政府開発援助(ODA)とは:二国間援助(無償資金協力・技術協力・有償資金協力)と多国間援助、開発協力大綱

ひとことで言うと、ODA(Official Development Assistance=政府開発援助)は、「開発途上地域の開発を主たる目的とする政府及び政府関係機関による国際協力活動」(開発協力)のための公的資金です(外務省の説明)。形は、開発途上国・地域を直接支援する二国間援助と、国際機関に拠出する多国間援助に分かれます。二国間援助はさらに、返済を求めない贈与(無償資金協力・技術協力)と、政府貸付等(有償資金協力)に分かれます。ODAの基本の方針を示す「開発協力大綱」は、法律ではなく閣議決定です。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の国際の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、ODAの形と言葉を知るために読んでください。

定義と形の区分・開発協力大綱は外務省の説明で、実施する機関の業務は独立行政法人国際協力機構法(e-Gov、令和8年4月1日時点)で確かめました(2026年10月17日確認)。ODAの金額・国ごとの順位・特定の国への援助・政策の評価は、年ごとに変わるか評価にあたるので書きません。

身近な例で考えると

会社員のたくみさんは、基本書の国際の章を読み、ODAの形を架空の国「そよかぜ国」への協力の例で分けてみました。

  1. そよかぜ国の技術者を日本で研修し、日本からも専門家を送って、水道の管理のしかたを伝える。人と知識で支える協力で、技術協力に当たる。
  2. そよかぜ国の学校の建設に必要な資金を、返してもらうことを前提にせずに出す。無償資金協力に当たる。
  3. そよかぜ国の政府が港を整える事業に、返済を前提とした資金を貸す。有償資金協力(円借款)に当たる。
  4. 1〜3と別に、日本が国連開発計画(UNDP)に拠出し、そのお金が多くの国の事業に使われる。多国間援助に当たる。

たとえると、1は「料理の作り方を教える」、2は「食材を贈る」、3は「台所を作る費用を貸す」、4は「みんなで出し合う基金に入れる」に近いものです。ただし本物の協力では、1つの事業の中で複数の形を組み合わせることもあり、この例えほどはっきり分かれないことがあります。

外務省の説明と法律ではこう決まっている

開発協力とODA

  • 開発協力:「開発途上地域の開発を主たる目的とする政府及び政府関係機関による国際協力活動」。開発協力大綱(2015年)は、この「開発」を、平和構築・ガバナンス・基本的人権の推進・人道支援なども含めて広くとらえるとしています。
  • ODA:開発協力のための公的資金。英語の Official Development Assistance の略で、日本語では政府開発援助です(外務省の説明)。

形の区分

区分形中身
二国間(贈与)無償資金協力開発途上国・地域に無償で提供する資金の協力
二国間(贈与)技術協力研修員の受入れ、人の派遣、機材の供与など
二国間(政府貸付等)有償資金協力(円借款・海外投融資)開発途上地域の政府等への資金の貸付、法人への出資など
多国間国際機関への拠出・出資国連児童基金・国連開発計画への拠出、世界銀行などへの拠出・出資

区分と多国間援助の例は外務省の説明、技術協力と有償資金協力の中身は国際協力機構法13条1項1号・2号の業務の書き方によります。外務省の説明では、贈与の中には、国際機関が行う具体的な事業への拠出も含まれます。国際機関に入れたお金がすべて多国間援助になるわけではない点に注意します。

実施する機関(国際協力機構法)

  • 法律:独立行政法人国際協力機構法(平成14年法律第136号)。独立行政法人(国の仕事の一部を国から切り離して行う法人)のしくみは行政主体の記事で扱っています。
  • 目的(3条):機構は、開発途上地域に対する「技術協力の実施、有償資金協力及び無償資金協力の実施」などに必要な業務を行う。
  • 業務(13条1項):1号が技術協力(研修員の受入れ・人員の派遣・機材の供与・基礎調査など)、2号が有償資金協力(政府等への資金の貸付、法人への貸付・出資など)、3号が無償資金協力。
  • 無償資金協力の例外(13条1項3号イ):条約などの国際約束にもとづく無償資金協力の実施の業務を機構が行う。ただし、「外交政策の遂行上の必要に基づき」、外務大臣が業務の全部または一部を自ら行うものとして指定したものは除く。

お金はどこから出るか

外務省の令和8年度の資料では、ODA事業予算の財源を「一般会計」「特別会計」「出資・拠出国債」「財政投融資等」に分けて示しています。同じ資料の省庁別の表のとおり、外務省だけでなく、ほかの府省の予算からも出ています。額は年度ごとに変わるので書きません。一般会計と特別会計の区別など、国の予算のしくみは国の予算と国債の記事で扱っています。

開発協力大綱はどう変わってきたか

年できごと決めた形
1992年(平成4年)政府開発援助(ODA)大綱を決定閣議決定
2003年(平成15年)ODA大綱を改定閣議決定
2015年2月10日ODA大綱を改定し、開発協力大綱を定める閣議決定
2023年6月9日開発協力大綱を改定閣議決定

名前は、2015年に「ODA大綱」から「開発協力大綱」に変わりました。2023年の大綱は、基本方針の見出しとして「平和と繁栄への貢献」「新しい時代の『人間の安全保障』」「開発途上国との対話と協働を通じた社会的価値の共創」「包摂性、透明性及び公正性に基づく国際的なルール・指針の普及と実践の主導」を挙げています(外務省の掲載文)。中身の方針の評価は、この記事では扱いません。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例(技術協力):開発途上地域から研修員を受け入れて技術を研修する。国際協力機構法13条1項1号イの業務です。
  2. 当てはまる例(有償資金協力):開発途上地域の政府の開発事業に、返済を前提とした資金を貸す。13条1項2号イの業務です。
  3. 当てはまる例(多国間援助):世界銀行などへの出資。外務省の説明で多国間援助の例に挙がっています。
  4. 当てはまらない例:「開発協力大綱は国会が制定した法律である」。大綱は閣議決定で、法律ではありません。
  5. ひっかけやすい例:国際機関が行う具体的な事業への拠出。国際機関に出すお金ですが、外務省の説明では贈与(二国間援助)の中に含まれるものがあります。

似ている言葉との違い

  • 開発協力とODA:開発協力は政府などの「国際協力活動」、ODAはそのための「公的資金」。
  • 無償資金協力と技術協力:どちらも返済を求めない贈与。無償資金協力は資金、技術協力は研修・人の派遣・機材などの形。
  • 有償資金協力:返済を前提にした貸付など。外務省の区分では「政府貸付等」で、円借款と海外投融資がある。
  • ODA大綱と開発協力大綱:1992年・2003年の名前がODA大綱、2015年からが開発協力大綱。どれも閣議決定。

試験ではここをまちがえやすい

  • 二国間の中の分け方:贈与=無償資金協力・技術協力、政府貸付等=有償資金協力。技術協力を「有償」としない。
  • 多国間援助:国連児童基金・国連開発計画への拠出、世界銀行などへの拠出・出資。ただし国際機関の具体的な事業への拠出は贈与に含まれることがある。
  • 大綱の決め方:閣議決定。年は1992年→2003年→2015年(名前が開発協力大綱に)→2023年。
  • 実施の機関:独立行政法人国際協力機構が、技術協力・有償資金協力・無償資金協力の業務を行う。無償資金協力には、外務大臣が自ら行うものとして指定する例外がある。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
開発協力大綱は、国会が制定した法律ではなく閣議決定であり、2015年に、それまでの政府開発援助大綱を改定して定められ、2023年にさらに改定された。

答え:○ 外務省が載せている開発協力大綱(2015年)は平成27年2月10日の閣議決定で、本文に「ODA大綱を改定し,開発協力大綱を定める」とあります。2023年の改定も令和5年6月9日の閣議決定です。国の基本の方針なので法律で決めるもの、と考えると✕に見えます。ODA大綱(1992年決定・2003年改定)も、開発協力大綱も、閣議で決めた政府の方針です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
日本が、開発途上国の開発に役立てるため、世界銀行に出資した。この出資は、外務省のODAの区分では、二国間援助のうちの政府貸付等(有償資金協力)に当たる。

答え:✕ 分かれ目は、二国間援助か多国間援助かです。外務省は、多国間援助の例として「世界銀行などへの拠出・出資」を挙げています。正しくは、世界銀行への出資は多国間援助です。有償資金協力は、開発途上地域の政府等への資金の貸付などで、相手の国・地域を直接支える二国間援助です(国際協力機構法13条1項2号)。「出資」という言葉から、有償資金協力の中の海外投融資と取り違えた誤りです。

問3(このサイトのオリジナル問題)
国際協力機構法によれば、条約などの国際約束にもとづく無償資金協力の実施の業務は、原則として独立行政法人国際協力機構が行うが、外交政策の遂行上の必要から外務大臣が自ら行うものとして指定したものは、機構の業務から除かれる。

答え:○ 13条1項3号イは、無償資金協力の実施に必要な業務を機構の業務としつつ、かっこ書で「外交政策の遂行上の必要に基づき、外務大臣がその実施のために必要な業務の全部又は一部を自ら行うものとして指定するもの」を除いています。「ODAの実施はすべて機構の仕事」と覚えていると✕に見えます。除かれるのは、外交政策の遂行上の必要という理由があり、外務大臣が指定したものだけで、原則は機構の業務です。

基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 開発協力=開発途上地域の開発を主たる目的とする政府などの国際協力活動。ODA=そのための公的資金。
  • 二国間援助=贈与(無償資金協力・技術協力)と政府貸付等(有償資金協力=円借款・海外投融資)。多国間援助=国際機関への拠出・出資。
  • 実施は独立行政法人国際協力機構(国際協力機構法3条・13条)。無償資金協力には外務大臣が自ら行う例外がある。
  • 開発協力大綱は閣議決定。1992年ODA大綱→2003年改定→2015年開発協力大綱→2023年改定。

このサイトで次に読むなら、国連の専門機関の記事です。多国間援助の行き先になる国際機関が、国連の中でどう位置づけられているかを確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

外務省の説明と法律の条文は、2026年10月17日に確かめました。法律は令和8年4月1日時点の条文です。

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