国際連合のしくみ:6つの主要機関、安全保障理事会の常任理事国・非常任理事国と拒否権、国際司法裁判所

ひとことで言うと、国際連合の主要機関は6つで、そのうち安全保障理事会(安保理)は、常任理事国5か国と非常任理事国10か国で構成され、手続事項以外の決定には、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票が要ります(国際連合憲章7条1項・23条・27条3項)。外務省の説明のとおり、常任理事国が1か国でも反対すれば決定が成立しないので、これを「拒否権」と呼びます。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の国際の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、条約の骨組みを知るために読んでください。

安保理の改革論、日本の立場、時事は書きません。憲章の条文は、7条・18条・23条〜27条などを外務省の条約データの訳文で、92条〜97条を国連広報センターの憲章テキストで確かめました(2026年10月17日確認)。

身近な例で考えると

会社員のなつきさんは、基本書の国際の章を読みながら、安保理の決め方を架空の場面で確かめました。

  1. ある紛争について、安保理で決議案が採決された。15か国のうち11か国が賛成し、常任理事国の1か国が反対した。手続事項ではないので、常任理事国の同意投票が欠け、決議は成立しない(27条3項)。
  2. 同じ会合で、議題をどの順で扱うかという手続事項を採決した。9か国が賛成し、常任理事国の1か国が反対した。手続事項は9理事国の賛成で決まるので、成立する(27条2項)。
  3. 総会で、非常任理事国の選挙があった。重要問題なので、出席し投票する加盟国の3分の2の多数で選ぶ(18条2項)。

たとえると、総会は「全員が1票ずつ持つクラス会」、安保理は「選ばれた15人の委員会で、うち5人は入れ替わらない席を持ち、大事な議題では1人でも反対すれば決まらない」しくみです。ただし本物のルールでは、安保理の決定は、加盟国が憲章に従って受け入れ、実行することに同意しているもので(25条)、クラス会の委員会よりも重い意味を持ちます。

条文ではこう決まっている

6つの主要機関(7条)

7条1項は「国際連合の主要機関として、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所及び事務局を設ける」と定めています。必要な補助機関は、憲章に従って設けることができます(同条2項)。国連の総会で採択された人権の条約のうち、社会権規約と自由権規約は国際人権規約の記事で扱っています。主要機関・補助機関と、協定で国連と連携する専門機関(ILO・WHO・UNESCO・IMFなど)との違いは国連の専門機関の記事、核兵器の拡散の防止と禁止の2つの条約は核兵器不拡散条約と核兵器禁止条約の記事、海の区分を決めた国連海洋法条約は領海と排他的経済水域の記事で扱っています。

主要機関主な役割条文
総会憲章の範囲内の問題を討議し、勧告する。各加盟国が1票10条・18条
安全保障理事会国際の平和と安全の維持に主要な責任を負う。決定に加盟国は従う24条・25条
経済社会理事会経済・社会・文化・教育・保健の国際事項を研究・報告し、勧告する62条
信託統治理事会信託統治制度のもとでの地域の施政を監督する75条・86条・87条
国際司法裁判所国連の主要な司法機関92条〜96条
事務局事務総長と職員からなる。事務総長は安保理の勧告にもとづき総会が任命する97条

総会(10条・12条・18条)

  • 討議と勧告(10条):憲章の範囲内の問題や、憲章に定める機関の権限・任務に関する問題を討議し、勧告できる。
  • 安保理との関係(12条1項):安保理がある紛争や事態について任務を行っている間は、総会は、安保理が要請しない限り、その紛争や事態について勧告をしてはならない。
  • 表決(18条):各構成国は1票(1項)。重要問題の決定は、出席し投票する構成国の3分の2の多数による(2項)。重要問題には、平和と安全の維持に関する勧告、非常任理事国の選挙、経済社会理事会の理事国の選挙、新加盟国の加盟の承認、加盟国の権利・特権の停止、除名、予算問題などが含まれる。

安保理の構成と表決(23条〜27条)

項目中身条文
理事国の数15か国(常任5・非常任10)23条1項
非常任理事国の選び方総会が選挙する(重要問題で3分の2)23条1項・18条2項
非常任理事国の任期2年。退任する理事国は、引き続いて再選される資格がない23条2項
投票権各理事国が1票27条1項
手続事項の決定9理事国の賛成27条2項
その他すべての事項の決定常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成27条3項
紛争当事国の棄権6章(紛争の平和的解決)と52条3項にもとづく決定では、紛争当事国は投票を棄権する27条3項ただし書

外務省の条約データにある憲章の訳文は、作られた当時の「十一」「六」「七」のままです。1963年12月17日の総会決議で採択された改正(外務省の条約データにある改正文)で、23条1項の「十一」が「十五」に、「六」が「十」に、27条2項・3項の「七」が「九」に改められました。いまの数字(15か国・非常任10か国・9理事国)は、この改正後のものです。

外務省の説明は、拒否権を「手続事項を除く全ての事項に関する安保理の決定は、常任理事国の1か国の反対があった場合には成立しないこととされています(憲章第27条)」と書いています。「拒否権」という言葉は憲章の条文にはなく、27条3項の「常任理事国の同意投票を含む」から来る呼び方です。

常任理事国の国名の書き方

外務省の憲章の訳文(23条1項)は、常任理事国を、中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国の5か国として書いています。一方、外務省の安保理の説明では、常任理事国は「中国、フランス、ロシア、英国、米国」です。憲章の文字は作られた当時のまま、いまの常任理事国はこの5か国、と分けて覚えます。

安保理の責任と決定(24条・25条)

  • 24条1項:加盟国は、国際の平和と安全の維持に関する主要な責任を安保理に負わせ、安保理がその責任にもとづく義務を果たすときに、加盟国に代わって行動することに同意する。
  • 25条:加盟国は、安保理の決定を憲章に従って受け入れ、実行することに同意する。

総会の決議は「勧告」が中心ですが、安保理の「決定」には、加盟国が受け入れて実行することに同意しています。ここが総会との大きな違いです。

国際司法裁判所と国際刑事裁判所の違い

  • 国際司法裁判所(92条〜96条):国連の主要な司法機関で、付属の規程に従って任務を行う(92条)。すべての加盟国は当然に規程の当事国となる(93条1項)。加盟国は、自国が当事者である事件で裁判に従うことを約束する(94条1項)。総会や安保理は、いかなる法律問題についても勧告的意見を求められる(96条1項)。
  • 国際刑事裁判所:「国際刑事裁判所に関するローマ規程」という別の条約で設けられた、集団殺害犯罪・人道に対する犯罪・戦争犯罪・侵略犯罪を犯した個人を訴追し、処罰する常設の国際刑事法廷(外務省の説明)。各国で処罰されない場合にだけ捜査・訴追を行う(補完性の原則)。
比べる点国際司法裁判所(ICJ)国際刑事裁判所(ICC)
何を扱うか国家間の紛争、勧告的意見重大な犯罪を犯した個人の刑事責任
根拠国連憲章と国際司法裁判所規程国際刑事裁判所に関するローマ規程
国連の主要機関か主要機関(7条1項)7条1項の主要機関に入っていない
所在地オランダのハーグオランダのハーグ

外務省は、国際司法裁判所を「国際法に基づく裁判で国家間の紛争を平和的に解決すること」を任務とし、安保理と総会の選挙で選ばれた15名の裁判官で構成される、と説明しています。どちらもハーグにあるので、場所では見分けられません。「国家間の紛争か、個人の刑事責任か」で分けます。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:手続事項でない決議案に、12か国が賛成し、常任理事国1か国が棄権でなく反対した。外務省の説明のとおり、決議は成立しません。
  2. 当てはまる例:任期の2年目にある非常任理事国が、いまの任期のすぐ後に続けて始まる次の任期にも立候補した。退任理事国は引き続いて再選される資格がないので、続けて理事国にはなれません(23条2項)。
  3. 当てはまらない例:「非常任理事国は安保理の中で選ぶ」。選挙するのは総会です(23条1項)。
  4. 当てはまらない例:「事務総長は安保理が任命する」。任命するのは総会で、安保理は勧告をします(97条)。
  5. ひっかけやすい例:安保理がある紛争について任務を行っている間は、総会は、安保理の要請がない限り、その紛争について勧告できません(12条1項)。「総会は何でも勧告できる」とは限りません。

試験ではここをまちがえやすい

  • 主要機関の数:6つ。国際刑事裁判所は入らない。補助機関は7条2項で別に設けられる。
  • 安保理の数字:15か国(常任5・非常任10)、任期2年、決定は9理事国。憲章の訳文に残る11・6・7は改正前の数字。
  • 拒否権の範囲:手続事項には及ばない(27条2項)。及ぶのは「その他のすべての事項」(3項)。
  • だれが選ぶか:非常任理事国は総会が選挙(3分の2)。事務総長は安保理の勧告で総会が任命。
  • 国名:憲章の訳文は中華民国・ソヴィエト社会主義共和国連邦のまま。外務省の説明では、いまの常任理事国は中国・フランス・ロシア・英国・米国。
  • ICJとICC:ICJは国家間の紛争、ICCは個人の刑事責任。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
安全保障理事会の非常任理事国であるA国の2年の任期が、今年の末で終わる。A国は、その任期のすぐ後に続けて始まる次の任期の非常任理事国に、総会で再び選ばれることはできない。

答え:○ 国際連合憲章23条2項は、非常任理事国は2年の任期で選挙されるとし、「退任理事国は、引き続いて再選される資格がない」と定めています。外務省の説明でも、非常任理事国は連続して任期を務めることが認められていません。選挙で選ばれる以上、何度でも続けて立てる、と考えると✕に見えます。続けての再選ができないだけで、間を空ければ再び選ばれることは、この規定で妨げられていません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
安全保障理事会で、手続事項に当たる議案が採決された。9理事国が賛成し、常任理事国のうち1か国が反対した。この場合、その議案は可決される。

答え:○ 憲章27条2項は、手続事項に関する安保理の決定は9理事国の賛成投票によって行われるとし、常任理事国の同意投票を求めていません。常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成が要るのは、3項の「その他のすべての事項」です。「常任理事国が反対すればいつでも決まらない」と覚えていると✕に見えます。拒否権が及ぶのは、手続事項以外の決定です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
国際刑事裁判所は、国際連合憲章7条1項が定める主要機関の一つであり、集団殺害犯罪などを犯した個人を訴追し、処罰する。

答え:✕ 分かれ目は、国連の主要機関に入るかどうかです。7条1項が主要機関に挙げる裁判所は、国際司法裁判所だけです。正しくは、国際刑事裁判所は「国際刑事裁判所に関するローマ規程」という別の条約で設けられた裁判所です。個人を訴追・処罰するという後半は、外務省の説明どおりです。同じハーグにあり、名前も似ている国際司法裁判所(国家間の紛争を扱う主要な司法機関)と取り違えた誤りです。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 主要機関は、総会・安保理・経済社会理事会・信託統治理事会・国際司法裁判所・事務局の6つ(7条1項)。
  • 安保理は15か国(常任5・非常任10)。非常任理事国は総会が選挙し、任期2年で、続けての再選はできない(23条)。
  • 手続事項は9理事国の賛成、その他は常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成(27条)。後者が拒否権。
  • 国際司法裁判所は国連の主要な司法機関で国家間の紛争を扱い、国際刑事裁判所はローマ規程による個人の刑事責任の裁判所。

このサイトで次に読むなら、難民条約の記事です。国連のもとで作られた条約が、日本の法律(出入国管理及び難民認定法)とどうつながるかを確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

憲章の条文と外務省・国連広報センターの説明は、2026年10月17日に確かめました。外務省の憲章の訳文は作られた当時の数字のままなので、23条・27条の数字は改正文で確かめています。

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