ひとことで言うと、保証人に情報を伝えるルールは3つあり、それぞれ伝える人・伝える相手・時期が違います。契約を結ぶ前は主たる債務者(しゅたるさいむしゃ=お金を払う本人)が、契約の途中と、本人が期限の利益を失ったときは債権者(さいけんしゃ=お金を受け取る側)が伝えます(民法465条の10・458条の2・458条の3)。3つのうち、法人の保証人にも使えるのは契約の途中の1つだけです。
このルールは、令和2年(2020年)4月1日に施行された民法の改正で新しく置かれました。この記事では、3つの情報提供を1枚の表にそろえ、事業の借金を個人が保証するときの公正証書(465条の6)を添えます。普通の保証と連帯保証の違い、個人根保証の極度額(きょくどがく=保証する上限の額)は保証と連帯保証の記事で扱っているので、ここでは要点だけにします。
身近な例で考えると
登場するのは、次の3人と1つの信用金庫です。ゆうじさんは、個人でカフェを開こうとしています。お店を借りるため、また開店の資金を借りるため、友人のみさきさんに保証人を頼みます。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| ゆうじさん | 主たる債務者 | 店を借り、開店資金を借りる |
| みさきさん | 保証人(個人) | ゆうじさんに頼まれて保証する |
| はるかさん | 債権者(大家) | ゆうじさんに店舗を貸す |
| こだま信用金庫 | 債権者(貸主) | ゆうじさんに開店資金を貸す |
- 頼むとき:ゆうじさんは、みさきさんに保証人を頼む。このときゆうじさんは、自分の財産と収支(しゅうし=入るお金と出るお金)の状況、ほかの借金の有無と額、ほかに担保を出しているかを、みさきさんに伝えなければならない(465条の10)。
- 契約を結ぶ前:信用金庫の開店資金は、事業のための借金(貸金等債務)。みさきさんは個人なので、契約の日の前1か月以内に、公証人の前で「払う意思がある」ことを示した公正証書(こうせいしょうしょ=公証人が作る公の文書)を作る必要がある(465条の6)。店の家賃の保証には、この公正証書は要らない。
- 契約の途中:1年後、みさきさんは「ゆうじさんはきちんと返しているのか」が気になった。みさきさんが信用金庫に求めれば、信用金庫は、払い遅れの有無や残りの額を、遅滞なく教えなければならない(458条の2)。
- 期限の利益を失ったとき:ゆうじさんが分割の返済を続けて怠り、契約の約束により、残りを一度に返さなければならなくなった(期限の利益の喪失)。信用金庫は、それを知った時から2か月以内に、みさきさんに知らせなければならない(458条の3)。
保証人は、本人が払わなかったときに代わりに払う人です。どのくらい危ない保証なのかを知らないまま引き受けたり、本人の払い遅れを知らないうちに遅延損害金(ちえんそんがいきん=払いが遅れたことへの賠償のお金)がふくらんだりしないよう、3つの場面で情報が届く仕組みになっています。
たとえるなら、友だちの自転車のローンの「連帯責任」を頼まれたとき、①頼む本人が自分のお金の事情を話す、②途中で「ちゃんと払ってる?」と店に聞ける、③払えなくなったら店からすぐ連絡が来る、という3つの約束がある状態です。ただし本物のルールでは、①は事業のための債務の保証だけ、③は個人の保証人だけ、というように、場面ごとに使える範囲が決まっています。
条文ではこう決まっている
契約前:保証を頼むときの情報提供(465条の10)
- 伝える人:主たる債務者。債権者ではない。
- 場面:事業のために負担する債務の保証(またはその債務が範囲に入る根保証)を、だれかに頼むとき。借金に限らず、店舗の家賃や仕入れの代金も入る。
- 伝えること:①財産と収支の状況、②主たる債務のほかに負っている債務の有無・額・返している状況、③主たる債務の担保としてほかに出している(出そうとしている)ものがあれば、その旨と内容。
- 伝えなかった・事実と違うことを伝えたとき:頼まれた人がそのために誤解して保証契約をし、しかも本人の説明の不足や誤りを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消せる(2項)。
- 保証をする人が法人なら、適用しない(3項)。
取消しの要件に債権者の事情が入っているのは、保証契約が債権者と保証人の間の契約だからです。説明をしたのは契約の相手ではない主たる債務者なので、債権者が何も知らず、知ることもできなかったときは、保証人は取り消せません。
契約の途中:債権者が答える情報提供(458条の2)
- 伝える人:債権者。
- 相手:主たる債務者の委託を受けて保証人になった人。条文の原文は「保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったとき」。
- 時期:保証人の請求があったら、遅滞なく。
- 伝えること:主たる債務の元本・利息・違約金・損害賠償など、それに付いてくるものすべてについて、払っていないものがあるか、残りの額、そのうち弁済期が来ている額。
- 保証人が個人か法人かは問わない。事業のための債務に限られない。
期限の利益を失ったとき:債権者からの通知(458条の3)
- 伝える人:債権者。保証人からの請求は要らない。
- 時期:主たる債務者が期限の利益を失ったことを知った時から2か月以内(1項)。失った時からではない。
- 通知しなかったとき:期限の利益を失った時から、実際に通知するまでに生じた遅延損害金(期限の利益を失わなかったとしても生じた分を除く)は、保証人に請求できない(2項)。元本や、もともとの利息まで請求できなくなるわけではない。
- 保証人が法人なら、適用しない(3項)。委託を受けたかどうかは問わない。
期限の利益(きげんのりえき=決まった日までは払わなくてよい立場)を失うと、残りの全額が一度に払うべきものになり、その全額に遅延損害金がかかり始めます。どんなときに期限の利益を失うかは、期限の利益の記事で説明しています。
事業の貸金を個人が保証するとき:公正証書(465条の6・465条の9)
- 対象:事業のために負担した貸金等債務(お金を借りたり、手形の割引を受けたりして負う債務。465条の3第1項)の保証契約と、その債務が範囲に入る根保証契約。
- 要件:契約を結ぶ日の前1か月以内に作られた公正証書で、保証人になろうとする人が、保証債務を履行する意思を示していること。示していなければ、保証契約は効力を生じない(465条の6第1項)。
- 保証人になろうとする人が法人なら、適用しない(同条3項)。
- 例外(465条の9):主たる債務者が法人のときの取締役・理事など、議決権の過半数を持つ人など。主たる債務者が個人のときは、共同で事業をする人と、その事業に現に従事している配偶者。
465条の10の情報提供は「事業のために負担する債務」、465条の6の公正証書は「事業のために負担した貸金等債務」が対象で、範囲が違います。店舗の家賃の保証は、情報提供は要りますが、公正証書は要りません。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:ゆうじさんがカフェの店舗の家賃の保証をみさきさんに頼む場合。事業のための債務なので、ゆうじさんは465条の10の情報を伝える必要があります。家賃は借金ではないので、公正証書は要りません。家賃などをまとめて保証する個人根保証になるので、極度額を書面で決めることは必要です(465条の2)。
- 当てはまらない例:ゆうじさんが自分の住まいのアパートを借り、その家賃の保証をみさきさんに頼む場合。事業のための債務ではないので、465条の10の情報提供の義務はありません。ただし、みさきさんがゆうじさんに頼まれて保証人になったのなら、契約の途中で大家に残額などを聞くこと(458条の2)はできます。
- 当てはまらない例:保証人が会社(法人)の場合。465条の10と458条の3は適用されません。458条の2は、委託を受けた保証人なら法人にも使えます。
- ひっかけやすい例:ゆうじさんが、みさきさんに「ほかに借金はない」と事実と違う説明をし、みさきさんはそれを信じて信用金庫と保証契約を結んだ。信用金庫が、ゆうじさんの説明が事実と違うことを知らず、知ることもできなかったときは、みさきさんは465条の10第2項では取り消せません。債権者の事情で結論が変わります。
- ひっかけやすい例:信用金庫が、ゆうじさんの期限の利益の喪失を、喪失から3か月後に知り、知ってから1か月後にみさきさんへ通知した。喪失からは4か月たっていますが、知った時から2か月以内なので、458条の3の通知は間に合っています。遅延損害金の請求は制限されません。
似ているルールとの違い
3つの情報提供を1枚で比べる
| 比べる点 | 契約前(465条の10) | 途中(458条の2) | 期限の利益の喪失(458条の3) |
|---|---|---|---|
| 伝える人 | 主たる債務者 | 債権者 | 債権者 |
| 伝える相手 | 保証を頼む相手 | 委託を受けた保証人 | 個人の保証人 |
| きっかけ・時期 | 保証を頼むとき | 保証人の請求。遅滞なく | 喪失を知った時から2か月以内 |
| 対象の債務 | 事業のための債務 | 限定なし | 限定なし |
| 法人の保証人 | 適用しない | 適用する | 適用しない |
| 守らないと | 取消し(債権者が知り又は知ることができたとき) | 効果の定めはない | 通知までの遅延損害金を請求できない |
表の縦の列を覚えるときは、「契約前だけ伝える人が本人」「法人に使えるのは途中だけ」「委託が要件なのも途中だけ」の3点を軸にすると、ほかのマスは条文の言葉から埋まります。458条の2に効果の定めがないことは、条文に書かれていないという意味で、守らなくてよいという意味ではありません。
公正証書・書面・極度額との違い
| ルール | 対象 | 欠けたとき |
|---|---|---|
| 書面(446条2項) | すべての保証契約 | 効力を生じない |
| 極度額(465条の2) | 個人の根保証 | 効力を生じない |
| 公正証書(465条の6) | 事業の貸金等債務の個人保証 | 効力を生じない |
| 契約前の情報提供(465条の10) | 事業の債務の個人保証 | 一定の場合に取り消せる |
上の3つは欠けると最初から効力がなく、情報提供だけは「取り消せる」です。取り消すまでは契約は有効で、取り消すかどうかは保証人が決めます。無効と取消しの違いは無効と取消しの記事で整理しています。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している宅建試験の問題(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、保証が主な論点の問題は12問で、直近10回(平成30年度〜令和7年度)では3問でした。情報提供の3つだけの数は、分けて数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。取り違えやすい形は次のとおりです。
- 伝える人:契約前の財産・収支の情報を「債権者が」伝えるとする形。伝えるのは主たる債務者です。債権者が伝えるのは、契約の途中(458条の2)と期限の利益の喪失(458条の3)。
- 2か月の起算点:「期限の利益を失った時から2か月以内」とする形。条文は、喪失を「知った時から」です。
- 通知しなかった効果:「保証債務の全部を請求できなくなる」とする形。請求できないのは、喪失から通知までの遅延損害金で、期限の利益を失わなくても生じた分は除きます。
- 法人の扱い:3つとも法人に使えない、または3つとも使えるとする形。法人に使えるのは458条の2だけです。
- 取消しの要件:主たる債務者がうそを伝えれば、保証人はいつでも取り消せるとする形。債権者が知り又は知ることができたことが要ります。
- 債務と貸金等債務:家賃の保証にも公正証書が要る、または家賃の保証には情報提供が要らないとする形。公正証書は貸金等債務、情報提供は事業のための債務全般です。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
個人で喫茶店を営むAは、店舗の賃料の債務について、友人の個人Bに保証を頼み、極度額を書面で定めて保証契約を結ぶことにした。この保証に公正証書は要らないが、Aは、Bに対し、自分の財産及び収支の状況などの情報を提供しなければならない。
答え:○ 分かれ目は、「債務」と「貸金等債務」の範囲の違いです。保証を頼むときの情報提供(民法465条の10第1項)は、事業のために負担する債務の保証が対象で、店舗の賃料も入ります。公正証書による意思の確認(465条の6)は、事業のために負担した貸金等債務の保証だけが対象なので、賃料の保証には要りません。情報提供も「事業の借金の保証」だけのルールだと思うと、✕に見えます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
Cは、Dの分割払いの貸金債務について、個人Eを保証人として保証契約を結んでいた。Dが4月1日に期限の利益を失い、Cはそれを7月1日に知って、8月20日にEへ通知した。この場合、Cは、4月1日から8月20日までに生じた遅延損害金も、Eに請求できる。
答え:○ 分かれ目は、2か月を数え始める時点です。債権者は、主たる債務者が期限の利益を喪失したことを知った時から2か月以内に、個人の保証人に通知しなければなりません(民法458条の3第1項)。Cは7月1日に知り、2か月以内の8月20日に通知しているので、2項の請求の制限はかかりません。喪失の4月1日から数えると2か月を過ぎているので、✕に見えます。保証人が法人なら、この通知のルールそのものがありません(同条3項)。
問3(このサイトのオリジナル問題)
Fは、自分が営む工場の運転資金をG銀行から借りるため、個人Hに保証を頼んだ。この場合、民法の規定によれば、G銀行は、保証契約を結ぶ前に、Hに対し、Fの財産及び収支の状況やほかの借入れの状況を説明する義務を負う。
答え:✕ 分かれ目は、情報を伝える人です。保証を頼むときに財産・収支の状況などを伝える義務を負うのは、主たる債務者のFです(民法465条の10第1項)。正しくは、G銀行にこの義務はありません。G銀行がかかわるのは、Fが説明しなかったり事実と違う説明をしたりしたことを、G銀行が知り又は知ることができたときに、Hが取り消せるという場面です(同条2項)。債権者が情報を伝えるのは、契約の後の458条の2・458条の3なので、その2つと取り違えると○に見えます。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。
まとめ
- 契約前(465条の10):主たる債務者が、事業のための債務の保証を頼む相手に、財産・収支などを伝える。債権者が知り又は知ることができたときは取り消せる。法人には使えない。
- 契約の途中(458条の2):委託を受けた保証人が求めたら、債権者が遅滞なく残額などを伝える。法人にも使える。
- 期限の利益の喪失(458条の3):債権者が、喪失を知った時から2か月以内に個人の保証人へ通知する。遅れたら通知までの遅延損害金を請求できない。
- 事業の貸金等債務の個人保証は、前1か月以内の公正証書が要る(465条の6)。家賃の保証には要らない。
次に読むなら、弁済による代位と物上保証人の記事がおすすめです。保証人が代わりに払ったあと、本人や担保に対して何ができるかを扱っています。保証人が複数いるときや、連帯して払う人がいるときの決まりは連帯債務の記事で確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「民法」(第446条第2項、第458条の2、第458条の3、第465条の2、第465条の3、第465条の6、第465条の9、第465条の10。令和8年4月1日時点)
- 法務省民事局参事官室「保証に関する民法のルールが大きく変わります」(情報提供義務の新設と、令和2年4月1日の施行)
- 不動産適正取引推進機構(宅建試験の問題の公開。出題数は当サイトが数えたもので、公式の内訳ではありません)
働く人の法律試験ノート