ひとことで言うと、公益法人とは、一般社団法人・一般財団法人のうち、行政庁の「公益認定」を受けた公益社団法人・公益財団法人のことです(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律2条)。もとになる一般社団法人・一般財団法人は、設立の登記だけで成立します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律22条・163条)。NPO法人(特定非営利活動法人)は別の法律の法人で、所轄庁の認証を受けたうえで、設立の登記で成立します(特定非営利活動促進法10条・12条・13条)。
出発点は民法33条1項の「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。」です。営利を目的としない法人にもいくつかの形があり、それぞれ根拠の法律と成立のしかたが違います。この記事では、試験の論点として、どの法律で・どう成立し・どの行政庁が関わるかだけを扱います。設立の書類や費用、役員の報酬、収入や税の話は書きません。
この記事の位置づけ:行政書士試験の基礎知識の4分野(一般知識・行政書士法等の業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の記事です。足切り(令和7年度の合否判定基準では基礎知識24点以上。6問分)を越えるには、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固めるのが、基礎知識の記事で書いた当サイトの方針です。この記事は、そのうえで、条文で決まっている法人の形だけを扱います。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました(2026年10月17日確認)。
身近な例で考えると
会社員のみさきさんは、仲間と、川の清掃と自然観察会を続けているボランティアの会の代表です。会として土地を借りたり、契約をしたりする場面が増え、法人にすることを考えています。
- 一般社団法人にする道:定款を作り、主たる事務所の所在地で設立の登記をすれば成立する。役所の許可や認証は要らない。
- 公益社団法人になる道:まず一般社団法人になり、そのうえで、公益目的事業を行う法人として行政庁の公益認定を受ける。
- NPO法人にする道:活動が特定非営利活動促進法の別表の分野に当たるかを確かめ、所轄庁に申請して設立の認証を受け、そのあと設立の登記をする。
たとえるなら、一般社団法人は「届けを出せば開ける教室」、公益社団法人は「開いた教室が、あとから公の審査で『みんなのための教室』と認められたもの」、NPO法人は「別の窓口で開く前に審査を受け、そのうえで登録する教室」です。ただし本物のルールでは、審査の中身も、審査する役所も、法律ごとに決まっています。
条文ではこう決まっている
民法33条・34条
- 33条1項:法人は、民法その他の法律の規定によらなければ成立しない。
- 33条2項:学術・技芸・慈善・祭祀・宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を目的とする法人などの設立・組織・運営・管理は、民法その他の法律の定めによる。
- 34条:法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定めた目的の範囲内で、権利を持ち、義務を負う。
法人の形を決めるのは、それぞれの法律です。社会福祉法人・宗教法人・医療法人・学校法人も、社会福祉法・宗教法人法・医療法・私立学校法という別々の法律による法人で、この記事の3つの形とは別です。法律による法人の形をとらない団体(権利能力なき社団)の扱いは権利能力なき社団の記事、法人の権利能力は権利能力の記事で扱っています。
一般社団法人・一般財団法人(平成18年法律第48号)
- 22条:一般社団法人は、主たる事務所の所在地で設立の登記をすることで成立する。
- 163条:一般財団法人も、主たる事務所の所在地で設立の登記をすることで成立する。
- 11条2項:社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めは、効力を持たない。
社団法人は人の集まり、財団法人は財産の集まりに法人格を与えたものです。内閣府は「一般法人は、準則主義で登記のみで設立できます」と説明しています。準則主義(じゅんそくしゅぎ)=法律の決めた形をそろえれば、役所の許可なしに成立する、という考え方です。11条2項のように、もうけを社員に分ける形をとれないことが、ここでいう「非営利」の中身です。
公益社団法人・公益財団法人(平成18年法律第49号)
- 2条:公益社団法人=4条の認定を受けた一般社団法人、公益財団法人=4条の認定を受けた一般財団法人。2つを合わせて「公益法人」という。公益目的事業=学術・技芸・慈善その他の公益に関する別表の種類の事業で、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」。
- 3条(行政庁):2つ以上の都道府県の区域内に事務所を置く法人、2つ以上の都道府県で公益目的事業を行うと定款で定める法人などは内閣総理大臣。それ以外は、事務所がある都道府県の知事。
- 4条:公益目的事業を行う一般社団法人・一般財団法人は、行政庁の認定(公益認定)を受けることができる。
- 5条:行政庁は、申請した法人が基準に適合すると認めるときは公益認定をする。基準は21号まであり、1号は「公益目的事業を行うことを主たる目的とするものであること」。
内閣府は、この仕組みを、法人格の取得と公益性の判断を分け、公益性は「民間有識者が審査して行政庁が認定する仕組み」と説明しています。新しい公益法人制度の施行は平成20年12月です(内閣府「公益法人制度改革の成果」)。この法律を改めた令和6年法律第29号の主な部分は2025年(令和7年)4月1日に施行されていて、令和8年4月1日時点の条文にはその改正が入っています(e-Gov の改正履歴)。
特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法=平成10年法律第7号)
- 1条(目的):特定非営利活動を行う団体に法人格を与えることと、認定の制度を設けることなどにより、「ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動」としての特定非営利活動の健全な発展を進め、公益の増進に役立てる。
- 2条1項:特定非営利活動=別表に掲げる活動で、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの。別表は20の号で、1号は「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」、20号は都道府県・指定都市の条例で定める活動。
- 2条2項:特定非営利活動法人=特定非営利活動を主な目的とし、「営利を目的としないもの」であることなどの要件に当たる団体で、この法律で設立されたもの。宗教の教義を広めることや政治上の主義を進めることを主な目的とするもの、特定の公職の候補者・公職にある者・政党を推薦・支持し、またはこれらに反対することを目的とするものは当たらない。
- 9条(所轄庁):主たる事務所がある都道府県の知事。事務所が一つの指定都市の区域内だけにあるときは、その指定都市の長。
- 10条・12条・13条:設立するには所轄庁に申請して「設立の認証を受けなければならない」。所轄庁は、基準に適合すると認めるときは「認証しなければならない」。法人は「設立の登記をすることによって成立する」。
- 44条1項:運営組織と事業活動が適正で公益の増進に役立つNPO法人は、所轄庁の認定を受けられる(認定特定非営利活動法人)。
3つの形を1枚で比べる
| 種類 | 根拠の法律 | 成立のしかた | 関わる行政庁 |
|---|---|---|---|
| 一般社団法人・一般財団法人 | 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 | 設立の登記だけ(22条・163条) | 成立に行政庁は関わらない |
| 公益社団法人・公益財団法人 | 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 | 一般法人が公益認定を受ける(4条) | 内閣総理大臣か都道府県知事(3条) |
| NPO法人 | 特定非営利活動促進法 | 所轄庁の認証のあと、設立の登記(10条・13条) | 都道府県知事か指定都市の長(9条) |
「一般社団法人と公益社団法人の違い」は、公益認定を受けたかどうかです。法人として別の種類が最初からあるのではなく、一般社団法人が認定を受けると公益社団法人になります。「NPO法人と一般社団法人の違い」は、根拠の法律と、成立の前に所轄庁の認証が要るかどうかです。NPO法人の活動は別表の20の分野に限られますが、一般社団法人の事業の内容は、この別表のような形では限られていません。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:みさきさんの会が、定款を作って主たる事務所の所在地で設立の登記をした。この時に一般社団法人として成立します(22条)。
- 当てはまる例:一般社団法人になった会が、公益目的事業を主な目的として行政庁の公益認定を受けた。公益社団法人になります(公益認定法2条1号・4条)。
- 当てはまらない例:NPO法人の申請をして所轄庁の認証を受けたが、まだ設立の登記をしていない。この段階では、NPO法人はまだ成立していません(13条1項)。
- ひっかけやすい例:事務所を2つの県に置く一般財団法人が公益認定を受けるとき。行政庁は、主たる事務所のある県の知事ではなく、内閣総理大臣です(3条1号イ)。
試験ではここをまちがえやすい
- 成立の時:一般法人は登記で成立。NPO法人も、認証の時ではなく登記で成立。公益法人は、すでに成立している一般法人が認定を受けたもの。
- 認定と認証の言葉:公益社団法人・公益財団法人は行政庁の「認定」。NPO法人の設立は所轄庁の「認証」。認定NPO法人は所轄庁の「認定」(44条)。
- 行政庁の分かれ目:公益認定は、2つ以上の都道府県に事務所がある・2つ以上の都道府県で事業を行うと定款で定める、などなら内閣総理大臣。NPO法人の所轄庁は、都道府県知事か指定都市の長。
- 別表の数:NPO法人の活動の分野は別表の20の号。最後の号は条例で定める活動。
- NPO法人に当たらない目的:宗教の教義を広める、政治上の主義を進めることを主な目的とするもの、特定の公職の候補者・公職にある者・政党の推薦・支持・反対を目的とするもの。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
みさきさんたちは、NPO法人の設立を申請し、所轄庁である県の知事から設立の認証を受けた。まだ設立の登記はしていないが、このNPO法人は、認証を受けた時にすでに成立している。
答え:✕ 分かれ目は、NPO法人が成立する時点です。特定非営利活動促進法は、設立には所轄庁の認証を受けなければならないとしたうえで(10条1項)、法人は「設立の登記をすることによって成立する」としています(13条1項)。正しくは、認証を受けたあと、設立の登記をした時に成立します。認証で成立すると考えるのは、登記の手順を落とした取り違えで、登記だけで成立する一般社団法人(一般法人法22条)とも混ぜないようにします。
問2(このサイトのオリジナル問題)
一般社団法人は、行政庁の許可や認証を受けずに、設立の登記をすることで成立する。その一般社団法人が公益社団法人になるには、そのうえで行政庁の公益認定を受ける必要がある。
答え:○ 分かれ目は、法人の成立と公益性の判断が分かれていることです。一般社団法人は主たる事務所の所在地で設立の登記をすることで成立し(一般法人法22条)、公益社団法人は「第四条の認定を受けた一般社団法人」です(公益認定法2条1号)。公益のための法人は設立の時に役所の許可が要る、と考えると✕に見えます。内閣府は、新しい制度を、法人格の取得と公益性の判断を分けた仕組みとして説明しています。
問3(このサイトのオリジナル問題)
主たる事務所をA県に、もう一つの事務所をB県に置く一般財団法人が公益認定を受けるとき、認定をする行政庁は、A県の知事ではなく内閣総理大臣である。
答え:○ 分かれ目は、事務所が2つ以上の都道府県にあるかです。公益認定法3条1号イは、2つ以上の都道府県の区域内に事務所を置く公益法人の行政庁を内閣総理大臣とし、それ以外は事務所がある都道府県の知事としています(2号)。主たる事務所の県の知事が認定する、と考えると✕に見えます。NPO法人の所轄庁が主たる事務所のある都道府県の知事(特定非営利活動促進法9条)であることと取り違えやすい点です。
基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。
まとめ
- 法人は法律の規定によらなければ成立しない(民法33条1項)。形ごとに根拠の法律が違う。
- 一般社団法人・一般財団法人:設立の登記だけで成立(22条・163条)。
- 公益社団法人・公益財団法人(公益法人):一般法人が行政庁の公益認定を受けたもの。行政庁は内閣総理大臣か都道府県知事。
- NPO法人:別表20の分野の活動。所轄庁(知事か指定都市の長)の認証のあと、設立の登記で成立。認定NPO法人は所轄庁の認定。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点のものを確かめ、公益認定法の改正の施行日は e-Gov の改正履歴で確かめました。制度の説明は内閣府の公益法人のページで確かめました(いずれも2026年10月17日確認)。
- e-Gov法令検索「民法」(33条、34条)
- e-Gov法令検索「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(11条、22条、163条)
- e-Gov法令検索「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(2条〜5条)
- e-Gov法令検索「特定非営利活動促進法」(1条、2条、9条、10条、12条、13条、44条、別表)
- 内閣府「公益法人制度改革の成果」(平成20年12月施行、準則主義、民間有識者が審査して行政庁が認定する仕組み)
- 内閣府「公益法人制度改革の経緯」(法人格の取得と公益性の判断の分離)
このサイトで次に読むなら、行政主体と行政機関の記事です。公益認定をする「行政庁」が、行政法の言葉でどんな立場の機関かを確かめられます。
働く人の法律試験ノート