に確かめました。割合(33.1%・50%・19.5%・94%・6%・75%)も同じ日に条文で確かめています。
- e-Gov法令検索「地方交付税法」(1条、2条、3条、6条、6条の2、10条、14条、15条)
- e-Gov法令検索「地方財政法」(5条、5条の3、10条〜10条の4、16条)
- e-Gov法令検索「地方法人税法」(1条、4条、16条)
- 総務省「地方交付税」(交付税の性格、算定の考え方、交付の時期)
- 総務省「地方財政白書 用語の説明」(国庫支出金、地方交付税、一般財源)
働く人の法律試験ノート