行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)は、令和7年6月13日に公布(こうふ。国民に知らされること)されました。そして令和8年(2026年)1月1日に施行(しこう。実際に効き始めること)されました。令和8年度試験は、「令和8年4月1日現在施行されている法令」から出題されます。だから、この改正後の条文が試験の範囲です。
変わった主な点は5つです。①第1条が「目的」から「行政書士の使命」になった。②第1条の2に「職責」が新しく入った。そのため、業務の条文は第1条の3に、代理などの条文は第1条の4に移った。③特定行政書士が代理できる不服申立て(役所の決定に納得できないときに見直しを求める手続き)の範囲が広がった。④第19条に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が加わった。⑤両罰規定(行為者だけでなく、法人なども罰する規定)が整えられた。一方、2026年5月21日に施行された別の改正は、4月1日より後です。そのため令和8年度の範囲外です。
どの改正が令和8年度試験の範囲に入るのか
行政書士法は、ここ数年で何度か改正されています。e-Gov法令検索の改正履歴で、それぞれの施行日を4月1日と比べると、次のとおりです。
| 改正のもとになった法律 | 施行日 | 令和8年度の範囲 |
|---|---|---|
| 行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号) | 2026年1月1日 | 入る |
| デジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律(令和5年法律第63号) | 2026年5月21日 | 入らない |
| 民事関係手続等のIT化の整備法(令和5年法律第53号)の一部 | 2028年6月13日(予定) | 入らない |
このほか、2025年6月1日施行の刑法等の改正にあわせて、罰則の「懲役」が「拘禁刑(こうきんけい)」に変わっています。これも4月1日より前なので、範囲に入ります。同じく4月1日より前の2025年10月1日には、令和5年法律第53号による改正の一部も施行されています。古い教材で「懲役」と書かれていたら、「拘禁刑」と読み替えてください。
この記事の条文は、e-Govで2つの時点の版を取り出して比べたものです。「2025年12月31日時点」(改正前)と、「2026年4月1日時点」(試験の基準日)です。2026年5月21日施行の改正の中身は、この記事では扱いません。試験対策としては、4月1日時点の条文だけを覚えれば足ります。
第1条は「目的」から「使命」へ、何が変わったか
改正前の第1条は、法律の目的を定める条文でした。
- 改正前(目的):「この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを目的とする。」
- 改正後(行政書士の使命):「行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを使命とする。」
比べると、変わったのは3か所です。主語が「この法律は」から「行政書士は」になったこと。「行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより」が「その業務を通じて」になったこと。文末が「目的とする」から「使命とする」になったことです。次の3つの言葉は、そのまま残っています。1つめは「行政に関する手続の円滑な実施に寄与」(役所の手続きがスムーズに進むよう役立つ)。2つめは「国民の利便に資し」(国民の便利さに役立つ)。3つめは「国民の権利利益の実現に資する」です。
覚えるときは、残った3つの言葉の順番(手続の円滑→国民の利便→権利利益の実現)と、新しい主語と文末をセットにします。空欄を埋める形で問われても大丈夫です。主語が「行政書士は」なら文末は「使命とする」、と結びつけておけば迷いません。
第1条の2「職責」には何が書かれたか
第1条の2は、改正で新しく入った条文です。見出しは「職責」(仕事をするうえでの責任)で、2つの項があります。
- 第1項:「行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。」
- 第2項:「行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。」
かみくだくと、第1項は「いつも品位を保ち、法律と実務にくわしくなって、公正で誠実に仕事をしなさい」という意味です。第2項は「デジタル技術などを使って、国民の便利さと、自分の仕事のやり方をよくするよう努めなさい」という意味です(「当該業務」は「その業務」のこと)。
ここでいちばん大事なのは、文末の違いです。第1項は「行わなければならない」で、義務です。第2項は「図るよう努めなければならない」で、努力義務(できるだけそうするよう求めるもの)です。たとえば「デジタル化に取り組む義務がある」と書き換えた選択肢は誤りです。こうした形で問いやすいところです。
あわせて第10条の見出しと中身も変わった
職責が第1条の2に入ったことで、第10条も変わりました。改正前の第10条は、見出しが「行政書士の責務」でした。本文は「行政書士は、誠実にその業務を行なうとともに、行政書士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」です。改正後は、見出しが「信用失墜行為の禁止」になりました。信用失墜(しんようしっつい)とは、信用をなくすことです。本文は「行政書士は、行政書士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」だけです(総務省の新旧対照表でも、第10条の改正前後はこの文言です)。誠実に業務を行うことは、第1条の2第1項(公正かつ誠実に)に移った、と整理できます。
条番号はどうずれたか
第1条の2が新しく入ったので、後ろの番号が1つずつずれました。改正前の第1条の2〜第1条の4が、それぞれ第1条の3〜第1条の5になっています。第2条から後ろの条番号は変わりません。罰則では、第19条第1項違反の罰則が、第21条第2号から新しい第21条の2に移りました。古い教材や過去問の解説を使うときに、いちばん混乱しやすいところです。
| 内容 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 目的/使命 | 第1条(目的) | 第1条(行政書士の使命) |
| 職責 | なし | 第1条の2 |
| 書類の作成(業務) | 第1条の2 | 第1条の3 |
| 提出の代理・不服申立ての代理・相談など | 第1条の3 | 第1条の4 |
| 他の行政書士等の使用人として従事 | 第1条の4 | 第1条の5 |
| 責務/信用失墜行為の禁止 | 第10条(責務) | 第10条(信用失墜行為の禁止) |
| 無資格で業務をした者の罰則 | 第21条第2号 | 第21条の2 |
第1条の3(業務)の中身は変わっていません。第1項は、他人の依頼を受け、報酬を得て、次の書類を作ることを業とする(仕事としてくり返し行う)、という内容です。官公署(かんこうしょ。役所のこと)に出す書類(電磁的記録=データを含む)。そのほか、権利義務または事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)です。第2項は「行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。」です。
第1条の4の柱書(はしらがき。号の前に置かれた本文)は、「行政書士は、前条に規定する業務のほか」で始まります。この「前条」は、改正後は第1条の3(書類の作成)を指します。条文の中の「前条」「前二条」が指す先も、一緒にずれています。そのことを意識して読んでください。
特定行政書士の範囲はどう広がったか
特定行政書士とは、日本行政書士会連合会が会則で定める研修を修了した行政書士です。不服申立て(審査請求など)の手続きを、本人に代わって行う(代理する)ことができます(第1条の4第2項)。代理できる範囲を定めているのは、第1条の4第1項第2号です。改正で、範囲を表す言葉が変わりました。
- 改正前(第1条の3第1項第2号):「前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等」
- 改正後(第1条の4第1項第2号):「前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等」
許認可(きょにんか)とは、役所が出す許可や認可のことです。改正前は、行政書士が作成した書類に係る(関係する)許認可等に限られていました。改正後は、行政書士が作成することができる種類の書類に係る許認可等であれば、対象になります。たとえば、ゆうとさんが自分で書類を作って申請した許認可等を考えます。行政書士はその書類を作っていません。それでも、行政書士が作ることのできる種類の書類なら、対象に含まれる、という書き方です。総務省の要綱(改正の要点をまとめた文書)も、この点を「特定行政書士の業務範囲の拡大」と説明しています。「作成した」と「作成することができる」の入れ替えは、改正点そのものです。選択肢で使われやすい形です。
第19条と罰則には何が足されたか
第19条(業務の制限)は、行政書士でない人が、行政書士の業務をすることを禁じる条文です。第1項本文は、次のように変わりました。
- 改正前:「行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。」
- 改正後:「行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。」
総務省の要綱は、これを「業務の制限規定の趣旨の明確化」と呼んでいます。ルールのねらいを、はっきりさせたという意味です。たとえば「手数料」「会費」「コンサルティング料」のように、別の名前でお金(対価)を受け取る場合も対象になります。そのことが、条文の言葉の上ではっきりしました。なお、次の2つは改正前からあります。1つはただし書(例外を定める部分)です。他の法律に別の定めがある場合と、総務省令で定める型どおりで簡単な手続きについて、総務省令で定める者が電磁的記録を作る場合が例外です。もう1つは第2項で、総務大臣が省令を定めるときは、担当の国務大臣の意見を聴く、という決まりです。
罰則と両罰規定
- 第21条の2:第19条第1項に違反したときは、「一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」。改正前は第21条第2号に置かれていた罰則で、刑の重さは同じです。改正後の第21条に残ったのは、1つだけです。資格のない人が、うその申請で行政書士名簿に登録させたときの罰則(同じく1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)です。
- 第22条の4:第19条の2(名称の使用制限)に違反したときは、「百万円以下の罰金」。
- 第23条の3(両罰規定):法人の代表者や従業者などが、その法人や人の業務に関して「第二十一条の二、第二十二条の四、第二十三条第二項又は前条の違反行為」をしたとき。このときは、行為者を罰するほか、その法人や人にも「各本条の罰金刑」を科す。改正前の第23条の3は、「前条第一号の違反行為」(第23条の2第1号。電子公告の調査記録簿等に関する違反)だけが対象でした。無資格での業務や名称の使用は、対象に入っていませんでした。
総務省の説明ページでも、同じように説明されています。業務制限に違反した場合、行為者には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。その法人などにも100万円の罰金が科される、という説明です。たとえば、ある会社の社員のけんたさんが、仕事として無資格で行政書士の業務をしたとします。この場合、けんたさんだけでなく、その会社にも罰金が科されうる、というのが改正の要点です。
試験に向けて条文のどこを覚えるか
行政書士法は、基礎知識の「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」の中心です。総務省は、この分野から毎年1題以上出題すると説明しています。改正点がどの形で問われるかは、予想できません。ただ、改正で変わった言葉は、正しいか誤りかを問う問題に使いやすい部分です。当サイトでは、次の順に覚えることをすすめます。
- 第1条:主語「行政書士は」、文末「使命とする」、残った3つの言葉の順番。
- 第1条の2:第1項の4つの要素(品位の保持/法令と実務に精通/公正かつ誠実/「行わなければならない」)と、第2項の「努めなければならない」。
- 条番号の対応:業務=第1条の3、代理など=第1条の4、特定行政書士=第1条の4第2項。
- 第1条の4第1項第2号の「作成することができる」。
- 第19条第1項の4つの要件(当てはまる条件)。「他人の依頼を受け」「いかなる名目によるかを問わず」「報酬を得て」「業として」。
- 罰則の数字(1年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金)と、両罰規定があること。
この6項目は分量が少なめです。一度覚えたら、間をあけて何度か見直すほうが効きます。
確認用に自作の問題を置きます(このサイトのオリジナル問題)。いずれも令和8年4月1日時点の条文で判断します。
- 行政書士法第1条は、この法律の目的を定めている。→ 誤り。見出しは「行政書士の使命」で、主語は「行政書士は」です。
- 行政書士の業務として書類の作成を定めているのは、第1条の2である。→ 誤り。第1条の3です。第1条の2は職責です。
- 行政書士は、情報通信技術の活用などを通じて、国民の利便の向上と業務の改善進歩を図らなければならない義務を負う。→ 誤り。第1条の2第2項は「図るよう努めなければならない」で、努力義務です。
- 行政書士でない者が、他人の依頼を受け、「会費」の名目で対価を受け取って、業として官公署に提出する書類を作成しても、報酬という名目でなければ第19条第1項に違反しない。→ 誤り。「いかなる名目によるかを問わず」です。
- 特定行政書士が代理できる不服申立ては、その行政書士が自ら作成した書類に係る許認可等に限られる。→ 誤り。「作成することができる」書類に係る許認可等です。
古い教材や過去問の解説はどう読み替えるか
2025年以前に作られた教材や、過去の試験問題の解説は、改正前の条文で書かれています。過去問そのものは、今も練習に使えます。ただし、条番号と言葉は次のように読み替えてください。
- 「第1条の2(業務)」→ 第1条の3。「第1条の3(代理など)」→ 第1条の4。
- 「第1条(目的)」→ 第1条(行政書士の使命)。目的規定を前提にした解説は、そのままでは使えません。
- 「第10条(行政書士の責務)誠実義務」→ 誠実は第1条の2第1項。第10条は信用失墜行為の禁止。
- 「懲役」→ 拘禁刑。
- 特定行政書士の範囲「作成した」→「作成することができる」。
教材を選ぶときは、「令和8年4月1日現在の法令に対応」と書かれているかを確かめます。迷ったら、e-Gov法令検索で今の条文を開きましょう。教材と照らし合わせるのが、いちばん確かです。e-Govは無料で、条文の原文を確認できます。教材の選び方全体は独学の進め方の記事で書いています。
次に読むなら、基礎知識の記事がおすすめです。行政書士法が出る「基礎知識」の4分野と、足切りを越えるための6問の取り方をまとめています。この改正点を、勉強全体のどこに置くかが決まります。試験の範囲の基準日や日程をもう一度確かめたいときは、試験日程の記事を見てください。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「行政書士法」(2025年12月31日時点と2026年4月1日時点の第1条、第1条の2〜第1条の5、第10条、第19条、第21条、第21条の2、第22条の4、第23条の2、第23条の3を比較)
- e-Gov法令API「行政書士法の改正履歴」
- 総務省「行政書士制度」
- 総務省「行政書士法の一部を改正する法律 要綱」(PDF)
- 総務省「新旧対照表」(PDF)
- 行政書士試験研究センター「試験案内」(令和8年4月1日現在施行の法令から出題)
- 総務省「提出された意見及び意見に対する考え方」(試験の施行に関する定めの改正時、PDF)
働く人の法律試験ノート