循環型社会形成推進基本法:発生抑制・再使用・再生利用・熱回収・適正処分の順番と、拡大生産者責任

ひとことで言うと、循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)は、まず物が廃棄物等になることをできるだけ抑え、それでも出た循環資源は「再使用→再生利用→熱回収→処分」の順に扱う、という基本の順番を決めた法律です。国・地方公共団体・事業者・国民の責務と、政府が定める循環型社会形成推進基本計画も決めています。

注意したいのは言葉です。よく使われる「発生抑制」「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」「拡大生産者責任」は、この法律の条文には出てきません(2026年10月17日に e-Gov 法令検索で全文を確認)。条文は「廃棄物等となることが抑制され」「再使用」「再生利用」「熱回収」と書き、拡大生産者責任は、環境省が11条などの事業者の責務を説明するときの呼び方です。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の記事です。足切り(令和7年度の合否判定基準では基礎知識24点=6問)を越えるための6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、という基礎知識の記事の順番は変わりません。再生利用の割合などの統計、政策の評価、個別の事業者や自治体の取組は扱わず、令和8年4月1日時点の条文の骨組みだけを整理します。

身近な例で考えると

行政書士試験の受験生のはるとさんは、引っ越しで出た不要な物を前に、「ごみを減らす順番は法律で決まっているのか」が気になりました。そこで、手元の物を条文の言葉に当てはめてみました。

  1. まだ使える本棚を、新しい部屋でも使い続けることにした。物が廃棄物等になること自体を避けている(5条の「なるべく長期間使用される」)。
  2. 脚がぐらつく机は、修理して友人に使ってもらった。修理して使うことも「再使用」に入る(2条5項1号)。
  3. 段ボール箱は、紙の原料にするために回収に出した。原材料として利用するので「再生利用」(2条6項)。
  4. 原料にもできない物は、燃やした熱を利用する施設へ。熱を得ることに利用するので「熱回収」(2条7項)。
  5. どれにも当たらない物だけを「処分」に回した(7条4号)。

はるとさんが気づいたのは、条文の順番は「上の段から順に下りる階段」のようになっていることです。上の段でできることがあれば、下の段に進みません。ただし本物のルールでは、順番どおりにしないほうが環境への負荷を減らせると認められるときは、順番によらないことも考えなければならない、とされています(7条後段)。

条文ではこう決まっている

言葉の定義(2条)

  • 循環型社会(2条1項):製品等が廃棄物等となることが抑制され、循環資源は適正に循環的な利用が行われ、利用されない循環資源は適正に処分されることが確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会。
  • 廃棄物等(2条2項):廃棄物(1号)と、一度使用され、または使用されずに収集・廃棄された物品や、製品の製造などの人の活動に伴い副次的に得られた物品(2号)。環境省の説明では、有価か無価かを問いません。
  • 循環資源(2条3項):廃棄物等のうち有用なもの。
  • 循環的な利用(2条4項):再使用、再生利用、熱回収の3つ。処分は入りません。
  • 再使用(2条5項):①製品としてそのまま使用すること(修理して使用することを含む)、②全部または一部を部品その他製品の一部として使用すること。
  • 再生利用(2条6項):全部または一部を原材料として利用すること。
  • 熱回収(2条7項):全部または一部で、燃焼の用に供することができるもの(またはその可能性のあるもの)を、熱を得ることに利用すること。

順番の決まり(5条・6条・7条)

順番は2つの条に分かれています。5条は、原材料は効率的に利用され、製品はなるべく長期間使用されることなどにより、廃棄物等となることができるだけ抑制されなければならない、とします。6条1項は、循環資源はできる限り循環的な利用が行われなければならない、6条2項は、循環的な利用と処分は環境の保全上の支障が生じないように適正に行われなければならない、とします。

7条は、循環資源の循環的な利用と処分は、技術的・経済的に可能な範囲で、次の順によることが環境への負荷の低減に必要であることが最大限に考慮されて行われなければならない、とします。1号は再使用できるものの再使用、2号は再使用されないもので再生利用できるものの再生利用、3号は再使用・再生利用されないもので熱回収できるものの熱回収、4号は循環的な利用が行われないものの処分です。

順条文の言葉一般に言う3R
1廃棄物等となることの抑制(5条)リデュース
2再使用(7条1号)リユース
3再生利用(7条2号)リサイクル
4熱回収(7条3号)3Rの外
5処分(7条4号)3Rの外

環境省の説明は、この5つを「処理の優先順位」として法律で決めたものと整理しています。7条の号は4つで、1番目の「抑制」は5条にある、という置き場所の違いを押さえます。

だれが何をするか(9条〜12条)

  • 国(9条):3条から7条までの基本原則にのっとり、施策を策定し実施する責務。
  • 地方公共団体(10条):循環資源の適正な循環的な利用と処分を確保するための措置などを行う責務。
  • 事業者(11条1項):事業活動で原材料等が廃棄物等となることを抑え、循環資源になったものは自ら適正に循環的な利用を行い、利用されないものは自らの責任で適正に処分する責務。
  • 製品・容器等の製造・販売等を行う事業者(11条2項・3項):製品の耐久性の向上と修理の実施体制の充実、設計の工夫と材質・成分の表示など。一定の製品・容器等では、循環資源となったものを自ら引き取り、引き渡し、または適正に循環的な利用を行う責務。
  • 国民(12条):製品をなるべく長期間使用すること、再生品を使用すること、循環資源が分別して回収されることに協力することなど。

環境省の説明は、排出する事業者・国民の責任を「排出者責任」、生産者が製品の使用後に廃棄物となった後まで一定の責任を負う考え方を「拡大生産者責任」と呼んでいます。条文の上では、11条2項・3項の「製品、容器等の製造、販売等を行う事業者」の責務がこれに当たる部分です。

循環型社会形成推進基本計画(15条・16条)

  • 定める主体(15条1項):政府。
  • 案を作る人(15条4項):環境大臣が、中央環境審議会の意見を聴いて案を作り、閣議の決定を求める。資源の有効な利用の確保の事務を所掌する大臣と協議する(15条5項)。
  • 決定の後(15条6項):環境大臣が、遅滞なく国会に報告し、公表する。
  • 見直し(15条7項):おおむね5年ごと。
  • ほかの計画との関係(16条):環境基本法15条1項の環境基本計画を基本として定める。ほかの国の計画は、循環型社会の形成に関しては、この基本計画を基本とする。

このほか、政府は毎年、国会に、循環資源の発生・循環的な利用・処分の状況などの報告を出します(14条)。

法律の並び

法律この法律との関係
環境基本法その基本理念に「のっとり」作られた(1条)。基本計画は環境基本計画が基本(16条1項)
循環型社会形成推進基本法定義・順番・責務・基本計画を決める
廃棄物処理法、資源有効利用促進法廃棄物の処理と、資源の有効な利用の促進の法律
個別のリサイクル法容器包装・家電・建設・食品・自動車・小型家電など、物ごとの法律

環境基本法の基本理念・環境基準などは環境基本法の記事で扱っています。表の下2段の法律名は、環境省の環境白書(平成26年版)が「循環型社会の形成に向けた法制度」として紹介しているものです。すべてを並べた一覧ではありません。正式な題名は、たとえば家電は「特定家庭用機器再商品化法」、容器包装は「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」です。温室効果ガスの定義と地球温暖化対策計画は地球温暖化対策推進法の記事にあります。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:使わなくなった机を、修理して別の人が使う。修理して使うことも「再使用」です(2条5項1号)。
  2. 当てはまる例:壊れた機械の部品を外して、別の製品の部品に使う。部品として使うのも「再使用」です(2条5項2号)。原材料にするのではないので「再生利用」ではありません。
  3. 当てはまらない例:製品を長く使って、廃棄物等にしないこと。これは5条の抑制の話で、「循環的な利用」(再使用・再生利用・熱回収)には入りません。
  4. ひっかけやすい例:燃やして熱を得て利用すること。燃やすので「処分」と思いがちですが、熱を得ることに利用するなら「熱回収」で、循環的な利用の一つです(2条4項・7項)。順番では再生利用の後、処分の前です。
  5. ひっかけやすい例:売ればお金になる中古品。値段がつくから廃棄物等ではない、とはなりません。2条2項2号は一度使用された物品などを広く含め、環境省の説明も有価・無価を問わないとしています。

似ているルールとの違い

比べる点環境基本計画循環型社会形成推進基本計画
根拠環境基本法15条循環型社会形成推進基本法15条
関係土台になる計画環境基本計画を基本として定める(16条1項)
ほかの国の計画—循環型社会の形成に関しては、この計画を基本とする(16条2項)

ごみの処理の費用をだれが負担するか、という問題は、経済の分野では「外部不経済」と、それを当事者に負担させる「内部化」という言葉で説明されます。経済の言葉としての意味は市場の失敗の記事で扱い、この記事では条文の責務の書き方だけを押さえます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 条文の言葉と通称:「3R」「発生抑制」「拡大生産者責任」は条文の言葉ではない。条文は「廃棄物等となることが抑制され」「再使用」「再生利用」「熱回収」。
  • 循環的な利用の中身:再使用・再生利用・熱回収の3つ(2条4項)。熱回収は入り、処分は入らない。
  • 再使用と再生利用:部品として使うのは再使用、原材料として使うのは再生利用。
  • 順番の例外:順番によらないほうが環境への負荷の低減に有効と認められるときは、それも考慮する(7条後段)。順番には例外の考え方が組み込まれている。
  • 基本計画の主体:定めるのは政府、案を作るのは環境大臣、決めるのは閣議。国会には報告する(承認ではない)。見直しはおおむね5年ごと。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
循環型社会形成推進基本法では、循環資源を燃焼させて熱を得ることに利用する行為は「処分」に当たり、同法のいう「循環的な利用」には含まれない。

答え:✕ 分かれ目は、熱回収の置き場所です。2条4項は「循環的な利用」を再使用・再生利用・熱回収とし、2条7項は、燃焼の用に供することができる循環資源を熱を得ることに利用することを「熱回収」としています。正しくは、熱を得ることに利用するなら循環的な利用に含まれ、7条の順番では再生利用の次、処分の前です。燃やすという見た目から、7条4号の「処分」と取り違えた誤りです。

問2(このサイトのオリジナル問題)
循環資源の循環的な利用と処分は、再使用・再生利用・熱回収・処分の順によるのが基本だが、その順によらないことが環境への負荷の低減に有効と認められるときは、これによらないことが考慮されなければならない。

答え:○ 分かれ目は、順番に例外があるかです。7条は、技術的・経済的に可能な範囲で、1号から4号の順によることが環境への負荷の低減に必要であることを最大限に考慮するとしたうえで、後段で、その順によらないことが有効と認められるときはこれによらないことが考慮されなければならない、としています。順番が法律で決まっていると覚えた人ほど、例外はないと考えて✕にしがちです。なお、1番目の「廃棄物等となることの抑制」は7条ではなく5条の決まりです。

問3(このサイトのオリジナル問題)
循環型社会形成推進基本計画は、環境大臣が中央環境審議会の意見を聴いて定めるものであり、閣議の決定を経ることは要しない。

答え:✕ 分かれ目は、計画を定める主体です。15条1項は、基本計画を定めるのは「政府」とし、15条4項は、環境大臣が中央環境審議会の意見を聴いて案を作成し、閣議の決定を求めなければならない、としています。正しくは、環境大臣が作るのは案で、閣議の決定を経て定められ、環境大臣は遅滞なく国会に報告し公表します(15条6項)。案を作る大臣と、定める主体(政府)を取り違えた誤りです。

基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 順番は、廃棄物等となることの抑制(5条)→再使用→再生利用→熱回収→処分(7条1号〜4号)。順によらないほうが有効なら、それも考慮(7条後段)。
  • 循環的な利用=再使用・再生利用・熱回収(2条4項)。修理・部品は再使用、原材料は再生利用。
  • 「拡大生産者責任」は環境省の説明の呼び方。条文では11条2項・3項の製造・販売等を行う事業者の責務。
  • 基本計画は政府が定める。案は環境大臣、閣議決定、国会に報告、おおむね5年ごとに見直し。環境基本計画を基本とする。

このサイトで次に読むなら、文章理解の記事です。基礎知識の足切りを越える6問の土台は、一般知識より先に文章理解で作れます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の内容を確かめました(2026年10月17日確認)。

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