税の基本:直接税と間接税、国税と地方税、所得税の累進課税(89条)と消費税・地方消費税の税率

ひとことで言うと、税は「どこに納めるか(国税・地方税)」と「納める人と負担する人が同じか(直接税・間接税)」で分け、所得税は、所得が一定の額を超えた部分にだけ高い税率を掛ける「超過累進税率」です(所得税法89条1項)。500万円の人に20%を丸ごと掛けるのではなく、195万円までは5%、そこから330万円までは10%、と区分ごとに計算して足します。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の経済・財政の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、税のしくみの骨組みを知るために読んでください。街灯や堤防のように、市場の取引に任せると足りなくなるため国や自治体が税で用意するもの(公共財)の考え方は市場の失敗の記事で扱っています。

税率は、令和8年4月1日時点の条文を、2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確かめたものです(所得税法・消費税法は令和8年法律第12号による改正後の版)。税制の改正の議論や評価は書きません。この記事の計算は所得税法89条1項の税率表だけを使い、ほかの法律による上乗せや住民税は入れていません。租税法律主義(憲法84条)は憲法の財政の記事に任せます。

身近な例で考えると

会社員のあやかさんの、ある1日に出てくる税を並べてみます。

  1. 朝、コンビニで弁当を買って持ち帰った。代金には消費税と地方消費税が入っている。納めるのはコンビニ(事業者)で、負担するのはあやかさん。
  2. 給料日。給料から所得税が引かれていた。所得税は、所得を得たあやかさん自身が負担する国の税。
  3. 夕方、住民税の通知を見た。住民税は、都道府県と市町村に納める税(道府県民税・市町村民税)。

たとえると、直接税は「自分で窓口に払う料金」、間接税は「お店の代金に上乗せされていて、お店がまとめて払う料金」です。ただし本物のルールでは、「直接」「間接」は払い方ではなく、法律上納める人と、実際に負担する人が同じかどうかで分けます。給料から引かれる所得税は会社が納めますが、負担するのはあやかさんで、直接税です。

税はどう分けるか

  • 国税と地方税:国に納める税が国税、地方公共団体に納める税が地方税。地方税は道府県税と市町村税に分かれる(国税庁の説明)。
  • 直接税と間接税:税を納める人と負担する人が同じ税が直接税、違う税が間接税(国税庁の説明)。
区分直接税の例間接税の例
国税所得税、法人税、相続税、贈与税消費税、酒税、たばこ税、関税
道府県税道府県民税、事業税、自動車税地方消費税、道府県たばこ税、ゴルフ場利用税
市町村税市町村民税、固定資産税、軽自動車税市町村たばこ税、入湯税

財務省は、これとは別に、税の負担を経済活動のどの場面に求めるかで「所得課税(所得税・法人税・住民税など)」「消費課税(消費税・酒税・地方消費税など)」「資産課税等(相続税・固定資産税など)」と分ける資料も出しています。国税と地方税は「課税する主体」の分け方、所得・消費・資産は「どこに課すか」の分け方で、軸が違います。表の関税(輸入品にかかる国税)と、自由貿易の国際的なルール(GATT・WTO)は比較優位の記事で扱っています。

条文ではこう決まっている(所得税の累進課税と消費税)

所得税の税率表(89条1項)

所得税法89条1項は、居住者の所得税の額を、課税総所得金額を次の表の金額に区分して、それぞれの税率を掛けて合計した額としています。税率表を当てはめるのは、収入そのものではなく、所得から基礎控除などの所得控除を引いたあとの課税総所得金額です。

課税総所得金額の区分税率
195万円以下の金額5%
195万円を超え330万円以下の金額10%
330万円を超え695万円以下の金額20%
695万円を超え900万円以下の金額23%
900万円を超え1,800万円以下の金額33%
1,800万円を超え4,000万円以下の金額40%
4,000万円を超える金額45%

課税総所得金額500万円の計算

区分その区分に入る金額税率税額
195万円以下195万円5%9万7,500円
195万円超〜330万円135万円10%13万5,000円
330万円超〜695万円170万円20%34万円
合計500万円―57万2,500円

検算します。区分に入る金額は195万+135万+170万=500万円で、課税総所得金額と一致します。税額は9万7,500+13万5,000+34万=57万2,500円です。500万円の全体に20%を掛けた100万円ではありません。20%がかかるのは、330万円を超えた170万円の部分だけです。

区分の境目をまたいでも、手取りが逆転しない理由

課税総所得金額が330万円の人の税額は、9万7,500+13万5,000=23万2,500円です。331万円になると、増えた1万円にだけ20%がかかり、2,000円増えて23万4,500円です。もし331万円の全体に20%を掛けるしくみなら66万2,000円になり、1万円増えたのに税が40万円以上増え、税を引いた残り(264万8,000円)は330万円のとき(306万7,500円)より少なくなってしまいます。区分ごとに「超えた部分にだけ」高い税率を掛けるので、こうした逆転は起きません。

消費税と地方消費税の税率(消費税法29条・地方税法72条の83)

ここに書く税率は、令和8年4月1日時点の条文によるものです。税率は法律の改正で変わることがあるので、受験する年の法令の基準日の条文で確かめ直してください。

  • 消費税法29条1項1号:軽減の対象以外の課税資産の譲渡等などは100分の7.8。
  • 同項2号:軽減対象課税資産の譲渡等などは100分の6.24。軽減対象は、課税資産の譲渡等のうち別表第一に掲げるもの(2条1項9号の2)。国税庁の説明では、酒類と外食を除く飲食料品と、週2回以上発行され定期購読契約にもとづく新聞。
  • 地方税法72条の83:地方消費税の税率は78分の22(消費税の額に掛ける)。
区分消費税(国税)地方消費税(道府県税)合計
標準税率7.8%2.2%10%
軽減税率6.24%1.76%8%

検算します。7.8%×22/78=2.2%で、7.8+2.2=10%。6.24%×22/78=1.76%で、6.24+1.76=8%。国税庁の説明の内訳とも一致します。あやかさんが持ち帰った弁当は飲食料品なので8%、店の中で食べる外食なら10%です。消費税の収入の100分の19.5は地方交付税の財源になります(地方交付税の記事)。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:酒税は、酒の製造者などが納め、酒を買った人が負担する。納める人と負担する人が違うので間接税です。
  2. 当てはまる例:課税総所得金額が200万円の人は、195万円までに5%、超えた5万円に10%。9万7,500+5,000=10万2,500円です。
  3. 当てはまらない例:「固定資産税は国の税」。固定資産税は市町村税です。
  4. ひっかけやすい例:給料から会社が差し引いて納める所得税。納める手続をするのは会社ですが、負担するのは本人で、所得税は直接税に分けられます。
  5. ひっかけやすい例:地方消費税は、消費税と一緒に代金に入っていますが、国税ではなく道府県税です。

似ているしくみとの違い

しくみ税率の決まり方例
超過累進税率区分を超えた部分にだけ、高い税率を掛けて足す所得税(89条1項)
比例税率額にかかわらず同じ割合を掛ける消費税(標準7.8%・軽減6.24%)
(仮に)単純累進税率超えた区分の税率を全額に掛ける日本の所得税はこの形ではない

消費税は、所得の多い人も少ない人も、同じ買い物には同じ税率です。所得税は、課税総所得金額が大きくなるほど、上の区分の税率がかかる部分が増えます。どちらがよいかという評価は、試験の論点ではないのでこの記事では扱いません。GDPなどの経済の言葉はGDPとGNIの記事で確かめられます。累進課税が所得の再分配や景気の調整の働きを持つという教科書の説明は財政の3つの機能の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 直接・間接の基準:払い方ではなく、納める人と負担する人が同じか。源泉で引かれる所得税も直接税。
  • 超過累進:高い税率は、区分を超えた部分にだけかかる。全額に掛けない。
  • 税率表の対象:収入ではなく、所得控除を引いたあとの課税総所得金額。
  • 10%の内訳:消費税7.8%(消費税法29条)+地方消費税2.2%(地方税法72条の83の78分の22)。
  • 地方の税:地方消費税・事業税は道府県税、固定資産税・軽自動車税は市町村税。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
課税総所得金額が300万円のあやかさんと、400万円の兄のりょうさんがいる。所得税法89条1項の税率表だけで計算すると、2人の所得税額の差は、増えた100万円のすべてに20%を掛けた20万円である。

答え:✕ 分かれ目は、増えた100万円がどの区分に入るかです。300万円から330万円までの30万円は10%の区分なので3万円、330万円を超える70万円が20%の区分で14万円です。正しくは、差は3万+14万=17万円です(あやかさん20万2,500円、りょうさん37万2,500円)。りょうさんの最高税率20%を増えた額の全部に当てはめた誤りです。超過累進では、区分の境目をまたぐと、境目の前後で税率が変わります。

問2(このサイトのオリジナル問題)
消費税は、商品を買った消費者が負担し、商品を売った事業者が納める税なので、税を納める人と負担する人が異なる間接税に分けられる。

答え:○ 国税庁は、税を納める人と負担する人が同じ税を直接税、異なる税を間接税とし、消費税を国税の間接税の例に挙げています。消費者がレジで直接払うので直接税だ、と払い方で考えると✕に見えます。分け方の基準は、払い方ではなく、納める人と負担する人が同じかどうかです。所得税は、会社が給料から差し引いて納めても、負担するのは本人なので直接税です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
標準税率の10%のうち、地方消費税に当たる2.2%分の税率は、消費税法ではなく地方税法で定められている。

答え:○ 消費税法29条1項1号の税率は100分の7.8です。地方消費税の税率は、地方税法72条の83が「78分の22」と定めていて、消費税の額に掛けると7.8%×22/78=2.2%になります。レシートでは10%とまとめて書かれることが多いので、10%全部が消費税法で決まっていると考えると✕に見えます。地方消費税は国税ではなく道府県税です。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 国税と地方税は「どこに納めるか」、直接税と間接税は「納める人と負担する人が同じか」で分ける。
  • 所得税は超過累進税率(89条1項)。5%から45%までの7段階で、高い税率は区分を超えた部分にだけかかる。
  • 消費税は7.8%と6.24%(消費税法29条1項)、地方消費税は消費税額の78分の22(地方税法72条の83)。合計10%と8%。
  • 消費税は国税の間接税、地方消費税は道府県税の間接税。

このサイトで次に読むなら、国の予算と国債の記事です。集めた税で足りないときに国がどんな根拠で公債を出すのかを、建設国債と赤字国債の違いで確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令を、2026年10月17日に確かめました。国税庁・財務省の説明も同じ日に確かめています。

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