再調査の請求と再審査請求:審査請求との違い、できる場合と期間

ひとことで言うと、再調査の請求は「処分をした行政庁(処分庁)が、自分で処分を見直す」手続、再審査請求は「審査請求の裁決に不服があるとき、法律が定める行政庁にもう一段申し立てる」手続です。どちらも、法律に「できる」と定めがあるときだけ使えます(行政不服審査法5条・6条)。

審査請求を中心に、前に置く手続(再調査の請求)と後に置く手続(再審査請求)がある、と位置づけると整理しやすくなります。この記事は、令和8年4月1日時点の行政不服審査法で、3つを比べます。審査請求そのものの流れは審査請求をわかりやすくで説明しています。

身近な例で考えると

人物立場したこと
はるとさん事業を営む人国の出先機関の長から処分を受けた
出先機関の長処分庁処分をし、再調査の請求を受けた
大臣審査庁審査請求について裁決をする

はるとさんが受けた処分の根拠の法律には、大臣への審査請求と、処分庁への再調査の請求の両方が定められているとします。

  1. はるとさんは、処分庁に再調査の請求をするか、大臣に審査請求をするかを選べる。先に審査請求をしたら、再調査の請求はできない(5条1項ただし書)。
  2. はるとさんは、処分を知った日の翌日から3か月以内に、処分庁へ再調査の請求をした(54条1項)。
  3. 処分庁は、請求を棄却する決定をした。決定書には、審査請求ができること・審査庁・期間が書かれていた(60条2項)。
  4. はるとさんは、決定を知った日の翌日から1か月以内に、大臣へ審査請求をした(18条1項かっこ書き)。
  5. 大臣は棄却の裁決をした。根拠の法律に再審査請求の定めがあれば、はるとさんは、裁決を知った日の翌日から1か月以内に、法律が定める行政庁へ再審査請求ができる(6条・62条1項)。

たとえるなら、再調査の請求は「お店の担当者にもう一度確認してもらう」、審査請求は「本部に見直しを頼む」、再審査請求は「本部の答えにさらに上の窓口で異議を言う」流れです。ただし本物のルールでは、どの段階を使えるかは法律の定めで決まり、どの処分でも3段階あるわけではありません。

条文ではこう決まっている

再調査の請求(5条・54条〜61条)

  • できるとき:処分庁以外の行政庁に審査請求ができる場合で、法律に再調査の請求ができる旨の定めがあるとき、処分庁に対してできます(5条1項)。例として、国税通則法75条1項1号は、税務署長などの処分について、処分をした税務署長などへの再調査の請求と、国税不服審判所長への審査請求のどちらかを選べるとしています。
  • 審査請求との関係:再調査の請求をしたら、決定を経た後でなければ審査請求はできません。例外は、請求の翌日から3月を経過しても決定がない場合と、決定を経ないことに正当な理由がある場合です(5条2項)。
  • 期間:処分を知った日の翌日から3月、処分の日の翌日から1年。正当な理由があれば例外です(54条)。
  • 手続:61条が審査請求の規定の一部を準用しています。口頭意見陳述(31条。処分庁への質問の5項を除く)や執行停止(25条。3項を除く)は準用されますが、審理員の指名(9条1項)、弁明書(29条)、反論書(30条)、審査会への諮問(43条)は準用されていません。
  • 決定:不適法なら却下、理由がなければ棄却、理由があれば処分の全部・一部を取り消すか変更します。請求人の不利益に変更することはできません(58条・59条)。決定書には、審査請求ができる旨・審査庁・期間を書いて教示します(60条2項)。却下・棄却・認容の言葉を、審査請求の裁決・取消訴訟の判決と並べたのが却下・棄却・認容の違いの記事です。
  • 3か月たっても終わらないとき:処分庁は、遅滞なく、直ちに審査請求ができる旨を書面で教示しなければなりません(57条)。決定を待たずに審査請求がされたときは、再調査の請求は取り下げられたものとみなされます(56条本文)。
  • 教示がなかったとき:再調査の請求ができる処分なのに、処分庁がその旨を教示せず、審査請求がされた場合は、審査請求人の申立てがあれば、審査庁は審査請求書などを処分庁に送ります(審査請求人に弁明書が送られた後を除く)。送られたときは、処分庁に再調査の請求がされたものとみなされます(55条1項・3項)。

再審査請求(6条・62条〜66条)

  • できるとき:法律に再審査請求ができる旨の定めがある場合に、審査請求の裁決に不服がある者ができます(6条1項)。例として、生活保護法66条1項は、市町村長がした保護の決定などについての都道府県知事の裁決に不服がある者は、厚生労働大臣に再審査請求ができるとしています。
  • 対象と相手:原裁決(審査請求の裁決)か、もとの処分を対象に、法律に定める行政庁に対してします(6条2項)。
  • 期間:原裁決を知った日の翌日から1月、原裁決の日の翌日から1年。正当な理由があれば例外です(62条)。
  • 手続:66条1項が審査請求の規定(第2章)を準用します。審理員の指名は準用されますが、審査会等への諮問(第2章第4節)は準用から外されています。
  • 裁決:原裁決(却下・棄却したもの)が違法・不当でも、もとの処分が違法・不当でなければ棄却します(64条3項)。理由があるときは、原裁決等の全部・一部を取り消します(65条)。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる:税務署長の処分を受けた人が、税務署長に再調査の請求をする。法律(国税通則法75条1項1号)に定めがあり、審査請求先(国税不服審判所長)が処分庁以外だからです。ただし国税の不服申立てには国税通則法に独自の決まりが多くあり、この記事は行政不服審査法の決まりで説明しています。
  • 当てはまらない:処分庁に上級行政庁がなく、審査請求を処分庁自身にする場合。5条1項の「処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合」に当たらないので、再調査の請求はできません。
  • 当てはまらない:再審査請求の定めがない処分で、審査請求の裁決に不服がある。行政不服審査法の中で次に申し立てる手続はなく、取消訴訟などを考えることになります。
  • ひっかけやすい:再調査の請求から1か月で決定が出ない。3か月を過ぎるまでは、正当な理由がない限り、決定を待たずに審査請求はできません(5条2項1号)。
  • ひっかけやすい:再審査請求を、裁決ではなくもとの処分を対象にしてする。6条2項は原裁決か処分のどちらかを対象にできるとしているので、処分を対象にしてもかまいません。

似ているルールとの違い

比べる点再調査の請求審査請求再審査請求
できるとき法律に定めがあるとき処分に不服があるとき法律に定めがあるとき
相手処分庁原則は最上級行政庁法律が定める行政庁
知った日の翌日から3月3月(再調査の後は1月)1月
審理員なしありあり
審査会への諮問なし原則ありなし

期間は、最初の申立て(再調査の請求・審査請求)が3か月、一度判断を受けたあとの申立て(再調査の決定後の審査請求・再審査請求)が1か月、処分や裁決の日からはどれも1年、という形です。数字の一覧は期間・数字の一覧にもあります。決定書や裁決書の教示の決まりは教示をわかりやすくで確かめられます。審査会に諮問する手続とその例外は行政不服審査会への諮問で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 再調査の前提:処分庁以外に審査請求ができ、かつ法律に定めがあること。処分庁自身が審査庁になる場合は使えません。
  • 選んだあとの制限:先に審査請求をしたら再調査の請求は不可(5条1項ただし書)。再調査の請求をしたら、原則として決定を経てから審査請求(5条2項)。
  • 期間の取り違え:再調査の請求そのものは3か月(54条)。再調査の決定後の審査請求と再審査請求は1か月(18条1項・62条1項)。
  • 手続の準用:再調査の請求には審理員・弁明書・反論書・審査会への諮問がない。口頭意見陳述はある。再審査請求には審理員はあるが、審査会への諮問はない。
  • 決定を待たずに審査請求したとき:残った再調査の請求は取り下げられたものとみなされる(56条本文)。2つの手続が並行して続くのではありません。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
はるとさんは処分庁に再調査の請求をしたが、請求の翌日から3か月たっても決定がないので、審査庁に審査請求をした。処分庁がそれまでに処分を取り消す決定書の謄本を発していなければ、再調査の請求は取り下げられたものとみなされる。

答え:○ 分かれ目は、決定を待たずに審査請求をしたときの、再調査の請求の扱いです。請求の翌日から3月を経過しても決定がないときは、決定を経ずに審査請求ができ(行政不服審査法5条2項1号)、その審査請求がされたときは、再調査の請求は取り下げられたものとみなされます(56条本文)。2つの手続が並んで続くと考えると✕にしてしまいます。処分庁がすでに取消しの決定書の謄本を発していた場合などは、逆に審査請求が取り下げられたものとみなされます(56条ただし書)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
法律の定めにより大臣を再審査庁とする再審査請求がされた。この再審査請求では審理員による審理手続が行われるが、大臣は、審理員意見書の提出を受けても、行政不服審査会に諮問する手続をとらない。

答え:○ 分かれ目は、審査請求のどの手続が再審査請求に準用されるかです。行政不服審査法66条1項は、審査請求の規定(第2章)を再審査請求に準用していますが、審査会等への諮問を定めた第2章第4節(43条)を準用から外しています。審理員の指名(9条)は準用されるので、審理員がいるなら諮問もあると考えると✕にしてしまいます。再調査の請求は、審理員の指名(9条1項)も諮問も準用されていない手続です(61条)。

問3(このサイトのオリジナル問題)
Fさんが、法律の定めにもとづき処分庁に再調査の請求をした。この手続でも、審査請求と同じく、処分庁は弁明書を作ってFさんに送らなければならず、Fさんはこれに対する反論書を出すことができる。

答え:✕ 分かれ目は、弁明書・反論書の規定が再調査の請求に準用されるかです。行政不服審査法61条は、口頭意見陳述(31条。5項を除く)や執行停止(25条。3項を除く)などを再調査の請求に準用していますが、弁明書(29条)と反論書(30条)は準用していません。正しくは、再調査の請求は処分庁が自ら見直す手続で、弁明書・反論書のやりとりはありません。弁明書・反論書は、審理員が進める審査請求の手続の規定です。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。

まとめ

  • 再調査の請求:処分庁以外に審査請求ができ、法律に定めがあるとき、処分庁にする。3か月・1年。
  • 再調査の請求をしたら原則として決定を経てから審査請求。3か月たっても決定がなければ例外。そのとき再調査の請求は取り下げとみなされる。
  • 再審査請求:法律に定めがあるとき、原裁決か処分を対象に、法律が定める行政庁にする。1か月・1年。
  • 審理員は、再調査の請求になし、再審査請求にあり。審査会への諮問は、どちらにもない。
  • 再調査の請求に弁明書・反論書はない。口頭意見陳述はある。

このサイトで次に読むなら、行政不服審査法の適用除外です。そもそも審査請求ができない処分(7条)を知っておくと、3つの手続を使える範囲が分かります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。

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