男女雇用機会均等法と男女共同参画社会基本法:差別の禁止・ハラスメントの措置と、基本理念・基本計画の違い

ひとことで言うと、2つの法律は相手と中身が違います。男女雇用機会均等法(均等法)は、会社などの事業主に、雇用の場面で性別による差別をしないこと、妊娠・出産などを理由に不利益に扱わないこと、ハラスメントを防ぐ措置をとることを義務づけています。男女共同参画社会基本法は、社会全体の基本理念を示し、国・地方公共団体の責務と計画を決めた法律で、個々の会社に具体的な義務を課す形にはなっていません。労働基準法・労働組合法・労働関係調整法の役目は労働三法の記事、障害を理由とする差別の解消の法律は障害者差別解消法の記事で扱っています。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の記事です。足切り(令和7年度の合否判定基準では基礎知識24点=6問)を越えるための6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、という基礎知識の記事の順番は変わりません。この記事は、そのあとで一般知識に手を広げるときに、条文で確かめられる範囲だけを整理したものです。

民法の雇用契約、労働紛争の手続の実務、個別の事件、制度の評価は扱いません。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました(2026年10月17日確認)。この記事の均等法の条番号は令和8年4月1日時点のものです。令和8年10月1日に施行された改正で、11条より後ろの条番号が変わっています(新旧の番号の対応は後の節)。

身近な例で考えると

ひなさんは「つばめ物産」で働く会社員で、行政書士試験の受験生です。社内の掲示を見ながら、どれが均等法の話で、どれが男女共同参画社会基本法の話かを分けてみました。

  1. 営業職の募集で「男性のみ」と書いた案を、人事部が取り下げた。募集・採用で性別にかかわりなく均等な機会を与える義務(均等法5条)の話。
  2. 係長への昇進の条件に「転居を伴う転勤に応じられること」を入れる案が出た。業務上の必要などの合理的な理由がなければ使えない措置(均等法7条)の話。
  3. 女性の管理職が少ない事情を改善するため、女性向けの研修を始めた。均等法8条が妨げない措置の話。
  4. 社内の相談窓口の案内が配られた。ハラスメントについての雇用管理上の措置(均等法11条・11条の3)の話。
  5. 市の広報に「市の男女共同参画計画」の案内が載っていた。地方公共団体の計画(男女共同参画社会基本法14条)の話。

たとえると、均等法は「職場で守る決まりの本」で、読む人は事業主です。基本法は「社会の目標と、国・自治体の計画の立て方を書いた設計図」です。ただし本物のルールでは、基本法も国民に「努めなければならない」という責務を書いています(10条)。

条文ではこう決まっている

均等法の名前と成り立ち

正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」です。法律番号は昭和47年法律第113号ですが、これは前身の勤労婦人福祉法の番号です。昭和60年(1985年)に勤労婦人福祉法を全面的に改正する形で均等法が作られ、名前も変わりました(国立公文書館の説明)。厚生労働省の資料では、施行は昭和61年4月1日です。その後、平成9年の改正(施行は平成11年4月1日)で努力義務の規定が改められ、平成18年の改正(施行は平成19年4月1日)で、男女双方に対する差別の禁止と間接差別の禁止が入りました。同じ1985年に日本が締結した女子差別撤廃条約と、批准に向けた国内の動きは女子差別撤廃条約の記事にまとめています。

目的(1条)は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり、雇用の分野で男女の均等な機会と待遇の確保を図るとともに、女性労働者の妊娠中と出産後の健康の確保を図る等の措置を進めることです。

均等法の主な条文(令和8年4月1日時点)

  • 5条:事業主は、労働者の募集と採用について、性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
  • 6条:事業主は、次のことについて、性別を理由として差別的取扱いをしてはならない。配置(業務の配分・権限の付与を含む)・昇進・降格・教育訓練(1号)、一定の福利厚生(2号)、職種と雇用形態の変更(3号)、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新(4号)。
  • 7条(間接差別):性別以外の事由を要件とする措置のうち、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがあるとして厚生労働省令で定めるものは、業務の遂行上・雇用管理上特に必要であるなどの合理的な理由がなければ講じてはならない。省令(施行規則2条)が定めるのは、募集・採用での身長・体重・体力の要件、募集・採用・昇進・職種の変更での住居の移転を伴う配置転換に応じられることの要件、昇進での別の事業場への配置転換の経験の要件の3つ。
  • 8条:5条〜7条は、男女の均等な機会・待遇の確保の支障となっている事情を改善する目的で、事業主が女性労働者に関して行う措置を妨げない。
  • 9条:婚姻・妊娠・出産を退職理由として予定する定めの禁止(1項)、婚姻を理由とする解雇の禁止(2項)、妊娠・出産・産前産後の休業などを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(3項)。妊娠中と出産後1年を経過しない女性労働者に対する解雇は無効。ただし、事業主が3項の事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない(4項)。
  • 11条:職場での性的な言動によって労働者が労働条件で不利益を受けたり就業環境が害されたりしないよう、相談に応じ適切に対応するための体制の整備などの雇用管理上必要な措置を講じなければならない(1項)。相談したことなどを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(2項)。法律は「ハラスメント」という語ではなく、「職場における性的な言動に起因する問題」という言い方をしています(見出し)。
  • 11条の3:妊娠・出産・休業の請求や取得などに関する言動によって女性労働者の就業環境が害されないよう、同じく雇用管理上必要な措置を講じなければならない(1項)。

違反があったときの流れも条文で決まっています。厚生労働大臣は、事業主に報告を求め、助言・指導・勧告ができます(29条1項)。5条〜7条、9条1項〜3項、11条1項・2項、11条の3第1項などに違反している事業主が勧告に従わなかったときは、その旨を公表できます(30条)。29条1項の報告をしない・虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料です(33条)。9条4項は、解雇を「無効」とする民事の効果の定めです。

令和8年10月1日からの均等法の条番号

令和7年法律第63号(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律)のうち、令和8年10月1日に施行された部分で、求職活動などでの性的な言動についての措置が加わり、そのあとの条番号がずれました。中身が同じでも番号が違うので、e-Gov で今の条文を見るときは次の表で読み替えます(2026年10月17日に e-Gov 法令API で確認)。

中身令和8年4月1日時点令和8年10月1日から
性別による差別の禁止、妊娠・出産などを理由とする不利益取扱いの禁止5条〜9条5条〜9条(変わらない)
職場の性的な言動の措置11条11条(変わらない)
同じ問題での国・事業主・労働者の責務11条の212条
求職活動などでの性的な言動の措置・責務なし13条・14条(新しく加わった)
妊娠・出産などに関する言動の措置11条の315条
報告・助言・指導・勧告29条35条
勧告に従わないときの公表30条36条
報告をしないなどの過料(20万円以下)33条39条

行政書士試験は、試験案内で示される日に施行されている法令で出題されます。令和9年度の試験の基準日は試験案内が出るまで分からないので、条番号よりも「だれに・何を義務づけ、違反のときどうなるか」で覚えておくと、番号が動いても使えます。

男女共同参画社会基本法の主な条文

平成11年法律第78号で、平成11年(1999年)6月23日に公布され、その日に施行されました。

  • 2条1号(男女共同参画社会の形成):男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思で社会のあらゆる分野の活動に参画する機会が確保され、均等に政治的・経済的・社会的・文化的利益を受けられ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成すること。
  • 2条2号(積極的改善措置):1号の機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内で、男女のいずれか一方に対し、その機会を積極的に提供すること。
  • 基本理念(3条〜7条):男女の人権の尊重(3条)、社会における制度または慣行についての配慮(4条)、政策等の立案と決定への共同参画(5条)、家庭生活における活動と他の活動の両立(6条)、国際的協調(7条)の5つ。
  • 責務(8条〜10条):国(8条)と地方公共団体(9条)は「責務を有する」。国民(10条)は「努めなければならない」。
  • 男女共同参画基本計画(13条):政府が定めなければならない(1項)。内閣総理大臣が男女共同参画会議の意見を聴いて案を作り、閣議の決定を求める(3項)。同じく政府が定める基本計画でも、循環型社会形成推進基本計画は環境大臣が案を作ります(循環型社会形成推進基本法の記事)。
  • 都道府県・市町村の計画(14条):都道府県は都道府県男女共同参画計画を「定めなければならない」(1項)。市町村は市町村男女共同参画計画を「定めるように努めなければならない」(3項)。
  • 男女共同参画会議(21条):内閣府に置く。

4条は、社会の制度や慣行が、性別による固定的な役割分担などを反映して、男女の活動の選択に中立でない影響を及ぼすことがあるので、その影響をできる限り中立なものにするよう配慮されなければならない、としています。令和8年4月1日には、令和7年法律第80号による改正が施行され、独立行政法人男女共同参画機構の役割(10条の2)などが加わっています。

2つの法律を1枚で比べる

比べる点均等法男女共同参画社会基本法
何を決めたか雇用の場面の差別の禁止、妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止、ハラスメントの措置男女共同参画社会の基本理念、責務、計画
だれの義務か主に事業主国・地方公共団体(国民は努力)
違反のとき報告・助言・指導・勧告、勧告に従わないときの公表(29条・30条)違反に対する措置の定めは置いていない
年昭和60年に今の形(法律番号は昭和47年)平成11年

憲法14条の法の下の平等そのものは法の下の平等の記事で、憲法の人権が私人どうしの関係にどう及ぶかは人権の主体の記事で扱っています。均等法は、雇用の場面について、事業主の義務を法律で具体的に決めたものと位置づけられます。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:つばめ物産が、性別を理由に、男性にだけ教育訓練を受けさせた。6条1号の差別的取扱いに当たります。
  2. 当てはまる例:出産後半年の社員を解雇し、会社は妊娠・出産とは関係のない理由だと証明できなかった。9条4項で解雇は無効です。
  3. 当てはまらない例:女性の管理職が少ない事情を改善するために、女性に限った研修を行う。8条の目的に沿った措置なので、5条〜7条に反しません。
  4. ひっかけやすい例:昇進の条件に「転居を伴う転勤に応じられること」を入れる。性別の語がなくても7条の対象の措置で、合理的な理由がなければ講じてはなりません。
  5. ひっかけやすい例:ある町が、町の男女共同参画計画をまだ作っていない。市町村の計画は努力義務(14条3項)なので、それだけで14条に反するとはいえません。都道府県なら1項で義務です。

試験ではここをまちがえやすい

  • 募集・採用と配置・昇進の書き分け:5条は「均等な機会を与えなければならない」、6条は「差別的取扱いをしてはならない」。
  • 9条4項のただし書:妊娠中・出産後1年以内の解雇は無効が原則。事業主が妊娠・出産などを理由とする解雇でないと証明すれば無効にならない。
  • 女性に限った措置:均等法8条は女性労働者に関する措置。基本法の積極的改善措置(2条2号)は「男女のいずれか一方」で、男性に機会を提供する場合も入る。
  • 計画の義務の強さ:国の基本計画と都道府県の計画は義務、市町村の計画は努力義務。
  • 案を作る人:男女共同参画基本計画の案は内閣総理大臣が男女共同参画会議の意見を聴いて作る。環境基本計画は環境大臣(環境基本法の記事)。
  • 基準日のあとの条番号:この記事の均等法の条番号は令和8年4月1日時点のもの。令和8年10月1日からは、妊娠・出産などに関する言動の措置が15条、報告・勧告が35条、公表が36条、過料が39条になっている(上の対応表)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
つばめ物産は、妊娠中の社員Aを解雇した。この場合でも、つばめ物産が、その解雇は妊娠・出産などを理由とするものではないことを証明したときは、均等法9条4項によってその解雇が無効とされることはない。

答え:○ 分かれ目は、9条4項のただし書です。4項本文は、妊娠中と出産後1年を経過しない女性労働者に対する解雇を無効とし、ただし書で、事業主が3項の事由(妊娠・出産など)を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでないとしています。妊娠中の解雇は例外なく無効、と覚えていると✕にしてしまいます。証明の負担が事業主の側にある点が、3項の禁止との違いです。

問2(このサイトのオリジナル問題)
男女共同参画社会基本法によれば、市町村は、男女共同参画基本計画と都道府県男女共同参画計画を勘案して、市町村男女共同参画計画を定めることを義務づけられている。

答え:✕ 分かれ目は、義務か努力義務かです。14条3項は、市町村は市町村男女共同参画計画を「定めるように努めなければならない」としています。正しくは、市町村の計画は努力義務です。「定めなければならない」とされているのは、都道府県の計画(14条1項)と、政府の男女共同参画基本計画(13条1項)です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
男女共同参画社会基本法の「積極的改善措置」は、活動に参画する機会についての男女間の格差を改善するため必要な範囲内で、その機会を積極的に提供することをいい、男性に対して機会を提供する場合も含まれる。

答え:○ 分かれ目は、だれに提供するかの書き方です。2条2号は、格差を改善するため必要な範囲内で「男女のいずれか一方に対し」機会を積極的に提供することとしており、女性に限っていません。均等法8条が「女性労働者に関して行う措置」を妨げないとしているのと混ざると、女性に限ると考えて✕にしてしまいます。「必要な範囲内において」という限定がある点も一緒に押さえます。

基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 均等法は事業主の義務の法律。募集・採用は5条、配置・昇進などは6条、間接差別は7条、女性に関する改善の措置は8条。
  • 9条:妊娠・出産などを理由とする不利益取扱いの禁止。妊娠中・出産後1年以内の解雇は、事業主の証明がなければ無効。
  • ハラスメントは11条・11条の3で措置義務(令和8年4月1日時点の条番号)。
  • 基本法は平成11年。基本理念は5つ(3条〜7条)。積極的改善措置は男女のいずれか一方に機会を提供。
  • 計画は、国と都道府県が義務、市町村が努力義務。国の計画の案は内閣総理大臣が作る。

このサイトで次に読むなら、文章理解の記事です。基礎知識の足切りを越える6問の土台は、一般知識より先に文章理解で作れます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点のものを確かめ、基準日のあとの改正は e-Gov 法令API の改正履歴で確かめました(2026年10月17日確認)。

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