ひとことで言うと、青少年インターネット環境整備法は、18歳未満の青少年が携帯電話からインターネットを使うとき、携帯電話の事業者に、青少年かどうかの確認(13条)、説明(14条)、フィルタリングサービスを条件とする提供(15条)、販売する端末でのフィルタリングの有効化(16条)を義務づけた法律です。保護者が利用しない(希望しない)と申し出たときは、15条・16条の義務はかかりません。
正式な題名は「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(平成20年法律第79号)で、平成21年4月1日に施行されました(総務省の情報通信白書)。販売時のフィルタリングの有効化などを義務づけた改正(平成29年法律第75号)は、平成30年2月に施行されています。この法律には、違反した事業者などを罰する罰則の規定がありません(2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確認)。
この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、情報通信・個人情報保護の分野の記事です。足切り(令和7年度の合否判定基準では基礎知識24点=6問)を越えるための6問を、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、という基礎知識の記事の順番は変わりません。特定の商品・アプリ・サービス、検討会の報告書や改正の議論には入らず、令和8年4月1日時点の条文だけを整理します。
身近な例で考えると
行政書士試験の受験生のまいさんは、中学3年生(15歳)の子のゆいさんに使わせるため、携帯電話の店で契約をすることにしました。契約の相手方はまいさん、端末を使うのはゆいさんです。店で起きることを条文の順に並べると、次のようになります。
- 店は、契約の前に、相手方のまいさんが青少年かどうかを確認する(13条1項)。まいさんは青少年ではない。
- そこで店は、まいさんに、端末を使う人が青少年かどうかを確認する(13条2項)。まいさんは、ゆいさんが使うことを申し出る(13条3項)。
- 店は、保護者のまいさんに、青少年有害情報を見てしまう可能性があることと、フィルタリングサービスや有効化の措置の必要性と内容を説明する(14条)。
- 事業者は、フィルタリングサービスの利用を条件として、インターネットにつなぐ役務を提供する(15条)。
- 店が端末も売るときは、その端末でフィルタリングを使える状態にする措置(有効化措置)をする(16条)。
まいさんが気づいたのは、法律が見ているのは「契約した人」だけでなく「実際に使う人」だということです。たとえると、この法律は「店の人に、子どもが使うかどうかを聞き、説明し、最初から安全の設定を入れてから渡す」よう決めた手順書です。ただし本物のルールでは、保護者が利用しない旨・希望しない旨を申し出れば、4と5はかかりません(15条・16条のただし書)。
条文ではこう決まっている
言葉の定義(2条)
- 青少年(1項):18歳に満たない者。年齢の決め方は法律や条約で違い、子どもの権利条約は18歳未満の者を原則として「児童」とし、こども基本法は「こども」を年齢で区切っていません(子どもの権利条約の記事・こども基本法の記事)。
- 保護者(2項):親権を行う者もしくは後見人、またはこれらに準ずる者。
- 青少年有害情報(3項):インターネットを利用して公衆の閲覧(視聴を含む)に供されている情報で、青少年の健全な成長を著しく阻害するもの。4項がその例を挙げています。
- 携帯電話インターネット接続役務提供事業者(8項):携帯電話端末などからインターネットにつなぐ役務(政令で定めるもの)を提供する電気通信事業者。
- 青少年有害情報フィルタリングソフトウェア・サービス(9項・10項):青少年有害情報の閲覧を制限するためのプログラムと、それを使った役務など。
- 特定サーバー管理者(11項):公衆による情報の閲覧に使われるサーバー(特定サーバー)を用いて、他人の求めに応じて情報を公衆が閲覧できる状態に置き、閲覧させる役務を提供する者。
だれに何が求められているか
| だれが | 何を | 義務か努力か |
|---|---|---|
| 携帯電話の事業者等(代理店を含む) | 相手方・使用者が青少年かの確認(13条1項・2項) | 義務 |
| 青少年に使わせるため契約する人 | その旨の申出(13条3項) | 義務 |
| 携帯電話の事業者等 | 青少年・保護者への説明(14条) | 義務 |
| 携帯電話の事業者 | フィルタリングサービスを条件とする提供(15条) | 義務(保護者の申出で外れる) |
| 携帯電話の事業者等 | 販売する端末の有効化措置(16条) | 義務(保護者の申出で外れる) |
| インターネット接続の事業者 | 求められたときのフィルタリングの提供(17条) | 義務 |
| 接続機器の製造事業者 | フィルタリングを使いやすくする措置をしてから販売(18条) | 義務 |
| 機器を動かすプログラムの開発事業者、フィルタリングの開発・提供事業者 | 使いやすいプログラム、性能の向上(19条・20条) | 努力義務 |
| 特定サーバー管理者 | 青少年有害情報の発信を知ったときの閲覧防止措置(21条) | 努力義務 |
| 保護者 | 利用の状況の把握と、フィルタリングの利用などによる適切な管理(6条1項) | 努める |
17条・18条には、青少年による有害情報の閲覧に及ぼす影響が軽微な場合として政令で定めるものを除く、という限定があります。表の「携帯電話の事業者等」は、13条1項の言葉で、契約の締結の媒介・取次ぎ・代理を業とする者(販売の代理店など)を含みます。15条は「事業者」だけ、16条は「事業者等」で、主語が少し違います。
国の役割と、罰則がないこと
- 国・地方公共団体(4条):施策を策定し、実施する責務を有する。
- 関係事業者(5条):事業の特性に応じ、閲覧の機会をできるだけ少なくする措置などを講ずるよう努めるものとする。
- 基本計画(8条):こども基本法17条1項のこども政策推進会議が定め、その実施を推進する。
- 罰則:章立ては第1章総則から第6章雑則(31条)までで、罰則の章も、拘禁刑・罰金・過料を定める条もない。
e-Gov 法令検索の改正履歴には、令和8年4月1日より後の改正として、令和8年5月27日施行のもの(電気通信事業法などを改正する令和7年法律第46号による改正)と、令和8年6月24日に公布された令和8年法律第46号(民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)によるものが載っています。後者のうち、2条2項の保護者の定義の「後見人」を「未成年後見人」に改める部分は、民法等の一部を改正する法律の施行の日から施行される定めで、2026年10月17日の確認では未施行です。この記事は4月1日時点の条文で書いています。5月27日施行の版でも、章立て、13条〜21条の見出し、罰則の規定がない点は同じです。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:契約の相手方が17歳の本人。相手方が青少年なので、事業者はフィルタリングサービスの利用を条件に提供します(15条)。
- 当てはまる例:相手方は大人で、使うのは15歳の子。13条2項で使用者が青少年かを確認し、使用者が青少年なので15条・16条の義務がかかります。
- 当てはまらない例:相手方も使用者も18歳。2条1項の「18歳に満たない者」ではないので、15条・16条の対象になりません。高校生かどうかは基準になっていません。
- ひっかけやすい例:保護者が「フィルタリングサービスを利用しない」と申し出た。15条ただし書で、条件としない提供ができます。申し出るのは「その青少年の保護者」で、青少年本人ではありません。
- ひっかけやすい例:掲示板を運営する特定サーバー管理者が、他人の書き込みに青少年有害情報があると知った。閲覧防止措置は「とるよう努めなければならない」(21条)で、努力義務です。
似ているルールとの違い
| 比べる点 | 15条(フィルタリングサービス) | 16条(有効化措置) |
|---|---|---|
| 主語 | 携帯電話インターネット接続役務提供事業者 | 同じ事業者「等」(代理店などを含む) |
| 場面 | インターネットにつなぐ役務を提供するとき | 省令で定める端末を販売するとき |
| 外れる場合 | 保護者が「利用しない旨」を申し出た | 保護者が「希望しない旨」を申し出た |
青少年を守る決まりは、法律だけでなく都道府県の条例にもあります。条例で有害図書の自動販売機への収納を禁じた規定が表現の自由に反しないかが争われた判例は、岐阜県青少年保護育成条例事件の記事で扱っています。インターネットの別の法律として、広告メールの決まりは特定電子メール法の記事、投稿による権利の侵害への対応は情報流通プラットフォーム対処法の記事にあります。
試験ではここをまちがえやすい
- 年齢:青少年は18歳未満(2条1項)。20歳未満、高校生まで、と取り違えない。
- 確認の相手:相手方が青少年でなくても、使用者が青少年かを確認する(13条2項)。
- 例外の申出:15条・16条の義務は、その青少年の保護者の申出で外れる。本人の申出ではない。
- 義務と努力義務:13条〜18条は義務、19条〜21条は努力義務。保護者(6条)は「努めるものとする」。
- 罰則:罰則の規定はない。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
携帯電話の契約の相手方は保護者のまいさんで、端末を使うのは15歳の子のゆいさんである。この場合でも、まいさんがフィルタリングサービスを利用しない旨を申し出たときは、事業者は、その利用を条件とせずにインターネットにつなぐ役務を提供できる。
答え:○ 分かれ目は、15条の義務に例外があるかです。15条本文は、契約の相手方または使用者が青少年である場合に、フィルタリングサービスの利用を条件として役務を提供しなければならないとしますが、ただし書は「その青少年の保護者が、青少年有害情報フィルタリングサービスを利用しない旨の申出をした場合は、この限りでない」としています。使用者が青少年なら外せないと考えると✕に見えます。申出ができるのは保護者で、青少年本人の申出では外れません。
問2(このサイトのオリジナル問題)
掲示板を運営する特定サーバー管理者は、その掲示板で他人により青少年有害情報の発信が行われたことを知ったときは、青少年による閲覧ができないようにする措置をとらなければならない。
答え:✕ 分かれ目は、義務か努力義務かです。21条は、特定サーバー管理者は、他人による青少年有害情報の発信を知ったときなどに、青少年閲覧防止措置を「とるよう努めなければならない」としています。正しくは、措置をとるよう努める努力義務です。携帯電話の事業者のフィルタリングの提供(15条)や有効化措置(16条)が「しなければならない」という義務であることと取り違えた誤りです。
問3(このサイトのオリジナル問題)
契約の相手方が18歳の高校生で、その人が自分で携帯電話端末を使う場合、この法律の「青少年」に当たらないので、15条のフィルタリングサービスの利用を条件とする義務は、この契約にはかからない。
答え:○ 分かれ目は、青少年の年齢です。2条1項は、青少年を「十八歳に満たない者」としています。15条の義務は、相手方または使用者が青少年であるときにかかるので、18歳の人が自分で使う契約にはかかりません。高校生なら青少年だろう、と考えると✕に見えます。年齢の線は18歳未満で、学校に通っているかどうかでは決まりません。
基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。
まとめ
- 青少年=18歳未満。平成20年法律第79号、平成21年4月1日施行。平成29年改正(平成30年2月施行)で販売時の有効化などを義務化。
- 携帯電話の事業者等:確認(13条)・説明(14条)・フィルタリングを条件に提供(15条)・端末の有効化(16条)。15条・16条は保護者の申出で外れる。
- 17条・18条は義務、19条〜21条(開発事業者・特定サーバー管理者)は努力義務。保護者は「努めるものとする」(6条)。
- 罰則の規定はない。基本計画はこども政策推進会議が定める(8条)。
このサイトで次に読むなら、情報通信の用語の記事です。情報通信の分野で、どこまで覚えてどこから深追いしないかの線引きを先に決めておくと、この記事のような法律の条文に時間を回せます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の内容を確かめました(2026年10月17日確認)。
- e-Gov法令検索「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(目次、1条〜8条、13条〜21条。改正履歴と、令和8年5月27日施行の版の目次・見出し、2条2項の未施行の改正も確認)
- 総務省「平成21年版 情報通信白書」(法律の成立と、平成21年4月1日の施行)
- 総務省「令和5年版 情報通信白書」青少年のインターネット利用環境の整備(平成29年法律第75号の改正の内容と施行の時期)
働く人の法律試験ノート