審査請求の代理人・総代・参加人:だれが審査請求人の代わりに動けるか、取下げはできるか

ひとことで言うと、審査請求で審査請求人の代わりに動ける人は、代理人(12条)と総代(そうだい、11条)です。どちらも審査請求に関する一切の行為ができますが、審査請求の取下げは、代理人なら特別の委任があるときだけ、総代はできません。審査請求人以外で処分に利害関係のある人は、審理員の許可を得て参加人になれます(13条)。

この記事は、行政不服審査法の「人」の決まりに絞ります。審理員が審理を進める流れは審理員と聴聞の主宰者の記事、行政不服審査会への諮問は行政不服審査会の記事で扱っています。審査請求の期間や出す先などの全体は審査請求の記事にまとめています。標準審理期間や証拠書類の提出から審理手続の終結までは審査請求の審理手続で扱っています。

身近な例で考えると

架空のみなみ県で、県知事がみなみ環境株式会社に、廃棄物の処理施設を置く許可を出しました。施設の近くに住む15人が、この許可に納得できず、一緒に県知事に審査請求をすることにしました。

人物立場したこと
住民15人共同審査請求人一緒に審査請求をした
ともこさんほか2人総代15人の中から互選された
けいこさん15人とは別に、一人で審査請求をした住民知人のしんじさんを代理人にした
みなみ環境許可を受けた会社審理員の許可を得て参加人になった
  1. 15人は、手続を進めやすくするため、ともこさんたち3人を総代に選んだ(11条1項)。
  2. 総代が選ばれた後は、15人は、総代を通じてのみ、審査請求に関する行為(取下げを除く)をする(11条4項)。共同審査請求人への行政庁の通知などは、総代の1人にすれば足りる(11条5項)。
  3. 15人とは別に、一人で審査請求をしたけいこさんは、その手続を知人のしんじさんに任せた。しんじさんは代理人として一切の行為ができるが、けいこさんの審査請求を取り下げるには、けいこさんから特別の委任を受けていなければならない(12条2項)。
  4. 許可が取り消されると困るみなみ環境は、利害関係人として、審理員の許可を得て審査請求に参加した(13条1項)。
  5. ともこさんが口頭意見陳述を申し立て、審理員の許可を得て、施設に詳しい知人を補佐人として連れて行った(31条1項・3項)。

クラスで学級委員に意見をまとめてもらうときに似ています。学級委員(総代)は、みんなの代わりに先生とやりとりできますが、「やっぱり意見を出すのをやめる」かどうかは、一人ひとりが決めることです。ただし本物のルールでは、総代になれるのは3人まで、互選しないときに互選を命じられるのは審理員、のように数と主体が条文で決まっています。

条文ではこう決まっている

総代(11条)

  • 多数人が共同して審査請求をしようとするときは、3人を超えない総代を互選できる(1項)。
  • 互選しない場合に必要があると認めるときは、審理員が互選を命ずることができる(2項)。
  • 総代は、各自、ほかの共同審査請求人のために、審査請求の取下げを除き、一切の行為ができる(3項)。
  • 総代が選任されたら、共同審査請求人は、総代を通じてのみ、3項の行為ができる(4項)。
  • 共同審査請求人への行政庁の通知などは、総代が2人以上いても、1人の総代にすれば足りる(5項)。
  • 共同審査請求人は、必要があると認めるときは、総代を解任できる(6項)。

4項の「前項の行為」は、取下げを除いた行為です。そのため、総代が選ばれた後でも、各共同審査請求人は、自分の審査請求を自分で取り下げることができる、と読めます。

代理人(12条)

  • 審査請求は、代理人によってすることができる(1項)。代理人になれる人の資格の制限は、12条には書かれていない。
  • 代理人は、各自、審査請求人のために、審査請求に関する一切の行為ができる(2項本文)。
  • ただし、審査請求の取下げは、特別の委任を受けた場合に限りできる(2項ただし書)。

参加人(13条)

  • 利害関係人=審査請求人以外の者で、処分の根拠となる法令に照らして、その処分に利害関係を有すると認められる者。
  • 利害関係人は、審理員の許可を得て、審査請求に参加できる(1項)。
  • 審理員は、必要があると認めるときは、利害関係人に参加を求めることができる(2項)。
  • 参加は代理人によってもでき(3項)、その代理人は参加に関する一切の行為ができる。参加の取下げは、特別の委任を受けた場合に限る(4項)。

口頭意見陳述と補佐人(31条)

  • 審査請求人または参加人の申立てがあったときは、審理員は、口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。申立人の所在などの事情で困難なときは別(1項)。
  • 申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭できる(3項)。
  • 申立人は、審理員の許可を得て、処分庁などに質問を発することができる(5項)。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:総代のともこさんが、15人のために反論書を出す。取下げ以外の行為なので、総代としてできます。
  • 当てはまる例:総代が選ばれた後に、15人のうちの1人が、自分の審査請求を自分で取り下げる。取下げは総代の権限から外されているので、総代を通じる必要はありません。
  • 当てはまらない例:総代のともこさんが、15人全員の審査請求をまとめて取り下げる。総代は取下げができません(11条3項)。
  • 当てはまらない例:代理人のしんじさんが、「審査請求の手続を任せる」とだけ頼まれていたのに、けいこさんの審査請求を取り下げる。取下げには特別の委任が要ります(12条2項ただし書)。
  • ひっかけやすい例:総代を4人選ぶ。総代は3人を超えられません(11条1項)。
  • ひっかけやすい例:みなみ環境が、審理員から求められていないのに参加を申し出る。審理員の許可があれば参加できます(13条1項)。審理員から求める方法(2項)だけではありません。

似ているルールとの違い

だれが・何ができるかを1枚で比べる

人どうしてなるかできること取下げ
総代(11条)共同審査請求人が互選(3人まで)取下げを除く一切の行為できない
代理人(12条)審査請求人が選ぶ一切の行為特別の委任があればできる
参加人(13条)審理員の許可、または審理員の求め口頭意見陳述の申立てなど参加の取下げ(代理人は特別の委任)
補佐人(31条3項)申立人が審理員の許可を得る口頭意見陳述にともに出頭―

聴聞の代理人・参加人(行政手続法16条・17条・20条)との比べ

比べる点審査請求(行政不服審査法)聴聞(行政手続法)
代理人一切の行為。取下げは特別の委任(12条)聴聞に関する一切の行為(16条2項)。資格は書面で証明(同条3項)
参加人の決め方審理員の許可(13条1項)、審理員の求め(同条2項)主宰者が、必要があると認めるときに求め、または許可する(17条1項)
多数人の代表総代(3人まで、11条)定めはない
補佐人審理員の許可(31条3項)主宰者の許可(20条3項)

許可をする人が、審査請求では審理員、聴聞では主宰者になります。審査請求の裁決をする審査庁ではない点に注意します。弁明の機会の付与では、代理人の規定(16条)は準用されますが、参加人の規定は準用されません(31条)。聴聞の手続の全体は聴聞と弁明の記事で確かめられます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 代理人の取下げ:「代理人は一切の行為ができるので、取下げもできる」とする形。取下げは特別の委任を受けた場合に限ります(12条2項ただし書)。
  • 総代の取下げ:総代も特別の委任があれば取り下げられる、とする形。総代については「取下げを除き」で、委任による例外の定めはありません(11条3項)。
  • 総代を通じてのみ:総代が選ばれたら、各人は自分の審査請求の取下げもできないとする形。総代を通じるのは、取下げを除く行為です(11条4項)。
  • 人数と主体:総代を5人まで、互選を命じるのは審査庁、とする形。3人まで、命じるのは審理員です(11条1項・2項)。
  • 参加の入口:審理員が求めた場合だけ参加できる、とする形。利害関係人は審理員の許可を得て参加できます(13条1項)。
  • 口頭意見陳述の申立て:申し立てられるのは審査請求人だけ、とする形。参加人も申し立てられます(31条1項)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
Aは、B県知事の処分について審査請求をし、その手続をCに任せて代理人とした。AからCへの委任が審査請求の手続を進めることだけで、取下げについての特別の委任がない場合でも、Cは、Aのために審査請求を取り下げることができる。

答え:✕ 分かれ目は、12条2項のただし書です。代理人は、各自、審査請求人のために審査請求に関する一切の行為ができます(行政不服審査法12条2項本文)が、審査請求の取下げは、特別の委任を受けた場合に限りできます(同項ただし書)。正しくは、Cは取り下げられません。「一切の行為」という本文だけを読むと○に見えます。総代のほうは、特別の委任があっても取下げはできません(11条3項)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
Dら10人が共同して審査請求をし、Eら3人を総代に互選した。この場合、Dら10人は、総代を通じてのみ審査請求に関する行為をすることができるが、Dが自分の審査請求を取り下げることは、総代を通じなくてもできる。

答え:○ 分かれ目は、11条4項の「前項の行為」の範囲です。総代は、審査請求の取下げを除き、ほかの共同審査請求人のために一切の行為ができ(行政不服審査法11条3項)、総代が選任されたら、共同審査請求人は総代を通じてのみ「前項の行為」ができます(同条4項)。取下げは前項の行為から外されているので、各人が自分でします。「総代を通じてのみ」を例外なしと読むと✕に見えます。代理人と違い、総代は特別の委任があっても取下げができない点も対になります。

問3(このサイトのオリジナル問題)
F社への許可について、近くの住民Gが審査請求をした。許可の相手方であるF社は、審理員から参加を求められた場合に限り、参加人としてこの審査請求に加わることができる。

答え:✕ 分かれ目は、参加人になる入口の数です。利害関係人は、審理員の許可を得て審査請求に参加することができ(行政不服審査法13条1項)、これとは別に、審理員が必要と認めて参加を求めることもできます(同条2項)。正しくは、F社は、求められていなくても、審理員の許可を得て参加できます。2項の「求め」だけを入口と覚えていると○に見えます。聴聞では、主宰者が必要と認めるときに参加を求め、または許可します(行政手続法17条1項)。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。

まとめ

  • 代理人は一切の行為ができる。取下げは特別の委任があるときだけ(12条)。
  • 総代は3人まで。取下げを除く一切の行為。選ばれたら、各人は総代を通じてのみ行為する(取下げは除く)。互選を命じるのは審理員(11条)。
  • 利害関係人は審理員の許可で参加できる。審理員から求めることもできる(13条)。
  • 口頭意見陳述は参加人も申し立てられる。補佐人は審理員の許可(31条)。聴聞では主宰者の許可。

次に読むなら、審理員と聴聞の主宰者の記事がおすすめです。この記事で何度も出てきた「審理員の許可」の審理員が、だれから指名され、どう審理を進めるかを確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。

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