労働三法:労働基準法・労働組合法・労働関係調整法がそれぞれ何を決め、憲法の労働三権とどうつながるか

ひとことで言うと、労働三法は、労働基準法・労働組合法・労働関係調整法の3つをまとめた呼び方です。法律の名前ではありません。労働基準法は労働条件の最低の基準、労働組合法は労働組合と団体交渉、労働関係調整法は労働争議の予防と解決を定めています。労働三権は、法律ではなく、憲法28条が保障する団結権・団体交渉権・団体行動権のことです。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の社会の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、制度の骨組みを知るために読んでください。

この記事は3つの法律の役目と関係だけを扱います。労働時間・賃金などの具体的な数字や、個別の労働問題は書きません。公務員の労働基本権の制限と判例は、社会権の記事と公務員の人権の記事で扱っています。条文は令和8年4月1日時点の法令を、2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確かめました。

労働三法と労働三権はどう違うか

「三権」は憲法が保障する権利、「三法」はそれを具体化する法律です。憲法の2つの条文と、3つの法律は次のようにつながります。

憲法の条文中身つながる法律
27条1項勤労の権利を有し、義務を負う—
27条2項賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める労働基準法
27条3項児童は、これを酷使してはならない労働基準法など
28条勤労者の団結する権利、団体交渉その他の団体行動をする権利を保障する労働組合法・労働関係調整法

28条の3つの権利は「労働三権」とも「労働基本権」とも呼ばれます(教科書の言い方)。団体行動権は、ストライキなどの争議行為をする権利を含むので、争議権とも呼ばれます。

3つの法律を表で比べると

法律何を決めた中心の条文役所・委員会
労働基準法(昭和22年法律第49号)労働条件の最低の基準1条(労働条件の原則)・2条(対等の立場で決定)行政官庁・労働基準監督官(104条の申告先)
労働組合法(昭和24年法律第174号)労働組合、団体交渉、労働協約、不当労働行為1条(目的)・2条(定義)・7条(不当労働行為)労働委員会(19条)
労働関係調整法(昭和21年法律第25号)労働争議の予防と解決1条(目的)・6条(労働争議の定義)労働委員会(斡旋・調停・仲裁)

成立の順番は

法律番号と公布日で並べると、次の順です。

  1. 昭和20年:労働組合法(昭和20年法律第51号)。いまの労働組合法の前の法律。
  2. 昭和21年9月27日公布:労働関係調整法(昭和21年法律第25号)。
  3. 昭和22年4月7日公布:労働基準法(昭和22年法律第49号)。
  4. 昭和24年6月1日公布:労働組合法(昭和24年法律第174号)。昭和20年の労働組合法の全部を改正した法律。

昭和24年の法律は、本文の冒頭で「労働組合法(昭和二十年法律第五十一号)の全部を改正する」としています(衆議院の制定法律の記録)。そのため、「最初にできたのは労働組合法」「いまの労働組合法の番号は3つの中でいちばん新しい」の両方が正しい言い方になります。昭和20年の法律の公布の月日は、この記事では確かめられなかったので書きません。

身近な例で考えると

会社員のたくみさんの勤め先「つばさ工業(架空)」で、3つの法律の出番を分けてみます。

  1. たくみさんの労働条件は、労働基準法の基準を下回ってはならない。基準は「最低のもの」で、会社と社員はその向上を図るように努める(労働基準法1条2項)。
  2. たくみさんたちは、労働組合をつくり、会社に団体交渉を申し入れた。会社は、正当な理由がなく団体交渉を拒んではならない(労働組合法7条2号)。
  3. 話し合いがまとまらず、主張が一致しないまま争議行為が起きるおそれが出た。これが労働関係調整法の「労働争議」(6条)で、労働委員会による斡旋・調停・仲裁の対象になる。

たとえると、労働基準法は「下回ってはいけない床」、労働組合法は「話し合いの場を守るルール」、労働関係調整法は「まとまらないときの仲立ち」です。ただし本物のルールでは、労働組合法の不当労働行為の審査も、労働関係調整法の調整も、同じ労働委員会が担います。

条文ではこう決まっている

労働基準法

  • 1条1項:労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
  • 1条2項:この法律で定める基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
  • 2条1項:労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
  • 104条1項:事業場にこの法律などに違反する事実があるときは、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

労働組合法

  • 2条:労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体。使用者の経理上の援助を受けるもの、主として政治運動又は社会運動を目的とするものなどは除く(ただし書)。
  • 1条2項・8条:団体交渉その他の行為で正当なものには、刑法35条(正当行為)が適用される。ただし暴力の行使は正当な行為と解釈されてはならない。正当な争議行為で損害を受けても、使用者は労働組合や組合員に賠償を請求できない。
  • 7条(不当労働行為):使用者は、組合員であることなどを理由とする解雇その他の不利益な取扱い(1号)、正当な理由のない団体交渉の拒否(2号)、組合の結成・運営への支配・介入(3号)、労働委員会への申立てなどを理由とする不利益な取扱い(4号)をしてはならない。
  • 19条・27条:労働委員会は、使用者委員・労働者委員・公益委員の各同数で組織し、中央労働委員会と都道府県労働委員会がある。使用者が7条に違反した旨の申立てを受けたときは、労働委員会が調査・審問を行う。

労働関係調整法

1条は、労働組合法と相まって、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もって経済の興隆に寄与することを目的としています。調整の方法は3つです。

方法始まり方結果の効力
斡旋(2章)当事者の双方か一方の申請、または職権で、会長が斡旋員を指名(12条1項)斡旋員が双方の主張の要点を確かめ、解決に努める(13条)
調停(3章)双方の申請、労働協約の定めにもとづく申請など(18条)調停案を示して受諾を勧告する(26条1項)
仲裁(4章)双方の申請、または労働協約に定めがある場合の申請(30条)仲裁裁定は労働協約と同一の効力(34条)

このほか、公益事業に関する事件や、規模が大きい事件・特別の性質の事業に関する事件で、争議行為により業務が止まると国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危くするおそれが現実にあるときに限り、内閣総理大臣が決定できる「緊急調整」(35条の2)があります。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:会社が、組合をつくったことを理由にたくみさんを異動させて不利益に扱った。労働組合法7条1号の不当労働行為です。
  2. 当てはまる例:労働協約に「争いは労働委員会の仲裁に付す」と定めていて、一方が仲裁を申請した。労働関係調整法30条2号の場合です。
  3. 当てはまらない例:主として政治運動を目的とする団体。労働組合法2条ただし書4号で、同法の労働組合に当たりません。
  4. ひっかけやすい例:正当な争議行為でも、暴力の行使は正当な行為と解釈されません(労働組合法1条2項ただし書)。
  5. ひっかけやすい例:調停案は受諾を勧告するもので、当事者を縛るのは仲裁裁定のほうです。

試験ではここをまちがえやすい

  • 三法と三権:三法は3つの法律の呼び方、三権は憲法28条の団結権・団体交渉権・団体行動権。
  • 27条2項:勤労条件の基準は「法律で」定める。その法律の中心が労働基準法。
  • 成立の順:労働組合法(昭和20年)→労働関係調整法(昭和21年)→労働基準法(昭和22年)。いまの労働組合法は昭和24年の全部改正。
  • 申立て・申告の先:不当労働行為は労働委員会(労働組合法27条)。労働基準法の違反は行政官庁・労働基準監督官への申告(104条)。
  • 調停と仲裁:調停案は受諾の勧告、仲裁裁定は労働協約と同一の効力。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
労働組合法という題名の法律は、労働関係調整法や労働基準法より前の昭和20年に作られていた。いまの労働組合法の法律番号が昭和24年法律第174号なのは、昭和24年にその全部が改正されたからである。

答え:○ 昭和24年法律第174号の労働組合法は、本文の冒頭で「労働組合法(昭和二十年法律第五十一号)の全部を改正する」としています。労働関係調整法は昭和21年法律第25号、労働基準法は昭和22年法律第49号です。いまの法律番号だけを見ると労働組合法がいちばん新しいので、「最後にできた」と考えると✕に見えます。最初にできた法律と、全部改正でできた今の法律を分けて覚えます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
たくみさんの勤め先が、正当な理由がないのに、労働組合との団体交渉を拒んだ。この不当労働行為について救済を求める申立ては、労働基準法104条にもとづいて労働基準監督官に対して行う。

答え:✕ 分かれ目は、申立ての先です。正当な理由のない団体交渉の拒否は労働組合法7条2号の不当労働行為で、使用者が7条に違反した旨の申立てを受けて調査・審問を行うのは労働委員会です(27条1項)。正しくは、労働委員会に申し立てます。労働基準法104条の申告は、事業場に労働基準法などの違反がある場合に行政官庁や労働基準監督官に行うもので、別の法律の別の手続です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
たくみさんの組合と会社の双方の申請で、労働委員会の調停が始まった。調停委員会が作成して関係当事者に示した調停案は、当事者が受諾しなくても、労働協約と同一の効力を有する。

答え:✕ 分かれ目は、調停と仲裁の効力の違いです。労働関係調整法26条1項は、調停委員会は調停案を作成して関係当事者に示し、その受諾を勧告するとしています。正しくは、調停案は受諾するかどうかを当事者が決めるもので、受諾しなければ当事者を縛りません。「労働協約と同一の効力を有する」のは仲裁裁定(34条)で、仲裁と取り違えた誤りです。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 労働三法=労働基準法・労働組合法・労働関係調整法(呼び方)。労働三権=憲法28条の団結権・団体交渉権・団体行動権。
  • 労働基準法は27条2項の「勤労条件の基準」。基準は最低のもの(1条2項)。
  • 労働組合法は不当労働行為(7条)と労働委員会(19条・27条)。刑事の免責(1条2項)と民事の免責(8条)。
  • 労働関係調整法は斡旋・調停・仲裁。仲裁裁定は労働協約と同一の効力(34条)。
  • 成立の順は、労働組合法(昭和20年)→労働関係調整法(昭和21年)→労働基準法(昭和22年)。

このサイトで次に読むなら、男女雇用機会均等法と男女共同参画社会基本法の記事です。働く場面の差別の禁止を定めた法律を、条文で確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令を、2026年10月17日に確かめました。昭和24年の労働組合法の本文(全部改正の文言)は衆議院の制定法律の記録で、中央労働委員会の説明も同じ日に確かめています。

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